月光が輝く夜、私は再びアリウス自治区へと向かっていた
「…………何してるんだ?」
「!?!?!?あ、か、仮面の人…」
アリウス自治区の周辺、以前別れた草むら付近で地面に倒れていたのは、ヒヨリだった
「あの…食べたキノコが…毒キノコだったみたいでして…頭がぐらぐらしてきたので…横に………えへへ…」
……何をしているんだ本当に
呆れつつも介抱する
「ほら、解毒剤だ。全く…そういうものを食べる時はしっかり判別をと言っ…誰かに教わっただろう?」
「うぅ…はい………」
ごくんと解毒剤を飲み、顔色が良くなっていくヒヨリ
「だ、だいぶ楽になりました…ありがとうございます…」
「それは何よりだ」
「…………あ、あの…」
恐る恐るといった感じで話しかけてきた
「あなたは……私達を…アリウスを……助けに…来たんですか?」
「………そうだな。今すぐに…という事は難しいが、いつか…必ず」
正直、今すぐにでも助けに行きたい。しかし、私一人では厳しいものがある
「なんだか…少し前から…アリウスが変わったんです……一人、また一人…嫌な大人が消えて……」
「………?」
あいつらが……消えている?
私の世界とは…細かな部分が違ったりするのか…?
「抗う事だって、許されています。もし、成功したのなら……アリウスを出て行く事だって…」
もしかして、ベアトリーチェでは無い…?
彼女がこんな事を許す筈がない
「でも、成功出来た人は殆ど居ませんでした。足掻いた所で無意味…【Vanitas vanitatum et omnia vanitas】だったから…」
救いを目の前に足掻いたとしても、最終的にその道が断ち切られれば…待つのは、底無しの絶望だけ
………そうだな。今の私ならともかく、昔の私なら確実に折れてしまうだろう
「……分かった、大丈夫だ。私が…お前も、お前の仲間達も、絶対に救う。待っていてくれるか?」
「…え、えへへ……はい、待っています……なんだか、あなたと居ると……昔を思い出して落ち着きます…リーダー……仲間思いの…姉さんに…似ているような気がして。でも、今のリーダーは……」
「……………」
私に……何かあったのか
ヒヨリの発言で分かった事は、この世界と私の世界が同じように動くわけではない…という大事な事
「毒はもう大丈夫そうだな?」
「は、はい…ありがとうございます…」
ヒヨリはもう大丈夫そうだったので、別れを告げようとしたその瞬間、足音が聞こえてきた
私は急いで物陰に隠れる
「…はぁっ…はぁ……ここに居たか、ヒヨリ」
………この世界の私だ。
「あ、リ、リーダー…」
「…探したぞ…何をしていた?」
「……毒キノコを食べちゃって…えへへ…体調を崩したので横になってました…」
「……っ…!今の体調は?どの種類のを食べた?ふらついて怪我などはしていないな?」
畳み掛けるように質問をするこっちの私
「だ、大丈夫ですよ、リーダー!怪我もしてませんし…もう毒もだいぶ抜けてきましたから。大丈夫です、大丈夫ですよ…」
「………そうか……わ、私は……ヒヨリさえ…皆さえ守れれば…それだけで……頼む、次は…しっかり気をつけてくれ…」
声が、震えていた
酷く弱々しい声だ
「…はい。ごめんなさい、リーダー」
どんどん遠のいていくヒヨリと私の声を背に、私もシャーレへと戻る
……何があった。私があそこまで…憔悴する状況…
正しいと思った道が…間違いだと突きつけられた時?いや、それだけでは無く……
その選択が、大事な人を傷付ける事に…なった時
ヒヨリは無事だったが……姫、ミサキ、アズサ
…この3人はまだ、見かけていない
嫌な予感が私を襲う
…………今すぐにでも動くべきなのだろうか
私は頭を悩ませつつ…、夜を明かすのだった