シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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さようなら

 

特に何の妨害も無く学校へと帰ってきた私達

教室に入り、私は机に突っ伏す

あいたっ……そうだった、仮面をつけていた

ノノミが心配そうに声を掛けてくれた

 

「せ、先生?」

 

「はぁ……やってしまった………」

 

苛立ちのあまり少々冷静さを欠いてしまった

うぐ………反省するばかりだな…

顔を上げつつ、皆に話しかける

 

「すまない皆、怖がらせてしまったな……あんな物騒な事を口走ってしまったんだ、怖がられるのは当然…だろうが……その、皆を…生徒達を守りたい、というのは私の…心からの本心なんだ。そこだけは…信じてくれると……嬉しい」

 

……言い訳だな。仮にも先生という立場だ。生徒達の前であんな言動はするべきじゃなかった

すると、シロコが口を開いた

 

「…うん、分かってる。先生が皆のためにあの言葉を言ってくれたって事も、先生の気持ちが本当だって事も。私は、あそこまで言い切ってくれる先生を信じる」

 

それに続けて皆も口々に言う

 

「うんうん!その通りです☆」

 

「た、確かにちょっと怖かったけど、でも、ああ言ってくれて多少スッキリしたわ!あいつはまだムカつくけど…!」

 

「今まで全力で手伝ってくれた先生を私達は信じます!」

 

「うへ〜結構格好良かったよねぇ〜これなら私が卒業したとしても安泰だなぁ〜」

 

「皆……」

 

………自分で思うより、私は皆に信頼されていたらしい。あぁ、嬉しいな。信頼に応えられるように…もっと……もっと…頑張らなくては

…最後のホシノの言葉に若干、シロコが反応を示していた。……シロコがホシノにあると言っていた用事……あぁ、そうか……なるほど…な

 

「………ありがとう、皆。私もその信頼に応えられるようにこれからも尽力しよう。一先ず…今からどうするかを決めなくてはな」

 

私のその言葉を聞き皆も眉を寄せる

「借金は増えた上に…1週間以内に保証金3億……

すまない、私のミスだ…少々軽率だった」

 

あんな感じの場はもっと慎重になるべきだった

私は慣れていないし、慣れていないとしたらもっとしっかり警戒をしておくべきだった

 

「いえ、元々私達に出せる手札はありませんでした。あれは…どうしようもない事だったと思います。それに、先生一人の責任ではありません」

 

アヤネにそう励まされる

 

「過去の失敗を嘆いていても…仕方ない…か。…今は一先ず置いておこう。まずは保証金3億円からだろうな……さて、どうしたものか…」

 

すると、突然シロコが立ち上がった

 

「行ってくる。あそこで何をしているか調べないと」

 

慌てて私はシロコを止める

 

「駄目だシロコ、危険過ぎる。先に借金の事を…」

 

「借金は、もう真っ当なやり方じゃ返せない。何か…別の方法を……」

 

……真っ当なやり方で返すのは…確かにもう不可能に近いだろう

 

「だ、駄目ですよ!それではまた…」

 

「私はシロコ先輩に賛成。だって、学校がなくなったら元も子もないじゃない!もうなりふり構っていられない!」

 

ノノミが止めようとするが、セリカもシロコに同意を示す

 

「そんな、セリカちゃん…!」

 

「セリカちゃん待って…!そんな事したらまたあの時と同じだよ…!」

 

「……そ…そういう意味じゃない…!だって…」

 

「あの時ホシノ先輩が止めてくれたのに自分から進んで犯罪者になるの!?」

 

「……わ、私は………」

 

私も口を開く

 

「……駄目だ。シロコ、セリカ。先生として、それは認められない。私は君達を犯罪者に…誤った道を進む事を黙認する事は出来ない」

 

何でも、どんな状況でも、私はそう在らなくてはいけないから。…生徒達が道を誤らなければいけないのなら私が……

 

「ほらほら、皆落ち着いて〜」

 

ホシノがそんな調子で手を叩いて場を収める

 

「頭から湯気が出てるよ〜?」

 

「ん……」

 

「……………」

 

「……すまない」

 

駄目な先生だ、生徒に諌められるとは…

深呼吸して気持ちを落ち着ける

 

「………ごめん、こんな風にしたいんじゃなかった」

 

