「うっ…ぷ……よ、よく食べられるな、ムツキ。私はもう限界だ…」
「先生って意外と少食なんだね〜」
「いや、多分普通ぐらいだと思うぞ…」
その小柄な身体の何処かへ消えていく様々な種類のクレープを眺めつつ、私は今に至る経緯を思い出す
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モモトークにて唐突に呼ばれた私は町中にてムツキと合流する
「それで……特別な依頼?だったか?」
「そう!先生に手伝って欲しいなって!」
「アル達では駄目なのか?」
「うん、先生じゃないといけないみたい!」
私じゃなきゃ駄目……?
「一応聞いておくが、面倒事に巻き込まれたりはしていないな?大丈夫か?」
ムツキがその辺りのリスク管理を怠るとは思えないので無いとは思うが、一応聞く
「その辺は大丈夫大丈夫!勿論、先生なら付き合ってくれるよね?」
ニマニマしながら私にそう言うムツキ
「あぁ、構わないぞ。依頼内容にもあまり触れないし私に伝える気はあまり無いんだろう?ならムツキの指示通り動こう」
「なーんだ、すっごい冷静だね」
「あまり期待には応えられないかもな」
ムツキは面白いものが好きなようで、面白いか否かは彼女の行動原理にも関わっている気がする
アルについて行っているのも理由は様々あるだろうが、面白いから…というのも結構な割合を占めていそうな印象だ
元いた世界で、便利屋68のアルバイターとして働いていた時、敵の拠点に潜入して爆弾を仕掛ける…という指示を受けたのでハルカと一緒に向かい、爆弾を仕掛け終わった後にハルカが転んでうっかり起爆させてしまったのでそのまま勢いで拠点を壊滅させて戻ってきた時は爆笑されたが…
喉が渇いたので水を飲んでいると、未だにニマニマしているムツキから再び声をかけられる
「ふ〜ん、ところで先生」
「ん、どうした?」
「生徒の足舐めたってほんと?」
!?!?!?!?
私は飲んでいた水を吹き出して咳き込む
「ぶっ………!?げほっごほっ、そ、その話何処から…いや違……くはないけど、これは複雑な事情が…というかあの場に居ただろう!?ホシノの命が掛かってて仕方が無かったというか…!」
そう、仕方が無かった、仕方が無かったんだ…
「くふふ♪そういう事にしといてあげる!やる事リストはあるから、それに沿って依頼進めよ!」
「あ、あぁ…分かった」
そうして最初に訪れたのが、クレープ屋だった
「『最高のクレープを頼んでください』だってさ」
「……なるほど?これ、選択式だが…まさか全種類試して一番美味しかった物を…?」
「そうみたいだね!」
「食べきれるか…?」
割とクレープはボリュームがあった気がするが…
「いけるいける!支払いは先生に経費で落としてもらえば良いしね〜!」
「いやまぁ、支払いは私がするから気にしなくて良いが…」
「わぉ、太っ腹!先生スレンダーだけど!」
「使い所があまり無いものでな」
そんな会話をしつつ注文し、席に座る
そして雑談しつつクレープを待つ事数分
沢山のクレープがやってきた
「いただきます」
「いっただっきまーす!」
そうして食べ進めて時は現在…
「6個も食べたんだ、流石に胃がはち切れそうだ」
私の胃は限界を迎えていた
カロリーの問題はまぁ気にしなくていいだろう。普通に先生として過ごしていると消費が勝つ
私のトレーニングも相まってではあるが
「そっかぁ〜それじゃ、残りは私が食べちゃうね」
「あ、あぁ…頼む…」
パクパクと食べていくムツキ
本当にあの体の何処に消えていくのやら…
「ご馳走様〜♪じゃ、次行こっか!」
「は、早いな……支払いはもう済ませてあるし、行くか」
「ゴーゴー!」
そうして次に私達が向かったのは…
「遊園地?」
「そう!『メリーゴーランドの中で一番早い馬を調査して』だってさ!」
依頼書を見ながらそう言うムツキ
メリーゴーランドで一番早い…?
