「……おや」
「あら」
休日、私がなんとなく訪れたショッピングモールにて、ノノミとばったり出会った
「こんにちは、ノノミ。そういえば、ショッピングが趣味だったか?」
「先生、こんにちは〜☆そうです!ショッピングを楽しみに来たんですが、先生と会えるなんてラッキーです!」
私の記憶は合っていたらしい。ニコニコとそう言うノノミは本当にショッピングを楽しみにしていたのだろう
邪魔するのも悪いし、私は適当な所にでも…
と別の場所に向かおうとすると、ノノミから声がかかる
「あ、先生!ご褒美の事なんですけど、欲しい物の代わりに1個お願いを聞いて貰えませんか?」
「あぁ、構わないが…どうした?」
お願い…だなんて、別にそれを使わずとも聞くが…
まぁ、犯罪行為は駄目だが、ノノミはそういう事はしないだろうしな
「それじゃあ、今日一日、私とのショッピングに付き合ってくれませんか?」
「そ、それで良いのか?別にご褒美の件を使わずとも良いし…そもそも私は邪魔に…いや、誘われた時点でそれは無いか」
ご褒美として所望されたのならそうする他無いし、私が一緒にショッピングするだけでも嬉しいのなら私は是非そうしよう
「よく分かってますね!では、行きましょう〜☆」
私は上機嫌なノノミと共にショッピングモールを歩き出した
ふと疑問に思った事を聞いてみる
「そういえば、アビドスからこのショッピングモールは結構な距離があると思うんだが、どうやって来たんだ?」
「バスと電車を使って来たんですよ〜1回乗り間違えそうになって少し焦っちゃいました」
公共交通機関を乗り継いで来たのか、納得だ
「結構複雑だからな、私も時々間違えそうになる」
というか元いた世界では間違えまくっていた
逆方向だったり、別の路線だったり、特急だったり…何回も何回も間違えたが、ようやく慣れてきて、近頃はあまりそういうミスはしなくなったな
「ですよねぇ〜」
ノノミはショッピング…と言っていたが、趣味でショッピングという事はあまり目標を決めず、色んな物を見て回り、偶然見つけたいい感じの物を買う事を楽しむのだろうな
あまり私には縁のないものだったが、ここで体験する事になるとは
「私はあまりショッピング…というものは経験が無いのでな、色々と教えてくれると助かる」
「そうなのですか?とは言っても、色々と見て、気に入った物を買うだけですので、気にしなくても大丈夫かと!」
「そうか、なら私も精いっぱい楽しむとしよう」
取り敢えず、一階から見て回るようだ
「やはり様々な物があるな…あれは、イベントステージか。今日は特に何もやってないみたいだが」
「どうやら、今日色々と買い物をすると抽選券が貰えるみたいですよ!」
「ほう」
ノノミが指差す方向に視線を向けると確かにガラガラと回すやつがあった
「あれを回すのは結構楽しいと感じるな」
「ドキドキしますよね〜☆」
「うん…っと、ここから先は食事を取る所か。まだ昼食には早いし…後にするか?」
歩いていると、色々なお店が様々な料理を作っているエリアに辿り着いたが、まだ午前中だ
ノノミは私の言葉に頷く
「はい、後で来ましょう!2階に行きましょうか!」
エスカレーターに乗りつつ、地図を確認する
おもちゃ…家電に銃器、ここは…弾丸専門店?
爆発物の専門店まであるのか
後は服だとか、アクセサリーだとかのおしゃれをする為の物の店
爆弾専門店、誤作動で爆発したら大惨事だろうな
一応それを考慮してか、少々離れた場所の端っこなのだが…
エスカレーターにより2階へと到着したので歩を進める
「ふむ、服やアクセサリーのエリアだな」
様々なブランドがこぞって店を出している
「はい!早速見て回りましょう!」
どうやらノノミはここを結構楽しみにしていたらしい。女子高校生なのだから、当然か
マネキンに着せられた服。あまり私の趣味には合わないが……おや、多少の防弾性能?
あのうっすい生地でそんな事できるのか?
