便利屋も風紀も、アビドスよりは多少あっさり目に行きますね
エデン条約編が待っている…!
作者がほのぼのとしたエピソードが好みなのでもう暫くお付き合い下さい……!!!
静かなシャーレの仕事部屋にキーボードの音とペンの音だけが交互に響く
連絡の通りならそのそろそろか…
と思っていると、時間ぴったりに聞こえる足音
「こんにちは!先生!!」
シャーレのドアを開けて元気よくやって来たのは便利屋68の社長、陸八魔アル
「あぁ、こんにちは、アル」
書類仕事をやっていた手を止め、アルにそう挨拶する
「言ってた通り、迎えに来たわ!さぁ、行くわよ!」
テンション高くそう言うアル
………少し悪戯してみようか
「おや、今日だったか?来週だと思っていたんだが…」
「え、えっ!?嘘!?」
慌ててスマホを取り出して確認するアル
……打てば響くとはこの事だろうか
「ハハ、冗談だ。今日で合っているぞ。もう準備は出来ているからいつでも出発できる」
「も、もう!びっくりさせないでよ!」
「すまないな、お詫びと言っては何だが昼食は私が奢ろう。食べたいものを考えておくと良い」
「本当!?…って、駄目駄目!今日はお礼も兼ねているのよ?この前の仕事、先生が居なければ多分失敗してたんだから!」
「まぁまぁ、私がアルに奢りたいんだ」
「えぇ…?」
アビドスとも仲直りして、私がシャーレでの仕事に戻ると、時々アルから仕事についての相談だったり、明らかにまずそうだったら止めたり、もう引き返せない所まで来ていたら協力したり…と結構交流を深めている
「そういえば、ハルカは大丈夫そうか?」
「…少し思い詰めてるみたい……もっと話を聞いてあげないといけないわ」
「そうだな」
この前の仕事…とは、テンパったアルの言葉を曲解したハルカがまた爆破でやらかした話だ
便利屋のトラブルは大体これが原因になる
私が介入してなんとか上手くいったが、アルの邪魔をしてしまったとハルカは自分を責めているようだ
少々不安定な所があるから、心配だ
「それについても話しつつ、行こうか」
「わかったわ!」
目的地は映画館らしい
最近アルが見た映画がとても面白かったらしく、お礼も兼ねて…と私を誘ってくれた
道中、色々と調べた結果や、私の感想、経験…他にも様々な事を交えてアルにアドバイスをする
私がアルに教える…というのは新鮮だな
教わった側が、こうして他の人に教える…というサイクルはやはり大事なのだろう。教える対象がアル本人だから少しおかしく見えるが…
「よし、着いたな」
「ふふん、チケットは既に取ってあるわ!さ、行きましょう!」
「用意周到だな、流石だ」
そんな会話をしつつ映画館へと入った
その後は特にハプニングも無く、映画を存分に楽しむ事が出来た
2回目だと言っていたアルが感動シーンで号泣していたな。でも、それも無理はないだろう。私もかなり心動かされるストーリーだと感じた
クライマックスは派手なアクションで、テンションが上がる。なるほど…アルが絶賛するだけの事はあるな。主人公の立ち振る舞いは恐らくアルの目指すアウトローそのものだった
ストーリーが終わり、エンドロールが流れ始める
「……先生ってエンドロールも見るタイプなのね」
「ん?あぁ、知る事は大事だからな。それがどんな些細な情報だとしても、いつか役に立つ日が来るかもしれない」
「なるほど、そういう事なのね」
得られる情報は全て得るべきだろう
「アルはどうなんだ?」
「私もエンドロールは最後まで見るわ。役者さんの事も知りたいし、挿入歌の題名とか、脚本を書いた人とかもね」
「確かに、それも大事だ」
エンドロールも終わったので、私達は外へ出た
「うん、確かに凄く面白い映画だった。主人公、格好良かったな」
「でしょう!?どんな逆境と苦難が押し寄せてきても、自分の道を貫き、最後まで守る。真のリーダー、真のアウトローとはああいう姿を指すと思うの」
そんなアルの言葉に私は頷く
「絶対に味方を見捨てなかったのも私的には好きなポイントだ。仲間思いなのは良い事だ」
「えぇ、例え道を踏み外したアウトローだとしても、一度誓った友情や仲間は絶対に見捨てない。最後まで自分の大事な事を貫く……そんなリーダーに、私もいつかなってみせるわ!」
そう高らかに宣言するアル
「あぁ、アルなら絶対になれるさ。私が保証しよう」
私は知っているからな。逆境と苦難を目の前にしても、自分の道を貫き、仲間は絶対に見捨てない真のリーダーにして真のアウトロー…大人になった、陸八魔アルを
「ふふふ!そうなったら正式に先生を経営顧問として雇ってあげるわ!覚悟しておく事ね!」
ビシッと私を指差すアル
「はは、考えておこう」
そう返しつつ、そろそろ昼食の時間か…などと考えていると、私達二人のスマホにほぼ同時に着信が来た
確認してみると……
「!?」
「おっと…」
ハルカからだった。内容は…お礼と、お別れの言葉…そして、探さないで下さい…と
どうやらそれはアルも同じらしい
「も、森の中!?」
「森?」
アルがそんな声を上げたので確認すると、【どういう事!?何処に居るの!?】と聞いたアルに【あ、いえ、えっと…森の中……です…】
と返事が来たらしい
尊敬しているアルに聞かれれば正直に話す所はなんともハルカらしい
