偽・ウマ娘ZERO ~不滅の桜~ 作:風見ひなた(TS団大首領)
始業式で理事長と生徒会長の訓示を聞かされることたっぷり数十分。
正直新入生たちはまるで話を理解できていなかったのだが、なんとなく自分たちが激励されたことだけは伝わったようだ。
なお、彼女たちが思っていたことは
「理事長さんスラッとした長身の海外美人でカッコいいな~」とか
「でも理事長さんがいちいち頭に二文字の熟語を付けて話すのなんなんだろ~」とか
「生徒会長も和風美人ですごく強そうでカッコイイな~」とか
大体そんな感じであった。
理事長さんは10年ほど前にアメリカやフランスですごい成績を残したウマ娘らしいのだが、具体的に何をした人なのかは新入生たちは誰も知らなかった。というか、この時代の日本人はみんなそんな感じで、海外のレース事情なんてまるで伝わっていない。
なんせネット環境なんてないから、レース専門誌を読み漁るしか知るすべがないのだ。大人ですらそんな感じなのだから、ましてや中学生になりたてホヤホヤの新入生の知識など推して知るべし。
その点、生徒会長のシンザンは知らない者がいない有名人だ。彼女がクラシック三冠を達成して以来、誰もその記録に並んだ者がいない。ウマ娘にとっての生きる神話といえば彼女のことで、彼女に憧れて中央トレセン学園の門を叩いた者も少なくない。
憧れのシンザン様をこの目で見れた!と瞳をキラキラさせている子も大勢いた。
スズパレードもその中の一人だ。シンザンのような輝けるウマ娘になりたくて、山ばかりの田舎から出てきたのだから。
なお、両隣に座るテスコスールとスズマッハは開始1分で寝た。
「みなさん、始業式お疲れさまでした。それでは最初のホームルームとして、まずはクラスのみんなに自己紹介してもらおうと思います」
始業式も終わり、教室に戻ってきた新入生たちは担任の先生にそんなことを促される。
スズパレードはクラスの生徒たちが順番に立ち上がって自己紹介していくのを、目を光らせながらまじまじと見つめていた。気分はレース前のパドックで体躯を披露するライバルたちの敵情視察だ。
入学時点の同期たちの様子や抱負を見聞きしたところでどれだけの意味があるのか疑問だが、ライバルたちの敵情視察という点では間違ってもいない。実際彼女たちはこれからスズパレードがクラシック戦線を戦っていくうえでの好敵手となるだろう。
(もっとも今日見たウマ娘の中だと、この子が一番強そうだけど……)
そう心中で呟きながら、スズパレードは隣の席に座る大柄なウマ娘をちらりと見る。
入学式の最中にぐうぐう居眠りぶっこいたテスコスールは、また眠そうな目をしてふあぁと欠伸をしている。クールそうな見た目に反して、相当神経が図太い。……あるいは他人にまったく興味を持っていないのか。
「では次の方、お願いします」
「へっ、ようやくウチの番かよ」
そう言って立ち上がったのは、茶色い髪にところどころ青いメッシュを入れた、奇抜な髪色をした少女だった。髪には派手なパーマをあててかき上げ、瞳にはうっすらと紫のアイシャドウを入れて、赤い口紅を差している。
一目でそれとわかるくらいの“
「ウチはビゼンニシキ! 今日からこの学校で番を張らせてもらうぜ! もちろんハシリでもウチが最速ってところを見せてやるから、覚悟しときな!!」
うわあ、番長宣言したよ……!
最近こういう“ツッパリ”というのが不良の中で流行っていると聞くが、実際に実物を見たのは初めてでスズパレードはドン引きした。田舎育ちの純朴な野生少女であるスズパレードにとっては不良文化など遠いものでしかなかったが、やっぱ東京(府中市)モンは違うなあ……!