「うん、皆分かってるよ。シロコちゃんも良い子だからね」

 

シロコが謝り、ホシノが返答した

 

「まっ、今日はこの辺にしとこう。一旦頭冷やして、また明日集まる事にしようよ〜」

 

ふと窓を見るともう日が落ちかけていた

 

「…そうだな。皆も疲れただろう。疲労が溜まった状態で良い案が出るとは思えないからな…」

 

「でしょ〜?じゃあほら、解散解散〜これは委員長命令って事で!」

 

そうして今日は皆家に帰ろう、という事になり、セリカ、アヤネ、ノノミが下校し…ホシノとシロコ、私はまだ学校に残っていた

 

「先輩…話があるの、ちょっといい?」

 

「うへ〜どしたのシロコちゃん。おじさんとお話したいの〜?照れるな〜」

 

「私も少々…聞きたい事がある」

 

「……先生も?うへ、おじさんモテモテだぁ〜」

 

そう言って飄々とした態度を崩さないホシノ

 

「でも今日は色々あったじゃん?また明日話そうよ〜大体何の話かは分かってるからさ〜」

 

シロコと顔を見合わせる

『後は私に任せて欲しい』という意思を込めて頷くとシロコも頷いてくれた

 

「……分かった。それじゃあ、また明日」

 

去り際に私にとある紙を渡して、シロコも教室から出ていった

やっぱり…そうなんだな……

 

「うへ〜先生やるねぇ?私の可愛いシロコちゃんといつの間に目と目で意思疎通できるようになったんだ〜?」

 

おちゃらけたようにそう言うホシノに私から話を切り出す

 

「ホシノ、聞いても良いか?」

 

「ん〜?何を〜?」

 

シロコから受け取った退部、退会届を見せた

 

「うへ〜!?いつの間に…!?これ盗ったのシロコちゃんだよね〜?全く、シロコちゃんだとしても先輩の鞄を漁るのは駄目でしょ〜先生、しっかり叱っておいてよ〜?あのままじゃとんでもない大悪党になっちゃってもおかしくないって〜」

 

動揺を見せつつもそう抗議してくる

まぁ…確かに勝手に鞄を漁るのは良くないな

だが、今はそれどころでは無い

 

「あぁ、勿論シロコは叱っておく。でも今は、この退部届について…聞かせてくれないか?」

 

真っ直ぐにホシノを見つめる

 

「逃がしては…くれなさそうだね〜」

 

すると、観念したようでため息をつくホシノ

 

「面と向かって話すのもアレだし…ちょっとその辺一緒に歩かない?」

 

「……あぁ、分かった」

 

私はドアを開け、ホシノと一緒に廊下へ出る

 

「けほっ、うわっ、ここも砂だらけじゃ〜ん…先生、砂を吸い込まないように…って、その仮面があったね〜」

 

「あぁ。呼吸は何不自由なく出来るが砂はあまり入って来ないからな。結構便利だ」

 

「うへ、凄い仮面だねぇ〜」

 

ジャリジャリと音を立てつつ廊下を歩く私とホシノ

 

「掃除しようにも、人数に対して大きすぎるから手が回らないんだよね〜しかも砂嵐はしょっちゅう来るからね〜折角の高校生活が砂色なんてちょっと勿体無いと思わない?」

 

「……ホシノは、この学校が好きなんだな」

 

そんな私の言葉にホシノは目を見開いた

 

「先生って、変な人だね〜………ま、ここでノノミちゃんやシロコちゃん、アヤネちゃんにセリカちゃんにも会えたから…うん…好きなのかもしれないな〜」

 

そう言いつつ、ホシノが空を見上げていたので私も窓から見てみると、夜空に一面の星空が広がっていた

 

「……先生、正直に話すよ。私は2年ぐらい前から変な奴らから提案を受けてた」

 

恐らく…カイザーの理事の発言からしてゲマトリア…なのだろう

 

「提案…か?」

 

「うん、スカウトというか……その変な奴は、私がその提案を飲めば借金を半分近く負担する…って。最初は廃校になるから、引き抜きしようとしてるのかと思ったけど、どうやら、PМCに使える人材を集めてるみたい」

 

ホシノがそう言う

………ふむ…借金の半分近く…アビドスにとっては破格の条件ではあるが…

 

「戦力が欲しいのだろうか…それともまた別の理由か…?」

 

