何故か持っていて、何故か外れない私の仮面
理由は至極単純で、当然だ
あれは私……『錠前サオリ』なのだから
正確には、『錠前サオリ』という神秘を圧縮、仮面という形に押し込め、凍結させたモノ
私を構成する一部が私から外れる訳も無い
私の【大人のカード】で可能なのは、通常、世界に一つしかない『錠前サオリ』の席を無理矢理二つに増やす事
そして空いたスペースにて、仮面の圧縮、凍結を解く。つまり…………
「私は私という存在を解放する」
光に包まれ、シャーレの制服はいつの間にか変わっており、羽織ったジャケットが風に揺れる
私の…向こうでのいつもの服
サラ先生ではない、先生の元生徒、錠前サオリ
私の頭上に浮かぶヘイローは爛々と輝いていた
久し振りに着ると、お腹がスースーするな、この服
………さて
「!?なんだ!何が起こっている!」
「ふ、不明です!光で…視界が!」
ふむ…久し振りに肉眼で見ると中々開放感があるように思えてくるな
私は護衛の一人の背後へ回り込み、背中へ蹴りを叩き込む
「一人」
鍛えたキヴォトス人の脚力で蹴られた護衛はくの字に変形しつつそのまま吹き飛んでいく
そのまま二人目の護衛へと手を伸ばし、頭部を掴んで地面へ叩きつける
そのまま頭部を掴んで持ち上げ、さっきの兵士の方向とは逆方向に蹴り飛ばす
「二人」
「う、うおあぁぁぁぁぁッッッ!!!」
私の攻撃する音を頼りに拳銃を乱射する理事
その弾丸は………
「………残念」
私の肌に阻まれ、届かない
拳銃を蹴り飛ばし、そのまま足払い
「ぐあっ!!」
体制を崩して地に伏せた理事の頭部を掴んで無理矢理立ち上がらせる
「お……お前は…」
「…あんな下らない事の為に…私の大切な生徒に…手を……出すな!!!」
腕を振りかぶり、顔面へと全力で拳を叩きつけた
メキョ、と嫌な音が鳴り、吹き飛んでいく理事
すると、私の頭上に煌々と輝いていたヘイローが消滅し、再び光で体が包まれる
気付けば、既に私は仮面で顔を隠してシャーレの制服に身を包む、月司サラ先生へと戻っていた
「ゴホッ………」
咳と共に吐血する
仮面の下部分…開けておいて良かった
身体は重いし、頭痛が酷い
全身がギシギシと痛む
かなり短い時間だったから、通常の代償よりも軽い、物理的ダメージとして私の身体に与えられたのだろう
主に身体の内部へのダメージなのは幸いだな。生徒達を心配させずに済む
しかし…あの5秒間、以前の私……どころかそれ以上の身体能力を発揮していたように思う
あぁ、『月司サラ』の身体に、そのまま『錠前サオリ』の身体能力を加算していたのか
誤算だったが、これは嬉しい誤算だな
「さて…」
倒れているカイザーの理事にフラフラと近寄る
…死んではいない…か
……こんなヤツ、いっそここで……………
拳銃に手が伸びかけるが、動きを止める
「………時間を使うだけ無駄だな」
私は理事に背を向け、実験室に向かって走り出した
地下へ続く階段を駆け降り、皆の背中が見えた
「ん!蹴破る……!!!」
助走をつけて思いっきり全力のキックを放つシロコ
バァン!という音と共に、扉が開け放たれた
「流石だなシロコ」
そう声をかけると、全員が振り返り、幽霊でも見るかのような目で私を見てきた
「「「!?」」」
「せ、先生!?もう終わっ…いや、今はホシノ先輩が先…だね」
「あぁ、そうだ」
シロコが開けた扉の先へと足を運び、ホシノを発見した。拘束された状態で微動だにせず、項垂れている
「………!ホシノ!」
「「「「ホシノ先輩!」」」」
急いで駆け寄り、脈を確認する
「…良かった…寝てるか、気を失っているだけだ」
私の言葉に皆安堵した表情で、胸を撫で下ろす
拘束を外し、軽く揺らして呼びかける
「ホシノ、ホシノ、起きてくれ」
「ん、ホシノ先輩、起きて」
「落書きしちゃいますよ〜☆」
「ホシノ先輩…!」
「ホシノ先輩!」
すると…ホシノが薄っすらと瞼を開け…
「……………?………!?え?!」
跳ね起きた
硬い地面に寝かせるのも何だろうと、私の膝に頭を乗せていたのだが、跳ね起きたホシノの頭が私の顎を掠める
「おわっ!だ、大丈夫か?ホシノ。怪我はないか?何かされていないか?」
「…ど、どうして…というか、どうやって………はは…そっか…皆が…先生が……大人が…ね………」
「お、おかえりっ!先輩!」
なぬ、セリカに先を越されてしまった
予想外の伏兵というやつか………
「ああっ!セリカちゃんに先を越されてしまいました!言わないって言ってたのにズルいです!」
「う、うるさいうるさい!順番なんてどうでもいいでしょ!!」
ノノミに顔を赤く染めつつそう言うセリカ
……一理あるな
「ん、無事で良かった」
心から安堵したような表情でそう言うシロコ
「お帰りなさい、ホシノ先輩!」
「おかえりなさい、です!」
「おかえり、ホシノ先輩」
アヤネ、ノノミ、シロコが口々にホシノへそう言う
「ほらホシノ、何か言う事あるんじゃないか?」
若干口角を上げつつホシノへそう促す
「……うへ〜。全くもう…可愛い後輩達の頼みなら、仕方ないなぁ〜」
そうしてホシノはにっこりと笑い、言う
「ただいま」
あぁ、良かった。これで彼女達はまたアビドスで笑い合える。きっと、まだまだ苦難は続くだろう。でも、彼女達5人ならきっと…苦難を乗り越え、前を向く筈だ。私はそれをそっと支えよう
生徒達では乗り越えられない壁が現れた時、大人として、乗り越える事を助けよう
これで…ホシノ奪還作戦、完了だな