辺境の領地にて   作:辺境伯

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調子に乗った代償

「行けるっ!」

 

目の前の魔物を斬り殺した。

初めて生きた生物を切った感触で一瞬気持ち悪さと吐き気が込み上げる。それをグッと堪えて前にまだいる魔物を殺すために剣を握る。

返り血がベッタリと服を汚し、顔に付いた返り血が気持ち悪さを加速させる。

 

「次っ!」

 

自分でも思った以上に魔物を殺せている。

1匹、2匹、3匹、4匹、、、殺して殺して殺して

 

周りを見た時には私は囲まれていた。

急に現実に引き戻されるような感覚が私を襲う。

後ろに見えるのは先程までいた騎士団ではなく、魔物の群れ。

目の前の敵を斬り殺し続けた結果が今の惨状だった。

 

魔物が私に飛びかかってくる、今までなら躱せていたはずの攻撃も、数が増え逃げ場が少なくなってきた私に避けることは難しく。

ついには魔物の鋭い爪が私の腕を切り裂く。

 

「っ!!」

 

痛みが私に死が近づいていることを知らせ、魔物の返り血に混ざって流れる私の赤い血が助からないことを突きつけてくるようだ。

 

「ごめんなさい、お父様、お母様」

 

自分の力に自惚れて、ミレアの忠告を破り、独りよがりな突撃のせいで私が死ぬ。

自業自得とはこのことだ……

お父様とお母様にろくに恩も返さないまま死ぬことを悔やむ。

 

出血のせいか、意思が折れたせいか私の手から剣が落ちる。

周りの景色がゆっくりと流れているような感覚に陥りながら目を閉じる。

最後に見た景色は魔物が私に牙を突き立てるために飛びかかってくる姿だった。

 

「剣は離したらダメって何度言えば分かるんですか?」

「……ミレア?」

 

目を閉じた私に来るはずだった痛みはいつまで経っても来ずに

私に届いたのは痛みではなく聞きなれたメイドの声だった。

暖かい光が私を包み込んで傷が癒えていく。

 

「……魔物は?」

「倒しました」

「え?」

 

飛びかかってきた魔物は地面に横たわって血を流しながら絶命している。

周りにはまだ魔物はいるものの後ろには騎士団が来ていて逃げるための退路ができていた。

目の前のミレアの手には見慣れない片刃の剣が握られており、いつものゆったりとした雰囲気は触れたものを切り裂くような鋭い雰囲気に変わっていた。

 

「さて、早く下がらないと魔法隊に怒られちゃいますから下がりますよ」

 

私はミレアに担ぎ上げられ、騎士団と共にこうたいしていく。

こうみると先程まで冷たく感じていた騎士団がとても暖かいように感じた。

ミレアに連れられて城壁の内側まで戻ると先程の兵士がお礼を言いに来た。

私の無謀な突撃も誰かを救えたのだ。

 

「さて、お父様がお呼びですよ、城壁の上に行きましょうか」

「……はい」

 

きっとお父様は私を叱るだろう。

勝手な行動をして、死にかけた死に損ない。

お父様の軍の動きを止めて、戦場に大きな損害を与えてしまったのだ。

 

「ユリアス!!良かった!!無事だったんだな……」

「ごめんなさい、お父様」

「あぁ、そうだな、ユリアスお前がやったのは許されない行為だ」

「……はい」

 

そう、私は失態を犯したのだ、裁かれて当然の失態を

どんな罰を課せられても受け入れよう、それが子供のなんの力もない私にできる唯一の償いだから。

 

「それを分かっているならいいんだ、 死傷者は0、魔物の大群との戦線も予定のラインまで押し返せている」

「……」

「ユリアス、死の恐ろしさを感じたかい?」

「……はい」

「それは戦士に取って大きな壁であり成長だ、死というのはどこまでも恐ろしいもので、いつも私たちに付き纏っている」

「強敵と相対する時、私だって死を感じる、誰だって死せる生き物である限り死からは逃げられない、だからこそ死の恐怖を乗り越えれる者は強くなる」

「死に慣れては行けないよ、死を恐怖として受け入れて抗うんだ、死を前に思考を停めれば飲み込まれてしまうからね」

「分かりました」

 

あの時感じた、死の恐怖は恐ろしくて、全身が何かに縛られたみたいに動かなくなって抵抗する意思が無くなった。

あれを乗り越えるのが私の成長に繋がる……

そう分かってもあの時の魔物の姿を思い出すだけで体が震える。

 

「ユリアス、今は深く考えなくていい、それよりここからの眺めをよく見るんだ、私と遊んだ駒遊びを現実に呼び起こした景色さ」

 

お父様に誘われてよく遊ぶ、駒遊びはいかに相手の策を読んで自分の駒を生かしつつ相手を殺すかという遊びで、戦略を鍛える遊びだと言われて良くやっていた。

 

そして、目の前に見えるのはその駒遊びが本当に動いている景色なのだという。

人が一糸乱れぬ動きで魔物を翻弄しているように感じる。

地上から見ればただの冷徹で無慈悲だと思った動きが上から見るだけでここまで変わった印象を受けることに驚く。

 

できるだけ消耗を少なくし、魔法と近接の両方をバランスよく使い分けることで片方が消耗することを避ける。

自分たちの余力を把握し、大勢が生き残るように工夫する。

 

「指揮することと戦うことは天と地の差があるんだよ」

「戦場で無慈悲に感じる命令だって指揮官がより多くの命を生かし、自軍の勝利を掴み取るための命令なんだ」

「ユリアス、この短い時間で2つの立場を経験したならどちらが正解なのか分かるかい?」

「……分かりません」

「それでいいんだ、これはきっと誰にも分からない問いだからね」

「きっとユリアスは指揮をする側になるだろう、その時、責任を投げ出しちゃ行けないよ」

「指揮を取ったなら最後まで取るんだ、信じてくれた自分の軍を見捨てることだけはしちゃいけないよ、撤退も大切だけどね」

 

初めて入ってくる情報やお父様の言葉に頭がパンクしそうだ。

でも、これだけは分かる、きっと今のままじゃダメなんだ。

学園に行って、勉強して色々な人と関わって、見て聞いてそれを繰り返して胸を張ってお父様の後を継がないと行けない。

 

それが私の責任




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