シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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多分結構な鬱展開なので苦手な人はお気をつけて…
基本こういうの苦手なので描写が下手すぎたらごめんなさい
虚の事は最終的にバッドエンドで終わらせはしないのでその辺りは安心して頂ければ…

サオリ先生は…空虚な彼女に何を見るのでしょうか


【空っぽの手】

 

赤黒いエネルギーの塊が私を襲い、吹き飛ばされる

 

「───ッ…」

 

冷たい地面の感触

視界が明滅する、意識が朦朧とする

空腹、脱水、体調不良、大怪我、睡眠不足、疲労…身体が思うように動かない

たった一人で何日間……戦っていたのかすらもう分からない

アサルトライフルも、拳銃も弾き飛ばされて手元にもう無い

武器と呼べる物は…私の身体と握り締めたナイフだけ

マダムが倒れ伏した私に近付いてきた

 

「…ようやく…大人しくなりましたか……丁度いい、貴女も生贄に加えてあげましょう。ロイヤルブラッドと仲良く……」

 

「………ハハ」

 

計画通りだ

 

「何を笑……ッ!?」

 

マダムにしがみつき、私は隠し持っていた爆弾をゼロ距離で起爆する

マダムと私は爆風に包まれ、吹き飛ばされる

 

「い…きてる…か……いや…まだ……」

 

熱い、寒い、痛い、苦しい

気力を振り絞り、私は立ち上がる

片目が見えない、左腕は動かない

右腕でナイフを持ち、私は倒れているマダム…いや、ベアトリーチェへと近づく

 

「……ごほっ…ゔっ…ぐ……」

 

「錠…前……サオリ……ッ…!」

 

「お…わりだ………!ベアトリーチェ………!」

 

「がッ…」

 

私はナイフでベアトリーチェを仕留める

 

「……姫…!」

 

どうにか駆け出し、姫を降ろそうと身体に触れる

 

「……ッ…!」

 

その身体は酷く冷たくて

慌てて胸の辺りに耳を当てる

心音は小さいが、まだ生きている

 

「姫…!姫…ッ!アツコ!!おい!頼む!目を……目を覚ましてくれ!!アツコッ!!!!」

 

「………………サッ…ちゃん……ごめんね…私の…為にこんな……」

 

少しだけ目を開けたアツコが私にそう話しかけてくる

意識がある、まだ、なんとか………!

 

「アツコ…!良かった、今すぐ───」

 

「……ううん、私は…もう、駄目みたい…」

 

「…馬鹿な事を言うな!そ、そんな事………!」

 

「ねぇ…サッ…ちゃ…ん…お願…いが…あるの」

 

「……ア…ツ……コ……!」

 

「サッちゃん……私の分まで…生き…て…し…あわせ…を……」

 

彼女の体から力が抜ける

あぁ…分かってしまう

救えなかった、間に合わなかった

私は…アツコを失った

 

「姫……アツコ!!!!!あ…あぁ……!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

私の慟哭はバシリカに虚しく響いていた

一人目を…失った

 

─────────────────────

 

「……邪魔だ」

 

「がっ…は…」

 

私に銃口を向けていたアリウスの生徒を一蹴する

姫の亡骸を抱え、私は歩く

 

「ヒヨリ……!ミサキ………ッ!!」

 

残りの二人の家族を探す為、私は歩く

 

「……ッ…!ヒヨリ……!!」

 

ようやく見つけたヒヨリは…ヘイローが見えない

 

「……ぁ…」

 

それでも、と駆け寄り、肩を揺らす

捕まり、拷問された跡が痛々しく残っているその身体

その中に…ヘイロー破壊爆弾の残骸がある事が分かってしまう

…拷問用に開発された…新型だ

 

「ヒヨリッ!ヒヨリ!!!」

 

「サ…オ…リ…姉さ…ん…私…頑張り、まし…た…何も…喋って…ま…せん…いっぱ…い…褒…め…て…み…んなで…」

 

点滅するヘイロー。ゆっくりとヒヨリは話す

 

「…ぁ…っ…ヒ…ヨリ…よく…頑張ったな…待っていろ、すぐに食べ物か何か……!」

 

「……え…へ…へ………サオ…リ姉さん…は…すぐ来ちゃ…駄目…ですよ……」

 

…理解してしまう。ヒヨリは……

 

「……ッ………………」

 

