「やっぱりいいな、一人は」
夢境の中、一人で優雅にスラーダをがぶ飲みする。酒なんて洒落たものは飲めない。
まあなんか、某歌姫あたりがファミリーに俺の事広めまくったせいでやたらと扱いがVIP待遇だ。悪い事は何もないので構わないが
「何するにもタダってのは何か……うん」
まぁ、何も持たず体だけで動くのも中々新鮮ではある。旅の中での荷物は基本最低限で生きてきたが、旅をして人に出会うにつれ、人から貰うものも増えた。中には使い所が限られた大切なものもあるが、それそのものを沢山貰うことも
特に景元な。会う度に結盟玉兆渡してくるのは流石にやめてくんないかな。もう三十個ぐらいあんのね、タクシーにすんぞ
「お隣いいかしら」
「────ダメです、今すぐ変装をやめてお帰りください」
「ふふ、やっぱり貴方は騙せないわね」
コートに、帽子に、サングラス。変装の三種の神器みたいなもんつけた声からしてクッソ美人な女性───俺にはわかる、ロビンだ、この人
「ちくしょう、忙しいかなって思って会いに行くの遅らせてたの馬鹿みたいじゃん」
「気遣ってくれてたのね、ありがとう。……でも、こう待たされると我慢が効かなくなっちゃうわ」
「んー……俺としてももっと早くに会いに行くつもりだったんだけどな」
当然、それができない理由があった
「クラークフィルムランドでアベンチュリンの奴が謎に暴れてただろ?しかもあの斬撃、間違いなく黄泉……知り合いのだ。その後もなんか、夢の中で目覚めるとか不思議なことになったし………花火とブラックスワンが起こしてくれたみたいけど、中々焦ってたのは新鮮だった」
ここのところ、ピノコニーは色々あった。アベンチュリンのそれもそうだけど、夢の中で寝てたなんてよくわかんないことまで
「ピノコニーに来たのは初めてじゃないからわかるけど、なんか色々普通じゃないだろ?それのせいで明らか忙しいだろう時に会いに行く訳にもいかなくてさ」
「………………そう、ね」
ロビンの顔が悲痛に歪んだ。申し訳なさ半分───もう半分は、何か、かけがえのないものを失くしたような、そんな表情
「………ファミリーとしても、私個人としても謝罪するわ。貴方がいるピノコニーを、危険のない場所に保てなかった。本当にごめんなさい」
「あぁ……いや、別に責め立てたい訳じゃ無かったんだ。悪い、忘れろ」
花火から聞いた、ロビンの兄───サンデーが行方不明だという噂。ロビンにとって、サンデーは唯一の肉親だ。触れない方がいいだろうが、その精神状態はある程度推し量れる
「………なぁ、その、ロビン」
ロビンの手を取る。強く握り、困惑するロビンの目を見て告げる
「その、色々あってまだピノコニーをちゃんと回れてないんだ。良ければガイド、頼めないかな」
「……ふふ、そうね。ええ、私が貴方を案内してあげる。きっと最高の思い出になるわ」
ロビンの微笑みは、もういつも通りだ。これなら、きっと大丈夫だろう
「よし、そうと決まれば早速行こう!」
あのロビンをガイドにピノコニー観光だなんて、殆どの人は一生味わえない贅沢だろう。つまり、そう考えてみると……?
「最高か?」
案内されたピノコニーでの時間は、今までのどの旅より楽しくて幸せなひと時だった。来れてよかったな……
「……ふふっ」
──────────────────
「………………………なにこれ」
『歌姫ロビンに熱愛疑惑!?お相手は一般男性?仲睦まじく手を繋ぐ姿も────』
「ゴミー!」
畜生普通にデートが楽しすぎて気づかなかった!ロビンのやついつのまにか変装外してるから普通に人目についたじゃねぇか!いや変装したとしても多分どっかからバレはするけどさぁ!
「どうしよどうしよどうしよ……!ついに責任取るしかないのか…?」
クソメディアのせいで完全に顔が全世界に知れ渡った。もー完全に終わりだ。なんかさっきから部屋のドアがどんどん叩かれてるし、スマホにあり得んぐらい不在着信来てるし
あなた、どういうつもり?私に黙って良い度胸じゃない───ヘルタ
事情はわからないが、あなたにとって不本意な事であるのは理解した。任せてくれ、私がどうにかしよう───黄泉
先生!今度演舞典礼で羅浮に行くんだ!先生も見にきてよ!─── 雲璃
「………………寝るか!」
ドアは鍵かけてあったし、オレシーラネ。どうせ寝て起きたらいい感じになってるだろ、多分。あと雲璃は可愛いなぁ、癒し