あの阿鼻叫喚から1時間後
エンドロールが流れるゲーム機と画面の前で倒れるアリス。サラ先生は30分程前に既にダウンしている
「こ、ろ、し、て…………」
「ばにたす……ばにたーた…む…」
そんなサラ先生を尻目にモモイがアリスに抱き着いて言う
「凄いよアリス!開発者が二人もいるし、先生もいるとはいえ、三時間でトゥルーエンドなんて!」
「いやいやいやお姉ちゃん!アリスちゃんもやばいけど…!その先生がなんか…なんか分かんないけど多分やばいよ!」
サラ先生はクッションに倒れたままうわ言のように何かを呟き続けている
「えとおむにあばにた───」
『今更あなたが虚しさ語るの辞めて下さい、しかもこんな事で』
突如、何処からか飛来した刀の鞘がサラ先生の頭にカーン!と命中し、勢いのままバウンドした鞘は漆黒の中に消えていった
「…え!?何!?せ、先生大丈夫ですか!?」
「いっっっっ……っは…!私は今まで何を…!?」
「お、起きた…良かったです先生、大丈夫ですか?」
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………最悪な夢でも見た気分だ…
2つの意味で頭が痛い………
私は何をしていたんだったか……?
確か、アリスにゲームを…………
あぁそうだ、テイルズ・サガ・クロニクル…を…
うっ…ぐ……………
頭が…………
「先生、大丈夫ですか…?」
「……あぁ、大丈夫だ。心配してくれてありがとうミドリ。アリスは……そうか…クリアしたんだな…」
画面には、エンドロールが流れている
私は…中盤辺りからもう記憶が無い
こんな事は思いたくもないのだが…まぁ…正直…酷評されても仕方ないとしか言えない出来だった…
無駄すぎる初見殺しに、負けイベントに見せかけた強敵三連続…テレポート機能すら無いのに、終盤に頼まれる最初の町までの強制おつかい任務…そして、モモイの文章力によりなにか少しズレているNPCの発言やテキスト
これを楽しめるのは本当に一握りの……一握りも居るか…?
ゲームがほぼ未経験の私でも序盤で違和感を覚えたのだ、普段からやってる人達なら尚更…
モモイ達が言っていたゲーム用語はアロナに解説してもらいつつなんとか覚えていったのだが、どれも本来の使い方とは少しズレている感覚がする
斬新さを追い求めた結果だと言っていたが…
よく使われるもの、というのはそれ相応の理由がある。武器だってそうだ
利便性だったり、威力が高かったり、多くの人にとっての好みに該当する…だったり。無駄に外してしまうのは少し…勿体無いと感じるな
「さ、さっき何処かから棒…?みたいなのが飛んできて…先生に直撃しちゃってましたけど…」
棒?と思いつつ周囲を見渡すと、天井の隅に一瞬だけ漆黒の揺らぎが見えた気がする
「……あぁ、少し頭を打っただけだろう。私は大丈夫だ」
虚には情けない姿を見せてしまった、正気を取り戻させてくれた事も含めて今度礼を渡さなくてはな…
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「休憩時間とはいえ、暇だったので見てみれば…はぁ、たかがゲームで何を大袈裟な…まぁ、先生の私とはいえ…根付いたものはそう簡単には消えませんか」
虚は先生に投げた鞘を逆の方向からキャッチし、漆黒から引き出す
「先生がどうかしましたか?」
黒服がそう聞いてくるのでため息をつきつつ返答する
「テイルズサガクロニクル…?とかいうゲームをプレイ…いや、見ていたのでしょうか。まぁ、兎に角それを見るかプレイしてダウンしてましたよ。叩き起こしましたけど」
「………テイルズ・サガ・クロニクルですか…それは…仕方ないと思いますよ……」
「なんです?あれを黒服もプレイした事が?」
虚の質問に頷き、黒服は遠い目をして言う
「進行度半分で力尽きました」
「……えぇ…」
「虚もやりますか?一応まだ持っていますよ」
「………いや、遠慮しておきます…」
テイルズ・サガ・クロニクル…先生の私に虚しさを思い出させ、黒服が諦めるレベルとかどれだけなんですか、と虚は少し恐怖した
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「…そうだ、アリスの言語機能はどうなった?」
