シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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【踏み出す一歩】

「……1枚噛ませろ…と言われましても。私はあなたの事を微塵も知りませんし…信用以前の問題ですよ」

 

私は冷静にそう返す

正直ムラマサが害になるとも思っていないし、好意的に思っている…とまではいかないとしてももう少し話をしたいと思ってもいるが、それとこれとは話が別だ

ムラマサは私の返答に苦笑いを浮かべる

 

「ま、そうなるよなァ…よし、なら儂の事について洗いざらい話すとするか」

 

よっこいしょ、とムラマサはあぐらをかいて座る

 

「…いえ、そういう問題では…」

 

「ンだよ、知らねぇのが問題なんだったら知ればいいだけだろ?」

 

ムラマサは少々頑固な所があるようだ

とはいえ、ムラマサについて…というのは気になる

 

「………はぁ、まぁ…最終的な決定権は此方にありますし、取り敢えず話すだけ話して下さい」

 

「応!…と、言ったは良いものの…正直に結論を言えば単純に学校に登校もせず、こんな山奥でずっと刀打ってる生徒…ってだけなんだよなァ。あぁいや、今も生徒として数えられてるかは知らねぇし知るすべもねぇがな」

 

頬をポリポリとかいてそう言うムラマサ

登校もせず……今も百鬼夜行の生徒と見なされているかは先生の私に聞けば恐らく分かるでしょう

されていたとしたら、恐らく留年しているのでしょうし…

 

「その辺は私にツテがありますし、後ほど確認しておきますよ。…では、そうですね…何故私に協力しようと思ったんです?」

 

嘘をついている素振りも無いのでそう質問をしてみる

ムラマサは私の質問に答えてくれた

 

「簡単に言えば、利害の一致ってやつか?それとと、儂の為だな。……怒らないでくれよ?…なんだかなぁ…虚の姉ちゃんの事をなんか放っておけねぇって思っちまったンだよ」

 

利害の一致…というのもあまりよくわからないが、後者の二つも理解が出来ない

 

「………同情は要らないと言いました」

 

私がそう言うと、ムラマサはため息をついて話し出す

 

「阿呆、あんなモン見せられて同情せずに居られるかっての。儂はただ、久し振りに話が合う姉ちゃんを見つけて、話してみればその姉ちゃんが自殺紛いの事をしようとしてやがると来た。話を聞く限りじゃ、儂なら力になれると確信して、儂のやりたい事とも一致している。だからこうして協力させてくれ、と頼んでンだ。さっきも言った通り、同情もあるかもしれねぇが、儂の為…ってのも大きいんだよ。儂は聖人じゃねぇ。聖人じゃねぇが、知り合いに…それも、珍しく話が合う姉ちゃんに死なれちゃ目覚めが悪いだろ?幸運にも出来た良い縁だ。大事にしなきゃ勿体ねぇよ」

 

少々粗雑でぶっきらぼうな所があるのかもしれないが、ムラマサは結構なお人好しらしい

ムッとした顔でそう言い返してくるムラマサに私はどう返すべきか分からず、私は黙ってしまった

 

「………」

 

「…儂もこんなに刀について話せるのも久々でなァ。独りってのも静かで集中出来るから悪くないが、話が合うヤツと喋れば気分も高揚するってモンだ。……よっし、鍛冶場を案内してやらぁ。儂に出来る事を証明するのにはそうしねぇとな」

 

にっ、と笑ってムラマサは立ち上がる

続いて私も立ち上がり、私達は隣にあるムラマサの鍛冶場へ向かった

鉄を溶かす為であろう炉に、金床と槌。様々な種類の近接武器が所狭しと並べられている

そして結構熱い

汗一つかいていないムラマサが私に向かって言う

 

「此処が儂の鍛冶場だ。自由に見て回って良いが、炉にはあんま近付くなよ?白い肌が焼けちまうからな」

 

「私の再生、見ましたよね?火傷程度は即座に治ります」

 

「だとしても虚の姉ちゃんは生娘に変わんねぇだろうがよ、なら対応も変わんねぇよ」

 

そんな事を言うムラマサ

彼女も喋り方と素振りが男勝りなだけで十分白い肌をしているし、普通に女性だ

 

「…ふっ、なんですかそれは。それを言うならあなたもそうでしょうに」

 

「儂は鍛冶師で、慣れてるから良いンだよ」

 

ムラマサは目を逸らしながらそう言った

そんな会話をしつつ、私は周囲を眺める

様々な種類の武器が視界に映る

なるほど、刀鍛冶…というのも内包している、鍛冶師…しかし、遠距離武器はあまり無さそうだ

強いて言えば投擲できるナイフのようなものぐらいだろうか

 

「刀は勿論、金棒に槍、片手剣……これは…」

 

「そいつは薙刀だな。見ての通りの長柄武器だ。槍の射程と刀の鋭さ、中々良いモンだろ?単純に扱うとなると簡単だが、使いこなすってなると中々厳しいもんがあるがな」

 

「あなたが造るのは刀だけではないのですね」

 

どれも精巧で、造りが良いのが理解できた

持ちやすく、振るいやすく、程々の重量を保ちながら重すぎず…絶妙なバランスで出来上がっている

 

「そうだな。刀一筋の頃もあったンだが、他の物も作ってみりゃあ、参考にできる部分もあったんだよ。そっからは色々と造ってるぜ」

 

ふと、台座に飾られた刀が視界に入る

その刀は、他の刀とは確実に違う気配を放っていた

 

「ん?あぁ…それは儂の愛刀だ。一心不乱に休みもしねぇで刀を打ち続けていた時期があったんだが…気付けば出来上がってたんだよな」

 

「……えぇ…」

 

