シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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生活安全局

 

「───ここがこうなる。だから答えがこれになった訳だ。『なるほど!』…うん、理解できたみたいで何よりだ。『次のライブはいつですか?』近い内にテストがあるだろう。それが終わったらだな。皆、ちゃんと勉強するんだぞ。応援しているからな。分からない事があれば分かる人にちゃんと聞くんだぞ?友達とか…それこそさっきのように私でも良い」

 

流れるコメントを視界の隅に、私は話しつつ書類仕事をサクサク進めていく

慣れないうちは少々手間取っていたが慣れてしまえばそこまでどうという事もないな

戦闘よりは頭を使わない

手元の書類を処理し、次の書類に手を伸ばすが、その手は空を切った

 

「おや、今日の分は少ないとは思っていたが、もう終わってしまうとは。あぁ、丁度時間か。では今日の配信はここまでだ。皆、またな」

 

『全配信機具、配信停止の後にスリープモードに移行します』

 

アロナが宙に浮かせたタッチパネルのようなものを操作すると、先程まで稼働音がしていた機械達が停止する

配信の消し忘れ…というのはどうやら警戒すべきことらしいのでアロナに操作を頼む事にした

正直、消し忘れて見られて困る事など、仮面の下の顔を見られる事…いやまぁ一部のトリニティの生徒があれ?となる程度なのだが…結局仮面は自室以外じゃ外さないしな…

配信を始めてから1週間ぐらいか、結構慣れてきた

見てくれている皆に言葉を掛けて配信を終わる

シャーレのカフェがオープンした事も相まって中々知名度も上がってきている気がする

SNSの通知が沢山来ているので多分上手くいっている

よくわからないが

それにしても、本当に予想以上に早く終わってしまったな

 

「ふむ…午後が空いてしまったか」

 

トレーニングをするか…あぁでも、今の私は激しい運動は禁止されてるんだった。救護騎士団の団長、ミネの鬼気迫った表情から放たれた「絶 対 安 静」をトレーニングの為だけに破る気には流石になれない

ランニング程度ならまぁ…許容範囲らしいが、やり過ぎは良くないだろう

ちょっと前にシロコとランニングしたばかりだ

となると、追加の書類仕事を持ってきてもらうか…

むむむ、と頭を悩ませていると……

アロナが

 

『先生、お散歩はどうですか?それ程負担もかかりませんし…先生は最近働き詰めですから、気分転換にもなるんじゃないかと!』

 

「働き詰め……私は私が負担できる分仕事をしているだけなのだが………でも、気遣ってくれてありがとうアロナ。今日はそうしようか」

 

困っている人も居るかもしれないし、もし居たら出来れば助けたいしな

居なかったら居なかったでそれは喜ばしい事だ

 

『では行きましょう!』

 

「あぁ、出発しよう」

 

何かあった場合の時に備える為にいつも纏めてある荷物を持ち、私はシャーレを出たのだった

 

─────────────────────

 

『先生、アビドスの皆さんの事とエデン条約に関係していた皆さんの事は解決しましたが、次は何処に行くんですか?』

 

「機会があればミレニアムに行こうかと思っている。少々気になる事があってな」

 

『あの手持ち扇風機の開発者ですか?』

 

「いや…それではないがそれはそれで気になるな」

 

気になるからミレニアムに行ったら聞いてみよう

話を戻して、私が言った気になる事…というのは以前の世界の知り合い…セミナーの会長…つまりミレニアムの生徒会長、調月リオについてだ

本格的に付き合いがあるのはリオと仕事の関係があるミサキの方だが、私も数回会った事があるし、ミサキからも話は聞いている

数回シャーレで会話した時に受けた印象は合理性の塊ではあるが、感情も理解しようとしてくれる人…という印象だった

まぁ、ミレニアムなんて本当に私は関係性が無かったしその会話含めて数回しか話していないのでなんとも言えないのは事実だが…

その瞬間、複数人の足音と大声が聞こえてくる

 

『…!先生、前から2人走ってきます!ヴァルキューレの生徒さんと、大人らしき人が一人です。追いかけられいるのはどうやら引ったくりのようですね。ヴァルキューレの生徒さんの無線を傍受して確認したので確実かと!』

 

「止めるか」

 

