シャルロット視点
ホグワーツでの新生活は、それはそれは新鮮で楽しいが…面倒も多かった。
まずホグワーツの作りはふざけてるのかと思うぐらい複雑怪奇だった。
階段は142もあり、動き回る階段や、決まった場所で足場が消える階段などがいくつもあった…。
いや、流石にふざけ過ぎな気もするが…その創設者達の遊び心が少し愉快でもあり、面倒な原因でもあった。
「みんな!この階段は要注意よ!気をつけてね!」
それでも私たちスリザリンは他の寮の一年生に比べて、授業に遅れるなどのトラブルは少なかった。
その理由は極めてシンプルで、私たちスリザリンの団結力によるものだ。
今もファーレイ先輩が駆け足で一年生達を先導して動き回る階段を案内している。
私たちスリザリンはお世辞にも他の三つの寮…特にグリフィンドールから好かれているとは言い難い。
現に、グリフィンドールの上級生など私たちスリザリン一年生がすれ違うたびに睨みつけてくる者さえ居た。…嘆かわしいことです。これもヴォルデモート卿がふざけたやらかしをしたせいで、純血思想=スリザリン=悪という認識になっているせいだろう。
嘆かわしい。どの寮にも誇るべき純血と歴史があり、尊重しあうべきだというのに。
まあ、私たちスリザリンはその中で最も尊い、というのはそうですけど。何せ私のお父様とお母様が選ばれた寮だ。最も優れているに決まっているでしょう?
まあそんなわけで、色々と周りからの視線は冷たいスリザリンだが、その影響か純血という一つの分かりやすい理想を共有しているからか、とにかく団結力が強いというのが分かった。
先輩達は積極的に私達に学校生活で気をつけるべき注意点や、楽な授業、気をつけるべき教授などを教えてくれたし、早めに移動することで先輩の誰かが初めて行く教室へと案内してくれた。
すると、階段の下からにやにや笑いをしたピエロの格好をした小男の姿のゴーストが現れた。…ピーブズだ。このホグワーツ一の問題児と言えば、ウィーズリー兄弟かピーブズだというのがスリザリンの先輩達の言葉だった。
彼はゴミで一杯のゴミ袋を両手に二つ抱えて、私達にぶち撒けようとしていた。
「ヒヒヒ!さあ!緑の一年生達に目一杯のゴミをプレゼントだ!」
「…ピーブズ、貴様、そこまでわしに叩きのめされたいか?」
が、ピーブズは、背後から聞こえてきたその声に怯えたように固まった。
「あ、あ…男爵…い、いえ、そのようなことは。」
「ならばどうするか分かるな?ピーブズ。」
「え、ええ、勿論でございます、男爵。私はこれで…」
銀色の血を衣服に纏った血みどろ男爵だ。この悪戯ゴーストのピーブズを制御できるのは、彼と校長のアルバス・ダンブルドアだけという話だった。
最初はそのおどろおどろしい見た目から一年生にどこか気味悪がられていた血みどろ男爵も、忌まわしいピーブズを追い払ってくれるのだからと尊敬されつつあった。
ドラコなど最初の大広間で隣の席になった時は凄まじく嫌そうだったのに、今ではにこやかに血みどろ男爵にお礼を言っている。
「ありがとうございます、血みどろ男爵。」
私も通り過ぎ様にお礼を言っていく。彼はぶっきらぼうに答えた。
「別にこの程度構わん。あやつのせいでスリザリンが減点されては苛立って仕方ないのでな。7年目の連続寮杯を、期待しておるぞ。」
どうやら彼はスリザリン寮憑きのゴーストとして、グリフィンドールのほとんど首なしニックや、ハッフルパフの太った修道士に、スリザリンの6年連続寮杯の記録で鼻高々なのだそうだ。
ファーレイ先輩が彼が血みどろな理由は不機嫌になるから聞かないでくれと言っていたが、生前スリザリン生だったことは分かっているそうだ。
…私の偉大な寮の偉大な先輩だ。
そう思うと彼にピーブズが従う理由も分かる気がした。我々はやはり偉大だ。
ならば7年目の寮杯を手にするのも、当然私たちだろう。
四階の呪文学の教室に入ると、「妖精の呪文」担当の…明らかに小鬼の血が混じっている、小柄なフリットウィック先生が本の上に立って辛うじて姿を見せていた。
その姿が滑稽に映ったらしい。ドラコは思わず吹き出した。
それを見て少し機嫌を損ねた様子でフリットウィック先生がドラコに尋ねた。
