「さて…そういえば、どうしてクロとマリーは此処に来たんだ?結構本校から離れているし…何か用事か?」
私の問いに、水を飲み終わったマリーが答える
「はい、用事…ですね。補習授業部の皆さんが此処にいると聞きまして…クロさんは…」
「あ、その、私は先生にお礼が渡したくて…先生がここに居ると聞いて…それじゃあ行こう!と思って校門に向かったらマリーさんが丁度出発しようとしてた所だったので一緒に来たんです。あ、お礼はこれで…お口に合わなかったらごめんなさい…」
可愛らしく梱包されたそれは、クッキーだった
…これ、手作りか。よく出来ている。凄いな
「なるほどな。お礼は気にするなと言ったんだが…とても嬉しい、ありがとうクロ。有り難く頂こう」
「ひゃい…」
また顔を真っ赤にして俯くクロ
そのうち大事に食べるとしようか
「それで…マリーはどんな用事でここに?」
「あ、はい。私は白洲アズサさんを訪ねてここに来ました。先日、アズサさんが助けて下さった生徒の方から感謝をお伝えしたいとの事で、諸事情ありまして私が代わりに…」
私がアズサを捕獲した時のアレ関連か
「あぁ、あれか…解決したのか?」
「はい、いじめも無くなって、いじめていた方達からも謝罪されたらしいです」
「それは良かった」
少々不安は残ってしまうが……
コハルも眉を顰めている
「いじめ…」
「まぁ、聞かない話ではありませんね。皆さん狡猾に、陰湿に行うので表に出てくる事はありませんが…」
ハナコが冷静にそう言う
「……そうだな、悲しい…事だ」
沢山の人が集まれば、嫌でも出てくる問題だ。仕方無い事なのかもしれないが…
やっぱり、生徒達が傷付けあっているのは悲しい
「その方によると、毎日のように嫌がらせなどを受けていて、その日も呼び出されたみたいで…そこを、偶然通りがかったアズサさんに助けていただいた…と」
「へぇ…そうなんだ」
コハルがアズサへ好感の視線を向ける
「…そういえば、そんな事もあったな。気に入らなかっただけだから、別に大したことはしてない」
「そしてそのいじめっ子達が正義実現委員会に連絡して誤った情報を伝えて……という感じか。よく正直に話したな…と思ったが、ツルギも向かっていたし当然か…アズサもしっかり話していれば良かっただろう」
正義実現委員会は聞く耳持たずでも無い筈だ
私の言葉にアズサはムッとしつつ言う
「何がどうあれ、売られた喧嘩は買う。あの時も先生に捕まらなければもっとやれたのに…」
「つ、捕まえられてラッキーだったな…」
安堵で胸を撫で下ろす
あそこで捕まえられていなかったらアズサはきっと誤解されたままトリニティ中を逃げ回っていただろう
「それで、その方が報告も兼ねて私達を訪ねてくださって…アズサさんに感謝をしたいと。ただ、学園では見つけられず、色々と聞いて回って此処に来ました」
なるほどな…結構気になっていたこの事が解決したのは喜ばしい。アズサは…
「……そうか。さっきも言ったけど、別に特別感謝されるような事じゃない。最終的には私も捕まったし」
「こ、後半は特に関係ないと思いますが…」
ちょっとずれた発言にヒフミがツッコミを入れる
「それに、あの事態は気の毒だけど、いつまでも虐げられているだけじゃダメ。それが例え虚しいことだったとしても抵抗し続けることをやめるべきじゃない」
淡々とそう告げるアズサ
しかし、その意見は大事な事だ
「厳しい意見だが、正しいな。ずっと一人で抱え込んで絶望してるだけでは、何も変わらない。一人じゃ無理だと言うのなら、周りを頼るべきだ。もしまた何かされた時はシャーレに連絡してくれれば、すぐに助けに行く…と伝えてくれ。あとは彼女の勇気次第…だな」
勿論、またいじめが起きない事が最善だが
「…はい、そうですね…お二人の言葉、しっかり伝えておきます。……アズサさんは暴力を信奉する氷の魔女、先生は仮面の下を見た人を消しているから素顔は誰も知らない……等の噂を聞いていましたが、やはり噂は噂ですね」
ほっ…と胸を撫で下ろすマリー
いや流石に聞き流せなかったんだが!?
「待ってくれ、私はそんな噂が流れているのか?」
「と、時々…耳にしますね…」
残酷な事実を告げられる
私の見た目が怪しいのはまぁ…事実だが…
「何処の妖怪だそれは…」
嘆くように天を仰ぐ
「そ、その、私は…格好良いと思います…!」
クロがそう励ましてくれた
なんて良い子なんだ、ありがとう…
クロの頭を沢山撫でる
「でも私達も、まだ先生の素顔は見たことが無い。嘘だと言い切る事も出来ない」
「ですねぇ。これだけ一緒に居るのですが…」
「プールですらその仮面のままだったもんね」
「あはは…そういえば、食事している所も見たことが無いような……」
アズサ達がそう言い、私の方をじっと見つめてくる
「「「「………」」」」
「ど、どうしたんだ皆」
アズサが納得したように頷き、呟く
「先生は妖怪だったのか……」
「いや違うが!?」
断じて違うのだが!?
というか何に納得したんだアズサは!
「塩とか持ってきた方が良いのかな」
キッチンに向かおうとするコハル
「コハル、私が例え妖怪だったとしても祓うのはやめてくれないか……?」
困り顔で思案していたハナコも口を開く
「困りました、先生が妖怪だという噂を否定できる情報を私達は持ち合わせていませんね」
「いや…ほら…その…さ、触れるから…?ヒフミ、ヒフミは……」
「あ、あはは…そ、その…ごめんなさい?」
ササッと距離を取るヒフミ
とてもかなしい
マリーとクロはあわあわしている
「……そろそろ泣くぞ、私。見たいか、大の大人が泣き喚く所を…!」
そう脅しにもなっていない気がする脅しをかけると悪ふざけだったみたいで皆謝ってくれた
先生で遊ぶんじゃありません…!
必死にフォローしてくれていたクロは沢山撫でた
クロは151cmでマリーと同じ身長です
ちなみに内心泣く先生も見てみたいとか思ってました