シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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エピローグ

 

ホシノ奪還作戦は完了した

指揮官を失い、統制が取れなくなったカイザーの拠点から脱出し、再び日常が戻ってきた

そして、とあるラーメン屋台にて……

 

「今日は私が奢るからな。トッピングも量も好きに頼むと良い」

 

「ほ、本当に良いの?な、なら…煮卵二つも頼んじゃうわよ?良いの?」

 

そう聞いてくるアルに頷く

 

「あぁ。なんなら3つでも構わないぞ」

 

「それは流石に飽きそうだけどね…」

 

「確かに」

 

カヨコのツッコミはごもっともだ

 

「大将も、無事に屋台を開けたみたいで何よりだ。此処より美味しいラーメンは滅多に見つかることはないだろうからな」

 

「ハハ、常連さん達からもそう言われてね。元々柴関ラーメンは屋台から始めたのもあって、懐かしい気分だよ」

 

テキパキとラーメンを作りつつ、そう言う大将

 

「セリカもまた柴関ラーメンでバイトしたいって言っていたぞ」

 

「それは嬉しい。セリカちゃん、一生懸命働いてくれるし、ミスも少なくてあの子が居ると大助かりなんだ……っと、はい、お待ち!柴関ラーメン4つ!」

 

並べられていくラーメン

 

「いっただっきまーす!う〜ん!美味しい!」

 

「………うん、美味しい」

 

「み、見てハルカ…!いっぱい乗ってるわ!」

 

「は、はいアル様……!す、凄いです…!」

 

そんな声を上げる便利屋の4人

喜んでくれたようで何よりだ

 

「改めて、あの時はありがとう。君達が居なかったら、更に厳しい戦いになっていた事だろう」

 

「…ふ、ふん!まぁ、良いわ。素直に礼を受け取ってあげる!」

 

「いやぁ〜あの時のアルちゃんは格好良かったねぇ?」

 

「その後あんなに慌てなければ完璧だったね」

 

「ちょっ、カヨコ!」

 

「ど、どんなアル様も素敵です…!一生ついて行きます………!!!」

 

ニヤニヤするムツキに、ラーメンを食べつつしれっと焦っていたことを暴露するカヨコ、それは言わない約束でしょ!と焦るアルに、フォロー(?)を入れるハルカ

というか、やっぱりあの後は少し焦ったのか

 

「ふふ、仲良しだな、皆。さて…私は次の用事があるから、今日はお別れだ。大将、代金だ」

 

「はいよ〜」

 

そうして、皆の分のラーメン代を払う

 

「先生ってやっぱり忙しいのね」

 

「今回助けて貰った子達にお礼をな。私の個人的なお願いを聞いてもらったんだ、このぐらいはしなくては」

 

アルにそう返しつつ、私は椅子から立ち上がる

 

「またな、便利屋68。何か困ったことがあれば、シャーレか、私に直接連絡してくれ。全力で解決を手伝おう」

 

屋台から出て、次に向かうのは………

 

「やぁ、こんにちは、イオリ」

 

「げっ、先生…」

 

ゲヘナ学園の校内。訓練場に彼女は居た

私が軽く手を上げ、挨拶すると露骨に顔を顰めるイオリ

 

「流石にそう反応されると私も傷つくのだが…」

 

「ご、ごめん」

 

「……いや、どちらかというと私に非がある。すまない。言い訳すると、あの時は切羽詰まっていてな…私も少々冷静じゃ無かったんだ」

 

「そういう事なら…まぁ…」

 

うぅんと唸りつつも私のイメージに対する誤解は解けたようだ

 

「じゃあ、今私が足を舐めろって言ったら舐めないのか?」

 

「舐める」

 

勝手に口が動いた気がしたんだが!?

イオリの足を見ていると…なんだ…か…

いやいや待て、止まれ私!

 

「やっぱりヘンタイじゃないか!」

 

「ふんッッッ!」

 

「!?」

 

再び自分で自分の仮面を殴りつける

 

「…っはぁ…はぁ……危ない、何なんだこれは…」

 

「先生の行動の方が謎すぎて怖いぞ…」

 

ドン引きな表情で私を見下ろすイオリ

………その表情も…

何を考えようとした私!?!?!?

