「ホシノ、無事だったか。良かった…怪我などは無いか?何者かに襲われたりしてはいないな?」
「うへ〜先生、心配し過ぎだよ〜ちょっと昼寝してて遅くなっちゃっただけ〜」
ホシノはそう言っているが……嘘、だろうな
…今追求しても仕方無い…か
「昼寝〜!?こっちは大変だったっていうのに!」
「ん、でもいっぱい倒した」
「ですね☆」
「ごめんごめん…それで、ゲヘナの風紀委員長ちゃん、これで対策委員会は5人揃ったよ。まだやる?」
空崎ヒナは…どう出るだろうか
彼女なら無駄な戦闘は避けると私は予想しているが…
「……小鳥遊ホシノ、1年の時とは変わったのね。まるで別人みたい」
「んぇ?私の事知ってるの?」
「情報部に居た頃、ちょっとね。あの事件の後、アビドスを去ったと思っていたけど……」
あの事件…?変わった…?
思わずホシノを見る
確かにホシノは、いまいち底が読み切れない。いつも飄々としているし…後輩想いなのは事実だが、何かを隠しているような気がする
「…………イオリ、チナツ、撤収準備。帰るよ」
ヒナが二人にそう声を掛ける
「えっ…ええっ!」
「…はい」
…良かった。やはり生徒達同士で争いたくは無い…
イオリは驚いていて、チナツは安堵した表情を見せていた
「ま、待って委員長!便利屋は……!」
ギロリとヒナがイオリを見る
「あ……う……」
イオリは固まって何も言えなくなってしまった
空崎ヒナが此方を向き、頭を下げる
「事前通達なしでの無断兵力運用、そして、他校の自治区で騒ぎを起こした事。この事については私、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して正式に謝罪する」
「……あ、頭を下げました…!」
皆そんな空崎ヒナの行動に驚いていた
「今後、ゲヘナの風紀委員会がこの場所に侵入することは無いと約束する。どうか許して欲しい」
やはり空崎ヒナは話が通じる…良い人だ
「その謝罪を受け入れよう。皆もそれで良いか?」
皆の方に振り返ると、全員頷いていた
「……感謝する。風紀委員会、全員撤収」
空崎ヒナは、そう言って去っていった
……ん?これは………
何か紙を落としていったのか…?
拾ってみると、書いてあったのは…
『シャーレの先生へ』
なるほど…
「……はぁ…一件落着、だろうか」
全員が、安堵のため息を吐く
「うへ〜先生、お疲れ様〜。皆を守ってくれてありがとね〜」
「気にするな。先生だから当然だとも」
………ヤバい。疲労感が凄い。頭も身体も限界か
いや、頑張れ私。もう少し、もう少し………
足がぐらつき、地面に膝をついてしまう
「「「せ、先生!?」」」
「……っ…だ、大丈夫だ。怪我などでは無い。ちょっと、体力の限界が来て……な…」
どうにか足に力を入れ、立ち上がる
そうか、なるほど。どうしてこんな体力切れを起こしてしまうのかが理解できた
前の身体と同じ感覚で身体を動かしているからか…
上限の値が下がりに下がっているのに消費はそのままなのは当然燃料切れが早くなる
「ん、先生。私が運ぶから、背中に来て」
「…い、いや、大丈夫だ。まだ歩けるから…」
なんだか最近は毎度の如くシロコに運ばれている気がするからな…
何処かで効率の良いこの身体の動かし方を理解しなければな…トレーニングもしっかりしなくては
「ほら、皆、学校へ戻ろう。そろそろ下校時間も近いからな」
はーい、と元気な返事を聞きつつ、私達は学校へ戻った
「さて……皆、本当にお疲れ様だ。柴関ラーメンの事は本当に残念だが…大将が無事だったんだ、それだけが不幸中の幸いだな。あの店については私からも色々と支援をするつもりだ。そして便利屋についてだが……こっちも、私がしっかりと叱っておく。できれば、皆に謝罪はして欲しいが…」
「謝罪なんてするの?あいつら」
「ど、どうだろうな…妙な部分が邪魔して素直に謝罪できない可能性はまぁ…ある…」
セリカの発言はごもっともだ
取り敢えず、色々と話してみようか
「さて…もう日も暮れる。数時間に渡って戦い続けたんだ、皆、ゆっくり休むんだぞ?では、解散だ」
皆の返事を聞き、全員が見えなくなるまで校門で手を振って見送った
さて……空崎ヒナから貰った手紙は……
『シャーレの先生、これはティーパーティーも、万魔殿もまだ入手してない情報だけど…あなたには、伝えておいた方が良いかもしれないと思って。カイザーコーポレーションは…アビドス砂漠で何かを企んでるわ』
……やはりカイザーか…困ったものだ…
前の世界でも多少関わった事があるが…正直、うんざりするような大人だらけだった
はぁ……とため息をつきつつ、歩き出そうとする
が、足に力が入らず前のめりに倒れてしまう
地面に衝突しようとしたその時
「ゔっ……」
「はぁ……先生。私、言いましたよね?」
後ろから服を引っ張られ、ギリギリで地面への衝突は回避された
声の主は勿論……
「……こ、こんばんは…ワカモ…ち、ちょっと息が苦しいんだが………」
「どうしてまたこんな事になっているんです?」
ちょっと怖い。いや結構怖い
「いや…その……まだいけそうだったから…」
正直まだギリギリシャーレに帰るぐらいならできると思っていたのだ
………見誤ったが
「はぁ……ブラックマーケットに行ったり…色々と解決したそうなのでちょっと目を離していたら今度はゲヘナの風紀委員会と争った後。どうなっているんですか?」
呆れ全開の言葉を投げかけられる
仕方無いだろう、生徒を守るためだったし…
「み、見てたんだな…いや、なんというか…その…不可抗力ってやつだ。うん…」
「……………」
狐のお面が近付いてくる
凄く、凄く睨まれている…………
「………すまなかった……」
「……全く、困った人ですねぇ。私の友人…なのでしょう?その…勝手に居なくなられては困ります」
ワカモが纏う雰囲気が少々、悲しげなものになる
「……そうだな、すまなかった。もうきっとこんな無茶はしない……」
「……本当ですか?」
「た、多分…………」
言い切るのは少し難しい。そうしなければ生徒を救えないとなれば私はきっと無茶をする
「はぁ…まぁ、良いです。帰りますよ」
ワカモに持ち上げられた
これは………
「おっ…と…お姫様だっこ…というやつか。やられたのは始めてだ。こんな感じなんだな………」
私がお姫様……似合わないにも程があるな
「私達と比べて貧弱な身体ですものねぇ。お姫様のように丁重に扱わなくてはいけませんし、あながち間違いではありませんわ」
「ハハ…冗談はやめてくれ、私と対極に位置してるようなものだろう。お姫様なんてものは」
「そうですねぇ。貧弱なのにこんなお転婆であっちこっち行って無茶をするお姫様だなんて考えたくもありません」
「いや…それは……その…すまなかった…」
そんな風に雑談しつつシャーレまで運んで貰った