Blue Archive -鋼鉄のイェホーシュア-   作:NJ

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生徒が主役だったりシャーレの先生枠オリ主ばっかりで飽きたなぁ…
せや!頭ゲヘナの教師生やしたれ!(迷案)

※本作ではゲヘナ生(主にマコト)がひたすら不憫枠です。その点をご了承の上、本作を閲覧してください。


プロローグ:塩の柱でなく火柱が立ち並ぶ系のソドム

 

 

 ここはキヴォトス。

 

 神秘を宿した生徒(しょうじょ)達が住まう箱庭。

 

 その歳で握るにはあまりに早すぎる銃火器で武装した彼女達は、それぞれ所属する学園を中心とした自治区を統治していた。

 

 互いに憎み合い。

 

 時に歩み寄り。

 

 時に手を取りながら彼女達は、生徒達はこの硝煙臭い土地で生きてきた。

 

 『大人』の手を借りず、子供達だけで歪な…しかしそれでも大切なこの世界を、自分達の青春の舞台(ネバーランド)を守り続けてきた。

 

 

 

 

 ある時、そんな箱庭に来訪者が現れる。

 

 本来なら現れるはずのない異分子(イレギュラー)が。

 

 

 

 

 それは、奇跡の担い手たる“先生”とはまた別の存在。

 

 彼/彼女が来訪するより更に以前、超人と呼ばれたキヴォトスの支配者(連邦生徒会長)すら未だに現れていない時代。

 

 今よりもはるかに不安定で、危うかった学園都市に、その『大人』は現れた。

 

 導き手なき混沌とした箱庭に、どこからともなく。まるで流星のように。

 

 

 そんな彼を、生徒達はこう評した。

 

 

 論理と探究の学園(ミレニアム)の生徒曰く、「カオス理論の擬人化」。

 

 

 規律と品性の学園(トリニティ)の生徒曰く、「ケダモノ」。

 

 

 自由と混沌の学園(ゲヘナ)の生徒曰く、「魔神」。

 

 

 ある学園(山海経)の生徒は『人間怪獣』。

 

 ある学園(ヴァルキューレ)の生徒は『正義と悪共通の敵』。

 

 またある学園(百鬼夜行)の生徒は『歩く怪談』。

 

 またまたある学園(レッドウィンター)の生徒は『地獄の擬人化』。

 

 

 

 そして砂漠のある学園の生徒は───『先輩』、と。

 

 

 

 今日もキヴォトスの民は、畏れ敬いを込めて、彼を呼ぶ。

 

 キヴォトス史にその名を刻んだ伝説の狂…教師。

 

 人呼んで───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゲヘナの凄人

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 ───ゲヘナ学園

 

 

 ちちち、ちゅんちゅん。

 

 朝の到来を告げる雀の声。

 

 普段は爆音と銃声が聴こえない日が珍しいゲヘナで、鳥の囀りなど容易く掻き消されてしまう筈であった。

 

 しかし、今日は…いや今日に限らずそうはならなかった。

 

 ご存知かも知れないがゲヘナの年間の犯罪件数はどれだけ低く見積もっても100を下回る事はない。

 それも自治区を構成する(・・・・・・・・)各エリア(・・・・)一つ一つ(・・・・)での話であり、全体で統計を取れば年間で銃声が鳴り止む日は存在しないと言っていい。

 

 だが、何事にも例外は存在する。

 例えばここ連日の異常事態のように。

 

 何を隠そう今日までのここ一週間。

 ゲヘナは開校から今日(こんにち)までの歴史を振り返っても犯罪発生率の最低ラインを更新し続けていたのだ。

 

 普段なら口より先に手が、手より先に鉛玉が出るゲヘナで、これは異例の事態であった。

 

 生徒達は、不気味なほど平穏を謳歌していた。

 まるで、民を恐怖で縛る独裁政権から解放されたかのような晴れやかな顔で。

 

 そしてそれは、一般生徒に限った話では無かった。

 

 

 

 ───ゲヘナ風紀委員会。

 

 静謐に包まれた執務室。

 カリカリ、とペンを走らせる音だけがその空間を満たしていた。

 