「ビゼンニシキ……あれが」
「今年の中央の新入生では才能ナンバーワンって雑誌に書かれてた……!」
「名門に生まれた超エリートで、入学前から家が選んだトレーナーに指導を受けてるっていう噂の……」
同期の少女たちがざわざわと囁くのを、ビゼンニシキはピクピクとウマ耳を動かして聞きながらまんざらでもなさそうに鼻を鳴らす。
実際彼女が入学時点でマスコミから注目を集めているのは確かだった。どういうわけでそんなエリートが不良文化に染まっているのかは謎だが……。
「ま、舎弟になりたいってなら考えてやってもいいぜ。1着は当然ウチが総舐めにすっけど、シルバーコレクターにならしてやるよ! アハハハハッ!」
高笑いを上げていきなりチョーシくれてるビゼンニシキだが、実際この子はかなり強そうだなとスズパレードは思う。強いウマ娘だけが持つ覇気というか、威風のようなものが彼女からは確かに感じられた。
先ほど始業式の壇上に立っていたシンザン生徒会長や理事長から感じたものよりはずっと薄いものだが、ビゼンニシキもまだ入学したばかりだ。あるいはこの子が将来的にシンザン生徒会長のような実を伴った存在になっても不思議ではないと思う。
「わ、わかりました。座っていただいて結構です」
「おう!」
ビゼンニシキはどっかと座り、机の上にお行儀悪く脚を投げ出す。
そんな彼女を見ながら、スズパレードは小首を傾げた。
(確かに強そうだし、クラシックを制覇しそうな予感もある……。でも、正直)
「では、次の方お願いします」
「は~い。スズマッハです~」
のんびりとした口調で先生に応え、同い年のイトコは淑やかに立ち上がった。
「どさんこの田舎育ちで不束者ですが、よろしくお願いしますね~。それと」
細い目をわずかに開き、前の席を見ながらにこりと笑う。
「ズブいと思って足を掬われないよう、お気をつけくださいな。名前通り、速さには自信がありますので~」
「あぁ?」
首を後ろに倒してギロリと背後を睨みつけるビゼンニシキ。その視線をまっすぐに受け止めて、スズマッハは唇だけで笑う。
バチバチ、と火花が飛ぶのが眼に見えたような気がした。
(……マッハだって全然負けてない。あたしが見る限り、威風はマッハの方が上回っている気さえする)
あんな恐ろしいウマ娘に一歩も引かない同い年のイトコの態度に、スズパレードは頼もしさを覚える。マッハなら、きっとクラシック戦線でいずれかの冠を獲ってくれるはずだ。……一方で、そんなイトコにまるで敵わない自分が情けないとも思うが。
「はい、教室で早速喧嘩しないように。ウマ娘なら勝負はターフでつけるものですよ」
「は~い」
「チッ、わーってるよそんなこたぁ」
「なら結構。では、次……スズパレードさん」
「は、はいっ!!」
スズパレードはがたっと椅子を蹴立てて立ち上がり、愛嬌に満ちた笑顔を周囲に向ける。
「マッハのイトコのスズパレードだよ! モットーは楽しくレース! みんなと楽しんで競い合えたら嬉しいな。友達募集中なので、よろしく~!」
「ぱちぱち~」
前の席のスズマッハが拍手するのが、ちょっぴり恥ずかしい。
スズパレードは朗らかな笑顔で用意していた言葉を言い切ると、心の中でほっと息を吐きながら、周囲の様子をちらっと窺った。
……誰も自分に注目している子はいない。
つまり、ビゼンニシキやスズマッハに比べれば、まるでライバルにならない
今の自分に実力がないことなど十分わかっていたが、それが悲しく……そしてほんの少しだけ、腹が立った。
「ティアラ路線志望、ダイアナソロンですわ! 偉大なる父祖の名に恥じぬ華麗な戦いをお見せしましょう!」
「トウカイローマン、ティアラ志望! 重馬場の日はアタイを侮るなよ、誰であろうとアタイの前を走る奴はブッ差してやる!」
「キ、キョウワサンダーです……。私みたいなのが中央トレセンに混じっててすみません……。みなさんの邪魔にならないところでひっそりと頑張りますぅ。あ、い、一応ティアラ路線です……」
3連続でティアラ路線のウマ娘たちが自己紹介した。
ダイアナソロンは自信満々、威風堂々とした立ち姿のいかにも良いとこのお嬢様。
トウカイローマンは見るからに気が強そうなワイルドな日焼け少女。
キョウワサンダーは自信なさそうにおどおどした小柄な少女。その割には3人の中で一番口上が長かったのだが。
キョウワサンダーはともかく、ダイアナソロンもトウカイローマンもかなり強そうだとスズパレードは分析する。しかし、それにしても……。
(この子たち、やたらキャラが濃い……!!)