「何かおかしいところでもあったかね?ミスター・マルフォイ。」
「…いえ。何でもありませんよ先生。ただ少し、今日はいつもりより自分の背の高さに自信を持っただけです。」
その嫌味の意味が伝わったのかは定かではないが、フリットウィック先生は淡々と授業に入っていった。
それぞれの生徒の名前を読み上げ、初歩の初歩の呪文を杖で唱えた。
私は一発で呪文を成功させたので、スリザリンに5点貰うことができた。
…杖を使った呪文学は初めてなので不安だったが、何とかなりそうで取り敢えず胸を撫で下ろした。
だがフリットウィック先生は不思議そうに言っていた。
「ふーむ…ミス・スラグホーンの呪文の唱え方はまだ改善の余地がある…だがそれでも十分な効果の魔法になった。魔法力が生まれつき強いのだろうね、君は。」
それを私に与えた存在…ヴォルデモートを思い出して、私は少し暗い気持ちになった。
次の『魔法史』は世界で一番退屈な授業だった。
ゴーストのピンズ先生は、ボソボソと一本調子で授業を進めていて、質問の機会も、点数に繋がる機会もなかった。
ドラコやパンジーなどは速攻で授業を無視して私語に走ったが、それでもピンズ先生は淡々と授業を続けた。
…これなら本を読んだ方がマシだ。というかもう私は自習で学んだ場所なので、本当に無駄な時間だ。
隣の背が高くひょろりとした金髪の理知的な男の子セオドール・ノットは、私と同じ意見のようで魔法薬学の本をあからさまに開いて自習していた。
私も自習することにする。自分がホラス伯父様と数年かけて学んだ魔法薬学のノートを読み返す。
それをチラリと見て、ノットは私に尋ねてきた。彼と話すのはこれが初めてだ。
「…驚いたな、それは6年時に学ぶ部分じゃなかったか?催眠豆の汁…だが変だ。本では小刀で切れと書かれている。だが君は小刀の腹で潰せというのか?」
私は少し驚いて答えを返す。このレベルの質問を彼からされるとは思っていなかった。
「ええ、そうですね、本にはよくそう書かれています。でも、実際やってみたところこの方法が一番多く汁を出せるんですよ。…少し驚きました。このレベルの話ができる相手が居るとは。」
ノットはぶっきらぼうに答えた。
「理論は割とすんなり入るんだが、実際に魔法薬を作るとなるとどうも恥ずかしながら苦手でね。せめて理論だけでも先んじて学んでおこうと思ったんだ。」
そこから私とノットは質問と答えを繰り返しながら時間を潰した。ノットは満足げにお礼を言うと、すたすたと部屋を出ていった。どうも一人が好きな人らしい。
一階の1B教室での『変身術』は、かなり良い授業だったと思う。まず担任のマクゴナガル先生が場の雰囲気を引き締めた。
「変身術は、ホグワーツであなた方が学ぶ中で最も危険なものの一つです。もし少しでもふざけたりしたらこの教室からすぐに出ていって貰います。二度と入れることはないでしょうね。そうならないようにしてください。」
生徒達はその一言で彼女に逆らうのは得策ではないと即座に理解した。
さらに机を豚に変え、元に戻すという芸当で成長への刺激まで与えたのだから完璧だ。
豚は魔法とは縁遠い生き物だ。…よって、変身術で変える先としての難易度もかなり高いと本で読んだことがある。
まずはマッチ棒を針に変えることから始まった。これがなかなか難しい。ドラコやダフネもかなり苦戦している。赤い頭が不恰好に残ったりしてしまうのだ。…私もそれなりに苦戦している。杖を使った複雑な魔法は少し苦手だ。
マクゴナガル先生はそんなスリザリンの様子を見て、最も効果的な発破をかけた。
「…この前の授業で、グリフィンドール生の一人が完璧な針を変身させました。…ハーマイオニー・グレンジャーです。魔法族ではない両親を持ち、僅かな期間の学びでよくあそこまで…」
それだけでスリザリン生の目の色を変えるには十分だった。
パンジーは金切り声を上げながら気合を入れているし、ドラコも目つきが変わった。
私だってそうです。
…だって、私は優れた純血なのだから。もしそんな私が純血の血を持たぬ者に劣るというのなら、私の存在価値はない!お父様とお母様の純血思想を継いで、少しでもこの魔法界をよくするんだ。マグル生まれ達を導いて、より良い世界を築くんだ!