 

「ふんッッッ!!!!!」

 

地面に頭を打ちつける

 

「さっきから何やってるんだお前は!?」

 

「もう自分で自分が分からなくなってきた…」

 

「………保健室…行くか?」

 

「やめてくれイオリ。一周回って優しくするのはやめてくれ」

 

そうだ、こんな事をしている場合じゃないんだった…もう頭からすっぽ抜ける所だった

 

「はぁ…すまない、話を戻すが…渡したいものがあったからここまで来たんだ」

 

「はぁ、渡したいもの?」

 

「これだ」

 

そうして、イオリに紙袋を渡す

 

「最近人気らしいケーキだ。早朝に3時間程並んで買ってきた。ヒナ、アコ、チナツ、イオリの4人分だ。助けてくれたお礼…と言ってもこれだけじゃまだまだ返し足りないがな」

 

「……私は先生が分からん。なんでこういう時はまともなんだ?」

 

「一応、まともが私のいつも通りの筈なんだがな…」

 

本当に何なんだ、イオリを前にすると私の中の何かが吹っ飛ぶ

 

「まぁ、そういう事だ。忙しそうだから、邪魔になるかと思ったが…大丈夫だろうか?」

 

「いや、皆喜ぶと思う。…ありがとう、先生」

 

「礼を言うのは此方だ。では、渡し終えた事だし、私は戻る。またな、イオリ」

 

そう言ってイオリと別れて私はアビドスへと向かう

その途中、くらっと来て壁に手をついてしまう

 

「……はぁ…ごほっ、ぐっ…」

 

『!?せ、先生!?』

 

軽く吐血し、壁にもたれかかるように座り込んで口と仮面についた血を拭き取る

アロナに大丈夫だ、とは言っておくが…

ずっと、全身が軋むように痛んでいた

そう、"大人のカード"の代償だ

私の前の身体の身体能力に今の私の身体がついていけていない。更に、一人の身体にもう一人の身体能力を加算するだなんて無茶苦茶をしているのだから身体が悲鳴を上げるのは当然…か

 

「……5秒で…これ…とは…………先が…ごぼっ…思いやられる…な………」

 

『ば、バイタルチェックを…か、身体の内部の損傷率41%……!?筋肉、内臓、骨、致命的とまではいきませんが、全てに損傷が…!?先生!一体何したんですか!?』

 

再び血を吐き、息を整える

そういえば、アロナには見せていなかったな

大人のカードを使う直前、シッテムの箱の電源を落としていたから

すまない、と一言謝り、再びシッテムの箱の電源を落とす

 

「……取り敢えず…鍛錬は継続だな…カードを使う事での肉体の慣れもあるだろうが、そんな軽率に使えるものでも無い……一先ず、外見上は無傷に見えるのが救いだな。こんな所、生徒に───」

 

「生徒に見られるわけにはいかない、ですか?」

 

「あぁ…そ…う…………!?!?!?」

 

顔を上げると、目の前に立っていたのは…

 

「わ、ワカモ……」

 

「こんにちは、先生?」

 

仮面を外しながらニッコリと笑うワカモ

め、目が笑っていない……

 

「そのハンカチについた血、何でしょうか?」

 

「………………血糊だ」

 

「流石に無理がありますよ」

 

「…だろうな」

 

ワカモにも会いに行こうと思っていたが、最悪のタイミングで出会ってしまった

 

「……ワカモ」

 

「他の皆には秘密に、でしょう?」

 

うぐ、完全に読まれ切っている

 

「…あぁ、生徒達に余計な悩みを背負わせたくはないからな」

 

ため息をついて私を見るワカモ

 

「はぁ…余計、なんかではない気がしますけどねぇ」

 

私に近づき、ワカモは私を持ち上げる

 

「おわっ」

 

「次の行き先はどちらで?」

 