その後、何処の森かも聞いてみたようだが、その返信した直後に電源を切ったか、充電が切れたようで既読もつかない
「……先生!」
「あぁ、行こうか。今の便利屋のオフィスの近辺の森を片っ端から捜索しよう。居なかったらまた別の森へ、私が案内する!」
そうして私とアルは駆け出したのだった
「もうちょっと色々話しておくべきだったわ…!」
「過去の事を悔やんでも仕方ない、今は取り敢えず急いで会って話そう」
「……そうね!待ってなさいハルカ…!貴女も私の大事な社員の一人なんだから!」
─────────────────────
「…はぁ…はぁ……ここにも居ない……か」
1つ目の森の捜索も終わったが、居なかったので少し離れた2つ目の森に来たのだが、やはり居ない
根っこやぬかるみに足を取られないように慎重に動く必要がある為、数倍疲れるな…
「先生、見つかった!?」
「…いや、こっちも駄目だ。次の森に行こう」
「…分かったわ!ちょっと失礼するわね!」
アルが私を抱きかかえる
「うわっ!?あ、アル?」
「疲れてるでしょ、先生。呼吸が乱れてるわ。普通の人なのに、森の中を数時間走り回ったんだから当然よね。私はまだまだ大丈夫だから、こっちの方が早いわ!次の森はどっち?」
「…そうだな、頼む。次は左方向だ!」
アルに抱きかかえてもらったまま、道のナビゲートをする
やはりこういう時、失った体力と身体能力が惜しい
大人のカードは流石に使えないからな…
「ここで合ってる?」
「あぁ、ここだ」
その森は、さっきの森より更に大きい森だった
アルに降ろしてもらい、私達は足を踏み入れる
「ハルカー!!!私よー!!!」
アルがそう声を出しつつ先行して進んでいく
「足元、気をつけるんだぞアル」
「ふふん、この私を誰だと───うわぁっ!?」
「言った側から!?」
木の根っこに足を引っ掛けたアルは横の崖から滑り落ちていった
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あ、アル様!?!?!?」
「ハルカ!?」
その先に居たのは、ハルカ
ハルカは突然落ちてきたアルを受け止めたのだった
ハルカに受け止められた事もあって傷は浅いだろう。だが心配ではあるし、何よりハルカを見つけられたので私も崖を滑り降り、ハルカとアルの元へ向かう
「アル!ハルカ!大丈夫か!」
「せ、先生まで…!?」
「きゅう…」
驚いた様子のハルカと、どうやら気絶しているアル
…うん、傷はあまり無いし、頭を打ってもいない
崖から落ちた恐怖で気絶しただけだな
「……アルは気絶してるだけだ。ハルカも、無事で良かった」
「わ、私なんかの為にそんな服を汚してまで…!?あ、あ、アル様もこんなになってしまうなんて、やっぱり私は……!私なんか…!!」
「ハルカ!」
所持しているショットガンを自分に向け、引き金を引こうとするので私が止めに入ろうとした瞬間
「なーに言ってるのよ!!!!!!」
アルが飛び起き、ハルカのショットガンを取り上げた
「アル様!?」
「アル!?」
もう少し気絶したままだと思っていたが…
「ハルカ!よく聞きなさい!私には貴女が必要なの!貴女は私の大事な社員の一人で、大事な仲間の一員なの!勝手に居なくなるなんて事、この私が許さないわ!!仕事中、ミスをする事もあるかもしれない。だけど、それは社長である私の責任よ!答えて、ハルカ。私は一体何処の誰かしら!?」
「……便利屋68の社長、陸八魔アル様です…!」
「そうよ!この私にどんと任せなさい!!!」
そう言ってにっこり笑い、ハルカの頭を撫でるアル
……真のリーダー、真のアウトローにきっといつかなれると言ったが、訂正する必要があるな
彼女は既に、辿り着いている
「アルの気持ち、伝わったか?ハルカ」
「は、はい…このような愚かな事は、もう二度と…!」
若干重いような気がするが、良しとしておこう
「言っておくが、ハルカ。君は私の大事な生徒の一員でもある。私も、アルも、君の事を大切に思っているからな。仕事のミスは、私も時々してしまうしな、気に病みすぎず、次に繋げる事を考えると良い」
コクリと頷くハルカ
すると、ぐぅ〜とお腹が鳴る音が聞こえてきた
振り返ると、顔を赤くして顔を背けているアル
時間は…夕食より少し早いぐらいか?
「…そういえば、昼食もとっていなかったな。アル、ムツキとカヨコに連絡してくれ。今日は私が奢るから焼き肉でも食べに行くぞ!ほら、早く!」
「あっ、えっ!?先生、ちょっと待って!」
「一生ついていきます!アル様!」
そう言いつつ山道を駆け下りる私を追いかけ、急いで走ってくるアルとハルカ
その後、連絡して合流したムツキとカヨコ含めた便利屋68の四人と一緒に焼き肉を沢山食べたのだった
「何か忘れているような……」
「どうしたアル?早く食べないと肉無くなるぞ」
「た、食べるわ!」
お礼と称しておいて、あまりお礼出来ていないのがアル的には多少引っ掛かっているのだろうが、この際それは忘れてもらおう
これは、私から便利屋68へのお礼でもあるのだから
サラ先生、よく生徒を抱えたりおんぶしたりするけどそれと同じぐらいかそれ以上に抱きかかえられてる気がする…
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