シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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【支配】

 

その頃、アリウスでは───

 

「………生徒会長。これで全員です」

 

バシリカに集められたアリウスの生徒達

連れてきた私は生徒会長へそう報告した

 

「…えぇ、ご苦労さまです。少々下がっていなさい」

 

「はい」

 

突然、生徒会長から『アリウスの生徒を全員連れてきなさい』と呼び出され、私はその通りに皆を集め、ここへ連れてきた

下がっていろと言われ、私はスクワッドの皆の所へ戻る

すると、ヒヨリが小声で話しかけてきた

 

「…あの…リーダー…これは…」

 

「多分リーダーも知らないよ。突然の連絡で焦ってたし…」

 

ミサキも小声でいつも通り冷静にそう返す

 

「……(すっすっ)」

 

「『何だろうね』と言っても…どうせロクな事じゃないよ。いっそ楽に───」

 

姫の手話に返答しているミサキがそんな事を口走るので咎める為に名前を呼ぶ

 

「ミサキ」

 

「…………はいはい」

 

そう言いつつ肩を竦めるミサキ

そんな会話をしていると……

生徒会長が椅子から立ち上がり、銀色に輝く指輪をついた右手を掲げ…

パチン、と指を鳴らした

その瞬間、私達スクワッドを除く集められた全生徒が支えを失ったかのように倒れる

 

「なっ!?」

 

「「!?」」

 

「……」

 

「落ち着きなさい。5分もすれば起き上がりますし、特に痛めつけた訳でもありません」

 

何事も無かったかのように椅子に座り直す生徒会長

一番近くに居た子に近付き、脈を取るが、確かに何の異常も無さそうだ。外傷も見当たらない

 

「…何を……」

 

「洗脳……自由意志を奪いました。これで彼女らは私の傀儡。裏切りも無い」

 

忌々しそうに「『彼女』のように長い時間をかけるのも面倒ですし」と吐き捨てる生徒会長

こんな事が可能なのか…あの人自身の力なのか、他の何かによるものなのか…

 

「この指輪を破壊すれば解除されます。まぁ、その時に失う物はあると思いますが」

 

淡々とそう告げる生徒会長

 

「失う…?」

 

「死にはしません」

 

きっと、裏切る者はほぼ居なかっただろうし、傀儡にしてしまえば多少戦闘能力は落ちるだろう

メリットよりデメリットの方が目立って見える

兵力を失ってしまえば…

 

「貴女は…いったい何を…」

 

「………いずれ分かりますよ」

 

そう言いはぐらかす生徒会長

顔は隠されていて分からないし、本当はどう思っているかだなんて分からないけれど、それでも…その言葉には確かな覚悟が感じられた気がした

 

「もう一つ、よろしいでしょうか」

 

「構いませんよ」

 

「どうして…私達だけ…」

 

そう、私、姫、ヒヨリ、ミサキは無事だ

何の干渉も受けていない気がする

 

「あなた達にはやってもらう事がありますから。言われた事をただ行うだけの傀儡では少々難しい」

 

そんな言葉を聞いていると、皆が起き上がった

その目は虚ろで……微かにあった意思は既に無い

 

「全員、下がりなさい。私の呼び出しがあるまで、今まで通り生きているように」

 

【はい】

 

全員が全くの同時にそう答える

そして、機械的に見える動きでバシリカから出ていった

横目でスクワッドの皆の様子を見てみる

ヒヨリは恐怖でいっぱいのようだ

ミサキと姫も絶句している

 

「錠前サオリ」

 

「は、はい」

 

名前を呼ばれ、咄嗟に返事をする

 

「予定されている桐藤ナギサ襲撃…指示はあなたがしなさい。でも、前線には出ないように」

 

「良いのですか…?それでは…」

 

「あれが成功するとは思えません。あの不可解な存在も居ますし…聖園ミカも不安定です。見るべきものも見えていません。最小限の戦力だけ貸し与えておきなさい」

 

「…はい」

 

「エデン条約を前にして無駄に戦力を割く意味もありませんので。では、あなた達も下がりなさい」

 

生徒会長はそう言うと腰の辺りに帯刀していた刀を鞘から抜き放ち、一閃する

その刀は、空を切る……物理的に

空間を切り裂き、現れた漆黒へと生徒会長は入り、消えていった

姿が消えると同時にその漆黒も閉じる

初めて見た時は大層驚いたが…もう慣れてきた

しかし…

 

「……何度見ても、理解は出来ないな…皆、行くぞ」

 

「り、リーダー…すみません…た、立てなくて…」

 

「……ほら、背中に乗れ」

 

腰を抜かしたヒヨリを背負い、ミサキと姫を連れて私はバシリカを出た

生徒会長……あの人は本当によく分からない

甘い時もあれば、利用する事もある。私達を痛めつけていた上官達を大人しくさせたと思いきや、人殺しの方法等は教え続け、エデン条約襲撃に私達を使う

どんな目的があって、こんな事を……?

道中、『今まで通り生きる』皆とすれ違う

そんなアリウスは今まで以上に冷たく感じた

 

─────────────────────

 

「…黒服、進捗はどうですか」

 

「………クックック…突然背後に出現するのは心臓に悪いのでお止めください。とはいえ、普段は徒歩で来る貴女がこうして訪れる…余程焦っていますね」

 

「間に合わせて貰わないと困りますから」

 

コツコツコツ、と音を立ててソファへと歩いて座る虚

 

「……ええ、もうほぼ完成に近付いているようです。ヘイロー破壊爆弾…それも、威力は倍以上のものが」

 

「…貴方はそれならば再生し続けるこの体……殺し切れると思いますか?」

 

「絶対に…とは言えませんね」

 

正直、虚も一か八かの賭けではある

この身体ごと……巣食うものも含めて全てを終わらせる…という決意

殺せなければ困る

それに、あの不可解な存在…先生が自分の予想通り動いてくれるかどうかすら不確定

 

「…そうですか。…ゴホッ、失礼。なんとか威力をもっと増強するようにと頼んでおいて下さい。襲撃は近い…終わりはすぐそこに…」

 

吐血しつつも、手にグッと力を入れる虚

そんな虚に黒服は語り掛ける

 

「虚…貴女、変わりましたね」

 

「……何を言い出すかと思えば…」

 

「見境無く憎悪と虚無、殺意を撒き散らす、私が出会った最初の貴女とは随分と変わりました」

 

「……」

 

別の世界からやって来て、真っ先にベアトリーチェを始末し、アリウスを支配した彼女

 

「最初は貴女に敵対し、壊滅させられるのを恐れての引き入れでしたが……貴女はゲマトリアとしてしっかりと私達の活動を支援していた。これは予想外でした。それに、アリウスにも中途半端に手を差し伸べていましたね」

 

「…役に立つモノを作りますからね、貴方達は。契約は守りますし。アリウスも、傷がつくと機能が落ちます」

 

「不器用な事です。狂い切る事が出来ず…いえ、正気を取り戻した…でしょうか?途中で突然変わった貴女の計画…アリウスの…『解放』やはり貴女の本質は…」

 

「……ゴルコンダとデカルコマニーを急かしておいてください。では」

 

刀を一振りし、虚は消えていった

 

「……『護る』という意思なのですから。自ら一人を悪とする事で、不穏分子ごと消え…彼女らを助けようだなんて、本当に不器用な復讐者ですね…クックック…」

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