シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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シャーレ奪還

 

「どうして私達が不良と戦わないといけないわけ!?」

 

少々距離を取った場所からでもはっきりと聞こえる声量でユウカがそう叫んでいた

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り返すには、あの部室の…シャーレの奪還が必要ですから…」

 

「それは聞いたけど……!私これでも生徒会に所属しててそれなりの扱いなんだけど!」

 

それはそうだ。ミレニアムという大規模な学園の生徒会所属の彼女はかなり重要なポジションに居る

 

「す、すまない…」

 

「あ、いや、先生は悪くありませんから…」

 

銃弾が此方へ飛んできた

私は近くの物陰に身を隠したが、ユウカに当たったようだ

 

「いっ、痛い!痛いってば!あいつら違法の弾使ってるじゃない!」

 

以前まで私もあぁだったのだが、今は違う

この世界の住民は、銃弾が命中しても少し痛い、ぐらいで済むのだが…今の私は先生で、そんな防御力は無い

あの弾一発一発が、私の命を簡単に奪う事ができる

……私は色々と慣れてしまっているが、先生は…

………本当に、凄い人だ

 

「今は先生が一緒なので、その点に気をつけましょう」

 

「ハスミさんの言う通りです、先生はキヴォトスの外から来た方なので……」

 

「そうね、先生は戦場に出ないで下さい!私達が戦っている間は、その安全な場所に居て下さいね!」

 

気を使ってくれるらしい

ならば、私は私に出来る事をしよう

 

「私が戦闘指揮をする。任せてくれるか?」

 

「戦闘指揮を先生が?ま、まぁ…先生ですから…」

 

「分かりました、これより先生の指示に従います」

 

「先生の言う事に従うのは当然の事、ですね。よろしくお願いします」

 

信頼してくれているのを感じる

………こう言うのも何だが来たばかりの私をここまで信用して良いものなのだろうか

【先生】という存在は…やはり重いモノ、なんだな

…あぁ、私は先生として皆を助けよう

 

「任せてくれた事、感謝する。私が君達を全力でサポートしよう」

 

腐っても元、襲撃部隊のリーダーだったのだ。戦闘指揮はかなり得意分野と言える

まずは、一足先に遊撃として敵陣へ向かったスズミと合流するとしよう

 

 

 

 

「皆、お疲れ様。怪我などは無いか?」

 

戦闘は終わり、そう声を掛けながら皆の所へと近寄る

 

「なんだか…いつもより戦闘がやりやすく感じました」

 

「……やっぱりそうよね?」

 

スズミとユウカがそう会話していた

良かった、どうやら私も力になれていたらしい

 

「君達が頑張ってくれたお陰だ。感謝する」

 

「先生のお力添えでもありますよ。では、次の戦闘もお願いしますね」

 

ハスミがそう言ってくれる

……嬉しい事だ。張り切るとしよう

 

「シャーレの部室もそろそろ目の前!行くわよ!」

 

「あぁ、最後まで気を抜かずに行こう」

 

そうして再び指揮を取り、不良達を制圧していると

 

「あら?」

 

あの狐耳…黒を主体に彩られた和服に狐の仮面

黒髪の少女が銃剣を携えて現れた

 

『七囚人の狐坂ワカモです、先生、気を付けて下さい!』

 

リンが通信越しに私にそう伝えてきた

 

「フフ、連邦生徒会の子犬達が現れましたか、お可愛らしいこと」

 

彼女の戦闘能力、破壊能力はかなりのものだ

だが、私は彼女を知っている

 

「交戦を開始します!先生、指示を!」

 

「あぁ、任せろ」

 

可能な限り、怪我人は出さないようにしなくては

まずは様子見から……と牽制していると

 

「私はここまで。後は任せます」

 

そう言ってワカモは走り去っていった

 

「逃げられてるじゃない!早く追って…」

 

ユウカがその背中を追おうとするが、ハスミが止めてくれた

 

「いえ、私達の目的はあくまでシャーレ奪還。シャーレのビルまでこのまま前進するべきです」

 

「……それもそうね、分かったわ」

 

流石はセミナー、話が早い

このまま進もうと指示を出そうとするが…

とある音を耳が拾う

 

「……っ!…この音は…皆、警戒を」

 

「あ、あれって……」

 

「トリニティの戦車…!違法に流通したものです。ここで破壊してしまいましょう」

 

ハスミの言葉に皆が頷き、戦闘に入る

 

「ユウカ、前に出て耐えられるか?」

 

「えぇ、任せて下さい!」

 

ユウカが前線に立ち、敵兵の攻撃を凌ぎつつ狙いを自分に集めてくれる

同時に両手に持ったサブマシンガンで敵兵を牽制までしてくれている

 

「チナツ、ユウカに補給を欠かさずに」

 

「はい!分かりました」

 

チナツの補給を受け、態勢を更に盤石に固めたユウカが狙いを集めている隙に敵の後ろへ回り込んだスズミに合図を出す

 

「今だ、スズミ」

 

「閃光弾、投擲します!」

 

突然迸る閃光は敵兵の視力を奪い取り、その隙にユウカとスズミが銃弾を叩き込む

これで戦車以外を無力化する事が出来た

仕上げといこう

 

「ハスミ、頼む。あの戦車はそこが脆い」

 

「えぇ、お任せを…!」

 

情報を共有し、装甲が脆くなっている部分をハスミがスナイパーライフルで撃ち抜いた

そこから崩壊し始めた戦車は、最後には爆発して機能を停止する

 

「邪魔者は居なくなったし、やっとシャーレに着いたわ!」

 

「あぁ…これで打ち止め…だな。皆、大丈夫か?」

 

「はい、全員、ほぼ無傷です」

 