「ご…めん…な…さ…い……あ…りが…とう…」

 

「ヒヨリ……ッ…ぁ…あぁっ…!ヒヨリ…!」

 

その身体を抱き締める。熱が、消えていく

二人目を、失った

 

─────────────────────

 

「………………」

 

「…だから…言った…でしょ…」

 

「…ミサキ……………」

 

倒れている生徒達、持ち主が消え、残った聖徒会の銃が散乱した部屋

壁に背を預け、座り込むミサキが語り掛けてくる

 

「増援が…来なかったのは……」

 

何回も、何回も聖徒会、最大の戦力バルバラ、アリウスに存在する全生徒を呼んだベアトリーチェ。しかし、増援が来る事は無かった。それは…ミサキが…

 

「…全部、全部全部……無意味」

 

ミサキの身体には四方八方から撃たれた跡

出血が酷い。呼吸が浅い

 

「…姉さん、私の自殺…止めたでしょ…死ぬ…なんて…許さ…ないから…最後…だから…言うけど…まぁ…姉さん達と…居る時は…悪く無かったよ…」

 

「…………」

 

口角を上げ、笑ったままミサキは動かなくなる

頬を涙が伝う

喉を震わせる気力すら私には残っていなかった

そうして私は……誰一人救えず。護る事は出来ず

全てを失った

 

─────────────────────

 

Vanitas vanitatum et omnia vanitas

全ては虚しい

あれは、嘘なんかじゃ無かった

ハッピーエンド?戯言だ

努力した所で、最後には何も残らない

全部、全部全部全部全部全部全部全部全部全部

虚しいモノだから

傷付くのは私一人で良いと、一人でベアトリーチェの元に向かった結果がこれだ。アツコを助けるのは間に合わず、ヒヨリは囚われ、拷問の果てに…ミサキも私の為に戦い、傷付き…皆…失った

何も得ず、全てを失い、最も要らない私だけが残った

強さなんて……私には無かったんだ

今までの血の滲むような訓練も、苦しみも、人殺しの知識も…全て無駄だった

 

「……なんだ、まだ居たのか」

 

足音が聞こえた方向を向くとそこに居たのは

複製された聖徒会…聖女バルバラ

ベアトリーチェも…………アツコも死んだというのに、未だに残っていたのか

ここは、ミサキが戦っていた場所の近く

 

「…殺す、殺してやる、お前が…!ミサキを…!」

 

燃やせ、意思を…復讐の炎を

 

「許さない…許さないッ……!絶対に…!!!」

 

私の頭部を、腕を、脚をバルバラの弾丸が穿つ

痛い、痛い、痛い痛い痛い

 

「知った事か!!!」

 

動け、動かせ、骨が折れた?知らない。動け

靭帯が切れた?知らない。動け

気合だけで私は突き進む

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!!!」

 

弾丸の嵐の中、私は一直線に進んでいく

バルバラが一歩、また一歩と後ずさる

叫べ、恨みを。叫べ、復讐を

 

「バルバラァッ!!!!!」

 

ナイフを振り翳し、私はバルバラを斬り裂いた

 

─────────────────────

 

何日間、こうしていたのだろう

足も動かない。辛うじて動くのは右腕だけ

背中で冷たい地面を感じる

 

「ミサキ。ヒヨリ。姫」

 

隣に横たわる皆を呼ぶ

勿論、答えは帰ってこない

 

「お前達は、天国へ行けたか?楽園へ…行く事ができたか…?地獄へは、私だけだろうか?姫…あまり悪戯をし過ぎるなよ?ヒヨリは食べ過ぎは良くないぞ…?ミサキ…ゆっくり、何も気にせずに…」

 

ずっと喋り続ける。喉が痛い。水分も、食事も取らずに何日間もずっとずっとこうしている

…………何をしているんだろう、私

そう自覚すると同時に、心の底から嗤えてくる

 

「ハハッ…ハハハハハハハ!ミサキの言った通りだ!私は馬鹿だ!!!あはははは!!!こんな世界なんの意味も無い!何が疫病神だ!死神の間違いじゃないか!!!皆、皆皆皆死んだ!!!全部失った!!!」

 

なぁアズサ、お前はそれでも足掻けと言うのか?

全てを失っても足掻けるのか?

教えてくれよ………アズサ………

私は………どうすれば良かったんだ……?