そういえば、ショッピングといえば姫も結構楽しんでいたな…姫が服を色々見ている間、私は外で待っていた記憶がある
そんな事を考えているとノノミに声をかけられた
「そういえば、本当に今更かもしれませんが先生も私服ですね」
「ん、あぁ、この服か」
長袖の真っ黒のシャツに、紺色のズボン
適当にネットでサイズに合うものを購入したのだが、そこそこ動きやすくて助かる
地味なのはまぁ…そうだな…
「似合ってはいますが…もう少し主張を強めても良いと思います!なので……」
「なので?」
「今から私が!先生の服を選びますね!」
にっこり笑いつつ私の手を握るノノミ
「そ、そうか。じゃあ頼む…」
別に今のままでも…と思ったが、ノノミの圧に負けて大人しく服を選ばれる事にする
近くの店へ入ると、すぐに駆けつけた雀の姿をした女性店員に何かを話す。すると、その店員は何故か目を光らせて奥へと戻っていった
「ふふふ…先生コーディネート作戦…開始です☆」
ノノミの後ろには戻ってきた店員が様々な服を沢山持ってきていた
「………お手柔らかに頼む…」
その後は、暫く私は着せ替え人形のようだった
「これとかどうでしょう!」
「ひ、ひらひらとし過ぎじゃないか?色々と出過ぎてるし…」
「お似合いです、お客様!」
「では次はこれ!」
「ピン…クは流石に……」
「お似合いです!お客様!!」
「じゃあこれ!」
「………メイド服だろう、これ」
「お似合いです!お客様!!!」
テンション上がり過ぎだろうそこの店員
仮面つけた怪しい女だぞ私は。服が可愛らしくても流石に仮面で相殺されるだろう
というか何だ、どんどんコスプレに近づいていないか
「バレました?」
「これでバレない訳無いだろう。こっそり写真撮ってるのもバレてるからな」
「なんの事でしょう〜」
とぼけた様子のノノミ
「ほらほら、まだ服はありますから!ちゃんと普通の服も用意してあります!」
「普通の服『も』ってなんだ『も』って」
まぁ、今日は付き合うと言ってしまったからな。仕方無い、ノノミの気が済むまで付き合おうか…
「とは思ったが……」
思わず視線を私の現在着ている服に向ける
「やっぱりこれは駄目だろう?!恥ずかし過ぎるんだが!?」
これで最後ですから!と言われ渡されたのは…
頭につけたカチューシャからはウサギの耳…服はこれ…何処かで…あぁ、思い出した、空が赤く染まったあの日、シスターフッドのリーダー、歌住サクラコが着てきたあの服
意味が分からなかったので私達は黙って見て見ぬふりをしてその場を去って防衛を開始したのだが…
確かにこれは…着るのに覚悟が必要だな………
そう、私は今、バニーガールの格好をしていた
「似合ってますよ☆先生!」
「もうガールと呼べる年齢じゃないぞ私は……」
二十代だし…とため息をつく私
というか怪しい仮面の女のバニーとか誰得なんだ本当に
「うぅむ…色んな所がスースーするんだが…もう良いだろう?これはもう脱ぐからな」
カーテンを閉めて普通の服に着替えた
「ああっ、勿体無い!」
そんな声が聞こえたので私はカーテンを開けて更衣室の外に出る
「先生で遊ぶんじゃありません」
ノノミに軽くデコピンをした
「あいたっ、ごめんなさい、先生。先生、バランスの良い体型をしていらっしゃるので、色んな服を着こなせてて…」
苦笑いしながらそう言うノノミ
うぅむ……悪い気はしないが……
「……楽しかったか?」
と、一言聞いてみると、ノノミは笑顔で
「はい!」
と答えるものだから、許す他無いな
「そうか。ならばまぁ…良いだろう。ほら、さっさと出るぞ。あ、店員さん、4着目と6着目、7着目に着たのも購入させてくれ」
「は〜い!」
試着だけでは駄目だろうからな。普通に良いなと感じたものは買わせてもらおう
すぐにその店員は商品を入れた袋を持ってきた
レジで表示された値段を支払い、私達は店を出る
「……だいぶ時間を使ったな。食事の後にまたショッピングを再開するか?」
時計を確認すると、既に数時間が経過していた
「ですね!一階に戻りましょうか」
そうして一階に戻り、食事を取り、また上の階に戻ってショッピングを再開する
少々時間をもらい、銃の店を見てみたのだが、今の私では流石に宝の持ち腐れか
この護身用の拳銃で十分だろう
先生が無駄に武装していると、警戒させてしまいそうだしな…この仮面も相まって…
その後は、おもちゃ屋で未だにあまり何も無いシャーレ用と、暇な時に皆で楽しめるようにとアビドス用にボードゲームだったりを色々と買った
他にも様々な所を見て回り…
「……結構買ってしまったな」
「ショッピング、楽しいでしょう?」
「そうだな。ありがとう、ノノミ」
夕暮れの少し前…辺りの時間になったので帰りも考慮して今日はおしまいとした
以前から考えていたシャーレの娯楽も確保できたし、かなり充実した一日だった
「こちらこそ、付き合ってくれてありがとうございます、先生!その…また今度も一緒に来てくれますか?」
「あぁ、良いぞ。でも…」
「でも?」
「…まぁ、着せ替え人形にするのは程々にしてくれると助かる」
「…!はい、わかりました!」
にっこりと満面の笑みを浮かべつつそう返事するノノミを見るとつい、まぁ、ノノミが存分に楽しめるのなら良いか…と思ってしまう
「一人で大丈夫か?乗り間違えないようにな」
「はい!しっかり気をつけて帰ります!」
そうして、ノノミと私はそれぞれ戻るのだった
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シャーレにある私の自室にて、シャワーを浴びた私は顔…ではなく仮面をタオルで拭きつつベッドに座り、スマホを起動した
モモトークを開くと、対策委員会のグループチャットに通知が沢山溜まっていて、どうかしたのだろうかと思い、そこを開くと…
【先生とショッピングに行ってきました!】
そう言いつつノノミが…色んな服を……着ている私の……?写真を……??トーク画面に………???上げているんだが!?!?!?!?
何してるんだノノミ!!?!?!!!???!
そんな私の写真にワイワイガヤガヤ騒ぐ対策委員会の面々
私は一言だけ、
【ノノミは今度お説教です】
と送り、気恥ずかしさでモモトークを閉じた
そういえばと近くに置いてある服に目を向け、私は立ち上がり、中を覗き込む
「さて……服はタンスに───!?」
袋を見ると、私が購入した3つの服…ともう1着
「………あの店員…!」
入っていたのは、私が着ていたバニーガールの衣装
『良い物を見せてもらいましたから、サービスでおまけをつけておきますね!』
じゃないんだが!?
貼り付けられていたそんな紙を手に、複雑な感情で動けなくなる
「……………奥底にしまっておこうか…」
そう呟き、タンスの奥の奥にそっと置くのだった
送られてきた写真を見た時の各々の反応
【うへ…おぉ……エッ…だね…これは…仮面のせいで背徳感増してない?】
【ん、ノノミ、ナイス】
【は、破廉恥!】
【あ、あはは…ふ、普通の服、お洒落でよく似合っていますね…】