まだそこそこ距離が離れている

ナイフを取り出し、持ち手に携帯している紐を括り付ける

 

「そ、それ以上逃げれば発砲しますよ!!!」

 

声を上げていたのは……確か、中務キリノだったか

ヴァルキューレの生徒はまだ全員の名前の把握が出来ていないが、彼女とも前の世界で出会った事がある

……というかこれは…

 

「は、発砲します!!!」

 

バン、バン、バン、と3発の弾丸が放たれる

その弾丸は引ったくりの横を通り抜け、私の方に飛来する

手に持つナイフで全て弾き落とした

……脳天、首元、心臓………………

弾き落とさなかった時に当たっていたであろう場所だ

…前の世界でも思ったが、逆に凄いな

 

「!?…あいつ、やべぇ!」

 

引ったくりは弾丸を弾き落とした私を見て方向を変える

私はその背中に小型の発信機を投擲して付着させる

ただの通行人と思わせて不意打ちするつもりだったが、仕方無い

 

「中務キリノ!私はシャーレの先生、月司サラだ。あいつを捕らえる、私の指示に従ってくれるか?」

 

「え!?は、はい!?さ、さっき誤射してしまい、ごめんなさい!指示にですね!?従います!!!」

 

色々と状況がごちゃごちゃとしているからかわたわたとするキリノ

 

「気にするな、怪我もしていないしな。まずは路地裏に追い込むぞ」

 

「了解しました!」

 

「応援要請はしたか?」

 

「はい!近くにいた2人が来てくれるかと!」

 

2人か。まぁ2人いれば大丈夫か

 

「分かった、無線を借りるぞ。キリノはそのままあいつを追いかけてくれ」

 

「分かりました!!」

 

駆け出しつつ私に無線を投げ渡してキリノは走っていった

流石にこの距離での投擲は狙った場所に投げられるようだ

普通にキャッチして通信を開始する

 

『キリノ走り過ぎ〜何処にいるの〜〜もう面倒だから帰ってドーナツ食べて───』

 

「急にすまない、私はシャーレの先生だ。その場所から左に曲がった場所で待機していてくれ。出来るだけ急いでくれると助かる。ヴァルキューレだと分かる格好はしているだろう?」

 

『え、うん、してるけど…シャーレの先生?…というか、急がないといけないんだ…』

 

「犯人を捕らえた後なら近くのドーナツを売ってる場所で幾らでも買うぞ」

 

『マジ?!私に任せて!!』

 

駆け出す足音がする無線

流石に声だけでは誰か分からないな

 

「アロナ」

 

私も駆け出しつつ、アロナにそう声を掛ける

 

『はい!これがマップで、犯人はそろそろ目的の場所ですね!キリノさんから逃げていますし、応援要請で来てくれる生徒さん達も間に合います!一番近いルートを表示します!先生の肉体負荷を計算に入れてナビゲート開始!同時進行で行っていたシュミレーション終了、成功度も100%に限りなく近いです!』

 

「よし。では作戦通り進めよう」

 

とはいえ、現実は何があるか分からない

『不測の事態を予測しろ』

生徒におすすめされて少し見てみたゲームの映像で言われていたな。矛盾しているように聞こえるが…警戒は怠るなという事だろう

油断、慢心は致命的なミスを生むからな、大事な事だ

後手に回るというのは基本かなり苦しい戦いになる

そう考えながら障害物も潜り抜けて路地裏を走っていれば、再び大通りに出る

見つけた。引ったくりだ

あいつはキリノに追いかけられ、回り道をしてきたみたいだが、私は直線で突っ切っただけ。追いつけるのは当然だ

 

「クソッ…!!!」

 

私の視界の右側からはキリノが走ってくる

左側にはキリノが話していたヴァルキューレの増援2人

残りの道は2つ。1つは私が走ってきた方向

そしてもう1つは私の正面にある路地裏への道だけだ

当然、引ったくりはその方向へ向かう

まぁ、あるのは行き止まりなんだが

キリノが真っ先に追いかけていくので私はその後を追う

 

「大人しく投降して下さい!もう逃げ場は無いですよ!」

 

「終わりだ。これ以上の抵抗は諦めろ」

 

キリノは再び銃を構えた

 

