シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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私の…やるべき事

 

暗闇の中、何かが……聞こえた気がした

 

【───貴女は───そう、そうなんですね】

 

【大丈夫です。私が───奇跡を───】

 

「なん……だ………?誰……」

 

その瞬間、脳裏にフラッシュバックする

 

【責任を─もの──いて───】

 

電車の中、向き合って座る誰かが居た

 

【あの時──は分かりま──したが、─理解で─】

 

ずっと響き続けるノイズのような物に邪魔されあまりしっかりと声が聞き取れない

 

【大人と──、責──務。そして、その延長線上──あなたの───】

 

口は動かせない。いや、体全体が、動かない

目は開いているが、足が少し見える程度

 

【───意味する───】

 

ノイズが、途切れた

 

【ですから、■■】

 

【私が信じられる大人である、あなたになら】

 

【この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を───】

 

待て、誰なんだ……何が……起こって…!

 

【今度は貴女が───救って下さい】

 

今度は、目も開けていられない程の光が私を包み、再び意識を手放した

 

 

 

耳に人々の営みによる喧騒が響く

 

「……駅…?戻って…来たのか……?」

 

人混みの中、外へと進む

体を動かす度に…何かははっきりとわからないが、何か違和感が…

ふとガラスに反射した自分を見る

 

「……ヘイローが…無い……?」

 

普段と変わらない私の格好、私の服、私の体

生徒だった頃から身長は少々伸びた、大人の私

しかし、異常が1つ

私の頭上に浮かんでいる筈のヘイロー。それが、無くなっていた

次に目についたのは首に下げている、名札

 

「名前は……【月司サラ】……誰だ?」

 

しかし、妙に親しみを覚える響きの名前だった

そして、見知らぬバッグを持っている事に今更気がつく

携帯に……その他数々の日用品

私がいつも使っていた銃……はいつの間にか持っていた

大切な物なので安堵する

そして…顔全てを覆うサイズの、マスク

 

「これは姫の………いや、少し違う…か。これは……いや、ここは……何なんだ……?」

 

携帯を開く。どうやらかなり新しい物のようで、基本のアプリに、モモトークが入っているぐらいのシンプルなものだった

誰かの物だったら申し訳無いな…とは思いつつ、モモトークを開いてみると、連絡先が一つ

 

「七神リン…?」

 

何故連邦生徒会の………?

と思いつつ履歴を遡ろうとした私だったが、携帯が震える

電話だ。かけてきたのは、七神リン

どうしようか、と考えるが、情報が無さ過ぎる

もし誰かの持ち物だったとしたらこれを預ける必要もあるし、大人しく投降しようと考え電話に出る

 

『連邦生徒会の七神リンです。先生、そろそろ着いた頃でしょうか。迎えに行きます。北の出口で待機していて下さい』

 

思考が止まる

せ、先生?この持ち物の元の持ち主は、先生なのか?

 

「せ、先生…?いや、すまない、私は……」

 

『はい?今日からシャーレの先生となる月司サラ先生…ですよね?』

 

「あぁ……え?」

 

名札の名前……か

私は一体どうしてこれを………?

ふと時計が目に入り、日付が確認できた

 

『……?取り敢えず、北の出口で少々お待ちを』

 

そう言って切れた電話

携帯の機能を使い、カレンダーを開く

 

「…………数年前……!?」

 

私が過去に居るとでも言うのか……?

この時期、私は本来……アリウス……?

私は………どうなっている…?

何も分からない。取り敢えず、七神リンに言われた通り、北の出口を目指そう

 

外へ出ると、普段の町並みのキヴォトスが視界いっぱいに広がる

 

「……この辺りはこの前、温泉開発部の破壊活動により封鎖……していた筈。やはり過去に……?」

 

考え込みつつ、再びバッグを漁る

 

「このマスク……いや、仮面…?妙に…」

 

不思議な魅力を感じるその仮面を顔に装着してしまう

付け心地が良い。前は見えるし、声も発せられる

なんなのだろうか、と思いつつ外そうとすると、声がかかった

 

「その仮面、サラ先生……ですよね?」

 

「あ、え?」

 

「こんにちは、連邦生徒会の行政官、七神リンです」

 

先程の電話の主だ

 

「いや、私は……私………は……?」

 

私は月司サラという存在ではない。存在ではない筈……なのだけれど、私の………名前は…?

なんだ?思い出せない?姫は、ヒヨリは、ミサキは、アズサは、私の事をなんと呼んでいた?

記憶にある私の事を呼ぶ彼女達の事を思い出そうとするが、ノイズがそれの邪魔をする

 

「ぐっ……あぁ………ッ!」

 

思い出せない。覚えている筈なのに、私は…月司サラではない、無いのに。

それでも尚、思い出そうと記憶を漁る私は突然の激しい頭痛に襲われ崩れ落ちる

 

「先生!?どうしました!?」

 

苦しむ私を見た七神リンは慌てて救急車を呼ぼうとする

 

「私は……ッ!!!」

 

更に激しくなる頭痛の中、更に思考は巡る

誰がやったのか、一体何が起こっているのか

あの穴は、何なのか

 

【今度は、貴女が───救って下さい】

 

脳裏に突然響いたその声

その瞬間、わからない事だらけの私は、やらなければいけない事を理解した

 

「先生………か」

 

先生として、大人として、生徒に教え、生徒を導く

責任を負い、生徒達の為の先生として、存在する

奇跡を起こし、私さえも救ってくれた……良い大人

そうか、そうだな…

 

「……っ…すまない、もう大丈夫だ、リン。ちょっと、乗り物酔いが酷かっただけだ」

 

立ち上がり、そう声を掛ける

 

「ほ、本当ですか…?少々、休んだ方が…」

 

「いや、大丈夫だ、心配は要らない」

 

「そ、そうですか…なら…」

 

先生に救われた私は、大人となり、答えを知った

その後の私は、前を向いて生きていた

この世界にはまだ、先生が居ないのだろう

ならば、教え、導かなくては

先生から教わった全てを、私が

それが私が此処に送られた理由、私の意味

理解し、決意すると同時に、ふと、私の本来の名前が思い出せた

が、この名前を使う事は…無いだろう

ここにもきっと、アズサ達は…錠前サオリは、居る

『私』と同じ名前は、私を知る人を混乱させてしまう事になる

顔を隠す仮面に、名前。声も仮面のお陰で本来の声とは少々違って聞こえる

これを用意した人が誰だか知らないが、感謝しよう

私はこれから、錠前サオリでは無く、シャーレの月司サラ先生として悩み、苦しむ生徒を…守り、導こう

 

「行きますよ?先生」

 

「あぁ、よろしく頼む」

花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)

  • だめです!!!!!!!!!!!!
  • いいよ!!!!!!!!!!!!
  • 本編の順番通りがいい!!!!!!!!!
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