ソードアート・オンライン 錬鉄の剣聖   作:はたやま

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第2話です

更新遅れてしまいましたね…仕事が忙しいので許してください…。


ゲーマーとマラソンは切っても切れないものである

2023年11月18日

 

「……刀が欲しい」

 

「どうしたんだいきなり?」

 

ある日の午後、いつものようにフィールドでのレベル上げを終えたトウヤがゲンと共に昼食を摂っていると突然にボヤき始めた。

 

「一応刀に一番近い使い方ができるから使ってるんですけど、曲刀じゃどうにもしっくりこないんですよ」

 

「そういえば現実じゃ刀鍛冶だったんだっけか、確かに使い慣れた武器の方が安心して戦えるよな」

 

あの日以来街で顔を合わせては時折食事を共にする間柄になった二人だったが、今回のようにボヤくトウヤの様子はゲンからすれば真新しいものだった。

 

「第1層は迷宮区以外あらかた回ったんですけど、刀スキルの情報なんかは一切なかったんですよね。ゲンさんなんか話とか聞いたことないですか?」

 

「隅々まで探索したお前で分からないんじゃ俺もお手上げだよ。こっちはまだフィールドに出れる人員を育ててる最中なんだからな」

 

ゲンたちはあれから宣言通りギルドを設立のために準備を始めており、現在は勧誘などを行いつつ支援体制の基盤を整えている段階であった。その中で少しづつではあるがフィールドでの戦闘訓練も行い始めていた。

 

「トウヤには感謝してもしきれないな。支えると言っておきながら、実際は素材やフィールドの情報を回してもらっているんだからな」

 

「自分もこれから世話になるんですから、そのぐらいの手伝いはしますよ。にしても、これじゃ俺が刀を振るえるのはいつの日になるのやら。鍛冶場の用意もまだまだ目処が立たないし…」

 

「そう悲観するな。それに、何もあてが無いわけじゃないぞ」

 

「と言うと?」

 

「これを見てくれ」

 

そう言ってゲンが差し出してきたのは一冊の冊子だった

 

「なんですかこれ?」

 

「道具屋で無料配布してる第1層のガイドブックだ。フィールドの情報からレストランの情報まで色々なことが書いてある」

 

「これに刀の情報があるかもってことですか?」

 

「いや、刀のことについては何も書いてない。俺があてにしてるのはこのガイドブックを作ったプレイヤーの事だ」

 

改めて冊子を見てみると見出しに『大丈夫、アルゴの攻略本だよ』と書いてあるのを見つけた。…正直かなり心配になる見出しだが、内容は自分が今まで知らなかった情報まで書かれていたものだった。

 

「ゲンさん、この本を作ったアルゴって人もしかして」

 

「ああ、恐らくだがアルゴさんは元βテスターだと思う。でなけりゃこんなに早く正確な情報をまとめるなんてできないだろうしな。だからこの人ならもしかしたらトウヤが欲しい情報を知っているかもしれない」

 

βテスターとは、SAOの正式サービス開始前に行われたテストプレイに選ばれた1000人のプレイヤーのことで、いわばこのゲームの経験者と言える存在だった。

 

「アルゴさんにはどうやったら会えるんですか?」

 

「わからん、彼女はフィールドのあちこちを動き回ってるらしいからな。ただはじまりの街を拠点にしてはいるみたいだからそのうち会えるかもしれないぞ」

 

「なるほどな…ありがとうございます、いい話が聞けた。礼にここの飯代は払っときますよ」

 

「おい、毎度何かにつけて払おうとするな。自分の飯代くらい出せる」

 

「飯に金使ってる暇あるなら少しでもギルド設立の資金に回してくださいよ。そんじゃまた」

 

有無を言わさず金を払いその場を後にする。今日は飯の後は休みにすると決めていたのではじまりの街をくまなく散策してみることにした。

 

*

 

「そこのニーサン、ちょっといいかい?」

 

「ん?」

 

気の向くままに路地裏を歩いていると、呼び止められる声がした。振り返るとそこにはフードを被った女性らしきプレイヤーがいた。

 

「えっと、はじめましてですよね?」

 

「おっと、こいつは悪かっタ。オレっちはアルゴ、しがない情報屋サ。あんたのことは知ってるぜトウヤのニーサン」

 

自己紹介された名に目を見開く、まさか探し求めていた人物が向こうから来てくれるとは思ってなかった。

 

「さすが情報屋、相手の名前は聞くまでもないって訳ですか」

 

「不快にさせたなら謝るが、はじまりの街じゃアンタは特に有名だからナ」

 

「お気になさらず。俺もあなたには会いたいと思ってたところだったんで」

 