 書類作業の片手間にコーヒーカップを手に取った生徒…空崎ヒナはカップに僅かに残ったコーヒーを一息に飲み干す。

 

「ふぅ」

 

 一息の後、コトリと飲み干したカップを静かに机に置く。

 

 再び部屋に慎ましく響き渡る、ペンを走らせる音。

 

「委員長、お代わりをお淹れしましょうか?」

 

 何度目かの行政官の進言。

 

「ん」

 

 短い肯定。

 それに失礼します、と慣れた手つきでカップを再び黒い液体で満たす委員長の秘書…天雨アコ。

 

 そして湯気を立てるそれを再び手に取り、軽く口をつけた後、天を仰いでどこか満たされたような、噛み締めるような吐息を漏らすヒナ。

 

「───平和ね」

 

 その言葉には、どこか切なさを覚える程に切実な想いが込められていた。

 

「…えぇ本当に、ずっとこんな日が続けばいいと思えるくらいには」

 

 そして後に続き、お約束と言わんばかりにアコがそれはもう立派なフラグを立ててくれた。

 

 哀しきかな、流行(そっち方面)に疎いヒナはそれを予見して防ぐ融通を持ち合わせていなかった。

 

 バタン!

 

 そして立てられたフラグは、誰でなくても見逃してしまうような速さで回収された。

 

「い、委員長!アコちゃん!た、大変だ!」

 

 平和終了を告げるメッセンジャーであるツインテールの銀髪に褐色肌の勝気な少女は、ゲヘナ学園2年生。風紀委員のメンバーの一人である銀鏡イオリ。

 

「なんですかイオリ。ヒナ委員長の前ですよ」

 

「ご、ごめんアコちゃん…っ、いやでも本当に大変なんだって!」

 

 お静かに、と続けようとしたアコを遮って尚も捲し立てるイオリに、ヒナが待ったをかける。

 

「落ち着いてイオリ。アコも抑えて」

 

 敬愛するヒナとの時間に水を差されて軽く頭に血が上ったアコにも同様に牽制をかける。

 普段は有能な彼女だが、腐ってもゲヘナというべきか感情的になりやすい所が玉に瑕だ。

 

「うっ…すみません委員長」

 

「それでイオリ、何があったの」

 

「温泉開発部の奴らが暴れ出したんだっ!あいつらあの人(・・・)が出張で居ない隙をついて、委員長の目を盗んで開発準備を進めてたみたいで…」

 

 ヒナはそれを聞いてまた連中か、とうんざりしたように溜息をついたが、同時にイオリの報告に違和感を覚える。

 

「…確かに問題だけど、そこまで慌てるような事には思えないわね」

 

「そうですよイオリ。そもそも温泉開発部程度(・・)、ヒナ委員長が動かなくてもあの人(・・・)主導の拷も…コホン、特殊訓練から生還したあなたの部隊を動員すれば問題なく…」

 

「そ、それなんだけど…」

 

 躊躇いを含ませながら、しかし意を決してイオリは本題を口にした。

 

 

 

 

「…学園長(・・・)が、もうゲヘナに帰ってきたみたいなんだ」

 

 

 

 

 ────────。

 

 刹那、室内の時が凍った。

 

 パリィン!

 

 次瞬、時の再始動と同時に瞳孔ガン開きのまま静止したアコの手からティーポットが滑り落ち、甲高い音と共に破片と黒い液体が床にぶちまけられた。

 

 だが、ヒナはそれを咎めることをしなかった。

 そんな事よりも遥かに優先すべき事項が、彼女の脳内やるべき事リストの頂点に大音量の非常事態警報(アラート)を響かせながらピックアップされていた。

 

 故に、次に移る行動も早かった。

 

「アコ、直ぐに全風紀委員と救急医学部に通達。非番の子も動員して現場付近の住民の避難と温泉開発部員の早急な保護(・・)に行かせて───急いで、ゲヘナが火の海になる前に」

 

「───「アコ!」は、はい直ちに!」

 

「それとイオリ、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)にこの件は伝わってる?」

 

「そ、その件なんだけど…学園長、誰にも言わず予定を繰り上げて帰ってきたみたいで…万魔殿の奴らも今さっきそれを知って大騒ぎになって、さっき生徒会長(羽沼マコト)が…