そして、正気に戻ったお父様に見せるんだ。
貴方の娘は、こんなに立派に育ちましたよ。貴方達の努力は、例のあの人にすら刃向かった理性は、決して無駄ではないのだと!
私は死ぬ気で神経を尖らせて杖を振る。イメージしろ、何よりも鋭く、見事な装飾が施された針を!
私が杖を振ると、みるみるとマッチが銀色の輝きを帯び、鋭い針へと生まれ変わった。そして、さらにそこで満足しない。頭を薄い緑色のガラス玉に変形させ、蛇の紋様を刻み込む。
それを見て、マクゴナガル先生は感嘆の声をあげて私の出来上がったスリザリンの紋章入りのまち針を皆に見せた。
そして私に満面の笑みを浮かべた。
「見事です、ミス・スラグホーン。一年生でここまで見事な加工をした完璧な針を変身させた生徒は数えるほども居ません!スリザリンに10点与えます。」
…マクゴナガル先生はかなり美形だと思う。笑顔を見てそうぼんやりと思った。若い頃の彼女は、きっとそれは人気な美しい魔女だったのだろう。
授業後、ドラコが嬉しそうに私の肩を叩いた。
「流石だな、シャルロット。これであの穢れた血にでかい顔をさせずに済む!」
ダフネも感嘆したように言う。
「魔法力が強いとは聞いてたけど、細やかな実際の魔法でもここまでとはね。流石ね、シャルロット。」
段々と私にも親しい純血の友が増えてきたのだろうか。ドラコの『穢れた血』という発言にどこか嫌な感覚を覚えながらも、私はその賞賛を無理やり飲み込んで笑顔で頷いた。
翌日の金曜日は、スリザリンにはどこか朝食時からピリピリした雰囲気が流れていた。その理由は今日から始まる、我らが寮監スネイプ先生が担任の『魔法薬学』の授業が、あのグリフィンドールと合同であるという理由からだった。
ふくろう便が大広間に一斉に入り、ドラコの元に綺麗な高級菓子が届いても、彼は珍しく自慢してこなかった。
茶色のヒデヨシも私に珍しく手紙と一つの小包を届けた。
…ホラス伯父様からだ!
私は慌てて手紙を読む。
『シャルロット、元気にしているかい?私の方は自分で起きるようになってから、どうも自堕落になってしまった気がするよ。…さて、君に手紙を送ったのは、何も私の近況報告のためだけではない。…君の寮監の…あー…何だったか。スアレス先生に、私の代わりに課題を見て貰いなさい。アルバスが選んだ先生だ、きっと優秀だろう。追伸…君が好きなクッキーを送ったよ』
私はスネイプ先生の名前を間違えたホラス伯父様に軽く苦笑いしながら、小包を広げる。そこには甘いチョコクッキーがあった。
…私が物心ついた頃から大好きなチョコクッキー。素朴な甘みのあるそれは、私の背中を押してくれている伯父様の気持ちが、直に届けてくれたような味だった。
私たちの寮と同じく、地下にある魔法薬学の教室で、スリザリンとグリフィンドールは見事に左右に分かれて座っていた。
互いに無言で睨み合っている。私としては別にそこまで敵意はないんだが、周りはそうもいかないらしい。
私は周りの見事に瓶詰めされ、保存された魔法薬学の素材である動物の遺体を眺めていた。
…この保存状態はかなり良い。スネイプという先生はかなり優れた魔法薬学の腕を持っているかもしれない。
やがて緊張を孕んだ沈黙の教室に、黒いローブをはためかせてスネイプ先生が入ってきた。
スネイプ先生はまず最初の授業ということもあり出席をとり始めた。そして、ハリーポッターの名前を嫌味っぽくこう言った。
「………ああ、左様。ハリー・ポッター…我らが新しい…スターだね?」
その嫌味に、ドラコやパンジーはくすくすと笑った。ダフネは特に興味なさげに可愛らしく欠伸をした。
私としては複雑な気分だった。ハリーポッターは私の怨敵であるヴォルデモート卿を打ち破った、紛れもない英雄だ。実際のところがどうかは知るよしもないが、それが限りなく真実に近いというのは、今の魔法界の穏やかさを見れば分かる。
だから、そんな彼を馬鹿にするのは嫌です、私。
そんな私の気持ちも知らず、スネイプ先生は演説を始めた。
「このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君も多いかもしれん。…吾輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である…ただし、我輩がこれまで教えてきたウスノロより諸君がマシであればの話だが。」
私は先程までの嫌な感覚も忘れて、その演説に聞き入っていた。
おお!おお!そうだよ!その通りですよ!
