シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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絆エピソード アヤネ

 

「ふぁ……」

 

欠伸をして、私はベッドから起き上がる

目をこすろうとするが、硬い感触に阻まれて私の顔には仮面がある事を思い出した

 

「いつも思うが、この仮面、寝る時は流石に邪魔だな……下手に寝返りも出来ない。私は寝相がいい方で良かった」

 

姫の言う事が真実なら、私は寝ている時寝返りどころか呼吸以外、微動だにしないらしい

 

「姫達は…上手くやっているだろうか。…いや、心配は要らないか。もう皆大人だ、私は私のやるべき事を……だな」

 

そう気を引き締める

さて、今日からシロコと時々朝のランニングをする予定が入っている

机に置いてあるシッテムの箱を見ると…

 

『………むにゃ……』

 

「おはよう、アロナ」

 

『うぅん………Zzz…」

 

もう少し寝かせておくか

私は動きやすい服装に着替え、水筒等と一緒にシッテムの箱をバッグに入れ、私は外へ向かうのだった

 

そして朝のランニングも終わり、シロコと別れる

今日の予定は…アヤネに呼ばれたんだったか

 

「ふう、いい汗をかいたな」

 

このままアビドスへ向かおうか?等と考えつつ、タオルで汗を拭き取っていると…

 

『むにゃ…?うぅん…あ、せ、先生!おはようございます!』

 

「起きたかアロナ。おはよう」

 

シッテムの箱からそんな声が聞こえてきたので取り出して挨拶をした

 

『はい!えっと、今日は…』

 

「アヤネに呼ばれたからな。アビドスに向かうぞ」

 

このまま向かおうか等と考えていたが、シャワーを浴びなければ不味いな

私はシャーレに戻り、シャワーで汗を流し、服を着替えてアビドスへ向かったのだった

 

─────────────────────

 

アビドスの校門辺りにアヤネを発見した

 

「あ、先生。おはようございます。来てくれてありがとうございます!」

 

「あぁ、おはよう。別に困った事ならご褒美としてなんかじゃなくて困り事としてシャーレに言ってくれれば良かったのだがな」

 

「あはは……あんまり思いつかなかったもので…」

 

「勿論、これはご褒美にはカウントしないからな。まぁ、ゆっくりでも良いさ。何かあれば言ってくれ」

 

「は、はい!」

 

頭を下げるアヤネに私は問う

 

「それで、学校の修理……だったか?」

 

そう、私が呼ばれた理由。それは、学校の修理を手伝ってほしいという内容だった

 

「はい。やっぱり、私達だけじゃ限界があるので、ボロボロになっている所も多いんです。そこを、今日直そうかと思いまして…」

 

「なるほど、分かった。なら、早速取り掛かろうか。時間は有限だからな」

 

そう言うと、アヤネも頷き…

 

「はい!では、こっちからです!」

 

歩いていくので私もその背中を追った

到着したのは…水飲み場か

 

「数週間前は動いていたよな?」

 

私が以前ここを訪れた時は普通に使用できた筈

 

「はい、数日前に止まってしまって…」

 

つい最近か…

 

「恐らく配管の問題なのだろうな。業者の人に頼むと高くなってしまうから、自分達の手で直してしまおう…と」

 

「はい、その通りです。以前も止まったことはありましたが、その時は私が修理できましたから」

 

「アヤネが?凄いな」

 

少々驚く。アヤネは1年生として…だけではなく、普通にキヴォトスの高校生にしてもかなり賢い。少しでもミスしてしまうと厄介そうな配管の修理もこなせるとは…

流石に配管云々は私も詳しく知らないからな

 

「業者さんの手順を見て、これなら私もできそうだと思いましたから…修理マニュアルとか、他にも色んな本も見ましたから、このぐらいは」

 

あはは…と頰を掻きつつ困ったように笑うアヤネ

 

「その努力を私は褒めているんだ。誰でも出来る事では無いんだぞ?」

 

そう返すと、アヤネは顔を少々赤く染めてお礼を言ってきた

 

「あ、ありがとうございます…こほん、では、修理を始めますね」

 

「あぁ、何かあれば遠慮なく言ってくれ」

 

まずは、原因の特定からするみたいだ

 

