結論から言うと、とても簡単だった。
私はことが終わると、文の家をすぐに去った。
そして、私は彼と彼女の中を引き裂く映像を手にした。
もしも、イジメを彼女が再開したら、これを見せつける。
私は、素晴らしい計画にほくそ笑んだ。
帰った時、母にはいつものように躾をされたが、とても晴れたような気持ちだった。なんなら、これまでで一番痛くなかったとすら感じた。
◆
朝、父親の怒鳴り声が聞こえた。
「楓乃!」
「……なに?」
寝起きで頭が回ってないなか、私は返事をする。いつもになく、よく眠れたと思っていたのに、と父を見つめる。
けれど、父は怒った表情をしていた。
「お前、昨日、下級生を犯したんだって? え? 今なら、あいつの言葉にも同意できる。このアバズレが! え? お前は、いつもそうだ。俺の邪魔をして、俺を苛々させる。お前は俺のものだろうが! なんで他のやつに股を開いた? え? お前は俺の所有物だろ!」
父の拳が、私の頬を殴った。
カッとした。自分が自分じゃないみたいに、思った。
枕元に置いてあった目覚まし時計をつかむ。そのまま、勢いで、父の頭を殴打した。
ガッ
と、音が鳴り、父親が倒れる。
私は、怒りのまま、掴んでいる時計で、父を殴る。
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る 殴る 殴る 殴る 殴る 殴る 殴る殴る 殴る 殴る 殴る 殴る 殴る 殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴って……気づけば、父は血を流して倒れていた。
まだ、母が家にいる。
私は、壊れた時計を置いて、寝室へと向かった。
母は、スヤスヤと寝ていた。7時を過ぎたと言うのに、あぁ、そうか今日は土曜だったのか。
遅れて気づくも、もうどうでもよかった。
枕元に、目覚ましの設定がオフになっている目覚まし時計があった。
父も、これで殺せたのだから、とそれを手に取り、両手で振りかぶる。
簡単だった。
グシャッ、と音がして、母親が悲鳴を上げた。
叫び声が、癪に触る。
もう一回。
死ぬまで、何回すればいいかなんてわからなかったし、いつ死んだかもわからなかった。
ただ、これがよく聞く『普通の犯罪者は人を殺しすぎる』というやつかな、なんて思った。
私は、シャワーで、血を洗い流して、外着に着替える。
家を出た時間はわからない。
だけど、もう太陽がサンサンと照っていたのはわかった。
◇◆◇◆◇◆◇
私は一人、廃屋にいた。
遠くで、パトカーの音がした気がするけど、もしかしたら私の気分がそうさせているだけなのかもしれない。
ソファの上で丸まって座った。そうして、どれくらい経ったのだろうか。
ふと、前を見上げればこの前、ここであった人が目の前にいた。
「今日は土曜日なのに、こんなところにいるんだね」
どこか、面白そうな顔をして、彼はそう言ってきた。
「私を、連れてってくれませんか?」
ふと、そんな言葉が口に出た。何を言っているのか、自分でもよくわからない。
けど、そう、願ったのだ。願いたいとどこかで心が叫んでいたのだ。
「ん〜、家出ってやつ? それとも、今、街が騒がしい理由は意味だったりするのかな?」
ニコリ、そんな擬音が聞こえてきそうな笑みを浮かべて、彼は私に言ってきた。
「どうだっていいでしょ?」
本当にどうだってよかった。彼が私を家出した子と勘違いしても、彼が私を通報しようと……、どうだってよかった。
「そうだね。確かに、俺にとっては君がどういう人物であろうとどうだっていい、けれど、普通は気になるだろ?」
そう言って、彼は私の隣に座った。
「本当に、お前が町を騒がしてるなら、自首したらどうだ?」
「……なにがあったのか知ってるの?」
「いんや。人が死んだ、ってぐらいだ」
「なら、非力な私ができるわけないでしょ」
そう吐き捨てる。
「そうかもしれないし。そうじゃないかもしれない」
軽薄な笑みで、彼はそう言ってきた、彼自身、どう思ってるのかは推量れない。
私は、どうするのか、どうしたらいいのか。
「まぁ、お前が人殺しでも、お前には勝てる。安心できるな」
「……そうですね」
「さてと、俺はそろそろ戻らなきゃいけないんでな。じゃあな」
そう言って、彼は去っていく。結局、名前もわからなかった。彼の後ろ姿を見ながら、そう思った。
「連れてってくれなかったな」
そう口にすると、余計に、寂しくなった。
時が過ぎていく。
空が暗くなって
気温が下がっていく
割れた掃き出し窓から入ってくる
風が頬を撫でて、髪を揺らす
空には、一番星が輝いた
無音の世界
忘れた頃に、車の音が鳴る
私は立ち上がった
すべきことはわかった
そして、私は────