本来の目的はこれだ、テイルズ・サガ・クロニクルをプレイする事ではなかった
「あ、それは結構良い調子かもしれません、アリスちゃん、ゲームをプレイしているうちに喋り方がどんどん多彩になってきてて……」
ひょこっとアリスがミドリの隣に出てくる
「勇者よ、汝が同意を求めるならば、私はそれを肯定しよう」
ゲームからそのまま切り取ったかのようなセリフだ
まだ自然に…とはいかないか
「………ふむ、なるほど…まだ1つ目だからなんとも言えないが、言葉の習得は可能…と。このままの調子でやっていればまぁ…なんとかなる…か…?」
アリスは未知の部分が多すぎるから本当になんとも言えないのが現状だ
なんとか普通に会話が出来るレベルまでは言葉を覚えてほしいが…
そう考えていると、モモイがアリスに話しかける
「それで、アリス…!わ、私たちのゲーム、どうだった?面白かった?!」
ミドリも結構気になっているようだ、アリスの方をチラチラと見ている
「……………………………説明不可」
たっぷりと思考……演算か?した後に、アリスは真顔でそう答えた
「え、えぇっ!?なんで!?」
…なんで…とはそれは……いや、やめておこう…
私は口を閉ざし、見守りに徹する事にした
「類似表現を検索……………ロード中……」
「わ、悪口を検索してるんじゃないよね……!?」
モモイとミドリが息を呑んでアリスの言葉を待つこと数十秒後、アリスが口を開いた
「………面白さ、確かに存在。プレイを進めれば進める程…まるで、別の世界を旅しているような……夢を見ているような、そんな気分……もう一度……もう……一度……………」
アリスの瞳からポロポロと涙が出てくる
私とモモイ、ミドリは驚くが、私は二人と少しばかり違うベクトルで驚いていた
………泣く、という機能まで備わっているのか…
本当に、私達はとんでもないものを発見してしまったのかもしれない
「あ、アリスちゃん、どうして泣いてるの!?」
ミドリはあわあわとし始めるが…
「決まってるじゃん!それぐらい、私達のゲームが感動的だったって事でしょ!」
モモイはそう言っていた
モモイの圧倒的ポジティブシンギングは見習わなくてはいけないかもしれない…
「い、いくらなんでもそれは…というかこのゲーム、ギャグ寄りのRPGのはずだし…」
流石にミドリは冷静のようだ
ふむ…アリスが何故泣いているのか………か。
…もしかして、ゲームクリアがとんでもなく辛かったから─いや待て、私。それは流石に失礼だろう私。ゲーム開発部だって頑張ってこのゲームを作ったのだから流石に…いや、でもこれは……
黙りながらグルグルと思考していると……
モモイがアリスの手を握り、ぶんぶんと振っていた
「ありがとうアリス!その辺の評論家の言葉なんかより、その涙の方が100倍嬉しいよ!あー、早くユズにも教えてあげたい…!」
いや、本当に凄いな、モモイ………
過去の経験からか、どうしても割とネガティブ寄りな考え方をしてしまう私では到底真似できない…
すると、ギィ…という何かが開く音がした
「………ちゃ、ちゃんと、全部見てた…」
消え入りそうなか細い声も聞こえる
小柄な赤髪の生徒がロッカーから出てきた
おや、もしかして……
「ユズ!」
モモイがそう言う
なるほど、やはり彼女がゲーム開発部の部長、花岡ユズか
廃墟から帰ってきた後、人の気配を薄っすらと感じていたが……ずっとロッカーの中に居たのか…
というか、薄っすらと気配を感じていたとはいえ私でさえ位置の特定までは出来ないとは…
私がユズを見ていると、目が合ったが、「ひっ」と声を漏らされつつ爆速で顔を逸らされた
……怖がりの生徒にこの仮面は流石に怖さを爆増させてしまうだけなようだ
…どうしたものか……………
サオリが仮入部する所どっちがいいですか!!!!!!
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正義実現委員会!!!!!!!!!!!
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シスターフッド!!!!!!!!!!!