シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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絆エピソード シロコ

 

お昼頃のD.U.シラトリ区、市街にて…

 

「第1部隊、前進。…よし、第2部隊はそのまま待機だ。シールドで道をしっかり封鎖するように。第3部隊、合図で奇襲を仕掛けてくれ、いくぞ…3、2、1、GO!」

 

町中で市民を脅したりしてのカツアゲだとか、色んなモノを射撃して破壊…だとかで暴れていた犯罪者を私の指揮で動くヴァルキューレの生徒達が追い詰めていく

迷路のような細い路地に逃げ込んだ犯人を1部隊が追いかけ、1部隊は道を封鎖、その道に誘導する為にもう1部隊が急襲する

それに驚いた犯人は狙い通り、第2部隊が封鎖する道に入り込んだ

そして、後方からも第1、第3部隊

そうして、身動きが取れなくなった犯人は取り押さえられたのだった

 

「犯人、確保しました!」

 

そう言うヴァルキューレの生徒の声を聞き、私はふぅ、と息をついて現場へ合流する

昼食を食べに来たつもりが、このような現場に遭遇するとは。少々手こずっていたようだし、手助けできてラッキーだったな

無論、私が居なくとも彼女達ならばしっかり確保できていただろう。私の指揮はちょっと拘束が早くなる程度だった筈だ

 

「………よし、これで終わり…だな。皆、お疲れ様」

 

現場に近付き、拘束され、項垂れている犯人をしっかり確認した後、動いてくれた生徒達へ労いの言葉をかけた

 

「「「「ご協力、ありがとうございます!」」」」

 

ピシッと敬礼するヴァルキューレの生徒達

いつもご苦労様だな

 

「先生として当然の事をしたまでだ。では、私はこれで」

 

私がその場から離れると、たった今無力化した犯人をパトカーに乗せ、ヴァルキューレの生徒達も帰っていったようだ

 

『お疲れ様です!先生!お身体の方は大丈夫でしょうか?何か異常を感じる部位などは?』

 

「心配してくれてありがとう、アロナ。今度こそもう大丈夫そうだ。何処も痛くない」

 

腕をぐるぐると回すが、なんの痛みも感じない

あれから少々経っているしな。私の身体の再生能力はそこそこ優秀なようだ

まぁ、人としての範疇だがな

軽めのトレーニングも再開したのだが、以前の様に吐血する事も無かった

 

『バイタルチェックを行いますね!ふむふむ……良かった…!損傷率も一桁台まで落ちています!でも、無理は禁物ですよ?何をしたかはわかりませんが、あの【何か】をもう一回使ってあんなになるまで肉体を酷使するのは止めてくださいね!』

 

ぷんすこ怒った表情で私に説教するアロナに苦笑しながら言葉を返す

 

「あぁ、当分は控える事にするさ」

 

『期間を空けてまた使うつもりですね!駄目ですよ!』

 

「生徒に何か危険な事が起こっていない限りは安心してくれ。何かあったら、まぁ…うん…」

 

使わないとは言い切れんな…

 

『むーーー……………っと、あら?先生、シロコさんからモモトークが届いてますよ!』

 

アロナから向けられるジトっとした視線から顔を逸らしつつどうしたものかと頭を悩ませていると、そんな言葉を聞く

 

「シロコから?」

 

モモトークを起動し、メールの画面を開くと…

 

【トマト、レタス、牛乳、明日の朝、ランニングの後にスーパーに寄る】

 

ふむ?あまり意図が読めないので返事を送ってみる

 

【シロコ?】

 

【あ】

 

何かに気付いたような反応が返ってきた

 

【ごめん先生、自分用のメモだったけど送る場所間違えちゃった】

 

なるほど、そういう事か

 

【なるほどな。そういえば、そういう機能があったな。私はあまり使っていないから忘れていた】

 

そう返しつつ、一度前のホーム画面に戻ってみると、やはりあった。メモ、と名前がつけられている所

恐らくここに送ろうとしていたのだろうな

 

