「…何?」
朝、目覚めた後、今日の準備を進めているとつけていたテレビのニュースで報道されていたのは…
「トリニティとゲヘナがエデン条約締結を急いでいる……?どういう事だ」
私が居た世界では無かった事だ
少々道を外れてしまったか……?
チラリとカレンダーを見る
そう、今日はトリニティの生徒会…ティーパーティーに呼ばれていた
「本当に、何から始めるべきか……」
私は頭を悩ませる。アリウスの事、トリニティの事、そしてそれだけじゃなく、私は先生だ。他の生徒達の事も助けなくては
シッテムの箱を起動し、すやすやと眠るアロナを優しく起こす
「すまないアロナ、今日は起きていてくれ」
『んぇ…むにゃ?あ…あ、はい!』
飛び起きたアロナにおはよう、と挨拶して準備を終えた私は部屋を出るのだった
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「……結構久しぶり…だな。トリニティ自治区は」
元いた世界でも、なんとなく近寄り難く、無意識のうちに遠ざけていたのだろうか
あの襲撃以降、あまり来た覚えはない
辺りを見渡していると、周囲がなんとなくざわついている事が分かった
「なんだ?騒がしいな」
『先生、つい先程この近辺で、誘拐犯がトリニティの生徒さんを人質にして…』
「……どっちだ、アロナ」
『い、行くんですか!?すぐに正義実現委員会の生徒さんや自警団の生徒さんが駆けつけると…』
「聞いてしまった以上、先生として見て見ぬふりは出来ないからな。ほら、行くぞ。案内は任せた」
ティーパーティーとの話も、まだまだ数時間後の予定だしな。色々と見て回る為に早めに来たが…結果的には良かったかもしれないな
渋々ナビゲートを始めるアロナの指示に従い、辿り着いたその場所は、廃墟だった
遠目から見た感じ、正義実現委員会も数名居るが、今は応援を呼んでいる所か
犯人と思われる人物が二階の部屋にある窓から金を出せと叫んでいた
正義実現委員会の生徒が説得しようとするが、聞く耳持たず…か
どうやら犯人は単独犯で、経験も浅そうだ。加えて、冷静じゃない
こっそりと建物の裏側に周り込んでみるが…おや、もうすぐにでも取り壊す予定だったのか、二階の窓のあるはずの場所は取り外されていたので簡単に中に入れそうだ
ちょっとした壁の出っ張りに指を引っ掛け、こっそりと登って室内に侵入成功
「よっ…いしょっと…壁登りなんて久々だ」
犯人と人質は…別の部屋か
犯人の叫び声が聞こえる方向へ向かうと、ドアが開けっ放しの部屋に、犯人と人質を発見した
人質の人数も一人、犯人も一人だ
…まだ気付かれていないな。人質は足と腕をロープで縛られているのか
…よし、行くか
私は駆け出し、ナイフで手早く縄を切断する
その際、小声で「目を瞑れ」とだけ人質の生徒に言っておく
困惑しつつ、ぎゅっと目を瞑る人質
「早く金を───!っ!?テメェ!」
「悪いな、今、持ち合わせが無いんだ。代わりにこれをやろう」
犯人が物音に気付いて振り返った瞬間、閃光弾を投擲した
眩い光が犯人の目を襲う
私の影にいたのと、目を瞑っていたので人質の目は無事だ
私は目を瞑っていたとはいえ、多少影響は受けているが、行動に大して支障は無い
人質を抱え、私は走り出す
「飛び降り…は抱えた状態じゃ危険か…一階に降りるしかないな」
「クソッ!よくも!!!」
階段を駆け降りる。出口はまだか…なんでこんなに入り組んでいるんだ。普通に暮らしてて面倒そうだし、廃墟になるのも頷ける
犯人の銃による弾丸が私の髪を掠めた
危ないな全く…
そうして私は射線を切りながら全力で走り、玄関から廃墟を出る
「ひ、人質が!」
「あの仮面の人は…?」
正義実現委員会の生徒達がざわざわしているが…説明は取り敢えず後にしなくては
「怖かったな、もう大丈夫だ」
抱えている生徒を降ろし、そう言って頭を撫でる
どうやら情報が追いついていなかったらしく、ずっと呆然としていた彼女は、現状を理解して、様々な感情が湧き上がってきたのか泣き出してしまった
そんな人質の子を駆け寄ってきた正義実現委員会の子達に預ける
さて…
「大人しく投降しろ。もう終わりだ」
ようやく玄関から出てきた犯人に向かいそう言う
「クソッ!だ、誰が投降なんて…逃げ───」
突如、犯人の後方にあった廃墟から物凄い音が聞こえ、廃墟が崩れていく
「……キキキキ……ヒャハハハハハァッ!!!」
そんな声を上げつつ砂煙の中から現れたのは…
「剣先…ツル───」
犯人が戦慄し、名前を呼ぼうとした瞬間にはもう既にゼロ距離まで接近していたツルギの所持する2丁のショットガンにより吹き飛ばされていた
正義実現委員会の委員長、剣先ツルギ…トリニティの戦略兵器と呼ばれる彼女はその戦闘経験も相まって、あのミカと同格かそれ以上の戦闘能力を有している
なるほど、廃墟の裏方向に居たから最短ルートで走ってきたのか…
吹き飛ばされた犯人は……見事に気絶している
「ハハハハハハ!!!……………?」
犯人が気絶している事を確認し、辺りを見渡すツルギの目に私が映り、じっと見つめられる
もしかして犯人の仲間かと疑われているのか?
……そうだろうな、仮面の女は怪しいからな…
仕方無いよな…うん………
「つ、ツルギ委員長…!その方が人質の生徒さんを助けてくれて…」
「そ、そうです…」
気まずい空気でツルギも私もどうしたら良いか分からず見つめ合ったまま固まっていると正義実現委員会の生徒とさっき助けた人質の生徒がそう助け舟を出してくれた
「あ、あぁ。そうだった…さっさと自己紹介をすれば良かったな…連邦捜査部シャーレの先生…月司サラと言う、よろしく頼む」
そう挨拶すると、ツルギがショットガンをしまい、口を開いた
「………ご協力、感謝します。先生。よろしければ、ついてきて欲しいのですが」
「わ、分かった」
普通に話している所を見たことはあったが、やはり先程の印象とは全く違うツルギを見ると少々驚くな…
正義実現委員会の子と人質の子も驚いているようだ
そんな様子を一瞥すると、ツルギは背を向けて歩き出したのでついていく
「あ、あの!先生…だったんですね、その、ありがとうございます!いつかお礼をさせて下さい…!」
人質の子がそう言ってくれた
頬が少々赤いのは泣いていたせいだろう
良い子だ、助けられて良かった
ツルギにすまない、少々良いだろうか、と聞き、頷かれたのでその子に近寄る
おや、まだ目元が少し濡れているな
私はハンカチで涙を拭き取り、語りかける
「気にするな、先生として生徒は助けなければ。…今日感じた恐怖は心の傷になってしまっているかもしれない。だが、前を向いて、笑って進むと良い。出来そうになければ、私を頼ってくれ。先生として、どうにかしてみせるからな」
私の言葉を聞いたその子は、少し微笑み…
「……はい!」
元気よくそう返事した
「ハハ、その調子だ。笑顔の方がやっぱり素敵だぞ。では、またな」
手をひらひらと振りながら私は少し離れた場所で待機してくれているツルギの元に戻った
サオリの次ぐらいにツルギ推しなので早く出したくて……(言い訳)