夕暮れ時のとあるビル。最上階には人影が4人集まっていた
まぁ……人と呼んでいいのかはわかりませんが
シルエット的にはまだ人型っぽいのでよしとします
私、虚はシャーレの先生の配信を見ている3人…と絵画1枚を眺めている
あの私は何を考えているのでしょうか
いや…理由は分かるのですが。説明してましたし…私の癖に大した行動力です
先生の私の仕事も終わったのか、配信が終了した
「次のライブはいつなのだ。あれは素晴らしい。芸術と言っても差し支えないだろう…あぁ、肉体がコレなばかりに直接見れないのが酷く悲しい」
「そういうこった!!!」
「マエストロは先生に一度姿を見せていますからね。当然警戒されているでしょう」
ゴルコンダとデカルコマニーがそう言う
私も口を開いた
「黒服を嫌っている大きな理由の1つ、生徒を危険に晒した大人…というカテゴリに入っているでしょうね…ベアトリーチェに言われたからとはいえ、派手にやりましたし」
黒服がシャーレに行った時に黒服に向けていた殺気を思い出す
あれは殺ろうと思えば殺れる殺気でした
だから慌てて私が出ていく羽目になったのですが
生徒を守る為、絶対にそうする必要があるのならきっとあの私は躊躇無く対象を殺めるでしょう
生徒なら救おうと動くのでしょうけど…大人となると…
ざっくり殺られているカイザー達を想像する
……まぁ、容易に想像できますね…
全体的な技術で言えば私よりもあの先生の私はかなり優れていますし…なんなら、奥の手もあります
黒服達も殺られそうではありますが、不死だったり、他の肉体を用意したりでなんやかんや大丈夫でしょう
「くっ……おのれベアトリーチェ……」
「その身体、先生に壊されないよう、用心する事ですね」
流れるように責任転嫁するマエストロにそう忠告しておいた
まぁ、ベアトリーチェのせいだというのはそうですけど
先生とマエストロが外で出会った場合、見かけた瞬間に襲いかかってきてもおかしくないですね
何かしらやられる前に殺る、一番手っ取り早いです
「信頼は徐々に勝ち取っていくしかありません。そろそろカイザーともしっかり手を切れそうです」
黒服がそう言う
色々と頑張ってはいるのですが………
「まぁ、顔を合わせている場面で物騒な言葉を使われている限りは大丈夫だと思いますよ。実行に移すのでしたら警戒されないように何も言いませんし。まぁその裏をかいて言葉通り襲ってくる可能性は無くもないんですけど」
「……クックック…なるほど…」
若干いつもの笑みが引き攣っているように見えた
「あの『私』も…結局、根本は変わらないという事ですよ。私と同じ、人を殺す方法を知り、実行する為の技術を学び、諦めの果てに捻じ曲がった人殺し。手段はある。技術もある。覚悟も既に出来ている。あとは、そこから歩んだ道が違うだけです」
「……ふむ」
「光を知り、希望を知り、憧れを抱き…自分に刻まれた嘘を捨て…そして、彼女は答えを導き出し、彼女にとっての大人の責任を理解して、それを背負った」
この世界にいる二人の『私』
本当に眩しい、シャーレの先生の『私』
最低限しか護れない中、決断を誤らなかった『私』
……あぁ…やめて欲しい。私まで…何か……
…何かを、掴みたくなる
取り零したモノに、手を伸ばしたくなる
「違いは……別の選択をした、それだけ。…その選択ができた事が、本当に…羨ましい限りです」
私は沸き立つ感情を抑え、いつもの様にため息をつき、席を立つ
「…シャーレの先生の配信も終わりましたし、今日はもう解散でしょう?黒服、後で話があります」
そう言って私は刀を振り、漆黒の中に飛び込んだ
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一時間程後だろうか
私は再び姿を現す
「クックック…来ましたね虚、それで…話とは?」
「……そうですね、相談…という形になるでしょうか。私一人で何とかできればそれが一番だったのですが、中々それは困難だったようで…」
私はいつも使っている刀を見やりつつ、そう言う
「ほう?」
「黒服。この空間移動の能力を使い、平行世界への移動は不可能なのでしょうか。私と、先生の私がやって来た時の様に」
刀を振り、発生した漆黒を指差しながら聞いた
「…虚。あなたは元の世界に……」
「……帰りたい…というと少々語弊があるでしょうか。私の居場所はもう此処ですから、前の世界に留まるつもりはありません。ただ、私が居た世界は…私を含めて5人…失踪…いえ、死亡している。滅んでいるにせよ、未だに存続しているにせよ……この目で、どうなっているのかを確かめたい」
「…………」
黒服は黙っている
「我が儘だということも理解しています。正直、無理難題だということも……ですが───」
私の言葉を遮り、黒服は口を開いた
「…虚。かなりの危険が伴う事は承知の上なのでしょう?」