 

 

 

『───早速レッドウィンターに亡命(ひなん)しに出かける!後に続けイロハッ!!』

『いやマコト先輩、学園長が帰ってきたのに闇雲に逃げ出すのは逆に危険ですって。もっと情報を集めてからでも…いやいっそ素直に土下座でもした方が…』

『臆病者はついて来なくてもよい!サツキ、チアキ、早くしろ』

『いや、この場合臆病者はマコト先輩じゃ…ハァ、イブキが遠足から帰ってきた時の為にプリンだけは死守しておきますか』

 

 

 

…とか言って、いの一番に学校から脱出したらしい」

 

 イオリの脳裏に、その時の無駄にキメ顔で颯爽と校舎の外へ歩き出す万魔殿議長の後ろ姿が過った。

 逃亡が目的でなければ、ヒナ委員長に並ぶカリスマを感じなくもなかったのだが…。

 

 その報告にアコは頭を抱える。

 

「なん…っで、真っ先に対処すべき生徒会長が生徒(わたしたち)を差し置いて逃げ出してるんですかァ!!」

 

 逃げ出したいのはこっちの方なのにぃ!と首にかけたカウベルと胸部装甲を揺らして子供のように癇癪を起こすアコをヒナが宥める。

 

「放っておきなさい。どうせいつもみたいに学園長(あの人)にバレたら不味い計画でも考えてたんでしょ」

 

 よく見ると、遠くで万魔殿の飛行船が発着場から徐々に浮上していた。

 恐らくどころか確実に万魔殿のメンバーは逃げ出そうとしていた。

 

 だがヒナにマコトを責める気は一切ない。

 逃げ出したくなる気持ちもよく分かるからだ。

 

 擁護する気もないが。

 

「兎に角私達も動こう。まぁもしかしたら───」

 

 ボォン!!

 

 とっくに手遅れかも知れないけど、と言いかけたヒナの口を止めたのは、学園の敷地全体を揺らす衝撃と爆音だった。

 

「───っ!?」

 

「キャア!?」

「うわっ!」

 

 建物全体を揺らす衝撃に耐え切れず砕け散るガラス。

 

「ひ、飛行船が…!」

 

 咄嗟に外を見たヒナ達の瞳に映ったのは…炎に巻かれながら無惨に地に堕ちていく万魔殿の飛行船だった。

 

「今の砲撃は…まさか“生徒指導部”の…」

 

「ヤバいよ…学園長、確実に『キレて』る…」

 

 眼前の景色に戦慄き、息を呑むアコ。

 これから迎える惨状をティーパーティーの狐を超える正確さで未来視して絶望するイオリ。

 

 ───チュドォォォォン!

 

 やがて飛行船は煙の尾を引きながら自治区のど真ん中に墜落し、高らかに爆炎を立ち上がらせる。

 

 爆心地から聞こえた生徒会長の声に似た断末魔は、きっと気のせいだろう。

 

 なにはともあれ眼前の惨事を引き金に、ゲヘナ全体の空気が変わり始めた。

 

 不気味なほどの平穏から…彼女達が慣れ親しんだ混沌の…それを更に上回る狂乱が、学園全体に津波となって伝搬していく。

 

「帰って来た…」

 

 遠方で立ち登る爆炎の明るさに照らされるヒナの顔。その額にじわりと滲む冷や汗が、事態の重さを表していた。

 

 

「─────ヨシアキ学園長が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、教師と生徒達が紡ぐ青春の物語。

 

 キヴォトスの生徒達と、やがて訪れるシャーレの先生。

 

 そして…

 

 『ゲヘナの凄人(せいじん)』と呼ばれた伝説の教師。

 ゲヘナ学園長・(さざれ)ヨシアキが紡ぐ、友情と希望、そして(ユメ)を諦めない勇気と……破壊と絶望と狂気、そして不良生徒とかカイザーとか、あとゲマトリアとかの悲鳴が蛸足回線よりも複雑怪奇に入り乱れる───

 

 

 

 

 

 

 

 ───混沌の、青春物語(ブルーアーカイブ)である。

 




本作のマコトは大体こんな扱い。
チェリノ「良かった…こっちまで亡命(にげ)て来なくて…」
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