シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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夜のお散歩

 

「楽しい時間はあっという間…よく聞く言葉だが、本当の事だな」

 

洗濯し、乾いた普通の服に着替えた私はそう呟く

もう日は落ち、月が昇り始めている

大変でもあったが、今日はいい1日だった───

 

「いいえ!まだです!このまま1日が終わりだなんてそんな勿体無いことはさせません!!!」

 

隣の部屋からそんなハナコの声が聞こえてきた

何事かと思って私は隣の部屋へ向かう

 

「突然の事でしたが、せっかくのお休みじゃないですか。皆裸で交わったのにこのままはいおやすみなさいだなんて───」

 

「いや裸ではなかったが」

 

「そうよ!勝手に記憶を捏造しないで!」

 

いつも通り私とコハルがツッコミを入れる

 

「それはともかく、このまま寝てしまうのは勿体無いです。まだ火照っているといいますか、物足りないといいますか…」

 

「なるほどな」

 

そういう事か…理解はできる

今日は楽しかったからな、もう少し遊びたくなったか

 

「具体的には?」

 

アズサも興味津々な様子でそうハナコに聞く

 

「合宿といえば、やはり合宿場を抜け出す事も一つの醍醐味と思いませんか?さぁ!皆で合宿場を抜け出してお散歩しましょう!トリニティの商店街には24時間営業の店も多いので買い食いやショッピングもできます!」

 

本当にテンションが上がっているんだな、ハナコ

心なしか目も輝いている気がする

 

「こ、校則違反じゃん!そんなのダメ!」

 

コハルはそう言うが…

 

「ですが、意外と皆さんやってますよ?そういう人、周りに居ません?ヒフミちゃん」

 

「あ、あはは……そ、そう…ですね…」

 

単身ブラックマーケットへ行くヒフミだ。夜間に外出ぐらいペロロの為なら平気でするだろうな…

 

「どうですか?楽しそうだと思いませんか?コハルちゃん」

 

「えっ…と…きょ、興味はあるけど…」

 

コハルも少しずつ素直になった

この合宿を通して心を開いてきてるのだろう

 

「というか、先生が居るのにこんな話していいの!?」

 

ごもっとも過ぎる事を言うコハル

 

「ちょっと行って、ちょっと散歩するだけですから。良いですか、先生?」

 

ハナコがそう聞いてきたので腕を組んで壁へ寄りかかりつつ少々演技ぶった振る舞いで言葉を放つ

 

「ふっ…答えは一つだぞハナコ」

 

「その…答えは…!」

 

ゴクリと生唾を飲み込み、緊張した面持ちで言葉を待つハナコ

 

「なにこれ」

 

「あはは……先生もテンションが高いですね…」

 

コハルとヒフミがそう会話していた

そして私は答えを言い渡す

 

「楽しそうだ、行こうか!」

 

「あ、良いの!?」

 

コハルは驚き、ハナコはまた笑みを浮かべる

 

「先生ならそう言ってくれると思っていました!」

 

「もう準備はできた。いつでも行ける」

 

制服に着替えたアズサが既に隣に居た

 

「いつの間に…早いなアズサ。ほら、皆も着替えて。あ、お金は大丈夫だぞ。私が出すからな」

 

本当に急ではあったが、せっかくのお休みだ

存分に楽しんで、羽根を伸ばして欲しい

 

「流石にそこまでしていただくのは…」

 

ハナコがそう言ってくるが…

 

「その代わり、補習と試験を頑張ってくれ。補習授業部全員で合格してくれるのが、私にとって最高のお返しだ」

 

「…はい、ありがとうございます…!」

 

どうやらヒフミ達も着替え終わったようだ。では…

 

「夜のトリニティ自治区へ行ってみようか。はしゃぐのはいいが、はぐれないようにな」

 

頷く皆を連れて、私は合宿場を出発するのだった

 

─────────────────────

 

「よし、着いたか」

 

「結構活気があるものだな…」

 

アズサがキョロキョロと周囲を眺めている

 

「あの喫茶店とか…そこのスイーツショップとか、24時間営業のお店です。なんだか夜に来るといつもと違う…って感じで楽しくなってきますね…!」

 

ハナコも合宿場から引き続き楽しそうだ

今日のハナコはなんだか年相応の女子高校生という感じだな。いつもは少し大人びて見えるのだが…

息抜きになっているなら良いな

 

「ちょっと進めばモモフレンズのグッズショップがあるんですよ!結構限定品も取り扱ってて…」

 

「流石、詳しいですね、ヒフミちゃん」

 

「あ、あははは…」

 

ヒフミが知らないモモフレンズ関連の情報は無いんじゃないかとまで思ってしまうな

コハルは…

 

「うぅ…結局乗っちゃったけど、こんな所ハスミ先輩に見つかったらすっごい怒られそう…」

 

冷静になって心配になってきたらしい

 

「まぁ…その時は私が一緒に怒られるから…ハスミの事だ、そこまで激しく叱る事は無いだろうし、取り敢えず今を楽しむと良いぞ、コハル」

 

「ハスミさんは後輩たちに優しい方だと聞いていましたが……」

 

「あ、いや、普段は優しくて、強くて、さいしょくけんび?な完璧な先輩なんだけど…怒るとやっぱり怖くて…」

 

コハルが話したエピソードはゲヘナの生徒会…万魔殿との会談時に見事に地雷を踏み抜かれたハスミ

会議自体駄目になってしまい、帰ってきたハスミはすごく怒っていたらしい

 

『絶対に許せません…!万魔殿!ゲヘナ!』

 

コンプレックスだった部分を指摘され、挙句の果てには罵倒されたのだから正直怒るのは当然だ

ゲヘナの生徒会長…羽沼マコト…前居た世界でも話した…というか、依頼を受けたことはある

あぁ、勿論エデン条約後の話だ

多分気付いていなかった。副官の方は勘づいていたようだが、

少々考え無しではあるが、依頼主としては悪くなかった。ただ、風紀委員会…というより空崎ヒナが関わった瞬間全てを使ってでも全力で妨害しに行くのは困ったが…

そして、改めて理解できたのはゲヘナとトリニティにはやはり確執が大き過ぎるという事

ハスミのゲヘナ嫌いについてはゲヘナの日頃の行いで鬱憤が溜まっていた所にマコトでトドメを刺されたのだろう

 

「そんな感じですっごく怒ってて…」

 

「なるほどな、まぁ、その怒りをコハル達にぶつける事は無いだろうし、大丈夫だと思うぞ。その後のハスミの様子はどうだったんだ?」

 

「そ、そう?でも、一応覚悟はしておかなくちゃ…その後は…宣言してた」

 

「宣言?」

 

「そう、『今度こそ私は!ダイエットをします!』って…それ以来、そこまでご飯も食べなくて少し心配で…」

 

「そうなのか…今度会ったらさり気なく聞いてみようか。食事は大事だからな…」

 

そんな会話をしつつ私達は夜のトリニティを歩いていった

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