シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

151 / 189
後日談その1、クロ視点のお話です…!


戻ってきた日常

 

授業が終わり、私…クロは手早く荷物を纏めて立ち上がる

よく話している友達のグループに声を掛けた

 

「じゃあ、私今日も行かないとだから、皆またね」

 

「またねクロ!先輩のお見舞いでしょ?」

 

「そうそう、私達を護って怪我しちゃったから…」

 

マユ先輩が大怪我で入院し、ここ最近はずっと病院にお見舞いに行っている

 

「先輩もクロが沢山来てくれてきっと喜んでるよ!行ってらっしゃい!」

 

「うん!」

 

ばいばい、と手を振って私は教室を出る

廊下を歩きつつ、私は考え事をしてしまう

エデン条約調印式で起こったあの襲撃事件から、そろそろ一ヶ月だろうか

エデン条約襲撃が一ヶ月前、そしてその1週間後に謎の巨大な蔦がトリニティを襲う事件も起きた

どちらも先生が解決したみたいだけど……

傍から見ていても、激動の日々だったと言える気がする

ナギサ様やセイア様、救護騎士団の団長さんにシスターフッドのサクラコ様が証人として立ち会い、行われた先生の説明で事の真相はほぼ明らかになった

アリウス分校。私は転校してきたのであまりよく理解できなかったけど、悪い人に洗脳され、利用されていたらしい可哀想な人達

全員保護したらしいけど、今は色々と学業への復帰を試行錯誤している…と先生が言っていた

数名は既に復帰しているのだとか……

それにしても、先生はここ最近ずっと至る所が包帯でぐるぐる巻きのままトリニティを走り回っている

本人はそれが仕事だから、と気にしていないようだが、正直凄く心配になる

先生も少しの間入院していたので、お見舞いに行ったのだが、マユ先輩に負けず劣らずボロボロだった

考え事をしていたら、既に待ち合わせ場所の近くだ

キョロキョロと周囲を見渡しつつ待っていると…

 

「ごめんなさいクロ、少々遅れてしまいましたわ」

 

金髪の縦ロールの髪を揺らしロル先輩が此方に歩いてくる

実はロル先輩とお見舞いに行くのは結構久しぶりだ

色々と忙しいようであまり時間が合わなかった

マユ先輩が昏睡している時に行った以来らしい

ロル先輩はフルーツなどが入った袋を持っていた

 

「あ、こんにちはロル先輩。大丈夫ですよ、私もさっき来たばかりなので…」

 

「そうですの?なら、良いのですけれど…では、行きましょうか」

 

ロル先輩が歩き出すので私もついていく

歩きつつ、ロル先輩が話しかけてきた

 

「もう傷は痛みませんの?何か体に異常とか…」

 

「私はもう完全に治りましたよ!元々、多少の火傷とかすり傷程度でしたから」

 

「それは何よりですわ」

 

にっこりと笑って頷くロル先輩

ロル先輩も大丈夫そうだ

 

「最近忙しかったみたいですけど、何をしていたんですか?」

 

「2年生の教室にアリウスの人達が数人編入して来ましたの。慣れない場所で大変でしょうと思い、色々と手伝いをしていましたわ。最初は少し怖かったのですけれど…話してみれば、皆さん良い人でしたわ。余計なお世話と思われていなければ良いのですけれど…」

 

勉強の事、トリニティの重要な場所やよく使う場所を自主的に教えていたらしい

ロル先輩は学級委員長とはいえ、凄い

そういえば、私も慣れないトリニティで困っていた時に助けてくれたのがロル先輩達だった

 

「やっぱり優しいですね、ロル先輩。きっと感謝されていると思いますよ!」

 

「…やるべき事をやっているだけですわ」

 

褒められる程の事でもないとばかりにそう言うロル先輩はやっぱり尊敬できる先輩だ

ふと、前方から2人、生徒が歩いてきた

一人は見覚えがある、補習授業部に居たアズサさんだ

アズサさんがもう一人を引っ張っている

 

「ま、待ってくれアズサ。そんなに引っ張らなくても…」

 

「早くしないと限定グッズだから売り切れちゃう」

 

「分かったから………おや?」

 

そのもう一人とロル先輩の目が合った

雰囲気的に知り合いのようだ

 

「あら、サオリさん。御機嫌ようですわ」

 

「あぁ。御機嫌よう…で…良いのか…?…い、いまいち慣れないな……」

 

そう言いつつ頬を搔くサオリさん

様子的に、恐らくアリウスの人なのだろう

 

「ふふ、挨拶は好きにしても大丈夫だと思いますわ。ご友人とショッピングですの?」

 

「…なるほど。色々と教えてくれている事、いつも感謝している。今はロルの言う通り、買い物に向かう途中だ」

 

アズサさんの目線が此方を向き、会釈してくるので私も会釈を返した

恐らくトラップの件で若干罪悪感を感じているみたいだ

……き、気まずい…………

私は正直コミュニケーション能力が高くないので話しかけようにもロル先輩みたく上手く出来る気がしない

若干挙動不審になっていると、ロル先輩が話を切り上げた

 

「…引き止めてしまいましたわね。限定グッズ、手に入るように祈っていますわ!」

 

「ありがとう。またな、ロル」

 

アズサさんに引っ張られてサオリさんは再び歩き出した。後方から「サオリ、今日のグッズに印刷されてるのはこのペロロ博士。このぬいぐるみはヒフミがくれた。かわいいでしょ」「かわ………友人からのプレゼントか。それは大事にしなくてはいけないな」という声が聞こえてくる

 

「ロル先輩、あの人がアリウスの…」

 