苦笑いを浮かべつつムラマサは続ける

 

「どうやって打ったのか、今の儂でもさっぱりだ。とはいえ…儂が打った刀って事だけはしっかりと理解できるときた。おかしな事もあるもんだよなァ…ま、キヴォトスじゃなんでも起こり得るってのはそうだけどよ」

 

「……あぁ、あなたの神秘の影響かもしれませんね」

 

「神秘?虚の姉ちゃんはなんか知ってるのか?」

 

首をかしげるムラマサ

何故だろう、私は…ムラマサなら何を話しても大丈夫…等と感じてしまっている

…彼女がここまで色々と話してくれたのだから、私からも…話しておくべきだろう

そもそも、嘘をついても鍛冶師としての勘とやらで見透かされそうだ

 

「先に謝っておきます、すみません。…知名度は無いので伝わらないだろうと先程は伝えませんでしたが、ごく小規模の研究組織…のようなものに私は所属しているのです。正式なモノ…と言っていいかは分かりませんけど。あと、これから話すのは憶測なども含まれていますし鵜呑みにはしない方が良いかと」

 

私がそう言うと、ムラマサは納得したような表情をする

 

「へぇ、研究組織か。儂が知らねぇ事もそりゃ知ってるわな。取り敢えず説明してくれ」

 

うんうん、と頷くムラマサ

 

「キヴォトスは不思議が山程ありますし、私も新参ではあるので分からない事だらけです。…話を戻して…神秘……というのはヘイローを持つ生命体…基本は生徒でしょうか。まぁ、今はその生徒が持っている特異性…と認識してもらって構わないでしょう。……私の不死も、それの影響です」

 

「儂にもそれがあるって事か?」

 

首をかしげてそう聞いてくるので肯定する

 

「えぇ、とはいえ…経験に裏付けされてかは分かりませんがかなりの精度を誇るモノに変質していますけど。あなた、熱に強い…とか、そういうのはありますか?」

 

鍛冶場の熱気にあてられ、私の身体からはじんわりと汗が出てきているのだが、ムラマサは特段そういった様子はない。私の格好より厚手な着物のまま、汗の一粒も無く鍛冶場に居座っている

 

「応、確かに鍛冶場を熱っ苦しいとこだと感じた事はねぇな。多少の溶けた鉄なら、なんともねぇや」

 

「なるほど…恐らくあなたの身体は鍛冶師として最適化されているのでしょう。経験と、神秘。この二つが混ざり合う事であなたは鍛冶師としてかなりの適正と技量を発揮しています」

 

「へぇ、そういうモンだったのか。ま、その神秘とやらに頼りっきりってわけじゃねぇなら良いか」

 

そう言って笑うムラマサ

自分の腕には誇りを持っているようだ

経験と神秘…この二つが一つの方向に一緒に向かうとこの様な事も起きうるのか…

思いがけない所で結構なデータが得られた

そして私は本題に入る

 

「ずっと気になっていたのですが。あなたはどうやって私を手助けしようと?」

 

「あぁ、そんな話だったな。そうさな…儂の目指す刀がどんなモンなのか、分かるか?」

 

そう聞いてくるムラマサ

 

「…どんなものでも斬れる刀、とかでしょうか」

 

武器を鍛造する者として、基本はこんなものだろう

とはいえ、ムラマサはそうとは思えないが…別に思い当たるものもなかったのでそう返す

 

「それも鍛冶師として、一つの到達点ではあるだろうな。儂はそれを目指してはねぇ。儂の目指す刀ってのは…」

 

ムラマサは、私をしっかりと正面から見据えて、言う

 

「『縁起を以て宿業を断つ。』殺す為の武器じゃねぇ。その刀は業を斬る。人を縛る呪いの如き因縁や宿命、それら一切から人を解き放つ無念無想の刃──それが、儂の目指す…最高の刀だ」

 

「…それは」

 

「儂はただ、刀を…ただ傷付ける為、ただ殺す為…それだけの為に造られるモンにしたくねぇ。人を救う刀だって有って良い筈だ。その為に、儂はずっと刀を打ってきた。ただ…ずっと独りで居たせいか、色々と鈍っちまったんだよ。段々、理想から離れていく。そりゃそうだ。人の為の刀なんだから、人と関わらなきゃ、必要とする人が居なけりゃ意味がねぇ。まぁ、これはさっき気付いた事なんだがな?」

 

ムラマサは苦笑しつつそう語った

 

「そんな儂の元に虚の姉ちゃんが来たんだ、こりゃ天命ってもんだろ?」

 

そう言って、にっこりと笑う

 

「───そう、かもしれませんね」

 

「お前さんの宿業を垣間見た時、それに気付かされたぜ。そう、これは礼も兼ねてんだ。だから、儂に刀を打たせちゃくれねぇか。虚の姉ちゃんの為に。必ず、お前さんの力になるからよ」

 

…ムラマサの目は真っ直ぐだ

目を逸らしたくなる程に、とても眩しい

数秒…場を沈黙が支配する

私は考え、結論を出した

他人を頼る、それは…以前の私が出来なかった事

…でも、今回は…ムラマサなら、きっと…

若干、震える声で私はムラマサに結論を告げる

 

「…分かりました。えぇ、あなたの理想も、信念も。刀鍛冶ムラマサ、私に力を…貸して下さい」

 

私のその言葉にムラマサは再びニッと笑い…

 

「応とも!儂に任せな!依頼されて刀造るのが刀鍛冶ってなもんよ!最高の仕事をしてやらぁ!!!」

 

そう力強く言ったのだった

オリジナル生徒について!!!

  • 全然出していいよ!!!!!!!
  • 出さない方が好きだよ!!!!!
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