ソードアート・オンライン 錬鉄の剣聖   作:はたやま

3 / 4
なかなか書ききれなかった上に大して話が進んでない……


刀鍛冶とビーター

【2022年12月11日】

 

突然だがこの世界には『ビーター』と呼ばれるプレイヤーがいる。

 

アルゴから聞いた情報によれば、ビーターとはβテスターとチーターを合わせた造語であり、ビーターはテスター時代に誰よりも上の階層に到達した経験値と情報を持っていて、それを元に誰よりも有利に攻略を進めている。

 

事前情報を持った上で攻略に臨むなんてそんなのもはやチートだろう、ということでβテスターの『β』とチートを使う『チーター』を合わせて『ビーター』と呼ばれているんだそうだ。

 

更には『ビーター』は第1層のボス戦において、ボスに最後の攻撃をきめたものに与えられる『ラストアタックボーナス』を手に入れるために仲間を見殺しにした最悪のプレイヤーだという話もある。

 

でだ、なぜ突然こんな話をしているのかと言うと……そのビーターと呼ばれている男と思しきプレイヤーが今隣で眠りこけてるからなんだよな。見た目の特徴とかも情報で聞いた通りだし。

 

修行のおかげで第2層の攻略は順調に進んでいた。そして今日も迷宮区に潜ってレベリングやマッピングを進めてたんだが、途中で戦闘の音が聞こえて一応様子を見に来たらフラフラになりながら彼──キリトがモブと戦ってた。

 

危なげなくモブを倒したのだが、ポーションを飲もうとした時に別のモブに襲われてポーションを取り落としていた。

 

しかし、再びモブを倒して安全は確保したのだがポーションを飲む様子がない。……おそらくは最後のポーションを取り落としてしまったのだと予想しそこで声をかけた。

 

最初はポーションを分けようとしても警戒されて受け取ろうとしなかったが何とか言いくるめた、『代金は払う』なんて吐かしてた気はするがこの際無視でいいだろう。

 

そのまま流れで一緒に休むことにしたのだが…相当疲れていたのかキリトはそのまま眠ってしまった。

 

正直、ここまでフラフラになるまで戦うようなやつが噂通りの悪どい人間だとは思えんのよな。戦ってる間も、まるで何かに追い立てられるようだったし。

 

ともかく事情は本人から聞くか最悪アルゴに調べてもらうとして、起きたら少し余計な世話を焼いてみるか。

 

……なんだかこいつからは俺と同じ匂いがする。どこかで致命的に間違えて、何もかもを取りこぼすやつの匂いだ。だからこんなにも気になって仕方ないんだろう。

 

杞憂なのが一番いいが、あんな思いはしない方がいいからな。

 

*

 

─sideキリト─

 

「────っ!?」

 

しまった、いの間にか眠ってた!いくらセーフゾーンだからって気を抜きすぎだろ俺!?

 

「お、起きたな。よく眠れたか?」

 

かけられる声も無視してアイテムストレージを確認する……よし、何も盗まれてないな。

 

「警戒心があるのはいいことだな。俺のストレージも確認しとくか?」

 

「ああ、いや…悪いな疑うようなまねして」

 

「気にするなよ。にしてもこんなところで眠っちまうなんてよっぽど疲れてたんだな」

 

「さすがに気を抜きすぎたよ。待たせたみたいだしそろそろ行こうか」

 

こいつ…トウヤと名乗ったこの男は、さっき突然声をかけてきた。

 

最後のポーションをモブの奇襲で失ったところに現れて『帰り道が不安だから街まで一緒に行ってくれないか?代わりにポーションを分けるから』と提案してきたんだ。

 

……ビーターと忌み嫌われてる俺と一緒に動くのはまずいとも思ったが、正直回復なしでは不安だったところなので申し出を受けることにした。街に着く直前に別れれば悪名のせいで迷惑をかけることもないだろう。

 

寝起きで疑いをかけた攻めてもの詫びに戦闘もなるべく俺が受け持とうとしたんだが……はっきりいってその必要はなかった。

 

途中モブと数回戦ったのを見たがめちゃくちゃ強いぞこいつ。

 

攻撃の威力、速さ、身のこなしから防御に至るまで、間違いなくゲーム内全プレイヤーと比べてもトップクラスだ。

 

「いやーさすがに迷宮区だな、モブの数が多いのなんの」

 

「そういう割には余裕そうに捌いてるじゃないか。お前みたいなやつが、今までどこで何してたんだ?」

 

「ゲームが始まって1ヶ月は1層で修行の日々を送ってた。元々リアルの事情で刀は得意だったからな、スキルを手に入れてからかなり楽に戦えてるよ」

 

「そういえば、どうやって曲刀スキルの熟練度を上げてたんだ?1層のモブじゃ効率悪いだろ」

 

「あー…まぁちょっと色々無茶をしたというかなんというか」

 

「迷宮区に潜り続けてマラソンでもしたのか?」

 

「……リトルネペントっていただろ?」

 

「あの実付きを倒すと仲間を呼び寄せるやつだよな」

 

「……その実付きをわざと倒して連戦しまくった」

 

「……は???」

 

は?…え??