「えぇ、アリウスの方…部隊を率いるリーダーのような立場に居たらしいですわ。大切な方々を人質に取られていた…と聞きます。酷い事をする人も居たものです」

 

あの巡航ミサイルも、アリウスによるもの

マユ先輩があぁなったのも………

そう考えると、複雑な感情になるけど……

難しい顔をしていると、ロル先輩が私の考えている事を悟って言う

 

「簡単に割り切れるものではありませんわ。だからこそ…サオリさんは己の罪を受け入れ、償おうとしています。元の立場がどうであれ、今は同じトリニティの生徒で同級生ですもの、少しでも力になりたいですわ」

 

やっぱり、ロル先輩は凄いな…と実感する

 

「そうですね…もし1年生の教室にアリウスの方が来た時は私も話しかけてみようかと思います」

 

「えぇ、応援していますわ」

 

ロル先輩が頭を撫でてくれた

そんな会話をしつつ、病院へと向かった

到着した病院で受付を済ませ、私達は病室へ向かう

 

「失礼します…マユ先輩、起きてますか?」

 

「…失礼しますわ」

 

「ン?おォ、クロとロル!クロは毎日ありがとナ。ロルは久しぶりダ、身体は大丈夫カ?」

 

病室のベッドで横になっていたマユ先輩が身体を起こして話しかけてくる

いつもよりぼさっとした長く白い髪に、身体には包帯を巻いていた。腕も包帯が巻かれていたのだが…少し前に外しても大丈夫になったらしい

白く、細い腕にはくっきりと傷跡と火傷の痕が残っている

背中にはボロボロの大きな黒い羽が見える

複雑そうな表情でロル先輩は答えた

 

「…えぇ、私は大丈夫ですわ」

 

「エ、何そんな神妙な顔しちゃっテ」

 

ロル先輩はマユ先輩に駆け寄り、手を取る

 

「…ごめんなさい、マユ先輩。こんなに傷が…」

 

「エ、やめテ凄くしんみりするノ。私あんまり得意じゃないんだけド。…えーっト、その、気にしなくて大丈夫だヨ。羽はそのうち生え変わるし…腕も別に後遺症も残ってないしナ。まァ、可愛い後輩達を守る為だった訳だシ、私は後悔もしてないからサ」

 

ロル先輩の目尻に浮かぶ涙をハンカチで拭き取ってマユ先輩はそう言った

 

「それに合法的にサボれるしナ!クロも毎日来てくれるし、案外悪くなイ!」

 

後輩も守れて合法的にサボれるとか役得だゼ、などと言いつつマユ先輩はいつもみたいに軽く笑う

私は苦笑し、ロル先輩にも笑みが戻ってきた

 

「ふふっ…まぁ、今日ぐらいは見逃してあげますわ。…マユ先輩、ありがとうございます」

 

ロル先輩がそう言ったので、私は一度お礼は言ったのだけど、再び言う事にする

 

「私ももう一度言わせて下さい…守ってくれて、ありがとうございます、ロル先輩」

 

「……やめろやめロ、そういうの気恥ずかしいったらありゃしないゼ」

 

羽でそっと私とロル先輩の顔を上げるように促しつつやれやれ、と首を振るマユ先輩

マユ先輩はいつも変わらないな、等と思っていたけど…耳が真っ赤になっている事に気が付く

 

「マユ先輩、耳が真っ赤ですよ」

 

「ちょッ、クロ!指摘しないでいいだロ!」

 

「あ、つ、つい………」

 

ロル先輩はスマホを取り出し、何かしらを検索しだした

 

「それで?いつ退院出来るんですの?」

 

「正直今は念の為で入院してただけだシ、今週の金曜日には多分退院できるらしいヨ。激しい運動はしばらく厳禁だけどナ。体育がサボれるゼ」

 

今は水曜日だ、結構早い

 

「なるほど。では、お店の予約は取ったので退院したらそのまま退院祝いお茶会ですわね」

 

「やったゼ、楽しみで甘いもんが食べたくなってきたナ」

 

「そこに買ってきたフルーツがありますわ。お好きなものをどうぞ」

 

置いていたフルーツを指差すロル先輩

そんなロル先輩にマユ先輩が訝しげな目線を送る

 

「……なんダ?妙に優しくなイ?偽物カ?」

 

「どうやらフルーツは要らないみたいですわね。クロ、帰って一緒に食べましょう」

 

フルーツが入った袋を持って出ていこうとするロル先輩

 

「冗談だっテ!!!!!」

 

慌てて追いかけようとするマユ先輩

いつも通りの光景、戻ってきた日常が楽しくて、笑みが溢れる

 

「なんだいクロよ。先輩の醜態がそんなに面白いかナ?」

 

じとっと見てくるマユ先輩。包帯が絡まって動けなくなっていた

 

「今のマユ先輩が面白いか面白くないかで言えば面白いですね…」

 

私はそう言いつつ絡まっていた包帯を元に戻す

 

「やべェ、クロがトリニティに染まってきてル!」

 

いそいそとマユ先輩はベッドへ戻っていった

 

「ほら、切り分けますからマユ先輩は早くベッドに戻ってくださいな。クロは勿論私の膝の上で。食べさせてあげますわ」

 

「いいナー、私も食べさせ………冗談だっテ」

 

マユ先輩の発言に冷たい目線を送るロル先輩

冷や汗をかきつつマユ先輩は誤魔化した

でも、二人共確かに、一瞬だけ口角が上がっていた

今回は、指摘する必要も無いだろう

大人サオリが居た世界の先生の性別どっちがいいですか!

  • 男性!!!!!!!!!!
  • 女性!!!!!!!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。