 

「ハハハハハ!………この世界に居る意味…特に無いな。死……アツコ……ミサキ……ヒヨリ…どうして…あんな…事………!」

 

どうして…その答えを私は知っている。だって、私もミサキを止めていたから

そう、家族だから。大切……だから………

…しあわせ、この4文字はそんなに遠いモノだったか?

私は、アツコと、ミサキと、ヒヨリと…家族達と…生きていければそれで良かったんだ

なぁ、神様。私達はそんな事さえ許されないのか?

これが罰なのか?生きる為に罪人になった私達への罰だと言うのか?

さっさと死ねば良かったと、そう言うのか?

 

「……アツコ…ミサキ…ヒヨリ……ごめん…約束は、守れそうにない…皆…また…会えるかな……?ヒヨリ、今行くから…いっぱい…褒めるから…アツコ…私が…地獄だろうと…守るから…ミサキ……許してくれるだろうか…」

 

私の右手に握られたヘイロー破壊爆弾

とっておいて良かった。愚鈍で阿呆な私も多少はマシな判断ができるじゃないか

……それを今発揮した所で何の意味も無い。やはり馬鹿だな、私は

起爆スイッチを押し、カウントダウンが始まる

これで────────

瞬間、足音が聞こえ、右手から爆弾が奪われ、私は何者かに蹴り飛ばされる

その直後に爆弾は起爆し、その何者かを爆風が襲った。直撃だ

床を転がる私は…生きている

 

「……何……が……っ…は…」

 

隣にドサリ、と爆風に吹き飛ばされ落下してきたのは…

 

「……聖園……ミカ……!?」

 

「…ひっどい…顔だね…錠前サオリ」

 

そう言って笑う聖園ミカ

その体は傷だらけで……

一目見て理解してしまう。これは…助からない

 

「何を……何を…している!?お前は私が憎い筈だ!憎くない筈がない!その私があのままにしていれば死んでいたんだ!それを…いや、このままじゃお前が!!!」

 

あれはヘイローを破壊する事に特化したモノだ。聖園ミカが頑丈なのは知っているが、その程度じゃ耐えられない

意識があるのが奇跡だ

 

「…うん、私はあなたが憎かった。でも…気付いちゃった。横たわるあなたを見て、全てを失ったあなたを見て。あなたは私だ…って」

 

…なんだ…それは…?

私は言葉を返す

 

「ふ…ふざけるな!だとしても、庇う必要なんて無かった!お前はお前だ!……先生もっ…あの大人も!お前の味方だろう!なん…でっ…こんな所まで来て…こんな馬鹿な事をした!!見殺しにしていれば…お前は……!」

 

「……出来なかったから、仕方ないでしょ。私もよく分からないんだもん。あーぁ、私ってほんと馬鹿……なんだか…眠くなってきたし……」

 

ミカの瞼が閉じていく

 

「…な…んで…どうして……私を…」

 

どうして皆…私を死なせてくれないんだ……

聖園ミカが語り掛けてくる

 

「……サオリ…私……お姫様になりたかったの」

 

「……あぁ」

 

「ドレス…似合うかな?」

 

「………きっと似合うだろう」

 

真っ白なドレスは彼女にピッタリなのだろう

 

「ねぇサオリ……何処で…間違えたんだろうね…」

 

間違え……間違え…根幹は…

 

「…私のせいだ。私に…関わったから…全部、私のせいで…多くの人を傷付けて、守ろうとしたものは失った。居場所すら自ら壊して…私の存在は……要らないモノだった。嗤えてくる。何も成せない、何も出来ない、状況を悪くする事しかできない私が何かを守ろうだなんて、身の程知らずにも程がある」

 

普段は口下手な自覚はあるが、こんな時はすらすらと己を罵倒する言葉が出てくる

 

「……サオリ…」

 

「さっさと私が自害していれば良かったんだ!あぁそうさ!要らないモノは処分するべきだった!私はただの死神だった!……聖園ミカ。お姫様になれる筈だったお前を魔女へ貶めたのは私のせいだ。…ほら、私が手伝う、引き金を引け。そのぐらいはできるだろう。お前は私に復讐するべきで……私は死ぬべき存在だ!」

 

銃口を私に向けつつ、ミカの手に銃を握らせる

 

「……」

 

ミカは握らせた方とは違う手を伸ばし、弱々しくデコピンをした後、そっと、私の口に指を添える

 

