辺境の領地にて 作:辺境伯
「「ユリアス、誕生日おめでとう」」
「ありがとうございます、お父様、お母様」
私は辺境伯の長男として産まれた。
ユリアス・ドラート
私はこの名前を気に入っているし、誇りに思っている。
幼い頃からメイドに聞かせてもらった父と母の武勇伝、そして辺境伯の大切な役割。
その全てが私にとっては大切な記憶でこれから背負っていくものだ。
「ユリアス、私達はユリアスに学園に行ってもらいたい」
「お父様、私はこの地でお父様やお母様のように戦うという夢があります!学園に行っている暇なんてありません!」
「ユリアス、あなたはとっても賢くて強い子よ、だからこそゆくゆくはこの領を継いで欲しいと思ってる」
「ならっ!」
「聞いて、領地は決して1人でやって行ける物じゃないわ。周りの貴族の助けや仲間の助け、国からの支援、色んなものでこの領地は成り立ってるの。それを知って欲しいの、そして仲間を作って欲しい、戦いが満ちた世界でもそれは大切なものだから」
両親の言うことは私にとても考えさせられる物だった。
仲間、支援、考えてみれば分かる話だ。
ろくに畑も作れないこの土地でどこから食料が届いているのか、たまに来る兵士たちはどこから来ているのか。
「分かりました、私は学園に行きます」
「頑張ってね」
「ユリアスなら大丈夫だと信じてるよ」
私は普段から勉強は怠ったことがなかったし、訓練だって積極的にこなしていた。
周りの皆は偉いすごいと褒めたたえてくれるがそれではダメなのだ。
私はお父様やお母様のような慕われる人間になりたい……だから!努力を怠るわけには行かないんだ。
「学園は10歳の頃に試験がある……私の学力なら大丈夫だと言われたけど勉強するに越したことはないはず」
「相変わらず、ユリアス様は勉強熱心ですね」
「そうかな?ミレアがサボり好きなだけだと思うけど?」
「ユリアス様酷いですよ〜、私は働く時は誰よりも働くんですからね?」
「はいはい、そうだね」
「あしらわれた!?」
ミレアは私の専属メイドでいつも私の身の回りの世話をしてくれる。
優秀なのは本当なのかお父様もお母様も絶対的な信頼をミレアに置いているような気がする。
「ミレア、模擬戦を受けてよ、そろそろ体を動かしたいんだ」
「いいですよ〜、私は動きたくてうずうずしてたので!」
私の日課にもなっているミレアとの模擬戦はなかなか楽しい。
ミレアはかなり強く多彩な剣術と魔法を使うのでよく教えて貰っている。
ミレアのおかげかかなり魔法も剣術も上達していて、領の兵士さんとならギリギリ勝てるくらいには強くなった。
「最近、ユリアス様は本当に強くて加減が難しいんですよね」
「本気で来てもいいんだよ?」
「ダメっすよ、ユリアス様を殺しちゃいますから」
そんなに簡単に殺されないと思うのだが、どうしてもユリアスは本気を出してくれないらしい。
いつもこんな感じで始まる模擬戦は毎度ミレアの勝ちで終わってしまう。
加減するとは言っているものの絶対に勝てないのだ。
「なっ!」
「どんな時でも絶対に思考を止めちゃダメですよ」
剣を弾かれ大きく体勢を崩した俺はそのまま尻もちを着いてしまった。
首には木剣が添えられていて、私の負けを伝える。
あの時、私が剣を捨てて間合いを詰めていれば、魔法で距離を取っていれば……湧き上がる改善点を頭に残しつつもミレアにお礼を言う。
「ありがとう、やっぱり勝てないね」
「ユリアス様が私に勝つにはあと何年必要ですかね〜」
「そんなにかからないよ」
「どうでしょう?いつか私に勝てるといいですね?」
ミレアとの模擬戦を終えて、いつもどうりのたわいもない会話をしながら剣術や魔法を教えてもらう。
カーンカーンカーン!!
大きな音でなる鐘の音に驚く。
幼い頃に聞いたことのあるこの音はたしか……
「っ!中襲撃……ユリアス様は屋敷に戻ってください」
「え?」
「いいから早く!」
ミレアの聞いたことのないような焦った声色が私のを震わせる。
いつも余裕な雰囲気を出している、ミレアがそこまで焦るほどのことなのだと私を恐怖させる。
言われるがままに屋敷の自室に戻った私はゆっくりと状況の整理を始めた。
あの音は中襲撃を知らせるもので数年に1度魔物の大軍が攻めてくることだ。
前は何時だったか覚えていないが、今みたいに自室に引きこもり過ぎ去るのを待った記憶がある。
襲撃には小中大の位分けがあって小は数週間に1度ほど、中は数年で1度か2度程度。
大襲撃は先々代の時に1度起こったらしい。
「私だって……強くなったんだ」
先程までの恐怖はどこへ行ったのか、私の手には剣が握られていた。
自分の役目を知ってから、訓練を絶やしたことはない、もう怖気付いて隠れてばかりは嫌だ。
かっこ悪いじゃないか。
「私が知ってる英雄は主人公はこんなところで怖気付いてないていない!」
決意を固めて屋敷を飛び出た私はいつも魔物が攻めてくる魔物の森方面へと走り出す。
街はいつもの活気はどこへ行ったのかと思うほど閑散としており、並ぶ家の窓や扉は一切空いておらず戸締りがされている。
「あっちだ」
魔法が爆ぜる音や指揮官であろう男の人の大声、魔物の叫び声が聞こえる方へと走っていく。
誰か屋敷の人に見つかればきっと連れ戻されてしまうのでできるだけ隠れて開いた門が閉まる前にそそくさと外へ出る。
「凄い……」
訓練では見ることの無い殺傷力の高い魔法が城壁から次々と魔物の大群へとぶつかり大きな音を立てて爆ぜる。
魔法が途切れた時には一糸乱れぬ兵士たちが前へと出て魔物たちを次々と突き刺し斬り殺す。
圧巻だった、私には入る隙を見つけることすら出来ずに城壁の近くでぼーっと眺めるだけ。
ただただ、自分との実力の違いを見せつけられている気分でどうしようもない無力さを痛感する。
「……」
そんな攻防が続いていた時、その瞬間は訪れる。
ある1人の兵士が魔物の攻撃を受けて体勢を崩し、踏ん張りが効かなかった兵士が魔物の攻撃によろめき倒れてしまう。
「なんで誰も助けないの……」
倒れた兵士を見て、誰も助けに動こうとしないのだ。
彼は今にも魔物の追撃を受けそうだと言うのに指揮官の指揮に従って後退を始めた。
「ダメだ、ダメだよ!」
私は小柄な自分の体を活かして兵士のあいだを通り抜け、倒れた兵士に飛びかかろうとする魔物を吹き飛ばす。
自分の魔法が魔物に効いたという事実が私の自信をさらに肥大化させる。
「大丈夫ですか!?」
「あ、あぁ……君は……もしかして」
「早く逃げて!」
肥大化した自信に突き動かされた私はあろうことか魔物に追撃をかける。
目の前にいる1匹の魔物を倒すために
主人公は男
あからさまな無双は少なめ
週一投稿
初めてのハーメルンなので使い方間違ってるかも