シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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私の得意分野

 

「う、う〜〜〜ん………はっ……!?ここは!?」

 

セリカは暗闇の中、目を覚ます

ガタンガタンと揺れる床

 

「私、攫われた!?っ…あたまが……」

 

微かに聞こえるエンジン音に、確かに響く振動

 

「トラックの荷台…?ヘルメット団め…一体何処に連れて行くつもりなの……?あ、少しだけ隙間が…外、見えるかな…」

 

セリカは壁に手をつき、目をその隙間に近付けて外の様子を伺う

 

「わ、私、日が昇るまで気絶していたの…?しかも…砂……線路…線路……!?ここ、アビドス郊外の砂漠…!ここからじゃ連絡も取れない…!」

 

エンジンの音と、振動が響く暗闇の中

いつもの調子なんて出せる筈も無く、セリカの気持ちはどんどん落ち込み、絶望が感情を埋め尽くす

 

「……このまま何処かに埋められちゃうのかな…誰にも、気付かれないように…連絡も途絶えて、他の子達みたいに街を去った…って…裏切った…って思われるのかな……」

 

じんわりと目頭が熱くなる感覚を覚えるセリカ

 

「皆に会えないまま…誤解されたまま死ぬだなんて、そんなの…ヤダよ………うっ…あぁ…」

 

頬を涙が伝い、嗚咽が漏れる

 

「誰か……助けて………」

 

次の瞬間、衝撃が荷台を襲い、爆発音が鳴り響く

 

「な、何…!?きゃぁぁぁっ!!!!」

 

衝撃で荷台は横転し、セリカも壁に吹き飛ばされる

今回は受け身を取り、痛みも特に無く先程まで壁だった床へ着地する

 

「けほっ、けほっ…な、何…?事故でも起こしたの…?」

 

困惑しつつ立ち上がろうとすると、聞き覚えのある声が響く

 

「セリカ!もしそこに居るのなら扉から離れていろよ!シロコ、頼む!」

 

「ん、蹴破るッ!!」

 

バァン、という音が響き渡り、勢いよく扉が開け放たれた

暗闇を光が照らす

 

「ん、半泣きのセリカ発見!」

 

「もう大丈夫だ。助けに来たぞ、セリカ!」

 

銀色の髪に、靡くマフラー。頼れる先輩のシロコが。少しくぐもって聞こえる声に、怪しい仮面。しかし、確かな頼もしさを孕んだ先生が。そして後方で響く銃声。ホシノが、ノノミが、アヤネが、対策委員会が、攫われた少女…お姫様を助けにやってきた

 

─────────────────────

 

響くエンジン音、ちょっとした段差でかなり揺れる

廃車となっていた車を応急処置で走れる程度には治したものらしく、正直乗り心地が良いとは言えない

しかし、走行が可能ならば何の心配も無いだろう

 

「先生!あいつら今どの辺り?」

 

ホシノが後ろから聞いてくる

 

「私達よりは遅いとはいえ、ヘルメット団も距離を取り続けている。少し気が付くのが遅れた分、このままではジリ貧だな…距離は着実に詰めているが…」

 

大型車両のようで、速さならこちらの方が上だ

しかし、相手には今まで稼いだ距離というアドバンテージがある

 

「ん、私とホシノ先輩と先生で先行する。走った方が早い。先生は私がおんぶするから」

 

「うへ、そうだね、シロコちゃんとおじさんがいれば護衛もバッチリだし〜」

 

「では、その後を追いますね」

 

「後方支援はお任せ下さい〜☆」

 

…正直私の足も限界だし、そもそも今の私では体力が万全の時でも車より早く走るのは不可能だ

セリカを助けるため、なりふり構っていられない

 

「そうするとしよう。すまないシロコ、頼めるか?」

 

「ん、任せて」

 

「その、私は少し背が高い方だが…大丈夫か?」

 

「心配無い」

 

ぐっ、と親指を立てて、私に近寄ってきた

軽々と持ち上げられ、背負われる

 

「舌を噛まないように気を付けて。ん、行く!」

 

「しゅっぱ~つ!」

 