「…はい、復讐。ねぇ…サオリ、お願い。あなたは私。だから…私の…代わりに………生きて。夢を…叶えて…?あなたの…為に、祈……る………ね…」

 

パキリ、と音が鳴り、パリン、と砕けた

彼女の美しく、神秘的なヘイローは姿を消した

 

「………神なんてモノに祈って何になる…私は…私は………また………失った…のに………なぁ…教えてくれ、誰か……私は…私は…どうすれば……」

 

友人になれたかもしれない、絶対に魔女なんかじゃない、そんなお姫様を失った

 

瞬間…姫、ミサキ、ヒヨリ、ミカから何かが飛び出し、私に入り込むような感覚がした後…

 

「…が…ぁ…っ…!?」

 

全身に激痛が走る

無理矢理引き伸ばされるような感覚が私を襲う

 

「き、傷が………消えていく…?!」

 

傷が消え、変な方向へ曲がっていた腕はごきり、という音と共に元通り。邪魔だったから斬り落とした髪が瞬時に伸びる

普通の私……皆…いた頃の…私……!

なんで……どうして………!

あのままなら、きっとそのうち死ねたのに!

 

「……どうあっても…死なせてはくれないんだな」

 

頭上に浮かぶヘイローが…傷跡のような、星の様な形をしたものが増えていき…集まり、やがて一つのヘイローと化す

そうして【生きて】という願い、呪い、神秘は、私に宿ったのだった

 

─────────────────────

 

そこから先は……どうしたんだっけ…?

そうだ、まず、アリウスから命を消し去った

こんな所、存在する意味が無いのだから

残っていてはいけない、場所なのだから

未だに残存していた聖徒会は全て破壊した

アリウス生徒は血みどろの私がアリウス自治区で暴れている事に恐怖し、逃げ出した

学校も住む場所も破壊し尽くした

それでも私に銃を向ける生徒は、殺さない程度に痛めつけて外へ放り出した

トリニティも来ていた気がするが…特になんの問題も無く追い払った

そして、静かになった元アリウス自治区。1ヶ月の間、ずっと放心状態のまま瓦礫の山の上で立ち尽くしていた私は…いつの間にか外に出ていたようだ

ブラックマーケットと呼ばれる場所で私は生きていた

 

「虚しい……」

 

「がッ…」

 

「ぐっ…」

 

白いドレスに血が滲む

二人のボディーガードを仕留め、近付く私から這いずってでも逃げようとするターゲットへ刀…と呼ばれていた武器を振り翳す

拾い物だが、使い勝手は悪くない

近付くまでに撃たれても……今の私は、治る。治ってしまう。餓死もしない。脱水で死ねない。窒息すら私の命を消す事はできない

死ぬ程の苦痛が私を襲うのに

炎さえ、溶岩でさえ、私を焼き尽くす事はできなかった

 

「ひいっ…!助け」

 

鞘のまま振り抜かれた刀はターゲットの頭部を打ち据え、対象の意識を刈り取った

 

「………虚しい…ですね」

 

多くを斬った。この世界は虚しい。邪魔な奴は斬った。この世界は虚しい。不愉快な奴は斬った。この世界は虚しい

託された夢さえ、私は満足に叶えてあげられない

格好と口調を変えたからなんだと言うのだ

その場を去ろうとすると……視界に写ったのは

 

「…阿慈谷…ヒフミ……ッ!」

 

アズサの友人………トリニティの生徒

刀に手をかけ、私は駆け出していた

 

「……!サオリ?!」

 

振り下ろされた刀を銃で受け止めたのは横から割り込んだアズサ

 

「お前も居たか!アズサぁっ!!!!」

 

「えっ、ええっ!?」

 

思わず素の口調で叫ぶ

阿慈谷ヒフミは突然の事態に混乱しているようだ

 

「やめろサオリ!!!」

 

「お前は……!お前はっ………!!!」

 

私は………何をしたいんだろう

なんで、アズサに、阿慈谷ヒフミに…この怒りをぶつけているんだろう

涙が溢れ出してくる

 

「サオリ…!…聖園ミカ失踪、逃げ出してきたアリウスの生徒達…いったい何があったんだ…?!」

 

「………死んだ、死んだ。皆死んだ!!!姫!ミサキ!ヒヨリ!ミカ!!!全員死んだ!私のせいで!!!私が!!生きているせいで!!!!!」

 

