シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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予想外

 

指定された場所へと辿り着いた

 

「さて、この辺り…っと、あれか?」

 

車が走ってきて、私達の目の前で停止する

これは……救急医学部の…?

ドアが開き、生徒が降りてきた

 

「お待たせしました。死体は何処ですか?」

 

無表情で淡々とそんな事を宣う生徒

彼女はセナ。氷室セナ

ゲヘナ学園の救急医学部。その部長だ

彼女が居なかったら…私は先生を殺していたかもしれない。私が一方的に恩を感じている生徒だ

 

「……いや死んではないが」

 

なんとか捻り出した言葉で一応ツッコんでおく

 

「失礼。死体ではなく負傷者でしたね。えーっと、納品リストには…新鮮な負傷者4名に、人質が1名、ですね───おや?」

 

手に持った紙を見つつ、私の方を見ると数秒固まった

 

「失礼。…あなたは?見た所、正義実現委員会ではないようですが…」

 

セナは一瞬銃へ手が伸びかけたが、拘束されている美食研究会と後ろに控える正義実現委員会達を見て止まる

名乗ろうとするが、それより先によく通る声で先に紹介される

 

「その方はシャーレのサラ先生」

 

この声は…

車の後ろ側から出てきたのは、小柄ながら独特で強い存在感を放つゲヘナ学園最強戦力…空崎ヒナ

 

「…驚いた。ヒナも来ていたとは」

 

予想外だったな。イオリやアコ辺りが来るのかと思っていたが…ヒナが来るとは

 

「久しぶりね、先生。逃げられても困るし、丁度空いていたから」

 

空いていたのなら部下に任せて休んでいれば良かったものを…ヒナは部下を信用していない…という訳では無いのだが、『それなら私がやった方が早い』で自分で動いてなんでも解決してしまう所がある

 

「時には部下に任せて休む事も大事だぞ。不安なら、私に連絡してくれれば私も協力する」

 

「…そう。いざとなったら、そうさせてもらう」

 

これ確実にやらないやつだろう

今度ゲヘナにも行かなくてはな…

そう考えていると、セナがヒナへ話しかけていた

 

「知り合いでしたか、風紀委員長」

 

「まぁ、そうね」

 

「一応、私が引き渡す事になった経緯を話しておこうか」

 

ハスミに言われた通りの事を話し、トリニティ側も問題にはしたくない事を伝えた

 

「なるほど、確かにそうね。シャーレの先生が生徒を引き渡す…これなら政治的に考慮しないといけない部分が大幅に削れる。私達も、政治に一番遠い救急医学部に頼んで来てもらったから、これでまぁ大丈夫でしょう。ハスミさん…だった?提案した副委員長さんにお礼を言っておいて。あとうちのバカがごめんなさい、と」

 

「あぁ。どっちも伝えておく」

 

基本的にゲヘナは少々危険なのは間違いないが…良い子も居る事はハスミにも知ってほしいな

 

「申し遅れました、私は氷室セナ。救急医学部の部長です。よろしくお願いします」

 

ペコリとお辞儀するセナ

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

私もそう返事をした

 

「さっさと乗せてしまいましょうか……って、なんだか異様に静かね、あなた達」

 

「ふふっ、ヒナさん。私達にはすべき事がありますから…」

 

「……何、そのすべき事って…」

 

眉を顰めつつ言うヒナ

ヒナも美食研究会には手を焼かされていたのだろう

ゲヘナは真っ当な倫理観で責任感があればある程大変な学校なのだな…

 

「ふふふ……そのすべき事とは…!そう、いち早く反省を示し!釈放されて!フウカさんに謝罪し!先生に美食を味わってもらう事!」

 

「………先生?」

 

これは一体どうしたのか、と不思議そうに聞いてくるヒナ

 

「しっかりと話しただけだ。これが私の…先生のすべき事だからな」

 

「……そう。生徒の味方…だものね」

 

「よく分かっているな」

 

感心したような、呆れたような、どっちとも取れるため息をつきつつ、ヒナはさっさと大人しい美食研究会を車に乗せていく

 

「フウカは…」

 

「まだ寝ているな。私が運ぼう」

 

そうして全員乗せ終わり…

セナが操縦席へ戻っていく

 

「いつでも出発できます。風紀委員長」

 

「少しだけ待って。……先生、トリニティで一体何をしているの?」

 

「私か?補習授業部の顧問として、成績の悪い生徒達を助ける為に動いているが…」

 

「それは知ってる。色々と情報は入ってきてるから…この時期にトリニティに居るとまるで……いえ、それは…無い…か。先生だもの」

 

一人で納得するヒナ

エデン条約の件での心配事だろうか

 

「大丈夫だ。さっきも言った通り、私は『学園』の味方じゃない」

 

「…そうね」

 

「エデン条約の事は、私も色々と調べている。……一応、今私が立っている状況を教えておこうか」

 

私はヒナに補習授業部の事を話し…

 

「…なるほど、ね。先生、今だいぶ複雑な状況に居るのね。それ、私に伝えて良かったの?」

 

「あぁ。ヒナは信用しているからな」

 

私の言葉にヒナは目を見開き、顔を逸らした

 

「そういうのは先生の悪い所ね…」

 

そう呟いていたが、何かしてしまったか…?

 

「…?」

 

「こほん、気にしなくて良いから、続けて?」

 

咳払いして、話の続きを促すヒナ

ヒナに言われた通り続きを話す事にした

 

「あぁ。それで、私はヒナがエデン条約についてどう考えているかを知りたい。平和条約か…それとも、軍事同盟なのか」

 

軍事同盟…これは、ミカが言っていた事だ

一応の確認だ。ヒナならば……

 

「…なるほど、そういう見方も…無くはないけど、少なくとも私はそうは思わない」

 

やはりそうか。聡明だ

 

「ふむ、なるほどな。ありがとうヒナ」

 

「これだけでいいの?」

 

「あぁ、その言葉が聞けただけで満足だ」

 

エデン条約の事は大体把握してあるからな

アリウスが関わった部分は特に知っている

ふと、ヒナが聞いてきた

 

「……補習授業部の事は、先生が守るのよね?」

 

「勿論だ。私の全てを賭けてでも守る」

 

即答で返す

 

「……そう。じゃあ、またね」

 

ふっ、と少し笑い、ヒナは車に乗る

美食研究会達を乗せた救急医学部の車は走り去っていった

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