シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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シッテムの箱

 

リンが来るまで待つ事しかできないので、大人しく椅子に座ってリンを待っていると…

タッタッタッと誰かが駆けてくる音が聞こえた

 

「先生!ご無事ですか!?」

 

ドアを開けて地下室に入ってきたリンを出迎える

 

「あぁ、なんともない。この通り、五体満足というやつだ。そんなに焦ってどうした?」

 

どうやらかなり全力で走ったらしい

息切れして大きく空気を吸い込んでいた

 

「はぁ…はぁ……先程、狐坂ワカモが、シャーレの窓から飛び出して走り去って行った、との情報が入りまして……先生を襲った後に逃亡したのかと…」

 

「なるほど…まぁ私はさっき言った通り、なんの傷も負っていない。安心するといい」

 

「狐坂ワカモに…シャーレ内で遭遇したんですね?」

 

「……話してみれば結構良い子だった」

 

「……はぁ…ご無事で何よりです」

 

若干呆れが含まれた言葉と目線に少し居心地が悪くなり目線を逸らした

 

「本来の目的に戻りましょう。ここに連邦生徒会長が残した物が……っと、ありました」

 

リンが取り出したソレは、とあるタブレット端末

 

「幸い、傷一つ無く無事ですね」

 

リンが此方にタブレット端末を差し出してくる

 

「受け取って下さい」

 

タブレット端末を受け取り、眺めた

 

「タブレット…端末」

 

見覚えがある。これは先生がいつも所持していた…

 

「はい。これが、連邦生徒会長が先生に、と残した物。【シッテムの箱】です」

 

シッテムの箱。聞き覚え…が…あるような…無いような…あまりハッキリとしない感想を抱いてしまう

 

「普通のタブレットに見えますが、何もかもが分からないものです。製造会社、OS、システム構造、動く仕組み。その全てが不明」

 

これは……アリウスにあった巡航ミサイルのようなオーパーツ…の部類なのだろうか

 

「私達では起動すら不可能な物ですが、先生なら起動させられるのでしょうか…。では、私はここまでです。後は全て先生にかかっています。邪魔にならないように、離れていますね」

 

リンが地下室から退出する

 

その場に残された私はまじまじとシッテムの箱を眺めた

私には、これが必要だと本能が訴えかけてくるようで、なんとも不思議な気分だった

起動しようとすると、パスワードを要求された

パスワード?それらしいものがあったか…?わからないな……と思っていたが、脳裏にとある文字列が浮かび上がる

何故かはわからない。その文字列を打ち込んでいた

 

……我々は望む、七つの嘆きを。

 

……我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

シッテムの箱の電源が、起動した

 

 

『シッテムの箱にようこそ、【サオr…』

 

『システムエラー発生、再起動』

 

『シッテムの箱にようこそ、【サラ先生】』

 

 

………何が何やら理解できないな…

ホワイトアウトしていく視界でそう思ったのだった

 

 

次に目を開けると、そこは見たこともない教室

波の音がする。教室の周囲は海に囲まれていた

シッテムの箱の内部…とでも言うのだろうか

このような機能さえ搭載しているのでは理解できないのも当然だろう

 

「ぐうぅぅぅ……Zzzzzz…」

 

見たことの無い少女が一人、机に突っ伏して眠っていた

 

「むにゃ………カステラに…おしるこは合いません……Zzzzzz……」

 

…どんな寝言だそれは…

少々申し訳無いが少女の肩を優しく揺らし、目覚めを誘う

 

「すまない、起きてくれ」

 

「うぅぅぅぅん……」

 

少女はむくりと起き上がる

そして寝ぼけ眼を擦りながら私を見た

 

「うーん…ありゃ…?ありゃりゃ…?」

 

一瞬顔を輝かせるも、すぐに難しい顔になる

 

「■■■先…生……?いえ、でも…これは…」

 

彼女は今……何と言った?明らかに発声していたし、音を私は聞いている

しかし、その音が何を意味しているのかが私にはわからなかった

うーん、うーーーん、と悩む彼女に一応、私から名乗っておこうと思い、声を出す

 

「シャーレの先生、月司サラだ。シッテムの箱を起動し、恐らくその影響で此処に来た」

 