「気が合うナ、オイラもあんたと話がしたくてここに来たんダ。立ち話もなんだし場所を変えようゼ」

 

「わかりました、それじゃ行きましょうか」

 

そして2人は連れ立って場所を移していったのであった。

 

*

 

「はじまりの街にこんないい喫茶店があったんですね」

 

「いいだろウ、ガイドブックにも乗せてないオレっちの取っておきの場所サ」

 

時刻はちょうどおやつ時、トウヤはアルゴに案内された喫茶店で飲み物とケーキを楽しんでいた。

 

「んで、ニーサンはオイラに何を聞きたかったんだ?聞いた限りじゃ自分で第1層はほとんど探索したんだロ?」

 

「その前に一つ確認させてください。アルゴさんは元βテスターなんですか?」

 

「……そうだって言ったラ?」

 

「警戒しなくていいですよ。あなたがβだからどうこう言うつもりは無いので」

 

ゲンから聞かされた話だが、今はじまりの街のビギナーたちの中にβテスターに対する悪感情を抱くものが目立ってきているという。

 

トウヤやゲンたちはなんともくだらない話だと思ってはいるが、いわれのない不満をぶつけられた本人からしてみればたまったものでは無いのだろうし、彼女が警戒するのも当然のことだと思う。

 

「そうカ…悪いな、勘ぐっちまっテ」

 

「いわれのない悪評をぶつけられればそうもなります。それに、所詮βテスターに不満吐いてる奴らなんか自分でなんの努力もしない馬鹿どもですよ。現に奴らはあなたみたいに全体のために行動するβテスターもいることを知ろうともしないんですから、あまり気になさらない方がいいかと」

 

「そう言ってくれると助かル…それで、元βのオレっちに聞きたいことってのはなんなんダ?」

 

「実はですね…」

 

警戒が解けたことが分かり、トウヤは刀や鍛冶場に関しての情報をアルゴに尋ねた。

 

「なるほどナ、その情報なら答えられるゼ。ただし報酬はそれなりにいただくがナ」

 

「そりゃもちろん。金かこちらの持ってる情報か、お好きなようにお決め下さい」

 

「なら、先に質問に答えようカ。まず刀に関してだが、これは曲刀を使い込むしかないだろうナ。βの時にほんの数人いたカタナスキルの使い手たちは、皆曲刀を使っていたらスキルが発現したらしイ。スキルが解放されればNPCの武器屋にも刀が出現するはずダ」

 

「ほうほう」

 

「次に鍛冶場だがナ、これはもう少し上の階層に行かなきゃ手に入らなイ。鍛治の道具もそうなんだが、何より鍛冶の設備があるプレイヤーホームが上にしかない。もっともβ時代の話で変わってるところもあるかもしれないから確証はまだないけどナ」

 

「十分ですよ。ノーヒントの状態よりは全然マシですからね。それじゃ次は報酬ですが、金か情報どっちがお望みで?」

 

「そうだナ…報酬の代わりに2つ頼みがあるんだがそれでもいいカ?」

 

「自分に出来ることならなんなりと」

 

「ならこれから暇なときでイイ、オレっちの調査に手を貸してほしいんダ。生憎戦闘向きのステータスじゃないんで、危なそうなクエストなんかで力を貸して欲しイ」

 

「お易い御用ですよ。あともうひとつは?」

 

「もうひとつは…」

 

すっとアルゴが急にトウヤの顔に向かって指をさしてきた。その顔はなんとも言えない微妙な感情がみてとれた。

 

「その堅苦しい口調やめてくれヨ。ニーサンたぶんオレっちより年上だロ?むず痒くて仕方ないんダ」

 

「あー…そういうことなら。悪いな、リアルでの職業柄初対面の相手にはどうしても気を使うもんでな」

 

「なんだ、学生かと思ったら社会人だったんだナ」

 

「色々あって中卒で職人の見習いやっててよ、もう少しで独り立ちだった矢先にこの世界に閉じ込められたってわけだ」

 

「…あんまりリアルのことペラペラ話さない方がいいゾ。顔も現実と同じに変えられたんだ、ゲームクリアしてから何かあったらどうすんだヨ」

 

「話してもどうとでもなるから平気とだけ言っとくよ。それより他の情報も聞かせてくれ、金なら払うからさ」

 

「豪胆なニーサンだナ…」

 

こうして情報のやり取りをしつつ二人の初邂逅の時は過ぎていくのであった。

 

*

 

【2023年12月2日】

 

しばらくぶりの日記を書いている訳だが…大変なことが色々あった。

 