「そうか。……外から見るのも良いが、乗ってみる事も大事だと思うんだ、どうだ?」
「流石先生!そうしよっか!」
メルヘンな音楽が鳴り響き、メリーゴーランドの馬が上下しつつぐるぐる動く
初めて乗ったが、ちょっと愉快だった
ただ、案の定、速度はどの馬も変わらなかった
「どの馬も一定の速度だったな。次はどんな任務だ?」
「えっとね〜」
と、このような感じで私とムツキは遊園地の様々な施設で遊……いや、任務を進めた
ジェットコースターに上空から一気に落ちるスリルを楽しむマシンにお化け屋敷等…
そうしていると、もうそろそろ日が暮れる頃だ
遊園地から出て、町中を歩く
「もう遊園地は終わりか?リストはどうだ?」
「結構進んだよ〜…次は…ってわぁ!」
風で依頼書がムツキの手から離れ、私の目の前を通り過ぎて飛んでいきそうだったので咄嗟に掴む
「あ、先生!見ちゃ駄目!」
「依頼人が自分だから、だろう?」
紙を手渡しつつムツキにそう問いかける
一瞬目をパチクリさせた後、口角を上げるムツキ
「……くふふ♪バレちゃってたか〜薄々感づいてそうだとは思ってたけどね〜!」
やっぱりか。流石に便利屋の依頼をムツキだけで解決しようとする筈がないからな
「知り合いにムツキに似たような人が居てな。それで、今日は面白かったか?」
まぁ似たようなというか本人なのだが…
「うん!結構楽しかった〜!でも、騙し通せなかったのは少し残念!今度は絶対に最後まで騙してみせるからね!」
「あぁ、待っている。……っと、揉め事か?」
何か口論しているような声が聞こえてきた
「あれって…カヨコちゃんだ。あの大人は…」
「警察だな。ムツキ、少し待っていてくれ」
「はいは〜い!任せたよ、先生!」
私はカヨコと警察へと近づいていく。すると、口論の内容が少しずつ鮮明に聞こえてくる
「ここで何をしていたんだ!」
「だから、別に何もしてないって…」
「嘘をつくな!そんな怪しい見た目で…こんな場所をうろついて、何か企んでいたんだろう!」
「いや…別にそれは……なんでもない…」
「ほら見たことか!取り敢えず、学生証を見せなさい!」
……なるほど、路地裏に居たカヨコをあの警察が発見して…という感じだろうか
カヨコの事だ、その風貌で怪しまれているのだろう
私は間に割って入り、カヨコを庇うように立つ
「すまない、うちの生徒がどうかしただろうか」
「ん?どなたですか…って不審者!?」
「違う。連邦捜査部シャーレの先生、月司サラと言う。カヨコはうちの生徒でもある。一度、状況を聞かせて貰えないだろうか?」
「せ、先生?」
突然現れた私にカヨコも驚いているようだ
そうして、話を聞くと、大体私が推測した通りの内容だったのでカヨコの事を弁護した
「ふう……シャーレの先生がそこまでおっしゃられるのなら、仕方無いですね」
「分かってもらえたようで何よりだ」
そうして、警察は去っていった
「あ、ありがとう、先生」
「気にするな。通りがかれて良かった。あの場所に居た理由は……この気配、猫か」
「…あれ、逃げたと思ってたんだけど…ほんとだ。戻ってきたみたい。言っても、信じてもらえないだろうから、警察の人には言わなかったけど」
不審者に見間違えられるのは慣れてる、とため息をつくカヨコ
「やっぱり面倒だね、この顔立ち…こんな奴が野良猫の世話なんておかしいよね」
「別におかしくは無いと思うが…猫は可愛いからな。それに、カヨコの顔立ちも個人的には怖いというよりは綺麗という感想が先に出る」
「え、あ、ありがとう?」
「…実は私もそういう経験はよくあったんだ。不審者に見間違えられる…とか。面倒だが、あの人達も仕事だからな…」
そう、なんなら向こうの世界で会う生徒…というか殆どの人から最初の印象で怖い、とは結構言われていた。カヨコの気持ちはよく分かる
「……だから仮面なの?」
「あー……まぁ、そんな所だな」
正直別の理由だがな…
というか仮面をつけてからの方が不審者に見間違えられる事が増えたような気がするが、気にしないでおく
「あー、先生がカヨコちゃん口説いてる〜」
「ひ、人聞きの悪い…」
色々と終わった事を察してやってきたムツキが開口一番そう言った
別に思った事を口にしているだけで口説いてなどいない
当のカヨコはムツキも居たことに驚いたようだ
「あれ、ムツキ?」
「カヨコちゃんやっほー♪」
「そろそろ日が沈む、帰ろうか。私が送ろう」
二人共頷いたので便利屋のオフィスに向かう
その道中は、ムツキが今日した事を色々とカヨコに話して、カヨコもそれについて興味ありげに聞いていた
便利屋の4人はそれぞれがそれぞれを好いている…良い関係だ、固い絆…というやつだろう
皆個性的な面々だが全員アルの事をリーダーとして認め、慕っている。やはり凄いな、アルは
私はアルへの尊敬の念を深めるのだった
一旦絆エピソード編はこの辺りで…!風紀委員会編はまた今度やりますね…
花のパヴァーヌ編は一旦飛ばし、次からはエデン条約編…!