【ん、そういう事。ごめん】

 

【あぁ、気にするな。別に怒ってもいない。メモ帳はホーム画面の固定機能で一番上に固定しておくと良いかもしれないな】

 

【わかった】

 

という返事と一緒に、しっかり一番上にメモが固定してある画面の画像を送ってきた

 

【流石、行動が早いな】

 

【ん。そういえば、先生。この前、何か欲しい物はあるか?って聞いてきたよね】

 

あぁ、ご褒美の話か。モモトークにてだが、アビドスの皆にそう送っていたのだった。ホシノとのアクアリウムの翌日…だったか?

皆も頑張っていたからな

 

【あぁ。グループで送った時は皆決めかねていたようだったが…シロコは決まったか?】

 

【うん、さっき送っちゃったけど、スーパーに寄ろうと思ってる。先生も一緒に来て】

 

ふむ?

頭の中に疑問符を浮かべつつ承諾を伝える言葉を返す

 

【あぁ、勿論良いが……そんな事で良いのか?もっとその…欲しい物とか、そういうのは?】

 

【ん、これで良い。明日楽しみにしてる】

 

そうして、合流場所と時間を伝えられた

ふむ……とあまり意図が読めないシロコの要求について少し考えつつ、私はシャーレに戻るのだった

 

「さて…ならば明日の分も書類仕事は終わらせておかなくてはな」

 

椅子へ腰を下ろし、机に向く

パソコンとペンを使い、私は仕事を始めた

仕事をしながら、考え事をする私

少しばかり体力も落ちただろうし、私も段々トレーニングの強度を上げていこうか。どれだけ鍛えた所で、【大人のカード】の負荷に適応できる肉体に至るのは不可能だろうが…多少はマシになるだろう

 

『先生、ここ間違ってますよ!』

 

「おっと、すまない。ありがとうアロナ」

 

アロナの言葉で意識をしっかり目の前の書類に向ける

考え事は程々に、しっかり集中しようか

そうして私は書類仕事をサクサク進めていくのだった

 

─────────────────────

 

書類仕事を終わらせ、翌日の朝、アビドス自治区に足を運んだ私

 

「うん、快晴だ。気分が良い…と言いたいが、流石に少々暑いか」

 

ジリジリと私を照らす太陽

仮面が熱くなる……という事は無いが…普通に全体的に暑い

 

『以前買ったアレを試す時だと思います!』

 

「うん?あぁ、なるほど」

 

アロナに言われ、存在を忘れていた物を取り出すためにバッグを漁ると……あった。手持ち扇風機だ

電源ボタンを押すと、羽が回りだす

 

「おぉ、中々涼しいな」

 

静かめな音で回り、私に風を送る小型の扇風機

数回ボタンを押すと、どうやら風の強さを変えられるようだ。小、中、大、特大

と、特大ってなんだ…

そんな疑問を抱きつつ、正直中で十分なので中にして風を送ってもらう

こんな物があるのだな、便利だ

暇なので説明書を見ていると、ミレニアム製だということが分かった

 

「なるほど、ミレニアムで作られていたものだったか」

 

様々な最新技術を持っているあの学園なら納得だな

そしてそのまま説明書を見ていると…

 

「うん?ぶ、Bluetooth機能?何故…?」

 

説明書を裏まで見てみるが、別に使い方は書かれていない…そう思っていると、端に小さな文を見つけた

 

【Bluetooth機能はスペースが空いたのでつけただけで、何の効果もありません。ご了承下さい】

 

「……ならつけなくて良いだろう…」

 

ミレニアムのどんな生徒が作ったのだろう…だとかを考えていると

足音と共にシロコが走ってきた

 

「先生、ごめん、待たせた?」

 

「いいや、私もついさっき着いた所だ。おはようシロコ」

 

しれっと嘘をつきつつもそう返す

別にそこまで待っていないしな

 

「ん、おはよう。…道で先生に会うのもちょっと変な感じかも。教室とシャーレでしか会ってなかったし、それに、最初の頃も思い出す」

 