必要だったからやったこととはいえゲンさんたちからは叱られ、アルゴからは白い目で見られた…自分が悪いのはわかってるんだけどさ。

 

さて今日までの2週間で俺が何をしていたかというと、ずばりカタナスキル取得のためのマラソンである。

 

アルゴの情報では曲刀を使い込むことでカタナスキルは発現するらしい。β時代の情報ではあるが可能性としてはもっとも信用できるものだろう。

 

なので、もうひたすらに狩りまくった。

 

第1層のあちこちに行ってモンスターを狩り続け、ひたすら曲刀スキルを育てまくった。

 

それは良かったんだが…途中で少しやらかしてしまったのだ。

 

第1層に『リトルネペント』という植物型のモンスターがいるのだが、こいつには通常種の他に頭に果実がついた『実付き』、頭に花が咲いた『花付き』の2種類がそんざいする。

 

花付きはレア個体であり、倒せばレアアイテムを落とすのだが…問題なのは実付きの方で、こいつをうっかり倒してしまうと周囲のリトルネペントを呼び寄せる習性があった。

 

でだ…うっかり倒しちゃったんだよね、実付きを。

 

曲刀の突進斬りソードスキルの『リーパー』を通常種に向かって撃ったら避けられて…その先に実付きがいた…

 

あ、と思った時には数十体のネペントに囲まれてた。

 

そこからはもう必死だった。躱して切ってを繰り返しながら地道に数を減らして何とか生き残った。

 

本当に生きた心地がしなかった、HPゲージも初めてイエローに突入してヒヤヒヤしたし…

 

でだ、ここまでなら危ない目にあったっていう話で落ち着いたんだが……死線を超えた興奮状態と連日の探索で判断力が麻痺してたんだろう、とんでもないことを実行してしまったんだ。

 

繰り返したんだよ、ネペントとの連戦を、わざわざ()()()()()()()

 

……今思えば焦りはあったんだと思う。ゲンさんたちに『自分がこの世界を終わらせる』なんて大口叩いて、未だに迷宮区にすら踏み出せてない現状に。

 

目的のカタナスキルは何とか発現したものの、街に帰るなり疲労でぶっ倒れたことでゲンさんに理由を詰められ、めちゃくちゃ叱られた。

 

『諦めるなと言ったお前が!命をなげうつなと言ったお前が!なんでこんなことをした!』

 

本気で心配してくれて怒鳴られるなんて、いつぶりだったろうな。ゲンさんの仲間の人たちにも申し訳ないことをした。

 

アルゴからも怒りを通り越して呆れられ

 

『ニーサンは自殺志願者だったんだナ』

 

なんて冷たい目で言われてしまった…。

 

正直ここまで自分の身を案じてくれる人がいるなんて思いもしなかったな。本当にありがたい話だと思う。

 

……ただ正直なところ、今後もこんな無茶をしないとは約束できない。

 

ゲンさんたちには取り繕ったが、恐らくこれから先本格的に攻略に乗り出せば、無茶でもなんでも乗り越えなきゃどうにもならない状況というのはあると思ってる。

 

その状況に立たされた時…俺はまず迷わずその無茶を踏み越えようとするだろう。

 

そうしなきゃ何も…自分の命も、大切なものも全部守れないことがあるのをもう知ってるからな。

 

──とは言っても、そんな未来が確定してる訳でもなし、そうならないように今後はなるべく気をつけよう。

 

とにかく今は疲れた、数日はしっかり休むことにして、それから攻略開始の準備を整えよう。

 

*

 

【2023年12月4日】

 

休養を取りつつ久々の刀に慣れるためにフレンジーボアで軽く練習をしているとアルゴが訪ねてきた。

 

なんでも今日とうとう第1層のボスが倒されたらしい。

 

だがその戦いの中で1名が命を落としたと聞かされた。

 

いたましい話ではあるが、その場にいなかった自分にはどうにもできない事だ。──できることがあるとすれば、命を賭して戦った英雄の冥福を祈るのみである。

 

 

そして、今日をもって第1層での修行及び攻略の準備期間を終了することにした。

 

装備、戦闘経験、アルゴからの情報提供、攻略に必要な下地は完璧に整った。あとは実際に階層攻略に挑むのみだろう。

 

ゲンさんたちにも挨拶をしてきた。今生の別れという訳ではないが、最前線に乗り込む以上しばらく会うことはなくなるだろうからな。

 

皆少し心配そうな顔をしていたが、快く送り出してくれて、今までの礼といって自作のポーションまで分けてくれた。

 

『俺たちもお前に負けないように、これから組織を大きくして沢山の人を助けていくよ。…だから頼りたくなったらいつでもここに帰ってきてくれ』

 