強いウマ娘はどういうわけか個性的な者が多いとは聞くが、地元ではこれほどキャラの濃いウマ娘たちは見たことがない。キャラが薄い(と自分では思っている)スズパレードは、この子たちとうまく付き合っていけるか不安を感じざるを得なかった。
もっとも、ウマ娘はアスリートであると同時にアイドルでもあるのだから、キャラが濃いことはまったく悪いことではない、はずなのだが。それにしたって胸やけがしそうなキャラの濃さだ。
……しかし、スズパレードはまるで甘かった。こんなのはまるで前座に過ぎない。
本当に一番濃い奴はこの後にいた。
そう、その存在で世代の他すべてをモブにしてしまうような、圧倒的な
「では、次……の……」
先生が促す前にそいつは立ち上がり、流れるようなポニーテールを揺らしながら、悠然とした足取りで悠々と教壇に上がった。
中学に上がったばかりで第二次成長期を迎えたばかりの身長はさほど高くなく、むしろ小柄ですらあるのに、まるで巨人が地響きを立てながら歩いているような威風。
たった今までまるで感じなかった圧倒的な存在感は、まるで世界からスポットライトを当てられているかのようにすら感じる。
同じ教室にいるだけで、背筋がヒリヒリして落ち着かなくなってくる。今すぐこの場から逃げ出すか、さもなくば跪くか。近くの者にその二択を突き付けるような、有無を言わさぬ暴威の化身がそこにいた。
極めて端正で、かつあどけなさを残した顔立ち。
その唇の端を悪戯っぽく吊り上げて、そいつは言った。
「……ボクはシンボリルドルフだ! キミたち、本当に運が悪いなぁ。ボクと同じ世代に生まれちゃうなんてさ! 悪いけど、キミたちはクラシックでもシニアでもGⅠを1冠たりとも手にすることはできないよ。全部ボクがいただいちゃうもんね!」
クラスの全員がぽかんとしてそいつを見た。
こいつ今、なんて言った?
宣戦布告したのか、同期全員に? 自分がGⅠを全部取ると?
あまりにも大胆不敵で、まるで意味の分からない行動だった。
この時点で全員にケンカを売って、何の意味があるというのか?
普通の頭を持ってれば、絶対にそんなことしない。
つまりこいつは普通じゃなかった。
シンボリルドルフは絶句する同期たちの顔を見渡すと、白魚のような指先を形の良い顎に置く。
「……と、煽ってみたはいいけど……。どうにもキミたち、パッとしないなぁ。どれもこれも、有象無象の烏合の衆ってカンジ。あんまり弱すぎても困るんだよね。バックダンサーがしょぼいと、せっかくのウイニングライブが盛り上がらないでしょ? そうだなぁ……キミと……キミ。キミたちならボクのライブを盛り上げてくれそうだ」
指を差されたのは、ビゼンニシキ。そしてテスコスールだった。
「んだテメエはああああッ!!!」
机の上に置いた脚を下ろして椅子を蹴立て、ビゼンニシキが怒りのままに吠える。
普通なら不良が授業中に怒鳴り声を上げれば恐怖でしかないが、このときばかりはいいぞ言ってやれ!とクラスの全員が心の中で応援していた。
「喧嘩売ってんのか? 売ってんだよな、テメエはよぉぉぉぉっ!!」
「そうだよ? 話聞いてなかったの?」
燃えるような憤怒を瞳に湛えたビゼンニシキの視線を、シンボリルドルフは傲然と腕を組んで受け止める。
「上等だボケッ! 表に出やがれ!! 思い知らせてやるッ!!」
「何? もちろんそれは模擬レースのお誘いだよね?」
「ッたりめえだろうがッ!! ウマ娘が上下関係つけるならレース以外何があるってんだよ!!」
……あ、そこは
今にも流血沙汰が始まるんじゃないかと戦々恐々と見守っていたクラスメイトたちが、密かにホッと胸をなでおろした。
「でも2人で走るのはつまらないなぁ。ねえ、キミもどう?」
顎をしゃくって水を向けるシンボリルドルフ。
それまで我関せずという顔をしていたテスコスールは、ここに至ってようやくシンボリルドルフに視線を向けた。
「え? いや、私は結構です。戦りたいならどうぞ2人でご自由にどうぞ」
「……ふぅん? 負けるのが怖いの? 格下だって思い知らされたくないんだね」
「いいえ。だって貴方、クラシック路線でしょう」
「もちろん。クラシック路線こそ強者の王道だからね。当然三冠はいただくよ」
このとき、見守っている全員が理解した。
このシンボリルドルフというとてつもなく気性の荒いウマ娘は、何はともあれ競い合いたいのだ。競い合って、誰が同期で最強なのかを見せつけたい。だから同期全員にケンカを売った。
自分のテリトリーにボスは1人で充分といわんばかりの、まるで猛々しいライオンのようなとびっきりの気性難。まだ幼く未成熟な理性では、心の底から湧き上がる荒れ狂う闘争本能を宥められないのだ。
そしてテスコスールは、お前の都合なんてどうでもいいという顔で応えた。
「それならご自由にどうぞ。私はトリプルティアラを獲るためにここに来ました。貴方がクラシック三冠を獲ろうが、私の道には何の影響もありませんので。すべてのGⅠを獲ると息巻いていましたが、さすがにクラシック三冠とトリプルティアラは両立できないでしょう?」
