シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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帰ろう、そしてまた明日へ

 

「……ひ、姫って…!急に何よ!?冗談やめて!ぶ、ぶん殴られたいの!?」

 

顔を真っ赤にしてそう叫んでいるセリカ

また怒らせてしまった…

 

「…すまないセリカ…流石にもう少し場を選ぶべきだった、殴られると恐らく私は死にかねないからやめてくれ…」

 

躱せればいいがこの身体で当たれば無事で済む気がしない

そんな風にセリカと話をしていると、ホシノが戻ってきた

 

「うへ〜、元気そうじゃん?無事で何よりだよ〜」

 

「ヘルメット団は……逃げたか」

 

「うん、痛い目も見てもらったし、もう懲りてくれるといいんだけどねぇ〜」

 

アヤネも車から降りてきた

セリカの無事を確認すると、涙ぐみながら話す

 

「セリカちゃん…!本当に良かった…私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって……」

 

「アヤネちゃん……うん、ごめんね…」

 

抱きしめ合って泣いている二人を前に、安堵の感情が湧いてくる

本当に手遅れになる前に救い出せて良かった

5人しか居ない学校の、たった1人の同級生だ。本当に大切な友人なのだろう

 

「真っ先に異変に気がついたのはアヤネだったな。私達に迅速に連絡を取ってくれて助かった。お陰でこうして手遅れになる前にセリカを取り戻せた」

 

「ん、アヤネ、ナイス」

 

シロコがアヤネにぐっ、と親指を立ててサムズアップする

 

「い、いえ…私は、私1人では…何もできなくて…先生達に助けを求めることしか…」

 

ごしごしと目を擦り、涙を拭うアヤネに、私は伝える

 

「アヤネ。助けを求める、人を頼る、というのは大切な事だ。一人で全てが完結している人間なんてほぼ居ない。私もこうして皆の助けを借りなければセリカを取り戻す…というのはかなり難しい」

 

脳裏に思い浮かんでいるのは、私の事

エデン条約の件で失敗し、姫も守れず、ミサキ、ヒヨリとも散り散りになってしまった

そして、藁にも縋る思いで…先生に助けを求めた

あれが、私のターニングポイントだろう

ヒヨリ、ミサキ、ミカ。そして先生の力を借り、私達は姫を救い出す事に成功した

一人では、到底不可能だっただろう

私は学んだ。今度は伝えよう、先生として

 

「何も一人で完璧である必要はないんだ。足りない部分は仲間に補ってもらえば良い。アヤネ、君には頼れる先輩達も、同級生も居るし、私もついているからな。私達への連絡は迅速で、適切な対処だったと私は思う」

 

「そうよアヤネちゃん!自信を持って!アヤネちゃんのお陰で私は助かったの!ありがとう!」

 

「……うん!どういたしまして!」

 

にっこり笑いつつセリカにそう言うアヤネ

伝わったようで何よりだ

仮面の下で笑みを浮かべつつそんな光景を眺めていると、突然セリカがこっちを向いた

 

「アヤネにはもう言ったけど、勿論、先輩達も…あと…その、先…生も、あ、ありがとう!」

 

「ん、当然の事」

 

「うへ〜可愛い後輩が襲われた〜だなんて放っておける訳ないよね〜」

 

「うんうん、その通りです☆」

 

「礼は要らない、セリカが無事ならそれが一番だ。さて…皆、徹夜で疲れただろう?帰ろうか」

 

皆笑いながらセリカにそう返答し、私は車に乗り込む

 

「そうだね〜帰ろうか〜」

 

「早く乗ると良い。帰りは私が運転しよう」

 

運転免許もしっかりあるし前の世界でも講習は受けているからな

そうして私達はセリカを無事救出し、目的を達成してアビドスへと戻ったのだった

 

「それじゃ、また明日〜」

 