「………!このぉっ!!!」

 

私達を押しのけて逃げるつもりだろうか、此方に突っ込んでくる

キリノが再び引き金を引いたその瞬間に、私のハンドガンが発砲音を響かせる

別方向からの発砲音に驚いた引ったくりは回避行動をとり…見事にキリノが放った銃弾に自ら当たりに行った

 

「ぐふっ………」

 

「…は、犯人を確保!!」

 

倒れた犯人をキリノは捕縛した

しっかり手錠をかけている

………まぁちょっともたついてはいたが

 

「先生、ご協力本当にありがとうございます!もう名前は呼ばれたので知っているとは思いますが、本官は生活安全局の中務キリノと言います!他のヴァルキューレの皆さんからお話は聞いていましたが…こうして会えて嬉しいです!」

 

ぴっ、と敬礼して明るくそう話しかけてくるキリノ

 

「気にするな、街の治安は生徒の安全と直結するからな、これも私の仕事の一部だろう。困っている人を見過ごすわけにもいかない」

 

性格的にも、仕事的にも無視するという選択肢は取りたくない

 

「それにしても、先生は凄いですね!最後一発で当てるなんて……私は射撃が本当にダメダメで……」

 

たはは、と笑うキリノ

当たったのが私の弾だと勘違いしているようだ

 

「私は発砲していない。音を鳴らしただけだ。当たったのはキリノの弾だぞ」

 

「わ、私の……?」

 

私は頷いた

悩んでいるようだし、少々アドバイスをしてみよう

 

「確かに、あの奇妙な弾道だと当てにくいかもしれないが…考え方を変えれば長所にもなるだろう。まず、本人からしても何処に飛ぶか分からない弾丸というのは確かにかなりの短所でもあるが…同時に、知っていても予測して回避という事が出来ないし、知らなければそれは不意を突けるという長所になる」

 

これは前の世界で私がやられた事だ

依頼主のスケバンに嵌められ、ヴァルキューレの生徒達と相対する事になったのだが……

銃口の向きからしてもおかしいとしか思えない軌道で回避行動を取った私に命中させていた

そこからは迂闊に行動が出来なくなり、危うく捕まる所だったな。偶然拾った閃光弾が無ければ確実に捕まっていた

ちなみに依頼主には後々しっかり『挨拶』させてもらった

 

「戦闘においてランダム…不安定な要素というものは出来るだけ排除したい。1つでもそれがあるだけで負け筋は幾らでも発生する。意識しなくてはいけない事が1つ増やせる…相手が戦い慣れている奴なら尚の事効くだろう」

 

私の言葉をキリノは真面目に頷きながら聞いている

 

「なる…ほど、そんな考え方が…」

 

「後は外してしまうのならどう足掻いても当たる位置に居ればいい。銃口が届くぐらいのゼロ距離にな」

 

こっちは私もよく使う戦法だ

接近された時の対応には慣れていないのが多いからな

 

「それなら銃弾があらぬ方向に飛んでいっても…!」

 

「あぁ、確実に命中する。無論練習はしなければならないし、知識もつけなければならない。弱点もしっかりとあるが。私は少々近接戦に心得がある、今度時間がある時にゆっくり教えよう」

 

「ありがとうございます、先生!!!」

 

目を輝かせるキリノ

向上心があり素直だと、やはり教え甲斐があるな

 

「なんか難しい話終わった〜?シャーレの先生、約束覚えてるよね?」

 

足音と共に小柄な生徒がそう話しかけてきた

話している事と声的に増援の生徒か

あぁ、顔を見て名前を思い出した

合歓垣フブキだ

さっき話した時数名居るヴァルキューレの生徒達の一番後ろに居た生徒

 

「勿論だ。取り敢えず、留置所に犯人を運ぶぞ」

 

「さっさとやろうさっさと!」

 

目を輝かせているフブキが歩き出したので後を追う

そしてこの後、遠慮する残りの2人も押し切って皆でドーナツを食べた




アロナはいつもこれぐらいやってくれてる(確信)
スーパーアロナちゃんの格好いい所はやはり見たい

大人サオリが居た世界の先生の性別どっちがいいですか!

  • 男性!!!!!!!!!!
  • 女性!!!!!!!!!!
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