魔法薬学の素晴らしさをよく理解しておられるではないか?スネイプ先生は!これは、いいかもしれませんね…!少なくとも『魔法史』のようなハズレ講義ではなさそうです!
スネイプはだが、次の瞬間またポッターに絡み始めた。
「ポッター!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になるか?」
ハリーはまるで何を言われたのか理解できないとばかりに言葉に詰まる。それも当然だ。これは6年生時で学ぶことだ。私は呆れながらも、助け舟を出そうと即座に手を上げた。
それと全く同時に、グリフィンドールの中でも手を上げた生徒がいることに気づく。
「「………!」」
乱れてふんわりとした茶髪に、同じく茶色の瞳の少女…確か名前はハーマイオニー。
二つの上がる手と降参したハリーを見て、スネイプ先生はほくそ笑んだ。
「チッ、チッ、チッ…有名なだけではどうにもならんらしい。…どれ、では"一人だけ"質問に答えてくれるという、ミス・スラグホーンに尋ねてみようか。ミス・スラグホーン?」
ハーマイオニーはその言葉に顔を真っ赤にして手をさらに高くあげる。が、スネイプ先生はしれっとそれを無視した。…先生、自寮贔屓とはいえ、それは流石に大人気ないのでは…
呆れながらも私は答えた。
「生ける屍の水薬です。その二つの材料のほかに、催眠豆の汁とナマケモノの脳みそ、あとは刻んだカノコソウの根と水を加えるのが一般的な作り方です。…催眠豆は切らずに、小刀の腹で潰すとより汁が出て効率よく作ることができます。あと、催眠豆は12粒ではなく13粒使うのがベストですね。」
その答えを聞いて、スネイプは僅かに目を見開くと、頷いた。
「御名答。…その通りだ、ミス・スラグホーン。材料だけではなく、作り方にまで熟知しているとは恐れ入った。スリザリンに10点与える。」
その言葉に、ドラコ達スリザリン生は拍手喝采する。グリフィンドール生は対照的に私を睨んできた。…理不尽だ。スネイプ先生も止めずに笑っている。
先程手を挙げていたハーマイオニーが叫んだ。
「その作り方には誤りがあります!催眠豆は潰さずに切ると本には…」
「黙れ。…呆れたものだなグレンジャー。教科書の丸暗記で分かったつもりか?グリフィンドール一点減点。」
まだこのポッターへのスネイプ先生の攻撃は止まらない。
「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を探してこいと言われたら、どこを探すかね?」
また高難易度問題だ…
「わかりません。」
ポッターの言葉に、私とグレンジャーはまた同時に手を挙げる。
だがスネイプ先生は嫌味っぽく言った。
「クラスに来る前に教科書を一度でも開こうとは思いも至らなかったわけだな、ポッター、え?…ミス・スラグホーン、彼に教えてやってくれ。」
…なんか凄いなあこの人。私は軽く呆れながらも答えた。
「山羊の胃の中です。石の成分は主に毛と繊維で、大半の毒を解毒できる解毒薬に主に使われます。…まあ、喉にベゾアール石を押し込むだけでもいいんですけどね。」
「またもや見事だミス・スラグホーン。スリザリンに5点与える。」
グリフィンドール生の雰囲気が次第に剣呑になってくる。最早私に向かってくるのは殺気だ。
ハーマイオニーだけはどこか違う気もするが…
「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だね?」
これもう虐めでしょ。問題の構造からしていやらしさが滲み出ている。流石にないですよこれ…
私は流石にハリーポッターに申し訳なくて手を上げるのを躊躇う。グレンジャーは変わらず手を挙げるが、スネイプ先生はそれをまた無視した。
ハリーは意を決して反撃に出た。
「わかりません、先生。ハーマイオニーは分かっているようですから、彼女に聞いてみたらどうですか?シャルロットばかりではなくて。」
何人かのグリフィンドール生の笑い声が聞こえる。が、スネイプの人睨みで立ち消えた。