「単純に考えると戦力が欲しいのだろうけどね…でも、その時は私がいなくなると、生徒会も…対策委員会も無くなっちゃうから断ってたんだ」

 

ホシノが正式な副委員長だからか…

……ちょっと待て。これは………

 

「ホシノ、少し待っていてくれ。少し用事を思い出した。5分で戻る!」

 

「えっ、あ、うん。わかった…?」

 

私はその辺の適当な教室へ入りリンへ連絡を取る

 

「夜分遅くにすまない、リン。今は大丈夫か?」

 

『いえ、お気になさらず。まだ勤務中ですので。それで、どうかなされましたか?』

 

「アビドスの件なんだが───」

 

説明を終え、リンへ可能か?と確認する

 

『はい、可能です。ではそのように。明日、手続きは終わるかと思います』

 

「感謝する、リン。今度何かお礼をさせてくれ」

 

『お気になさらず。では、私は仕事に戻ります』

 

これでよし………と

通話が切れて、上手く行った事を喜びつつホシノの元へと戻った

 

「すまないホシノ、遅くなった」

 

「うへ。ほぼ5分ぴったりだよ〜気にしないで〜」

 

「感謝する。それで…話を戻しても良いか?ホシノに提案を持ちかけたのは…何者だ?」

 

「私も、あいつの正体は知らない。ヒビ割れた顔…真っ黒なスーツに身を包んでる。私は『黒服』って呼んでる」

 

『黒服』………恐らく、ゲマトリアの一人…か

 

「なんとなくゾクっとする奴で…キヴォトス広しといえど初めて見たタイプ。でも、特段問題行動はしていなかった。あのカイザーも黒服の事を恐れてたみたいだけど……」

 

「なるほど……な。それで、この退部届はまさか…提案を受けようと───」

 

「うへ、違う違う。迷いが無かったと言えば嘘になるし、ちょっとした気の迷いだよ〜…そうだ、もう捨てちゃおっか」

 

そう言ってホシノは退部届をゴミ箱に突っ込んだ

 

「隠しててごめん、先生。でも、言ったら皆を不安にさせるだけだと思って……可愛い後輩達に隠し事したままってのも駄目だと思うし、明日しっかり話すよ」

 

手をパンパンと払いながらにっこり笑いつつ私にそう伝えてくれる

 

「………そうか。それなら…良いんだが…」

 

「正直言って、あの提案を受ける以外に方法は思いつかないけどね〜」

 

ホシノの言葉に私はすぐ返答した

 

「きっと、きっと何か方法がある」

 

「……そうだね〜奇跡でも起きてくれれば良いんだけど。……奇跡、かぁ…」

 

何処か遠くを見るようなその表情には陰りが含まれていた

 

「それじゃ、話す事は話したし、終わりかな〜?うへ〜おじさん疲れちゃった。じゃあね、先生。さよなら」

 

そう言った後背を向けて歩き出すホシノ

私は咄嗟にホシノの手を取り、引き止める

 

「…今のホシノを行かせるわけにはいかない」

 

「な、何?」

 

「……良からぬ事を…考えるな。……私が大人として……絶対にどうにかしてみせるから…だから、「また明日」と、そう言ってくれ。約束してくれ…」

 

ホシノは目を見開いて押し黙る

この学校の退部届は今、全部私が所持している。ゴミ箱に入れたのも、もう使い物にはならないだろう

 

「ホシノ……頼む…私は…ホシノが約束してくれるまで、この手を離す気は無いからな。それとも…やはり私は………信用できないか…?」

 

すると、ホシノが口を開いた

 

「……分かったよ」

 

その返答を聞き、手に入った力を少し緩めると、一瞬でホシノの手は私の手から抜け出し、私の首筋に衝撃が走る

あまりに早い一撃に反応すら出来なかった

廊下に倒れ、朦朧とする意識の中

彼女の名前を呼ぶ

 

「……ホ…シノ…………!」

 

「信用してるからこそだよ、先生…」

 

待っ……て…くれ……私が……っ…どうにか…

そんな……事…っ…する……必…要無…い…から…!

 

「さようなら、皆を…よろしくね」

 

そんなホシノの言葉を最後に私の意識は闇へと沈んだ




区切るポイント無くて超長くなっちゃった…
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