そう軽く自己紹介をする

本来の名前を名乗った方が良かったのだろうか

そう思った直後、違和感に気がついた

また、思い出せない

頭痛は無い。二度目なので混乱も少ない

冷静に記憶の中を探っていると、私の手が、バグを起こしたかのように揺らめき、消えかけていた

そうか、ここには【月司サラ】じゃなければ居られないらしい

 

「なるほど…サラ先生…ですね…!」

 

納得したような顔の少女は頷き、自己紹介を返した

 

「自己紹介が遅れてすみません、私はアロナ!シッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS。そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

元気に胸を張り、そう告げたアロナは、更に言葉を続ける

 

「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーーーっと待っていました!」

 

「……寝てた訳では無く?」

 

「あ…いや…ちょっと…居眠りしてた時も、ありましたけど…」

 

「…ふふ、正直で偉いな。これからよろしく頼む」

 

頭を撫でつつそう声をかける

 

「えへへ、はい!よろしくお願いします!では…」

 

その反応に懐かしさを覚えてしまう

…向こうの……皆は…元気にやっているだろうか

私は──────

 

「……先生?何故そのような悲しそうな表情を…?ど、どうかしましたか?!」

 

心配そうに私の顔を、と言っても仮面で表情は見え……悲しそうな表情…?

顔を触ると、硬い仮面の感触ではなく、私の肌の感触が伝わってくる

あの仮面が…外れている…?

いや、結局、今気にする必要は無いだろう

何かやってしまったのだろうかとあわあわし始めたアロナを落ち着けるために声をかける

 

「あぁいや、少し…知り合いを思い出してな」

 

ヒヨリの事を思い出す反応に、少し感傷的になってしまった

 

「私は大丈夫だ、続きを頼めるか?」

 

「わ、わかりました!では、形式的ではありますが、生体認証を行います!少し、恥ずかしいですが…こっちに来てください!」

 

言われるがまま、近くに行くと、アロナが人差し指をピンと立てる

 

「では、私の指に、先生の指を当てて下さい」

 

「こう、か?」

 

人差し指を合わせると、その間から少し光が飛び出した

 

「はい、生体認証、完了です!これは、指紋を読み取ってるんですよ!」

 

「なるほど…アロナは凄いな」

 

正直あまり機械には詳しくないが、多分凄い事なのだろう。多分…

 

「えへへ…あ、それで、先生はどうやってシッテムの箱を?何か事情があるのでは?」

 

「あぁ、そうだった。此方の事も説明しよう」

 

私の状況について色々とアロナに伝えた

 

「なるほど……先生の事情はわかりました。連邦生徒会長の事に関しては、私にも全く情報がありません…ですが、サンクトゥムタワーはどうにかできそうです!」

 

「本当か?なら早速頼めるだろうか」

 

「はい!任せて下さい!」

 

……あ、そういえば此処から出るのはどうすれば良いのだろう

 

「すまないアロナ、此処から出る……ってどうすれば良いんだ?」

 

「へ?あぁ…出る方法、ですね!こう…なんか…ギュッと…?」

 

「ギュッと…?」

 

何処をどうギュッとすればいいのか分からなかったので取り敢えず全身に力を入れてみる

目を開けると、シャーレの地下室だった

 

『一発ですね!流石先生です!』

 

「こ、これで良いのか……」

 

シッテムの箱にアロナが写っていた

なるほど、普段はこういう風にしているのが良いのか

脱出の方は、アロナの言い方的に失敗する事もあるのだろう

ふと顔に触れてみると伝わってきたのは硬い、仮面の感触

正直、分かりきっていた

 

『では、サンクトゥムタワーの権限を取り戻します!』

 

「あぁ、任せたぞ、アロナ」

 

無事に取り戻せると良いのだが……

花のパヴァーヌ編一章を飛ばしてエデン条約編を進めて良いか(パヴァーヌ編は一回飛ばすことになったらエデン条約編の後に一章、二章と続けてやります)

  • だめです!!!!!!!!!!!!
  • いいよ!!!!!!!!!!!!
  • 本編の順番通りがいい!!!!!!!!!
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