「では、約束通りモモフレンズグッズの授与式を始めます!」
「!!!!!!!!」
今までに見たことが無い程目を輝かせるアズサ
「え、選んでもいいのか!?」
「はい!好きな子をどうぞ!」
「本当か!?となると……むむむ…!!!」
ぬいぐるみを手に取りながら熟考する
「ふふ、嬉しそうですね」
「………」
「好きな物が出来たというのは喜ばしい事だ。いいモチベーションにもなるしな。今回のアズサの件は特に良い例だろう」
悪い例は……それこそ美食研究会とか…だろうか
「ハナコちゃん達は…」
ヒフミがそう聞くが、ハナコとコハルは首を横に振る
「私は大丈夫ですので…」
「わ、私もいい…」
「そうですか……」
しょんぼりするヒフミ
好みは人それぞれだからな、仕方無い
「〜〜〜〜!決められない!ヒフミ!私の代わりに選んでくれ!」
「は、はい!えーーーっと…じゃあ、このインテリなペロロ博士はどうでしょうか!」
ヒフミが持ち上げたのはメガネをかけたペロロ
…そうか、此方でも、やはりそうなるか
「…!よし、じゃあその子にする!」
「今まさに勉強を頑張っているアズサちゃんにピッタリかと!」
「良かったな、アズサ」
「うん!本当に可愛い、好き、えへへ……」
ペロロ博士を抱きかかえ、緩みきった顔のアズサ
「これからはこのカバをヒフミだと思って大事にする!」
ギュッとペロロ博士を大事そうに抱えるアズサ
ヒフミだと、思って………か……
「………っぁ…」
瞬間、フラッシュバックする私の記憶
─────────────────────
地面へ落ちたモノへ手を伸ばし、拾い上げる
「なにせ、この『友情の証』とやらを落としていってしまったからな」
目の焦点が合っていない珍妙なぬいぐるみ
「あいつは必ずこれを取り戻しに来るだろう」
アズサはそんな性格だ
あそこで光を得たのなら尚更
「闇の中で光を見つけた虫はもうそれ無しでは生きられない。こんなつまらないモノがアズサの心を支える『光』なんだろう」
アズサ、お前は…………いいや、違う。間違ってなんかいない。私は…私は………
雑念を振り払うように声を出す
「あいつはこれを諦められない。絶対に戻って来る。その時に改めて、この世界の真実を教えてやろう」
……目の前で光を失えば、きっとアズサも思い知るだろう
そんな私の耳に、異音が届く
「………?この…音は…」
薄っすらと聞こえる音。まるでそれは、秒数を数えるような…
まさか、いや、あのアズサが…?あり得ない…等と考えつつ私はナイフを取り出し…
ぬいぐるみの腹部に向けて───振り下ろした
刀身がザクリと入っていく
布を切り、綿を裂き…硬いものに、止められる
殺意が、私を射抜いた
─────────────────────
「先生!しっかりしてください!」
「息が…?!早く保健室…いえ、救護騎士団を!!!」
「先生…!先生ぇっ!!」
「先生!!ぐっ…!この仮面…外せない…!?」
皆の声が聞こえる
私は…っ…なんて…事を……ッ…
苦しい、頭が…痛い
罰だ、これは、当然の…報い───
『呆れた、自罰的なのも此処まで来ると才能だな。私は既に赦してる!過去は過去!今は今!お前は何だ!!!錠前サオリ!!!!』
微かに、けれど確かに聞こえたその声は…
さっきまで聞いていた、最近聞いていた声とは違う、少し大人びた、けれど紛れもないアズサの声
…そうだ、今の……私は………!!!
「……っ……はっ…はぁっ……!」
どうやら、息が出来ていなかったらしい
息を吸い込む。落ち着け、私
しっかりと酸素を肺に取り込むと、意識が鮮明になっていく
それと同時に、後頭部が酷く痛む
私はいつの間にか倒れていたようだ
呼吸を整え、皆に言う
「……っ…すまない、心配をかけた。もう…大丈夫だ。……少し…っ…出てくるから…皆は自習していてくれ…」
机を支えにして立ち上がる
まだ…足にしっかり力は入らないが、歩く程度なら支障はないだろう
少し…気持ちを落ち着かせなければ
「あ、危ないです!さっきだって急に倒れて…!」
「……ナギサに呼ばれているから、行かなくてはいけないんだ。私一人しか…」
咄嗟にそう言うが、嘘ではなく事実だ
すると、アズサが口を開く
「じゃあ、行きだけでもいいから私が送る。…ちょうど、話したい事もあったんだ」
アズサの…声。さっき…聞いた気がする声とは、やはり少し違う
「いや…」
断ろうとするが…
ヒフミとコハルから涙目で見つめられ、ハナコのにこやかだが全く笑っていない目からの視線を受け、アズサの真っ直ぐな目線に射抜かれる
「…ぐ………分かった、アズサ、よろしく頼む」
「あぁ。任せてくれ」
こうして押し切られ、私とアズサで本校に戻る事になった
アズサの話したい事…とは何だろうか
『サオリの悪い癖…多少はマシになってきたかと思っていたが、溜め込んでいただけだったのか。無意識の内に自分で自分に罰を与えようとするなんて……
まさか、声が届くなんて思いもしなかったが…妙な夢だな。だが、サオリが先生か…ふふっ、まぁ、似合ってるな』