「蛇口を捻ってもやはり何も出ないな」

 

「はい、こういう時は…下の計量器を…」

 

ガサゴソと下を覗き込むアヤネ

 

「………アヤネ、頭上、気をつけておくんだぞ?うっかり頭をぶつけないようにな」

 

「あ、は、はい…!えーっと…あれ、これは…」

 

私の言葉に返事しつつ、何かを見つけたようだ

 

「何か分かったか?」

 

アヤネが這い出てきた

 

「よい…しょっ…と、はい。水漏れもしてないみたいですし、恐らく原因は分かりました。地下に行きましょう」

 

「地下なんてあったんだな」

 

知らない事だらけだ…等と思いつつ、私は「此方です!」と私を呼んで歩いて行くアヤネの後を追いかけるのだった

 

ゴウンゴウンゴウンと重厚な音が鳴り響く

 

「おぉ…配管は全てここで管理しているのか?」

 

「はい。全てここに集められています」

 

水飲み場のは……どれだ?

沢山の配管はあるが…殆どバルブが閉められている

 

「最小限使うものだけバルブを開けているんだな?」

 

「はい、その通りです。……っと、これですね。バルブが閉められています」

 

アヤネの言葉に疑問符が浮かぶ

閉められていたのか

 

「ほう?無いとは思うが、閉めた記憶は?」

 

案の定、心当たりのなさそうな顔だ

 

「無いですね…悪戯とも思えませんし、対策委員会の誰かが閉めたんだと思います。どうしたんでしょう……取り敢えず、バルブを開けますね…これ、12インチのレンチが必要ですね…ええと、確か倉庫にあったような…」

 

わざわざ取りに行くのも面倒そうだな…

そういえば、あれがあったな

私は荷物を漁り、持ち運べる箱を取り出す

 

「学校の修理と聞いて、それっぽい修理に使う道具のセットのような物を持ってきたんだ。アヤネが言うものはこの中にあるか?」

 

箱を開くと、色んな物がある

様々なドライバーに、レンチに…その他諸々

これまでの人生で使った事があるのはドライバーぐらいだな……

 

「あ、ありがとうございます…!これ、お借りしてもよろしいでしょうか?」

 

「元々アビドスに置いておこうと思っていたからな。好きに使うと良い。新品だし、恐らく多少は良いものだろうからな」

 

そこそこの値段だったし、多分結構保つだろう

そんな事を考えていると、アヤネが問いかけてきた

 

「せ、先生、これ買ったんですか……?」

 

「ん?あぁ、色々と大変かと思ってな。修理を担当しているのは知っていたけど、色んな倉庫を行ったり来たりして道具を探していただろう?一気に持ち運べると便利だろうと思ってな。道具も結構ガタが来てたみたいだし」

 

以前見た時は、錆びついたドライバーでどうにかしようと悪戦苦闘していたしな

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

「私は対策委員会顧問だからな。生徒の備品もしっかりと確認しておかなくては」

 

そんな会話をしつつ、レンチを取ったアヤネはバルブを開ける

 

「はい、これで恐らく大丈夫かと」

 

ふう、と額についた汗を拭うアヤネ

 

「じゃあ、確認しに行こうか」

 

地下を立ち去るため私が背を向けて歩き出すと、アヤネもついてきた

階段を上っていると、アヤネが声をあげる

 

「あ、一旦、倉庫にある使えそうな器具もこの持ち運べる箱に入れてきても良いでしょうか?」

 

「あぁ、結構スペースもあるしな。慣れもあるだろうし、そうしようか。どの倉庫だ?」

 

道具を上手く扱う為にはやはり慣れは必要不可欠だろう。アヤネがそうしたいならそうするべきだな

アビドスには倉庫が複数ある。どの倉庫かをアヤネに問うと、三番倉庫らしいのでそちらへ向かった

 

「重いな…この扉……っと!」

 

鉄で出来た重厚な扉を押し開け、中へ入る

 

「ありがとうございます…えーっと、これと…これ…これは……もう使えませんか…」

 

色々と選別して箱へ入れていく

すると…バタンと音が鳴ったかと思うと、ガチャンとも音が聞こえた

 

「………おっと…?」

 

「!?どうしました……か…まさか…!」

 