「ッ───!」

 

アズサは目を見開き、顔を逸らす

 

「アズサ……私は……さっさと死ぬべきだったんだ。足掻いた結果がこれだ。生きた結果がこれだ!大切なモノ、守りたかったモノ!全部失った!!!それでも、まだ足掻けと言うのか!生きろと!!!お前も!そう言うのか!!白洲アズサぁっ!!!!!」

 

受け止められたまま全力で刀を振り、アズサを吹き飛ばす

 

「ぐあっ……!」

 

「アズサちゃん!」

 

「うぐ…っ…サオリ………」

 

「…アズサ……もう…私には分からない……何も、何も分からないんだ…努力が足りなかったのか…?私の努力は…報われなかった……私が…罪人だから……!そんな私が…!皆を───」

 

「…そんな事っ…」

 

瞬間、空間がヒビ割れ、砕け散る

出現したその漆黒は辺りのモノを手当たり次第に吸い込んでいく

 

「きゃあっ!!」

 

「!?ヒフミ!」

 

アズサが手を伸ばし、ヒフミの手を取るが、アズサも咄嗟の事で体勢が悪い

このままだと、二人共飲み込まれてしまうだろう

 

「ぐっ…う……!」

 

「アズサちゃん…!こ、このままだとアズサちゃんも危ないです!私は良いので、アズサちゃんだけでも…!!!」

 

「そんな事…出来る筈が…無い…!例え…無意味だったとしても…!もし、それでもっと酷い結末を辿る事になってしまったとしても…諦めるなんて…!出来ない!!!」

 

アズサの叫びを…聞いてしまった

 

「………ッ…!」

 

足が動いていた

さっきまでやっていた事なんて忘れて、足が、手が、身体が動いていた

…本当に、馬鹿で、自分勝手だな…私は。自分で傷付けようとしたアズサ達を助けようだなんて

駆け寄った私はアズサとヒフミの手を取り、全力で穴と反対方向へ投げる

 

「サオリっ!?」

 

「………すまなかったな、アズサ…あれは…私の罪だ。自業自得だ…私は…嫉妬していたんだ。私が…護りたかった…幸せに…したかった…でも、それは無理だ。私は誰一人として護れない、そんな資格も無い愚か者。お前は…前に進め。振り返る事なく、前へ…光の差す場所へ……不要なモノは捨てていけ…!」

 

今出せる全力だ。後先も考えていない。崩れた体勢で踏ん張るなんて事は出来ず、私は吸い込まれる

 

「サオリ!!!!!!!」

 

私に手を伸ばそうとするアズサは阿慈谷ヒフミに引き止められる

それでいい、阿慈谷ヒフミ。こんな事を思う資格は私には無いが……アズサを頼んだ…きっと、お前は…アズサにとっての光の象徴だ

……本当に優しいな、アズサは

私の為に…そんな悲しそうな表情をして…

 

「………今度は、護れたかな」

 

私はあるのかも分からない底へと落ちていく

アリウスは無くなり、敵の私なんて忘れて、アズサはトリニティで暮らしていくのだろう

疫病神が…死神が…邪魔者が…消えるのだから

あぁ……虚しいな……

目を瞑ろうとすると……ふと、何かが接近している事に気がついた

 

「……なんだ…あれは………?」

 

姿も不明瞭だが、何かが居る。それだけは分かった

その何かは私に近付き………入り込んでくる

 

「がっ……あぁ…ッ!あ゙ぁぁぁぁぁ!!!憎い…!憎い憎い憎い!!!何故!私が……』

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!

虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい虚しい!

激痛と共に思考が支配されるような感覚

 

『……違っ…違う!!これは私のせいだ!私の……罪だ…!!!私に…!他者を恨むだなんて事は許されない!!!!!」

 

何なんだ…!?私の中に…!

思考が分裂していくのがわかる。憎しみに支配される私…は、もはや他人の様に感じられた

あぁ…っ…!憎い……っ…

腕が赤く変色していくかと思いきや、私の力により再び戻る

無論、これにも痛みが伴う

 

「がっ…ぁ……」

 

細胞が破壊され、無理矢理それを取り除き、新しい細胞を作って元のように置き換える

尋常じゃない程の激痛に私は意識を失った

次、目を覚ました時……私は、アリウスに居た

そう、瓦礫の山じゃない、アリウスに

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