「あぁ、そういえば、この辺りか」

 

砂嵐の中、私は危なかった所をシロコに助けられたのだった。伸ばされた手を掴めていなければ私は恐らく今此処に居ないかもしれない

 

「あの時はありがとうシロコ。シロコが助けてくれなければ私は皆を助けられなかったからな」

 

「ん、気にしないで。先生には本当に沢山助けられた。あの時の一回じゃ足りないぐらい」

 

お互いにそう言い合っていると、埒が明かないし、なんだかおかしくなってきたので少々笑い合う

咳払いして、シロコに問う

本題に入るとしようか

 

「さてシロコ、確かスーパーに行くんだっけか?」

 

「ん、そう。すぐそこだから走って……あ、先生、身体は大丈夫?」

 

心配そうな目線を向けるシロコ

 

「あぁ、気にするな。ほぼ完全復活だし、走るぐらいなら余裕だ」

 

「ん、何か痛む所とかあったらすぐに言って。私が抱えていくから」

 

「か、抱えていくのか…」

 

そうして走り出したシロコの後を追い、私も走る

さて…10分は走ったが

 

「シロコ、スーパーまでの距離はどれぐらい離れてるんだ?」

 

「うーん、15kmぐらい?」

 

「……それ、一般的にはすぐそことは言わないと思うぞ、シロコ。相手が私で良かったな」

 

私は鍛えているので15kmを軽く走るぐらいなら余裕だが、普通の先生なら厳しいものがあるだろう

 

「そ、そうなの?ごめん先生」

 

「気にするな。私は鍛えているし、15kmぐらいは大丈夫だ。一応、ただの人間としては…だが、体力には自信があるからな」

 

これでも体力は落ちた方だ。何日間も傷だらけで熱もあるまま何も食べずに全く寝ずに常時気を張って索敵しつつ行動できる体力は無い。今の私がそれをやると数時間で死ぬ

 

「先生もトレーニングしてるんだ。これから一緒に朝のランニング、する?」

 

「おや、良いのか?シロコが良いなら私も同行させて貰おうか。ふふ、楽しみだ」

 

「ん、楽しみ」

 

そんな会話や、アビドスの皆の事や、他にも色んな雑談をしつつ走り、私達は2時間より少し早いぐらいの時間でスーパーへ辿り着いた

 

「ふぅ…着いたか。いい運動だったな」

 

深呼吸して、ぐっと伸びをする

足の筋肉が多少痛むが、気にならない程度だ

 

「ん、じゃあ買い物する」

 

籠を持ってスーパーの中へ入っていくシロコを追いかけて私も中へ入る

 

「おぉ、涼しいな」

 

「ちょっと上がった体温を冷やすの心地いい」

 

クーラーの効いたスーパーが運動で火照った私達の身体を冷やしていく

テキパキと必要な物を集め、レジへと向かって商品を購入するシロコ

 

「ん、お待たせ。先生、まだ時間はある?」

 

「今日は書類仕事も終わらせているし、緊急で呼び出されない限りは私の予定は空いているぞ」

 

そんな私の声を聞き、ピコピコと嬉しげに動くシロコの耳。……触ってみたい等という邪な感情を理性で押さえつけ、平静を保つ

 

「ん、じゃあ公園に行く」

 

「分かった、じゃあ案内を頼もう」

 

スーパーを出て、私達は近場の公園に向かった

 

「ここ、砂もしっかり掃除されてるから結構綺麗」

 

辿り着いた公園は、そこそこ広く、確かにしっかり砂も掃除されていて綺麗な状態だった

 

「この辺りにはあんまり砂嵐が来ない。0では無いけど。だからこの辺りはまだ結構人が居るみたい」

 

「ふむ、なるほど…地形の問題だろうか。取り敢えず、ベンチにでも座ろう」

 

シロコも頷き、二人並んでベンチへ座る

 

「ふぅ…」

 