ホシノを先頭に、物凄い速度で走り出す

仮面があって助かった。風圧も勿論、ここは砂漠だ。砂埃で裸眼では目も開けていられないだろう

対象との距離はぐんぐんと縮まっていく

ふと、光が私達を照らした

 

「……夜明けか。ホシノ。戦闘準備。そろそろ対象が目視できる。シロコ、危険になれば私は雑に投げ捨ててしまっても構わない。できるだけ近くまでよろしく頼む」

 

「ん、了解」

 

「りょ〜かい〜」

 

銃を取り出し、構えつつ走るホシノ

前方のあの砂埃……ようやく、追い付いたようだ

シッテムの箱を取り出し、アロナに補助を任せる

 

「ホシノ、作戦通り頼む!」

 

「はいは〜い!今のおじさんはちょっぴり本気だよ〜?」

 

思いっきり地面を蹴り、急加速したホシノがトラックへと迫る

 

「な、なんだアレ!?」

 

「襲撃だ!撃て、撃てー!!!」

 

護衛と思われるヘルメット団が荷台の上からホシノを射撃するが、ホシノは巧みに躱し、盾で防ぐ

 

「よいしょっ!!!」

 

荷台とトラックの接続部分を破壊し、切り離す

 

「はい、おじさんからのお土産〜」

 

トラックの方へとグレネードを投げ入れ、盛大に爆発させる

衝撃で荷台の上に居たヘルメット団も吹き飛ばされ、荷台も横転した

 

「流石だ!そのまま護衛に回ってくれ!」

 

「忙しいね〜〜!!!」

 

此方へ走ってくるホシノと入れ替わるように荷台へ疾走するシロコ

後方でヘルメット団の残党や、新手が現れていた

ホシノが相手をしている間に、手早くセリカを救出しなくては

シロコから飛び降りて地面へ着地し、荷台へ駆け寄る

 

「鍵がかかっているか。セリカ!もしそこにいるのなら扉から離れていろよ!シロコ、頼む!」

 

「ん、蹴破るッ!!」

 

シロコが助走をつけて全力で扉を蹴り飛ばし、鍵ごと破壊し扉を開け放つ

暗い荷台の中、涙目で此方を見ているセリカを見つけた

良かった。命に別状は無いようだ

 

「ん、半泣きのセリカ発見!」

 

「もう大丈夫だ。助けに来たぞ、セリカ!」

 

「!?」

 

後方で小さく響くエンジン音に、ミニガンの銃声

アヤネとノノミも射程内まで来ているようだ

 

「なにぃ〜!?うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!そんなに寂しかったの〜?ママが悪かったわ、ごめんねーー!!」

 

かなりの数の敵を相手しつつそんな事を宣うホシノ

 

「う、うわぁあっ!泣いてない!泣いてなんかないから!!」

 

「嘘!この目でしっかり見た!」

 

「泣かないでくださいセリカちゃん!涙は私達が拭いてあげますから!」

 

妙に力強く断言するシロコに続き、私達がいる場所まで追いつき、飛び降りてきたノノミもそう言っていた

セリカは皆から、好かれているんだな

 

「あぁもう!うるさいうるさーい!違うってば!泣いてない!!」

 

少々水を差すようだが、私も声を掛ける

 

「セリカ、本当に元気そうで何よりだ…助けに行くのが遅くなってしまったな。すまない」

 

「せ、先生まで………どうやってここまで…というか、なんで私を…」

 

ふむ、どうして……か

あんな対応をしてしまった自分を…などと思っているのだろうか。正直、警戒するのは大事な事だ。私は特に不快でもなかったし、理解できる行動だったので気にはしていなかった

あぁいや、ストーカー疑惑をかけられて避けられるというのは少々…悲しいが…

そんな事を考えつつ返答する

 

「先生として、当たり前の事だ。困っている生徒が居るなら助け、悩んでいる生徒が居れば共に考える。こうやって危害を加えられたりしたのなら、救い出す。【シャーレの先生】に、私に、任せてくれ。攫われた姫を救い出すのは私の得意分野なんだ」

 

にっこりと笑いつつセリカにそう返事をした

……仮面で私の表情は見えないが。

花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)

  • だめです!!!!!!!!!!!!
  • いいよ!!!!!!!!!!!!
  • 本編の順番通りがいい!!!!!!!!!
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