音がしたのは、私の後方。入ってきた扉が閉まっていた。バタン、はこの扉が閉まった音だろう

となると、もう一つの音は恐らく………

ドアノブへ手を伸ばし、捻って扉を開けようとするが、どうあがいても開く気配が無かった

 

「……閉じ込められたな。鍵は…無いか」

 

元々、ここの鍵は機能しなくなっていたのだ。それが今になって扉が閉まる衝撃でどうやら復活したらしい

 

「どどどどどどうしましょう!?」

 

あわあわと取り乱すアヤネ

 

「落ち着けアヤネ」

 

そう声をかけて、私は一番細いドライバーを箱から取り出した

 

「せ、先生?」

 

「さっきまで何もできていなかったからな。ここは私に任せてくれ。久しぶりだな、腕は鈍っていないといいが」

 

ドライバーを突っ込み、感触だけでガチャガチャと鍵穴を弄る。そして、数分後……

ガチャン!と再び音がなった

 

「おや。よいしょ………っと!開いたぞ、アヤネ」

 

扉を引くと、しっかりと開いた

多少腕は鈍ったか…数分もかかってしまった

アヤネの方を振り返ると、こちらを見て呟いた

 

「………先生とシロコ先輩って、少し似てますよね」

 

頭に疑問符が浮かぶ

 

「そうか?というか、何で今それを?」

 

「いえ、なんでもありません、水道を確認しに行きましょうか」

 

「あぁ、そうしよう」

 

私が鍵開けをしている間にもしっかり箱に持ち出す道具を選別していたようで箱を閉じて、アヤネは歩き出したので私もその後を追った

そして到着、水飲み場

 

「さて、水はどうかな?」

 

「よいしょ…はい!出ましたね!ふう、これでここはおしまいです!次に行きましょう!」

 

アヤネが蛇口をひねると、しっかりと水が出たので、ここはおしまいだ

アヤネの言葉に

 

「あぁ、そうだな」

 

と頷いて次の場所へと向かった

そうしてどんどん修理をしていき…

 

「これで…今日やる予定の場所はおしまいですね」

 

砂や埃などで少々汚れてしまった腕を軽く振りつつ、そう言うアヤネ

 

「すまないな、あまり力になれなくて」

 

「いえ、この道具箱は勿論、必要な道具を渡してくれるだけで結構ありがたいんですよ?ありがとうございます」

 

「そういうものなのか…分かった、素直に礼は受け取っておく。少々汚れてしまっているぞ、水で流しに行こう」

 

私も修理などの知識を多少は勉強しておくか

そんな事を思いつつ、アヤネに声をかけて私達は水飲み場辺りに向かった

 

「ふぅ…喉が潤います」

 

メガネを外し、水を飲んだり、腕についた汚れを落とすアヤネ

 

「改めて、お疲れ様。結構沢山の所を直したな」

 

10箇所はあった気がするな…

 

「あはは…まだまだ、修理が必要な所はありますけどね…もっと頑張らないと…」

 

「…無理は良くないぞ」

 

ワカモに聞かれたら恐らくあなたが言いますかそれ、などと言われそうだが…私は先生で彼女達は生徒だからな

 

「はい、分かっています。私は私の出来る範疇で、アビドスの為に頑張ります!」

 

「分かっているのなら良い。また手伝いが必要ならいつでも呼んでくれ。それに、ご褒美の事も考えておくんだな」

 

「は、はい…」

 

遠慮がちなアヤネに少し苦笑しつつ、空を見る

オレンジ色に染まりかけていた

 

「もう夕方だ、今日は帰ろうか。折角だしな、家まで送ろう。悪漢の一人や二人程度なら私でも何とかできるかもしれない」

 

いや、生徒の為なら3人でも4人でも投げ飛ばしてやろう

 

「さ、流石にそこまでしてもらうのは悪いです…」

 

「ほら行くぞ。荷物を纏めて」

 

少し強引だっただろうか?

慌ててついてきたアヤネを家まで送り届け、私はシャーレに戻ったのだった

 

「修理……難しいな」

 

戻った後、色々と調べてみたのだが機械の修理は複雑過ぎるな……

まぁ、先生として力になれるように頑張ろうか

少し、寝る時間が遅くなったのだった

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