そして手も上げていない私に問いかけた。
「ミス・スラグホーン?君なら分かるのではないかね?」
私は軽くため息をつく。意地でも私に答えさせる気らしい。ここまで聞かれたらもう答えるしかない。
「…どちらも違いはありません。別名、トリカブトです。主に脱狼薬の材料に使われます。」
「全問正解だ、ミス・スラグホーン。スリザリンにさらに10点。…諸君、なぜ彼女の答えをノートに取らんのだ?」
ハーマイオニー以外の生徒達は慌てて羊皮紙に書き込み出す。グリフィンドール生徒の大半はちらちらと恨みがましくこちらを見つめてくる。いや、知らないですよ!ほんとに。
その後は生徒を二人一組にして、簡単なおでき用の薬を調合するようにとスネイプ先生は言った。いや、急に難易度落ちましたね。
私はダフネと作業に取り掛かる。
「それじゃ、干しイラクサの重さを測って…」
「…これで良いです。手で持てば分かります。」
ダフネは軽く驚くと、楽でいいやと綺麗な笑顔で笑った。
…というかこの程度なら体で覚えている。
ダフネはやはりまだ初心者そのものだ。というか一人を除いた全員がそうだ。…ハーマイオニーですらやる機会が無かったからか手順がおぼつかない。
じゃあ誰が優れているかというと、ドラコだ。一人だけ私を除いて明らかに手際が良い。スネイプ先生もそれに気づいたのか、彼を褒めて点まで与えていた。
私の方にも来て、私にも点をくれた。
スリザリンの点獲得がまるで止まらない。一方で他の生徒は注意をつけていたが、聞き耳を立てていると全て的確な注意だ。
やはりポッターへの態度はともかく、スネイプ先生が優秀な魔法薬学の徒というのは疑う余地もない。
一方で一番酷いのはネビルだった。派手にやらかして、薬を被った挙句身体中がおできまみれになっていた。…あれ痛いですね…大鍋を火から取り出さないうちに、ハリネズミの針を入れたな、あれは…
「バカ者!」
スネイプ先生はネビルをネビルの相方のグリフィンドール生に医務室に連れて行かせた。
そして何故かまたハリーの点を取って、授業は終わった。
グリフィンドール生はぶつくさ言って教室を出ていく。
ドラコを中心としたスリザリン生は私によくやったと言ってきた。
ダフネが嬉しそうに言った。
「グリフィンドールの奴らに痛い目見せられたのは愉快ね…まあ、ちょっとスネイプ先生のハリーへのアレは引いたけど。じゃ、寮に戻りましょうか。」
「ああ、先に行っててください。私はスネイプ先生に用事があるので。」
「そう?じゃあ後でお茶でも。」
私は一人残り、スネイプ先生に話しかけた。怪訝そうに彼は応じる。
「どうしたのかね?ミス・スラグホーン。」
「あの、実は先生に私のこれまでの魔法薬学のノートを見てもらいたくて。これなんですが…」
私は羊皮紙を纏めた研究ノートをスネイプ先生に見せる。彼は素早くページを捲ると、少し目を細めながら読んでいた。
「…なるほど、君の育ての親はホラス・スラグホーン教授か。道理で筋がいい。」
「ホラス伯父様のことを知ってるんですか?」
そう問いかけると、スネイプ先生は淡々と答えた。
「ああ。我輩の世代の魔法薬学の教授だった。まあ、彼からすれば我輩のことなど覚えてもおらんだろうが…彼の手癖が君にもよく付いている。」
私は様子を伺いながらお願いをすることにした。
「あの、先生。私正直今の授業のレベルでは物足りないんです。その、ですのでホラス伯父様の時もそうだったんですが、個別指導をお願いできないかと…」
「…………まあ、一理ある。」
スネイプ先生は少し考えると、意外にもあっさりと了承してくれた。スリザリン生とそれ以外への差がエグいですね、この人…
「よかろう。ならば月曜日の夜8時にこの教室に来たまえ。夜間の外出要請は我輩がやっておく。話は終わりだ。」
私はお辞儀をして教室を出る。良かった!彼の腕は確かだ。私の魔法薬学の腕を確実に伸ばしてくれるだろう。スリザリン生で良かった!
そうはしゃいでいるから、スネイプ先生の小さな呟きを私は聞き逃してしまった。
「…キムラ、コルネリア…君達の娘は、我輩が…」