「当然です。こんな事、どのような世界であれ、気軽に出来て良い事ではありませんから。私の場合は…最悪、次空の狭間で永遠に漂う事になるでしょう。……それでも、私は…」
…どうしても、手を伸ばしたくなってしまったから
滅んでいるかもしれない
その時は、私の手で完全に…優しく、終わらせる
でも、もし…まだ抗っているのだとしたら
アズサが、先生が……
『それでも』と
明日を生きる為、生徒を守る為、戦っているのなら
私は…私の責任を果たさなければいけない
「私は…あの世界をまた見たい」
黒服を見据えて、私は意思を伝える
「………1つだけ、条件があります」
「条件…えぇ、なんでも良いです。私の肉体を使っての実験もなんでもしてくれて構いません。腕一本置いていきましょうか?」
私の発言に黒服は苦笑した
「そんな事はしませんよ。条件というのは…無事に戻って来る事、それだけです」
数秒硬直したが、言葉の意味を理解して…薄々勘付いていた事を口に出す
「………貴方ってお気に入りに甘過ぎませんか?」
「クックック……」
黒服はいつもの様に笑った
「それで、虚は何処まで試したのです?」
黒服にそう聞かれたので私はやった事を話す
「私の空間移動は以前見た場所に移動できます。無論、前の世界も見ていますから行けると思ったのですが…漆黒の展開まではいつも通り可能でしたが、飛び込んだ後、何かに阻まれる」
「…ふむ」
「それは壁のような…とても巨大で、盤石なものの様に感じました。破壊を試みましたが、手応え一つ無い」
斬撃、銃撃、打撃。全て通り抜けるようで…しかし、それでいて確かに阻まれているというのは分かる、奇妙な感触
「以前、黒服達はこの世界においてテクスチャやジャンル、役割というのは大事な物だと言っていましたよね。…もし、この世界を一つの物語として認識するのなら、物語は別の物語に干渉出来ない…それを明確に事象として具現化したのがあれではないかと、私は考えているのですが」
しかし、そうなると私と先生の私を此処に呼んだのは何か…という疑問が更に膨れ上がりますね…
私の言葉に黒服は頷く
「えぇ、その認識で構わないでしょう。異物は入ってこないのが一番ですから。物理的に、それはどうしようもないものです。別の物語に別の物語の人は干渉できない…」
「………そうですか」
「それが普通ですが、例外が私の目の前に1名、そしてもう1名居ますからね。物理的にはどうしようもなくとも、やり方は他にある筈です。次元の屈折、世界の切断、空間の歪曲…他にも様々。……虚、貴女の刀と神秘、そして我々の技術があればそれを引き起こす事が可能かと。まぁ、当然時間は必要ですが」
急にスケールが大きくなったかのように感じるが、黒服がやれると言うのならやれるのだろう
「分かりました、なんでも協力しましょう」
「時空の流れが違う可能性…いえ、必ず時間にズレが発生するでしょう。此方にとっての一ヶ月や二ヶ月があちらにとっては1日…などですね」
「それも理解しています。…長居は危険過ぎる」
最大限長くても2日。もしくはそれ以下で戻る必要がある
「長くとも一ヶ月で仕上げましょう。私も色々と試行錯誤しなくてはなりません。それに…私達の世界にも、脅威が着実に迫ってきている。それより前に虚には戻ってきて貰いたいので」
「…そうですね」
そう、脅威は迫っている…
これだけ派手に異常事態が巻き起こっているから、色彩に見つからない道理は無い
ベアトリーチェも、結局色彩を利用しようと干渉していたようで…
ですが、先生の私が必ずなんとかするでしょう
その点に関しては信頼しかありません
「生徒達に関しては、先生の私が護るでしょうけど…黒服達も気をつけてくださいね。何が起こるか、分かったものではありませんから。最悪、先生の私に助けを求めるべきです。助けを求められれば……まぁ、見捨てる事はしないでしょうし」
ため息をついて生徒を絶対に傷付けない事を条件に受け入れるでしょう
………多分。そこまで頑固ではない筈です
「………そうですね」
若干不安そうな黒服
なんだか最近は感情が読み取りやすくなりましたね
私が慣れたからか、黒服が分かりやすくなったのか
取り敢えず、私は感謝の言葉を伝える
「……本当に感謝します、黒服。先生の私に黒服の善行をアピールしておく事にします」
「クックック…えぇ、是非そうしてください。さて…虚、貴女には今日からやってもらう事があります」
「ふむ…なんでしょうか」
「剣術の果てに至る事ですね。今回はズルをして擬似的にですが」
「………はい?」
剣術、それは極めれば魔法に足を突っ込めるとんでもない技術…………
大人サオリが居た世界の先生の性別どっちがいいですか!
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男性!!!!!!!!!!
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女性!!!!!!!!!!