「運んでくれるのか?気持ちは嬉しいが、そろそろ落ち着いてきたし、私は自分で歩け…」

 

「どちらで?」

 

ニッコリとそう返される

 

「………あ、アビドス高等学校で……」

 

「はぁい♡」

 

そうしてワカモは私を抱えて歩き出した

シッテムの箱の電源を入れる

 

『先生!すぐに電源切らないで下さい!!』

 

アロナが涙目でプンプンしながら騒ぐ

ワカモが全く気にしていないのは…やはりアロナの声は皆には届かないからなのだろうか

すまない…と思いつつ、アロナの説教を受けながら私はワカモに運搬されるのだった

 

─────────────────────

 

「せ、先生?」

 

「こんにちは、シロコ」

 

「…なんで?」

 

率直にそう聞いてくるシロコ

それはそうだ。ワカモにお姫様抱っこされたまま学校の靴箱辺りまで運ばれたからな…

 

「………まぁ、細かい事は気にするな。ワカモ、ここまでありがとう」

 

「いえいえ。では、私はこれで」

 

去り際にシロコに何か耳打ちしつつ、ワカモは帰っていった

世話になってばかりで申し訳無いな…

 

「えい」

 

そんな事を考えていると、シロコが脇腹をつついてきた

 

「シロコ!?ちょっ…!ぐぉ………」

 

刺激された脇腹を起点に全身へと激痛が走る

 

「ご、ごめん。そこまでだとは………どうして隠してたの」

 

「…ワカモぉ……」

 

あの耳打ちはそういう内容だったのだろう

 

「いや…隠してたわけじゃないんだ…その……報告する必要は無いかと思っただけで…一応、筋肉痛みたいなものだし………」

 

「うへ〜。それにしては、重症みたいだけどねぇ」

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

言い訳していると、ホシノとノノミが階段を下りてやって来た

足に力を入れ、立ち上がる

 

「あぁ、大丈夫だ。そのうち治る」

 

別に歩けない程じゃない。時々吐血して時々フラつくだけだ。その時も少し休めばどうにかなる

 

「ん……先生。無理はしないで」

 

シロコが私の制服の裾を掴んでそう言う

こうなってしまうから、知られたくなかったんだがな…そして、私は…

 

「……すまない、私は…生徒の為ならこれからも無理も無茶も押し通すつもりだ。でも、大丈夫。居なくなったりは、しないからな」

 

そう、そのお願いは受け入れられないんだ

シロコの頭を撫でつつ、そう言う

 

「………ん…」

 

シロコは悲しそうな顔、ノノミは心配そうな顔、ホシノは…いまいち感情が読めないな…

パンパンと手を叩いて仕切りなおす

 

「……ほら、そんな顔するな、皆。また普通の日常が帰ってくるんだ。借金はまだ残っているが、利息もかなり減ってかなり楽になった筈。私も顧問としてこれからも尽力しよう」

 

「ん。よろしく」

 

「…はい!そろそろ会議の時間ですね!アヤネちゃんとセリカちゃんも教室で待ってます!行きましょう!」

 

「うへ〜早く行かないとセリカちゃんに怒られちゃうよ〜?」

 

私達は階段を登り、対策委員会の教室に入る

 

「先生、先輩達!遅いわよ!」

 

「あはは…まぁ、ほぼ時間通りではありますから…」

 

案の定、セリカから怒られてしまったが、アヤネがフォローしてくれた

問題はまだまだ残っている

カイザーはどうせまた何かしらで絡んでくるだろうし、ゲマトリアは何をするか分からない

さっきも言ったが、借金も残っている

でも、きっと乗り越えられるだろう

ホシノ、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネ

この5人は、強い絆で繋がっている

 

「先生、お願いします」

 

「あぁ、では……アビドス廃校対策委員会、会議を始めようか」




対策委員会編、完!
3章はいつになるんでしょうね…
絆エピソード編と、幕間等を挟んだ後、エデン条約編に入ろうと思います……!
その後にパヴァーヌ1章などと続いていくかと…
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