最後に校門から出ていくホシノを見送り、姿が見えなくなる

今日は自由登校日だし、皆疲れているだろうからほぼお休み…と言って良いだろう

 

「終わり、だな。さて…私も…っ……」

 

シャーレに向けて歩き出そうとしたその時、突然足に激痛が走る

思わず膝をつき、起き上がろうと力を入れるも、今度は疲労感がドッと押し寄せ、一歩も動ける気がしなくなる

 

「っ…少々、無理をし過ぎたか……」

 

こうなるのも正直当然だ。アビドスまで全速力で駆け抜けた時点で体力はほぼ底をついていた

どうにか今までは根性で保たせていたが…

 

『せ、先生!?大丈夫ですか!?いえ、大丈夫じゃありませんね!?ど、どうしましょう…!』

 

………アロナの声が遠く聞こえる……

意識に雲がかかったように思考が纏まらない

少し…休んでから……戻るとしよう………

私はそのまま地面に倒れ込む

 

「ちょっと、寝る…だけ……だから…………」

 

『そんな所で寝たら風邪を引きますよ!あぁでも…先生はもう動けませんし……!』

 

「……慣れている…大丈夫だ…はは……懐かしい、感覚だな……冷たい地面に、熱を奪われながら眠りに落ちるのは………」

 

尋常じゃない程に重い瞼が視界を暗転させ、私の意識は闇へ沈んだ

 

 

─────────────────────

 

 

夢を見た

 

「おかえり、サッちゃん」

 

「あ、サオリ姉さん。お帰りなさい。このプリン、すっごく美味しいですよ!」

 

「ん、おかえり。コンビニでなんか美味しそうなスイーツ見つけたから皆の分も買っておいた。そこにあるから好きに食べていいよ」

 

そうか、有り難く頂こう

 

「それで、今日もお話聞かせて?どんな事があったのか、どんな人と会ったのか」

 

あぁ、そうだな。今日は…………今日、は…

 

「うん、何があったの?」

 

先生に、なって……生徒を一人、助けられたんだ

 

「……そうなんだね。先生になったんだ」

 

「へぇ、まぁ…サオリ姉さんなら似合うだろうね」

 

「……前は想像できない、とか言ってませんでした?」

 

「昔の話でしょ。今は実際、想像しやすい程に先生に似てきてるんだから」

 

「それもそうですね……」

 

私は……………

 

「サッちゃん。まだ、やる事があるんでしょう?」

 

……あぁ、そうだ

 

「ほら、行った行った。途中で放棄する、だなんてそんな事させないし、しないでしょ?」

 

あぁ、途中で放棄なんてしない

 

「サオリ姉さん、私達も応援しています!」

 

そうか………ありがとう…

 

「振り返らないで。前を向いて。出来る事を全力でやって、『それでも』と足掻いて。進み続けて」

 

全ては虚しい…全てはただ虚しいもの…だったとしても。それでも。私は、私達は今を生きている

 

「行ってらっしゃい、サッちゃん」

 

「「行ってらっしゃい、サオリ姉さん」」

 

……行ってきます、皆

 

私の大切な…家族達

 

 

─────────────────────

 

 

 

「………夢…」

 

辺りを見渡す。見知った天井だ

私の部屋…………か

 

「…!先生、お目覚めに……先生…?泣いているのですか……?」

 

「わ、ワカモ?どうして…って…私が、泣いて?」

 

気付くと、食事をする時開く部分が開いていて、私の頬を涙が伝っていた

 

「呼吸しやすいように……と思い、勝手ながら開けさせて頂いたのですが………な、何か…怖い夢とか…苦しい夢とか…見たのでしょうか…?」

 

「………いや、とても……幸せな夢だったよ」

 

あぁ……本当に、幸福な夢だったとも

花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)

  • だめです!!!!!!!!!!!!
  • いいよ!!!!!!!!!!!!
  • 本編の順番通りがいい!!!!!!!!!
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