それは何よりだ。しかし、生徒を守りたい…というのに私はこうして後方で指揮をする事しかできないとは、もどかしいものだ

私の世界の先生も、きっと抱えていた感情なのだろう

 

「それは良かった。皆、本当にお疲れ様」

 

『シャーレの奪還、成功ですね。私ももうすぐそちらに向かいます。先生、地下室で会いましょう』

 

リンからの通信が来て、そう言っていたので、私も建物の中に入るとしよう

 

「私達はここで待機しておきます、また襲撃が来ないとも限りませんし、サンクトゥムタワーの権限が戻った事を確認しなければいけませんから」

 

ハスミの言葉にユウカもチナツもスズミも頷いた

 

「感謝する、ハスミ、それに皆」

 

本当に頼りになる。流石は生徒会と治安維持を行っている生徒達だ

 

彼女らに見送られ、建物の内部に入る

…見知ったシャーレ、だな

だが、生徒達から貰ったのであろう物や、先生の趣味の物が所々に飾られていたのだが、勿論それはこのシャーレには無く、少し寂しさを感じてしまう

階段を下り、地下室のドアをまで辿り着いた

………気配が、一人か

 

「うーん、これが何なのか、全く分かりませんねぇ、これでは壊そうにも……あら?」

 

私は、先生だ。覚悟を決めてドアを開ける

 

「こんにちは、ワカモ」

 

「……あなたは……確か、連邦生徒会の…」

 

問答無用で撃たれる、という事は無かった事に少々安堵しつつ、地下室へ入った

 

「私はシャーレの先生、月司サラ。その機械…?に用事がある」

 

「……先生…それにしては、随分と怪しい仮面を着けているのですね。私と格好の怪しさは同程度では?」

 

そういえばずっと仮面を装着したままだった事を思い出す

殆ど装着していない時と違いが無く、かなり動いてもズレることすら無いので忘れていた

流石に外そうかと手を添える

 

「あぁ、これか?これは………うん?」

 

「……どうなさいました?」

 

「……………は、外れない…」

 

「え?」

 

それもそうなるだろう。私も頭の中が疑問符でいっぱいだ

なんだこれは、全力で引っ張ってもびくともしない…ズレないのではなくズレる余地が無いのだろう

 

「す、少し引っ張ってみても………?」

 

「あぁ、試してみてくれ」

 

「痛かったりしたらすぐに仰ってくださいね…」

 

ワカモが私の仮面に手をかけ、引っ張る

 

「こ、これは……本当にくっついております…ね…私の力で引っ張ってもびくともしない…だ、大丈夫なんですか?それ…」

 

数秒引っ張った後、手を離してそう聞いてくるワカモ

 

「まぁ、今の所不便は無いが……」

 

「食べ物…とか飲み物…とかは…?」

 

ワカモにそう指摘され、気付く

 

「…………………あっ」

 

「気付いて無かったのですね…」

 

も、盲点だった…それは…困った、本当にどうしようか

 

「あら?そのボタンは何です?」

 

ワカモが指を指した場所、仮面の下部を触ってみると確かにボタンが存在していた

 

「何なんだろうな、これは」

 

「…何も分かってないものを顔に装着したんですか?」

 

「…………」

 

過去の自分の馬鹿さ加減に恥ずかしくなり顔を逸らしてしまう。いやあれは……魅力的に見えて…

魅力的に見えてってなんだ。やはり阿呆じゃないか

そう頭を抱えていると

 

「フフフ…面白い方ですねぇ。いい暇潰しになりました。あなたと一緒に居ると退屈しなさそうです」

 

「……そうか、ならいつでもシャーレに来ると良い。うん…私は先生、君は生徒…ではあるが、友人関係になれない理由はないだろう」

 

私が知っている先生も、普段から色んな生徒と友達のように気楽に接していたし、ワカモは停学中とはいえ、生徒の一人に違いはない

 

「ゆ、友人……?私が誰か、どういう生徒か。知っていますよね?」

 

私の言動に少々動揺しているワカモに更に言葉を続ける

 

「あぁ。多少不良生徒だが、ワカモ、君も私の生徒の一人だ。立場で対応が変わる事はない。しかし、悪い事をしていたのなら、私はワカモの友人として、先生として、ワカモを止める。今日の行動に関しては、ちょっといけない事、だったな」

 

これは当然の事だ。先生であろうが、友人であろうが、悪い事をしているのなら止めに入る

先生としても友人としても当たり前の行動

 

「………」

 

そういえば私達には素晴らしい共通点があるではないか

 

「それに、同じ仮面仲間……だろう?仲良くしてくれると私は嬉しい」

 

「……わ、私…友人…仲間、だなんて…」

 

狼狽しているワカモ

そうか、私の事ばかりで失念してしまっていた

 

「ワカモは、嫌だろうか?」

 

「……い、いいえ、そういう訳では…」

 

良かった。嫌ではないようだ

 

「なら私とワカモは今日から友人、という事で良いだろうさ。友人として、よろしく頼むよ。ワカモ」

 

「は、はい……よろしく…お願いします…?」

 

手を伸ばし、ワカモと握手を交わした

 

「あぁ、よろしく。…そうだワカモ───」

 

連邦生徒会の人がここに来るから裏口から出るといい、と言おうとしたその時

 

「も、もう私!どうすれば良いのかわかりません!失礼いたします!!!」

 

ワカモはそう言ってドアを開き、地下室を走り去って行った

 

「大丈夫だろうか……………って…あ」

 

これから食事…………どうしたものか…………

花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)

  • だめです!!!!!!!!!!!!
  • いいよ!!!!!!!!!!!!
  • 本編の順番通りがいい!!!!!!!!!
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