ダイアナソロンやトウカイローマンたちティアラ路線志望のウマ娘たちが、弾かれたようにテスコスールを見つめる。日本のレース史上、未だ誰も成し得ていない偉業を成すという宣言は傲慢な物言いであった。
そしてそれを聞いたシンボリルドルフは、たちまち興味を失って溜息を吐いた。
「なんだ……ティアラ路線か。ならいいや、ティアラウマ娘ごときに用はないから」
「……今なんと言いました?」
テスコスールの眉間が、ピリッと震えた。
しかしシンボリルドルフは、まるで気にした風もなく言い放つ。
「いや、本当に用はないんだ。だってティアラ路線なんて、クラシック路線を走る力のない
「その言葉、取り消してくださ……」
「ふざけるんじゃありませんわよーーーーーッ!!」
「ブッ潰すぞこの野郎ッッッ!! ティアラ舐めんじゃねえッッ!!」
テスコスールの言葉に被せるように、ダイアナソロンとトウカイローマンは
シンボリルドルフはそんな彼女たちにやれやれと小さな肩を竦める。
「参ったなぁ。これは煽りじゃなくて、キミたちのことはどうでもいいんだよ。だってティアラウマ娘が八大競争でクラシックウマ娘に勝ったことなんて、どれだけあるの? 言ってごらんよ、ボクが前言撤回するかもしれないよ?」
「プ、プリテイキャスト先輩がいらっしゃいますわ……」
「3年前の天皇賞・秋だね。他は? この10年でその一例以外にある?」
「ぐっ……」
いなかった。
ティアラ路線のウマ娘がその前にクラシック路線のウマ娘に勝ったのは、13年前のトウメイの天皇賞・秋と有馬記念。つまりこの10年間ではプリテイキャストの一例だけだった。
言葉に詰まって歯噛みするトウカイローマンたちをつまらなそうに見て、シンボリルドルフは鼻を鳴らす。
「ないでしょ。わかる? 行きたければクラシック路線に行けるのに、わざわざティアラ路線に行くウマ娘は弱いんだよ。身の程を知ったなら、黙っててよね」
「テスコガビー」
「……ん?」
感情を押し殺したかのような静かな呟きに、シンボリルドルフは顔を向ける。
テスコスールはシンボリルドルフの顔をまっすぐに見つめ、力強く言った。
「私の姉・テスコガビーです」
「ああ、キミはテスコガビーの妹なんだ。だけどテスコガビーってクラシックに勝つどころか、トリプルティアラすら達成できなく……」
「テスコガビーは負けません」
テスコスールの語調と眼光の鋭さに、シンボリルドルフは言葉を切る。
「確かにトリプルティアラは達成できなかった。だけどそれは怪我でエリザベス女王杯に出られなかったからです。出走すれば必ず勝った。クラシック路線のウマ娘にだって、決して負けません」
「……でも共同通信杯でカブラヤオーに負けたでしょ?」
意地悪な言葉だった。
カブラヤオーは皐月賞と日本ダービーの勝者だ。いわば世代の王者と言える。
だが、クラシック路線のウマ娘でもカブラヤオーには大概が負けているのだから、彼女に勝てなかったからといって、テスコガビーがクラシックウマ娘に勝てないなんて断ずるのは屁理屈だ。
「いずれ勝ちました。テスコガビーは怪我をしなければ、クラシック三冠ウマ娘にだって負けません!」
スールの主張は、決してその場の買い言葉などではない。
テスコガビーは怪我をする前、その1戦以外で一度たりともクラシック路線のウマ娘に負けたことはない。怪我さえなければ史上初のトリプルティアラどころか、世代最強ウマ娘となっていたかもしれない逸材。それがテスコガビーというウマ娘だ。
そんなことは百も承知で、シンボリルドルフはわざと挑発を口にした。
「ふうん……口では何とでも言えるよね。何か証明になるものでもあるの?」
「私が証明です。私が……テスコガビーの妹、テスコスールが! 貴方に勝って姉の“最強”を証明しましょう!」
してやったり、とルドルフは唇の端を吊り上げる。乗ってきた乗ってきた。
シンボリルドルフは演技がかった仕草で大きく手を広げると、教壇の上から朗々と響く声を張り上げた。
「いいね……楽しくなってきた。テスコスール、早速
その若獅子のごとき世代の君主の言葉に、ウマ娘たちが一斉に呼応する。
「同門といえど許しませんわ! テスコスールさんだけに任せるものですか、ティアラの意地を見せてやりますわ!!」
「当たり前だ! ティアラ舐めやがって、“最強”はアタイに決まってんだろ!!」
「ちっ、横からしゃしゃり出やがって……このクソガキを泣かすのはウチだッ!!」
「じゃあ私も~。フフッ、パレードちゃんはどうする~?」
「え……あたしは……」
狂乱の渦と化した怒号、その中心でシンボリルドルフは喜悦に満ちた表情を浮かべた。
「さあ……ボクに付いてきてごらんよ、みんな! 世代の頂点を決める大レースの始まりだあッッ!」
「始めるな」
ゴンッッッ!!!!
