「なるほど……ワカモがここまで運んできてくれたんだな。ありがとう。また助けられてしまった」
シャーレにある居住区。私の部屋で私とワカモは会話していた
「えぇ、驚きましたよ…突然連絡が来たと思ったら地図の座標だけ送られてきて…」
ふむ……座標を…
シッテムの箱をチラリと見ると、アロナがぐっ、と親指を立てて自慢気に胸を張っていた
「来てみたら私が倒れていた、と。誤操作でそうなってしまったのだろうが、私は運が良いらしい」
「そういえば、どうしてあんな事に?アビドスの生徒達に力を貸していたのは知っていますが…」
ワカモが不思議そうにそう問いかけてきたので事の顛末を語った
「つまり、疲労も体力も限界だった…と」
「そういう事になる。まぁ…緊急事態だったからな…」
ワカモがジトッとした目で此方を見ている
「ど、どうしたんだ?」
「疲労が限界なら、正直にアビドスの生徒達に言えば良いではありませんか。シャーレに帰らなくとも、アビドスに1日ぐらい泊まればよろしかったのでは?」
い、痛い所を突いて来る…
「…先生として、なんだか少し言い難くてな…」
「はぁ、それで私にこの惨状を見られているのでは本末転倒と言うやつです」
「ご、ごもっともで…」
生徒に情けない姿は見せたくない、でこれではワカモの言う通りでしかない
「はぁ、それで、体は大丈夫なんですか?もうここまできてますから、正 直 に、言って下さい」
「あ、あぁ…動いてないのに身体中が筋肉痛で目茶苦茶痛い。特に足だ。痛みが引くまで歩ける気がしない」
限界を無視して動き続けたのだ。機能するだけ運が良いだろう
「筋肉痛なら自然治癒を待つしかありませんねぇ。マッサージは逆効果…とも聞きますし…」
足が使い物にならないなら他で移動するしか無いな
「ふむ…松葉杖が何処かに…いっ…た…」
起き上がろうとすると痛みが走り思わず声が漏れる、そしてワカモに強く止められた
「今日は大人しくしていて下さいまし!」
ぐ…そこまで大変な怪我でも無いのだが………
「……分かった」
大人しくしているとするか……
この時間があるのなら一人でも多く生徒の助けになりたいのだがな……脆いこの身体を嘆くばかりだ
「なんですかその不本意そうな顔は」
「か、仮面で見えていないだろう」
「雰囲気で丸わかりです」
はぁ、とため息をついたワカモがそう言うと少し離れ、とあるものを手に戻ってきた
「痛みが酷い時は冷やすといい、と聞きましたので、氷です。ちょっとずつ痛みが和らいできたらストレッチなど軽い運動を行いましょう」
思わず感心してしまう
「詳しいんだな、ワカモ」
「少し前に調べましたので…別に凄いことではありません」
「知識とはそういう物だ。適切にその知識を使えるという事が大事だからな」
「……ありがとうございます。では、氷当てますよ」
私の足にタオルで包まれた氷が触れる
「……っ……これは、中々…」
物が触れるだけで痛みを感じる
見た目は普段と変わらないのにここまで痛いとちょっと怖くなってきた
前の身体、筋肉痛とは無縁だったからな…
「大丈夫ですか?」
「あぁ、この程度…なんともない」
若干、痛みが引いていくような気がする
「…何か食べたいものはありますか?私が買ってきます」
「ワカモが?それは大丈夫なのか?」
破壊活動…の方は我慢してくれると嬉しいが、普通に買い物に行くとして、ワカモが行くのは色々と問題が起こるのでは無いだろうか。一応、指名手配されているのだし…
「普段と違う服で、顔を隠さずに行けば大丈夫です。それで、何か食べたいもの、欲しいもの、ございますか?」
今欲しいもの……パンが食べたいな
「ふむ……では、下のコンビニでパンを2つ買ってきてくれないか?パンならなんでも良い」
お金を渡そうと財布を探す
あれ、何処に……あぁ、脱いだ上着のポケットか
困った、今私は動けない
「そんな事でよろしいのですか?では…」
「あぁ、待ってくれワカモ。私の上着に財布が入っている筈だ。それで支払いをすると良い」
「……先生、私のような者にそんな大事な物を貸して良いのですか?私、指名手配されているんですよ?」
そう言いながら妖しい笑みを浮かべるワカモ
ふむ…
「それがどうしたんだ?ワカモは私の友人だし、生徒だ。信じているし、ワカモなら大丈夫だろう?ほら、そこの上着のポケットだ。あ、ポイントもつけてもらってくれ」
「………はぁ、本当に、変な人ですねぇ…」
ため息をつき、私の上着から財布を取り出すワカモ
「では、行ってまいります」
「あぁ、任せた」
ドアが閉じ、ワカモの足音が遠くなっていく
さて………
「いっっっっっっったい………」
肺の中の空気を全て吐き出すように呻く。だいぶ我慢していた。正直に話はしたが、そこまで辛そうには見えていなかった…筈。平気そうに振る舞っていたが、正直のたうち回りたかったぐらいだ
そんな事したら更に痛みが増すだけなので大人しくしているしかない
『せ、先生……』
「あぁ、アロナ。言い忘れていたな…ワカモに連絡を送ってくれたんだろう?ありがとう」
『えへへ、あのままだと危険でしたから…!』
それはそうだ。あの時は頭が回らなかったが、過去とは色々と変わっている
慣れているのは前の身体だ。今は違う
「…いっ…はぁ…また鍛えなくてはな…」
体力をつけないといけない。筋力などは正直今の私には無駄に等しい
鍛えた私とその辺りにいる平凡な生徒……
(あはは…)
脳裏に浮かんだ平凡…平凡か?ファウスト…あ、いやヒフミが……?
他に平凡な生徒…コハルだろうか
鍛えた私とコハルで勝負になるかどうか
正直腕相撲で勝てる気はしない
「ただいま戻りました〜」
空いた時間にできるトレーニングを考えていると、足音と共にドアが空き、ワカモが帰ってきた
「おかえり、ワカモ。大丈夫だったか?」
「えぇ。パン2つ、でしたよね?」
差し出された袋にはクリームパンとクロワッサンが入っていた
2つとも結構好きな部類なのでとても嬉しい
「感謝する。2つとも好物だ」
「それは何よりです。財布もお返ししますね」
財布が手渡された
「あぁ、ありがとう」
財布を受け取り、上着に向かって投げる
スポン、とポケットへ入った
「いっっ……よ、よし、入った」
腕がとても傷んだ。油断していた…
「はぁ…無理をしないように、今日は私が見張っていますので。しっかり身体を休めて下さいね…」
「め、迷惑をかける………」
うん、大人しくしていよう……
花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)
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だめです!!!!!!!!!!!!
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いいよ!!!!!!!!!!!!
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本編の順番通りがいい!!!!!!!!!