流石に暑いのか、手をパタパタさせて自分に風を送るシロコ

私はバッグを漁り、手持ち扇風機を取り出した

 

「使うか?」

 

「ちっちゃい扇風機?そんな物があるんだね」

 

お礼を言いつつ、シロコは扇風機を私から受け取ると、小、中、大と風力を上げていく

 

「先生、これ知ってる?」

 

「うん?どうした?」

 

すると、シロコは自分の口の前に扇風機を持ってきて、口を開く

 

「あ〜〜〜〜〜」

 

シロコが扇風機の前でそう声を出すと、ブレブレのような、妙な感じに聞こえた

 

「はは、変な声に聞こえるな」

 

「ふふ、でしょ?」

 

そんな風にのんびりしていると…ふと、シロコが扇風機のボタンを見つつ呟く

 

「これ、特大ってどれぐらいだろう」

 

「確かに大でも結構十分な風力だな。うーん、あんまり想像も出来ないな。あんまりやらない方が…」

 

「そうだね───あ」

 

シロコが扇風機を落としそうになり、咄嗟に掴むと、風力を上げるボタンを押してしまったようだ

さっきまでの風力は………大

突如、巻き起こる突風

立ち上がった私は私は風に押されて少し後方へと下がってしまう。地面に這うようにして空気抵抗を逃しても、かなりの突風が私達を襲っているのがわかった

シロコも少し飛ばされたようだが、着々と小型扇風機に近づいているようだ。止めようと手を伸ばしている

 

「……!?あの小さな羽で何処からこんな力を生み出しているんだ!?」

 

「ゔっ…もうちょっとで…届く………!あっ!」

 

小型扇風機を掴んだと同時に、シロコのマフラーが飛ばされた

 

「…ッ!任せろ!」

 

いつもつけているあのマフラー。きっと、シロコの大事な物なのだろう。こんな事で無くさせる訳にはいかない!

風に飛ばされるマフラーに追い付くため、私も風に乗りつつ跳躍する

勢いのまま、私は精一杯手を伸ばし、シロコのマフラーを掴んだ

 

「よし!」

 

その瞬間、風も止まったようだ

 

「ふっ………と。無事か?シロコ」

 

少々高めの高度からの落下だったが、衝撃を受け流しながら着地する

多少擦りむいたが……うん、ほぼ無傷と言っても良いだろう。シロコの方は…

駆け寄ってきたシロコにマフラーを差し出しながら確認する

どうやら傷は無いようだ、良かった

 

「ごめん先生。それと、マフラーありがとう」

 

「あぁ、大切な物なんだろう?当然だ」

 

「ん…!」

 

力強く頷き、首にマフラーを巻くシロコ

それにしても…

 

「それにしても……とんでもないな、これ。護身用だったりするのか?」

 

シロコに差し出された扇風機を受け取る

大から更に風力を上げるボタンを押したから…と思っていたが、どうやら特大に変えるためには色々と複雑な操作が必要な筈なんだが…シロコが慌てて掴んだ時に偶然その手順も踏んでしまっていたらしい

通常、使うものじゃないようだな

 

「ふう、予想外のトラブルもあったが…どっちも無傷だったし、良しとしようか」

 

「ん、先生。疲れたから、膝枕して」

 

「あ、あぁ、分かった」

 

ベンチに座り、ついた砂を払う

ご機嫌に耳をピコピコと動かすシロコの頭が私の太ももに乗せられたので、シロコの頭を撫でているとどうやら寝てしまったようだ

 

「お昼寝タイム…という事にしておこうか」

 

うーむ、これで『報酬』になるのだろうか?

そんな事を考えつつも、シロコが望むのならそうしよう、と結論を出す

そうして私はシロコが起きるまで膝枕し、起きた後はまた一緒に少し運動をしてシャーレに戻ったのだった




対策委員会の皆が終わった後は、便利屋か風紀委員会ですかね…どっちを先にしてほしいかアンケートを取るので見たい方に票をお願いします…!
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