シンボリルドルフの脳天を、出席簿の角が直撃した。
「!?!?!?!?!?!?」
ぷるぷると涙目でたんこぶを押さえながらシンボリルドルフが振り向くと、そこには額に青筋を浮かべた担任が鬼の形相で立っていた。
「黙って聞いてれば、何を勝手に授業を放棄して模擬レース開こうとしてるんです?」
「え……でも中央トレセンなら好きなだけ強い子たちと走れるって……」
「まだ何の指導も受けてないような仔ウマどもを勝手に走らせるかたわけがっ!」
「えー……」
「せんせーノリわるーい」
ぶーぶーとシュプレヒコールを送る生徒たちに、担任は額の青筋を深める。
「ケガして競争生命棒に振ったら一生モノの後悔になるでしょうが! そんなに走りたけりゃこれから全員、グラウンド10周! 頭を冷やしてこい!!」
「え……? あたしたち、見てただけ……」
「止めなかった時点で同罪です! ほら、とっとと体操服に着替えて外に出なさい!」
こうして84世代の最初の授業は、グラウンド周回となった。
なお、それでも張り合おうとしたシンボリルドルフとビゼンニシキは、担任にバケツに入った水をぶっかけられたという。
……良くも悪くも、そんな時代の物語。
心の中のデジたん
「会長さんは言わないでしょこんな事ッ。
言わないよねエッ!(圧)」
はい、アプリやアニメに出てくる生徒会長のシンボリルドルフはこんなこと口が裂けても言わないと思います。
しかし言い訳させてもらうと、実馬のシンボリルドルフにはこんなエピソードがあります。
〇シンボリルドルフは幼駒(ルナちゃん)の頃はものすごい気性難で、手が付けられなかった
〇入厩すると気性難は収まって、レースでは大人びた振る舞いをするようになった
しかし成熟しても厩舎では非常にワガママで、ライオンというあだなを付けられていた
この作品でのルドルフは、このエピソードを反映した中学生のワガママライオンとなっています。
あえて別ゲーム風に言えば、シンボリルドルフ・オルタといった感じの存在です。
いや、シンボリルドルフ・オルタ・リリィか……?
ただ、これは未熟な頃のルドルフだからこんな性格なのであって、時間が経てば段々とアプリ版のルドルフに近づいていくはずです。
以下キャラ紹介
=========
〇テスコスール
自分のことなら何言われてもいい。
でも姉様を馬鹿にする奴は絶対わからせてやる。
そんな愛の重い妹。
特技はどこでも寝られること。
〇シンボリルドルフ
史実幼少期を反映したライオンルナちゃん。
同期全員を挑発するくらい好戦的。
容姿はトウカイテイオーにとても似ているが、より賢そうで育ちも良さそうなお坊ちゃんのイメージ。口調はもっとクソガキになったアプリ版テイオー。
〇ビゼンニシキ
史実におけるダイタクヘリオスのパパ。
ダイタクヘリオスの目つきを悪くして、ツッパリ風の化粧をしたイメージ。
実は素の顔立ちはすごく愛らしいのだが、ナメられないように厚く化粧している。
もったいない。
なんでツッパリなのかというと、80年代前半の「ギャル風コーデ」って不良ファッションのことなんですよね。ヘリオスのパパの彼女には、この時代のギャルファッションをしてもらいました。
〇スズマッハ
糸目キャラは強者と相場が決まっている。
やっぱりどこでも寝られる。
〇スズパレード
まだモブウマ娘の扱い。
意外とデータキャラ。
どこでもは寝られない。
〇ダイアナソロン
コテコテの縦ロールお嬢様。良血。
〇トウカイローマン
とっても気が強い。ウルフカットの褐色日焼け少女。
〇キョウワサンダー
おどおどしてるモブウマ娘。
〇担任の先生
優しいけど叱るときは叱る。体罰もする。
体罰は80年代の教育現場では当たり前のことでした。
でも理不尽な体罰は絶対にしません。