シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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家族

 

水の入ったプールが日光を反射して輝く

そのプールサイドで、私とミカは話していた

 

「へぇ?そっかそっかぁ、確かに先生は「シャーレ」所属だもんね。本来、トリニティとは無関係の第三者。なるほどね…私達にとってはずっと「トリニティ」が世界の中心みたいな感じだからアレだけど…新鮮な答え。それもそれで正しいよね。つまり先生はどの学園の味方、とかじゃなくて…」

 

ミカの言葉に頷いて私は言葉を続ける

 

「あぁ。私は「生徒達」の味方だ」

 

その言葉を聞き、さっきまでとは違い、ミカが恐る恐る…と言った様子で話しかけてきた

 

「……その、つまり、先生は…一応、私の味方…でもあるって事…?私も、この立場とはいえ、生徒ではあるんだけど…」

 

「一応、じゃない。正真正銘、私はミカの味方でもある。だから、誤った道に進みかけたのなら私は止めるし、良いことをしたら沢山褒める」

 

先生として、大人として、これは断言できる

どんな子であろうと私は見捨てない

私は、生徒の味方で居たい

 

「……わーお、サラッと凄い事を言うね、先生。そういう話術…なのかもしれないけど、うん、純粋に、嬉しかったかも。でも、その言葉を額面通りに受け取るのはちょっと難しいかな〜」

 

む…確かに、まだ此方では出会って日も浅い。信用はすぐに得られるものでもないからな

 

「だからそのまま受け取るんじゃなくて、私から先生に取引を提案させて貰おうかな」

 

「……ふむ」

 

「トリニティの裏切り者が、誰なのか教えてあげる」

 

そう言うミカの言葉に耳を傾ける

 

「補習授業部に居る…トリニティの裏切り者。それは…………白洲…アズサ」

 

「…アズサ、か」

 

私が私じゃなかったら、何も知らない、ただの一般人だったのなら…今の状況にはきっと混乱していただろう。様々な陰謀、事情が交錯し、混沌と化す現在。結末まで…全て知っている私だからこそ、揺らがずに居られるが…改めて、先生の凄さを実感した

あの人は、これを自力…いや、生徒達と共に…力を合わせて、乗り越えたのだから

それにしても、アズサ……

昨晩の事を、思い出す

 

─────────────────────

 

昨日の夜、問題を作り終わった後の事。私は偵察…という名目で外へ出歩くアズサをこっそり追っていた

そう、今日は…

 

「来たぞ、リーダー」

 

「……遅かったな、アズサ」

 

ここの私と、接触する日だから

物陰に身を潜め、気配を消しつつこっそりとその様子を眺め、耳を傾ける

 

「こっちは特に異常───」

 

「アズサ。報告は…もう良い。これからの定期報告も、全て無効だ」

 

「……何を……?!」

 

アズサが驚いている

私も驚いた。これは…明らかに…私の世界とは違う

 

「アリウススクワッドのリーダーではなく…私、錠前サオリとして…伝えたい。アズサ、トリニティから逃げてくれ…」

 

「……サオリは、生徒会長は…何をするつもりなんだ…?」

 

アズサの両肩を掴み、縋るようにここの私は言葉を続ける

 

「………私は…お前を…アズサを…傷付けたくない。頼む、逃げてくれ…私の手で…っ…仲間を…家族を……傷付けたくない……!」

 

「サオリ………」

 

「姫を…ヒヨリを…ミサキを…護りたかった…護るためには…こうするしかなかった……いや…これは…言い訳…だな……私じゃ…護れなかったんだ…こんな…方法でしか……っ…!だから、アズサ…」

 

弱々しい声。あぁ…ここの私は…きっと、折れきってはいないのだろう。あの教えを証明するためではなく、家族を護る為。ただそれだけの為に動いている。でも、じわじわと、追い詰められて…少しずつ、あの教えを信じ始めている

そう考えていると、アズサが言葉を返していた

 

「…それは、出来ない。サオリ」

 

「……そう、言うだろうと…思っていた。お前が…見つけた居場所、知人、友人…見捨てて逃げる筈がない…」

 

アズサの事は、よく分かっているらしい。今の時期でも…私と違ってしっかりコミュニケーションを取っていたようだ

私は…あまり話せなかったからな…

 

「うん、私は…諦めて逃げる…なんて、出来ない」

 

「…そうか…そう…だよな。………アズサ。私の事は…もう忘れろ。私はただの敵、お前が…倒すべき、撃つべきの…アリウススクワッドのリーダー。止めたければ…私を…倒せ。……ではな、【トリニティ】」

 

「………っ……」

 

ここの私は踵を返し…歩き出す

ふと、アズサの方を振り返り、泣きそうな声と顔で精一杯微笑みつつ、呟いた

 

「隈が酷くなってきているぞ。もう夜更かしは、程々にな」

 

「サオリっ…!」

 

きっと、ここの私も…矛盾した言葉だということには気づいているのだろう。アズサの夜更かしの原因は、自分達の襲撃のせい

それでも、きっと…伝えたかった

家族としての、最後の言葉

あぁ、分かってしまう。私だから…その、悲しみも

アズサが手を伸ばし、駆け出そうとするが、それよりも早くここの私は姿を消したのだった

 

「………………」

 

アズサが伸ばしていた手は、力無く下がる

 

「……こんな所で、どうしたんだ。アズサ」

 

「ッ…先…生……どうして、此処に…」

 

偶然を装い、私は姿を見せる

酷く悲しむアズサを…見守るだけ…だなんて出来なかった

 

「……悲しい事が、あったんだな。ほら、おいで。そんな時は泣くと良い。我慢する必要なんて無いんだ」

 

「………うんっ…」

 

私はアズサを抱きしめて、アズサは私に抱かれたまま沢山泣いた

家族との…離別

お互い、家族だと想い合っていたのだから、その悲しみはきっと深い

アズサは強い。私よりも、ずっとずっと

でも、だからって一人で全部抱えて、耐える必要は無いんだ

また、会わせてあげなくてはな

 

「……っ……ごめん、先生…ありがとう……」

 

「気にするな。さぁ、戻ろう。ゆっくり休んで、しっかり元気にならないとな」

 

私はアズサを抱えて合宿場へ歩き出す

アズサも特に抵抗する様子もない

 

「……先生…は…なんか…懐かしい…感じがする」

 

「…そうか、落ち着くのなら、まぁ、良いのだが」

 

……もしバレたら私はどうすれば良いのだろうか

そんな事を考えつつ、合宿場へ戻った、そんな記憶

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