あの人たちならたまたま一人(ゲンさん)を助けただけの自分と違ってより多くの人に手を差し伸べてくれるだろう。

 

ここまで積み上げたものを確かめるために、明日は転移門は使わず第1層の迷宮区を抜けていく。

 

もしかしたら、そこで死んでしまうかもしれんが…いや、弱気になるのはよそう。

 

曲がりなりにもあの人たちに誓ったんだ、こんなところで怖気付いてどうするよ。

 

準備は万全、戦いにも嫌という程慣れた。ここから先は現実に帰るための勝って当たり前の戦いだ。

 

…よし覚悟はできた。今日はもう休んで明日に備えよう。

 

ここからが本当の第一歩だ。

 

*

 

─第1層迷宮区─

 

その日、迷宮区でレベル上げを行っていたとある6人パーティーは奇妙な男を目撃した。

 

通常の圏外エリアよりも強力なモブが出現する迷宮区をその男はたった独りで進んでいた。

 

特徴的なのは炎を思わせる赤色の短髪、NPCショップでは見たことの無い──おそらくはモンスタードロップと思われる防具。

 

そして何より目を引いたのは彼の得物だ。彼の腰には先日発行された最新のガイドブックによって存在が確認されたばかりの刀が差されていた。

 

「────♪──♪」

 

「なんだこの声?」

 

「もしかしてあいつ、鼻歌歌ってんのか?」

 

パーティーを組んですら危険が伴う迷宮区を、鼻歌交じりに独り行くその姿は彼らにとって呆れを通り越して異様さすら感じさせた。

 

「──♪」

 

「豪胆なやつだな……っ!?おい兄ちゃん危ねぇぞ!!」

 

曲がり角の手前、2体のコボルトが奥からやってきた。コボルトたちは赤髪の青年を見るや同時に飛びかかり、手に持つ棍棒を振り下ろした。

 

「グギャァァ!!」

 

「──♪」

 

「鼻歌なんか歌ってる場合か!お前ら行くぞ!」

 

もはやダメージは避けられないと判断しパーティーリーダーの男は仲間と共に援護に入ろうと走り出した。迫り来る棍棒が青年の頭を捉えようとしたその瞬間──

 

「───シッ!」

 

──すんでのところで青年が抜刀、翻された刀身は正確に2体のコボルトの首を捉え

 

「────」

 

断末魔をあげるまもなくその姿をポリゴン片へと変えた。

 

「───は???」

 

何だ、今何が起こったんだ?

 

パーティーメンバー全員が目の前で起きたことを理解出来ずにいた。気づけば既に青年は刀を納めており、こちらに軽く会釈をして再び歩き出していた。

 

青年がある程度の実力者であることは装備を見た時点で理解していた。しかし、相手の攻撃に対してギリギリのタイミングで後の先を取る神速の抜刀、正確に首を切り裂く技量、一撃でモブを倒し切る攻撃力とそれを可能にするレベル補正。

 

どう考えても第1層で燻っているような実力ではない。あれは明らかに攻略組──その中でもトップクラスのものだ。

 

そんな青年が曲がり角に消えていくのを、彼らはただ呆然と眺めるしかなかった。

 

*

 

(鼻唄三○矢筈切り…ヨシ、再現できた。人前で盛大にカッコつけられたし、漫画の剣術再現結構楽しいな)

 

当の本人がこんなクソしょーもない理由であんな真似をしたとは彼らは知る由もないのであった。

 




ワンピースのブルックかっこいいですよね。
カタナスキルは原作ではクエストクリアで入手だったっけ?
と思ってネットで色々調べましたが「曲刀を使い続けると取得」以上の情報が見つからなかったのでそっちに合わせました。第1層のモブから得られる経験値や熟練度でスキル取れんのとお考えの方もいるかもしれませんが、ネペントの実付きトラップで連戦しまくればいけんじゃね、という考えです。

以下主人公のプロフィールをまとめておきます。ちなみに刀鍛冶に関しての知識は調べた上で書いていますが、間違っている部分があれば暖かくスルーして欲しいです。

名前 トウヤ

年齢 18

髪色 赤

瞳の色 琥珀色

使用武器 刀

好きなこと(もの)
鍛治作業、刀剣鑑賞、美味い食事、犬

性格
刀鍛冶の修行として祖父に鍛えられていたため、基本的には礼儀正しいが打ち解ければかなり砕けた態度をとる。SAOに来てから様々な武器に触れる機会が増えたため元の趣味もあってそこについてはかなり喜んでいる。過去の出来事がきっかけで中学は最低限しか出席しておらず、その期間で修行を積み、最年少で刀鍛冶としての資格を手にしている。



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