「───…い!──…生!───先生!」
私は誰かに揺さぶられて声をかけられ、意識を浮上させる
「大丈夫ですか!先生!!あぁっ…私はどうすれば…!」
「っ………!ホシノ……!!」
私を起こしたのはアヤネだったらしい
他の皆は…まだ来ていないのか
時間は………朝…か
私が目覚めたのは対策委員会の教室
布団が掛けられていた
恐らく、あの後にホシノが運んでくれたのだろう
「アヤネ、私は大丈夫だ。それより、何があった?」
正直、もう分かりきっているが…全て杞憂であるという可能性に縋ってしまいたい
「机の上に……これが…!」
アヤネが私に見せたのは…手紙と、余す事なく記入された退部届
…………駄目だった…か
「………そうか。取り敢えず、皆が来るまで…待とう。アヤネ、皆に少し急ぐように連絡をしてくれるか?」
「は、はい!」
「私は……すまない、少し出てくる…すぐに戻るから」
立ち上がり、ドアを開けて教室の外へ出る
「………っ…」
私の中に渦巻く混沌とした感情を発散するように壁に拳を打ちつけた
止められなかった。ホシノは……あの提案を受けたのだろう。何も…出来なかった
私は己の無力感に打ちひしがれる
…………いいや、まだだ、諦めるな。前へ進め
借金をどうにかして、ホシノも助ければ良い
私は、そうしなくてはいけない
手をすり抜けて零れ落ちたモノがあったとしても、私は手を伸ばして拾い上げよう
そうと決まればこんな事をしている場合じゃない。私は私に出来る事を考えろ。頭を使え、思考を巡らせろ
立ち上がり、ドアを開けて再び教室に入る
「……先生…」
不安そうなアヤネの頭に手を置く
「大丈夫だ、アヤネ。大人として…先生として、なんとかしてみせるから」
椅子に座り、皆を待っていると息を切らしながらやってきたシロコ
そんなシロコに私は謝罪する
「……すまない…シロコ。私では…止められなかった」
「ん……先生のせいじゃない。ずっと、考えてたみたいだから…」
そう会話しているとノノミ、セリカもやってきて今いる対策委員会が揃った
「揃ったな…諸々の経緯は連絡した通りだ。ホシノが…退部届と皆への手紙を残して、『提案』を受けて…アビドスを……去った」
皆押し黙っている
「4人揃ったし、手紙を確認しようか」
そうして便箋を開けて、中に入った手紙を皆で読む
手紙は…経緯の説明と、謝罪。借金は楽になるだろう…という事と…責任は生徒会である私にあるという事……私に、「皆をよろしく」と。セリカ、アヤネ、ノノミ、シロコに「お願い。これからも学校を守って」…とそういう内容が綴られていた
「ホシノ先輩っ…!!!なんなの!?あれだけ偉そうに話しておいて!切羽詰まったら何でもしちゃうって自分で分かってたくせに!こんなの!受け入れられるわけないじゃない!!」
セリカがそう叫ぶ
「助けないと。私が行く。対策委員会に迷惑がかかるし、私一人で…!」
今にも飛び出しそうなシロコ
「待て、焦るのは駄目だ。それに、一人でだなんてそんな──────」
私がそうシロコに言い聞かせていると…
ドカァァァァァァァァァンと爆発音が聞こえた
近い。まさか………!
窓を見ると近くの市街地から煙が上がっている
そして、私達とは違う足音が響く
「対策委員会を発……ぐぁっ!」
カイザーの兵士が教室のドアを開けた瞬間、銃を構えるよりも早く足払いで転倒させ、頭部を机の角へと衝突させる
「がッ…!?」
倒れた兵士の後頭部を椅子で複数回殴りつけ、沈黙した事を確認する
死んではいないだろう。いつも持ち歩いている縄で縛り付ける
「…斥候が既にここまで…!皆、まずは学校の安全の確保から……って…どうした?」
皆が目を見開いて此方を見ていた
「いや…先生も戦えるんだ…って…」
シロコがそう言う
む?あぁ、そういえばまだ彼女達には見せていなかったか…
「……まぁ、少々経験が……な?」
本当の事は言えないので誤魔化すしかない
「どんな経験よ!随分手慣れてたみたいだし…」
「…その…結局銃弾1発でも受ければ死…いや…今はいいだろう……さぁ、早く学校の安全を確保して、市民の皆さんも避難させなければな。行こうか、皆」
((((誤魔化したな…))))という視線を背中からヒシヒシと感じつつ私はシッテムの箱を起動した
「アロナ、今回も頼りにしているぞ」
『はい!お任せください!』
「ん……一先ず、先生の言う通り。学校に侵入してきた兵士から掃討する!」
そう言ってシロコが飛び出していき、セリカ、ノノミも続く。そして私もアヤネと一緒に後ろから3人を追いかけた
廊下、保健室、理科室に使われてない空き教室
体育館、図書館、グラウンド
「これで…っ…終わり!」
最後の一人と思われる兵士を昏倒させ、額の汗を拭うシロコ
「よし、学校の安全は確保出来たな。次は市民の皆さんの避難だ。行こう!」
私の言葉に皆頷き、学校を出る
『先生!連邦生徒会のリンさんからの連絡です!』
走りつつアロナの言葉に返事をする
「メールか?!なら読み上げてくれ!」
『はい!「手続きは完了しました」との事です!』
「流石リンだ!感謝していると伝えておいてくれ!」
『分かりました!』
こういうのは私がしないと駄目だろうが…すまない、時間が惜しいからな……
今度連邦生徒会へ向かう時は美味しいお茶菓子を持って行こう
さぁ、憂いは一つ消えた。カイザー…何を考えての襲撃か、聞かせてもらおうじゃないか