びしょ濡れになった体を拭き、服を干して集合場所に指定した所へ戻る
そういえば試した事が無かったな、と思い水に潜るとどうなるのかを今日試してみたのだが、仮面の中に水は一滴も流れてこなかった
そしてなんと、呼吸が出来た
これで酸素を仮面が生み出してそれを私は吸っているという事になる
二酸化炭素を吐いている筈なんだが…私の仮面からは何か泡らしいものが出ることはなかったらしい
神秘は凄いな、という事で片付ける事にした
開閉できる所を開けると、流石に水が入ってきた
基本仮面がゴーグル代わりにもなるし水場じゃそこそこ…というかかなり便利なのかもしれない
ふと視線をプールに向ける
「夜のプールとは中々貴重な景色だな」
結構辺境の地だからか、輝く星々と月がプールの水面に反射していて、綺麗な景色になっていた
「わぁ…綺麗ですね…!」
「うん、凄い」
「綺麗…」
「ふふふ」
4人も戻ってきたな
…っと…おや
コハルが少々うとうとしているようだ
「今日は沢山動いたからな。皆ゆっくり休むんだぞ?それに、明日からは補習授業が本格的に始まる。私も協力するから皆で頑張ろう」
「はい…!私も部長として頑張ります!」
「うん…」
「あぁ」
「ですね」
各々の返事を聞き、私達はサクッと夕食を取り、部屋に戻ってきた
「私は隣の部屋に居るから、何かあったら呼んでくれ。もし寝ていてもすぐに起きるから」
これはアリウスでの教育のせいだが…案外役に立つ
敵が来たら寝てる場合じゃないからな
私の言葉にヒフミが頷く
「分かりました」
「それじゃあ、おやすみ、皆」
「おやすみ(なさい)」
そう言ってドアを閉め、私は隣の部屋に入る
「さて…と」
私が補習授業部の顧問としてやれる事…取り敢えず対策プリントでも作ろうか。各々の進度に合わせて…
そんな感じに夜を過ごしていると
コンコン、とノックの音
「おや、どうぞ?」
ドアを開けて入ってきたのは…
「し、失礼します…」
「ヒフミ?どうかしたか?」
「その、眠れない…といいますか、先の事を考えると不安…といいますか」
歯切れ悪くそう言うヒフミはその通り不安そうだ
「…そうか、ベッドの上にでも座るといい。少し話そう」
「は、はい…」
ヒフミを中へ招き入れ、色々と話す事にした
1週間後の第二次試験、それも落ちたら第三次試験、そしてそれも合格できなければ…退学
1個人の生徒であるヒフミじゃ抱えきれない重さの問題だ。どうしてこの皆が同時に合格してないと駄目…というシステムなのかもわからないと言うヒフミ
「他にも、何かナギサに言われたか?」
「………はい…誰にも言わないように…と言われているのですが、私の手に負える問題じゃなくって…」
「…トリニティの裏切り者を探せ…と?」
「!?……先生も、そう言われたんですね…」
ヒフミにそれを伝えている…あまり裏切り者とは考えていないのだろうか
なのに、補習授業部には入れている…見つけられなかったら貴女も退学ですよ…という脅しか?
ヒフミとナギサは仲が良いと前の世界でミカが言っていたんだが…
ナギサは…やはり少し精神的に参ってしまっているのかもしれない
「補習授業部の皆と、一緒に居て…アズサちゃんは一見冷徹に見えますが素直で良い子で…ハナコちゃんも時々おかしい格好をしますが優しくて…コハルちゃんだって言葉は時々強いですが人見知りなだけの良い子です…皆、同じ学校の生徒で…裏切り者だなんて……そんな、そんな事…私は……」
そう言いつつ俯くヒフミ
「ヒフミは、優しいな」
私はヒフミの頭を撫でる
「せ、先生…?」
「大丈夫だ。裏切り者の件は私に任せてくれ。ヒフミはこの事については気にせず、自分にできる事をするといい」
「……私に…出来ること…」
俯いていたヒフミが顔を上げたので私は真っ直ぐヒフミを見つつ言う
「あぁ、そうだ。生徒が抱えるのに重すぎるものは、全部私に任せろ。その為の大人、その為の先生だからな」
「……はい…!あ、その…私に何ができるかは分かりませんが…ちょっと考えてみようと思います!」
ヒフミは立ち上がり、やる気な顔でそう宣言する
「うん、その調子だ。ただ、無理はし過ぎるなよ?体調を崩したり怪我したりしたら本末転倒だからな」
生徒は自分を大事にするべきだからな
私?私はもう生徒ではないからノーカンだ
生徒が助けられるのならそれで良いしそうするべきだ
「は、はい…ありがとうございます、先生。気が楽になりました…!」
ヒフミの顔に笑みが戻ってきた。憑き物が晴れたようで何よりだな
「ふふ、気にするな。気が晴れたならそれで良いさ。ほら、今日はもう疲れてるだろう?戻って寝るといい」
「ふぁ…ぁ…そうですね…おやすみなさい、先生」
「あぁ、おやすみ」
部屋に戻るヒフミを見送り…人の気配がするロビーへと向かう
後ろから二人へと声をかけた
「眠れなかったか?ハナコ、アズサ…ってアズサ、制服でどうしたんだ」
「せ、先生」
「……休息は十分だったから、見張りを」
目を逸らしつつそう言うアズサ
「ちゃんと寝ないと最高のパフォーマンスは発揮できないだろう。慣れない環境だということも関係してるかもしれないが」
アズサにそう言い、ハナコにも話しかける
「ハナコはどうした?」
「私も、そんな感じでしょうか…なんだか寝つけなくて」
苦笑しつつそう言うハナコ
「そうか…やはり環境が違うとそういう影響も出てくるか…まぁ、あまり身体は冷やさないようにな。少しでも眠たくなってきたらすぐベッドへ戻るんだぞ」
「ふふっ、はい」
「…分かった」
コクリと二人は頷いたので、私はしつこいかもしれないが早めに寝るんだぞ、と言って自分の部屋に戻るのだった
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その後、その場に残されたハナコと私…アズサは会話を続ける
「……先生、初めて姿を見た時は不気味さを感じていたのですが…お優しい方ですね」
確かにあの謎の仮面は不気味だ
どんな時も外す事がない…という噂は本当らしい
プールは…と思ったが普通につけたまま水に潜るまでしていた
「あぁ、だが…よく分からない事も事実だ。少々過保護だし……」
初めて会った時…私のフェイントを見切って動いたようにしか見えなかった。あれは運だと言っていたが…納得はいかない
それに今日の水汲み場での事……
彼女からは、何故か見知ったような気配を感じる
「それだけ生徒思いなのでしょう。私の事も…気にかけてくれているようですし…なんだか、先生には隠し事が出来ないような気すらしてきます」
「…そうだな。なんであれ、先生が良い人というのに変わりはない」
ハナコの言葉は本当に同感だな
「ふぁ…」
ふと、ハナコが欠伸をした
「先生も言っていた通り、早く寝るといい、ハナコ。私はもう少し散歩する」
「はい、アズサちゃん…無理はしないで下さいね?おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
そうして合宿初日は終わったのだった