隣の金縛り君を起こす為今日も講義はサボります〜腹筋溺愛タイム到来です〜 作:折梨みみ
「ねえねえ愛ちゃん、このラブレター二十三号を受け取ってくださいよ」
「そのラブレターは二十七号目です、これ以上ヤブレターを生成しても意味無いですよ?」
今日も今日とて告白という名の嫌がらせを受ける私は、講義中蓮からラブレターを受け取ってビリビリに裂いています。これでヤブレター生成任務完了です。
「せめて一文字でも読も?」
「講義中にラブレターを送る蓮が悪いのですよ。邪魔です」
「この時間が一番暇そうだから渡したんだけどなあ」
暇なんてことはありません、ノートにうさちゃんの落書きを量産するのに忙しいのです。
七匹目のうさちゃんを描き終わった私は教室の壁に取り付けてある白い時計を見上げる。
……講義が始まって十九分、そろそろ例のアレが来ますよ!
その例のアレとは。
「ぅ……また急に眠気が……愛ちゃんよろしく頼んます……」
突然講義中に金縛りに合うイベントです!
蓮は二時間目の講義が始まって二十分程で眠りに落ち、眠ったと思えば目をかっぴらいて金縛りに合うのです。
……ふんふん、今日の蓮は考えるポーズをしながら金縛りに合うのですね。芸術的で素晴らしいです。
考えるポーズなうさちゃんをノートに書き、その落書きノートを目を見開く蓮の前に掲げる。
どうですかこのうさちゃん、金縛り中の蓮とそっくりでしょう?
考える人と化した蓮は、うさちゃんを見てちくしょうめと思っているに違いありません。そのまま蓮に地獄の民とうさちゃんを眺めさせるのも良いですが、蓮に起こせとお願いされているので起こしてあげましょう。
もちろん起こすのは建前ですけどね!
私はブリーフケースから白い粉が入った袋を取り出す。その袋にはデカデカと伯方の塩の文字が。
そう、これは昨日スーパーで購入した塩!
これを蓮に振り撒きお祓いするのです!
蓮は金縛りに合う度おばけの仕業かもと怯える女々しい男。そんな女々しくてつらい蓮に仕方なく塩を買って来た訳です。清め塩じゃないのは、取り寄せるのが面倒くさいのとそもそもお祓いするつもりがないからです。
私は蓮にただただ塩をぶっかけたいだけなのです。
はあ、はあ、あ、ついヨダレが……
これは決して塩まみれの蓮を想像して垂れたヨダレではありません。美味しそうな蓮を塩振ってぺろぺろするなど私がするなんて事起こるはずがありません。神にだって誓いますよ。これはあれです、少しお腹が空いたんです。
私はお弁当のご飯に伯方の塩を振って摘みモグモグ。次いでに早弁を蓮に見せびらかしたら、さあお祓いタイムですよ!
私は手の平に塩を乗せ、枯れ木に花を咲かせる気分で蓮の頭部に振りかけまくる。
……なんかつまらないですね。
想像してたより塩まみれになりませんし、頭に付いた塩も勿体ないです。蓮に付いた塩を払いますか。
蓮の頭に付いた塩と肩に付いた塩を手でサッと払う。
「うぁッなんですかコレ……やめてくださいよお相笠さん、笠原さんのフ……がこっちまで飛んできてますぅ」
蓮の隣に座るクラスのマスコット増野さんが困り顔で見てきます。
「増野さん、蓮のこれ一緒に払って欲しいんです」
「ぅええ? 汚いので嫌ですう」
「全然汚くなんてないです、さっき私ご飯に振りかけて食べてましたし」
「……いくら笠原さんのことが好きでもそれはいかがなものかと思いますぅ」
「蓮のことは別に好きじゃないです」
増野さんが身をのけぞってドン引きしています。そんなに塩が嫌いなのでしょうか?
増野さんの前世はカタツムリかナメクジだったのかもしれません。いつもノロノロしてる増野さんにしっくり来ます。
「後でまた食堂のパン奢りますから」
「それとこれとは別ですよお」
「うさちゃんあげますから」
「何ですかこのノートの絵、地獄で悶え苦しむミミズみたいですぅ」
「考えるうさちゃんと七匹の遊び呆けるほのぼのうさちゃんですよ?」
増野さんはまた困り顔になってノートを凝視。私のセンスに増野さんは追いついていけないようですね。
増野さんは手伝ってくれなそうですし、一人で塩を払いますか。
あ、塩が蓮の服の中に入ってしまいました。……次いでですよ次いで。
「えぇ、講義中ですよ相笠さん……流石に服まで脱がせちゃ」
「脱がしません、捲るだけです」
「どちらにせよですよお」
塩が入ってしまったであろう箇所を捲る。そこには以前くすぐりの際、写真に収め密かにスマホのホーム画面にしている蓮の美しき腹筋が眩しく煌めく───
「わわわわわわ! 何してるんですか相笠さん!!!」
「増野ー相笠が何かしてても大声出すなー」
「先生までそんなぁ」
理性が吹っ飛んだ私は神に誓ったことも忘れ無我夢中に蓮の塩振り腹筋に顔を突っ込んでいました。
講義が終わり金縛りが解けた蓮に、お腹のことは金縛り特有の怪奇現象だと説得し難を逃れました。美味しかったです。