 

こいつ今なんて言った!?

実付きをわざと倒したって、あのデストラップに自分から飛び込んで行ったのか!?

 

「おまっ…バカじゃないのか!?命知らず通り越して自殺志願じゃないか!!」

 

「おっしゃる通りで……1回目に運悪く実付きを倒して生き残ったあと、死線を超えた興奮状態と連日の疲れが合わさって頭おかしくなってたんだよ…おかげでここで知り合って世話になった人たちに囲まれて正座で説教くらった」

 

前言撤回、すごいやつじゃなくておかしいやっだった。判断力鈍ったからで実行しようなんて考えるやついないだろ!

 

「というか、そんな無茶して生き残れるだけ強いなら護衛なんて要らなかったんじゃないのか?」

 

「いやー、迷宮区怖くってぇ~とても心細くってぇ~(棒)」

 

「棒読みじゃねーか!」

 

掴みどころのないやつだな、本当に何が目的で声をかけてきたんだ?

 

けど、その後も街にたどり着くまで軽口を叩き合いながら進んで行ったけど、こんなに気安く話が出来たのなんてかなり久しぶりな気がするな…。

 

*

 

「ようやく街に着いたな、どうするキリト、よければこれから飯でも…」

 

「……」

 

「どうしたよ、急に黙り込んで?」

 

街に近づくにつれてキリトの様子が変わっていったのは気づいていた。それまでよりも口数は減っていき、表情もだんだんと重く沈んでいた。

 

さっきまでは確証はなかったが、これは予想通りってことでいいのかね。

 

「……悪いが、お前とはここまでだ」

 

「突然だな、ならせめてフレンドになっておこうぜ。そうすりゃまたどこかで──」

 

「そんなもの必要ないだろ。本当に間抜けなやつなんだな、ここまで都合よく利用されてたのも気づかないなんて」

 

……うん?

 

「…どういうことだ?」

 

「お前も聞いたことぐらいあるだろ、『ビーター』の噂は」

 

「そりゃまぁ噂ぐらいはな」

 

「俺がその『ビーター』だよ。いや大変だったんだぜ、なんにも知らずに近づいてきたお前を見てると笑いを堪えるのに必死だったからな。おまけになんの見返りもなくポーションまで分け与えるなんて、お前みたいなお人好しがよくここまで生き残ったもんだな」

 

「………」

 

あー…うん…なるほど──こいつやっぱり

 

「驚いて言葉も出ないみたいだな。まぁいいさ、お前との付き合いもこれっきりだ。他人に世話を焼きすぎて死なないようこれからはせいぜい──」

 

「セイっ」ガツン

 

「痛ってぇ!?!?」

 

悪役演じるの下手か!!!

 

いやもう無理してるの見え見えだもん!

『本当はこんなこと言いたくないけど巻き込まないためだから』っていうのが顔から滲み出てるもん!思わず刀の鞘でぶっ叩いてやったわ!

 

「い、いきなり何すんだよ…」

 

「強がってカッコつけてるのがムカついたからっていう理由でいいか?」

 

「だからって鞘で殴ることないだろ!」

 

「はいはい、文句はいくらでも聞いてやるからとりあえず飯行くぞ」

 

「なっ、おい襟を掴むな!離せって!」

 

*

 

「着いたぞ、ここにあるチャーハンみたいな料理が結構美味くてよ」

 

「わかったから、とりあえず離してくれって!」

 

襟を掴んでいた手を離してやる。ここまで引きずられてる間に諦めたのかそこから逃げる様子はなかった。

 

「適当に料理は頼むけど欲しいもんがあったら注文しろよ。今日は奢りだから遠慮するな」

 

「……お前いくらなんでも能天気すぎやしないか?さっきも言ったが、俺がビーターなのは紛れもない事実なんだぞ」

 

「それがどうしたんだよ?」

 

「俺の事を恨んでるやつらにもし目をつけられたら、お前だってビーターの仲間だって思われるかもしれないだろ」

 

「見ず知らずの人間からどう思われようと知ったこっちゃないが…そういえば、なんでお前ビーターって呼ばれるようになったんだ?噂じゃLA(ラストアタック)ボーナス目当てに仲間を見殺しにしたって聞いたが、お前がそんなことできるようなやつには見えないし」

 

「なんでやってないって思うんだよ、もしかしたらそれが事実かもしれないだろ」

 

「他人の命をなんとも思わないやつはそもそも他人を気遣ったりしない。本気でお前がそういうやつなら、正体を隠して俺を騙すこともできただろ」

 

「それは…」

 

「なぁ、あの場で何があった?話してみれば案外楽になるかもしれないぞ」

 

「……見殺しにした訳じゃない。でも、助けられなかったのも事実だ」

 

そこからキリトはぽつりぽつりと語りだした。ボスにはβ時代からの変更点があり、イレギュラーが起こったこと、キリトがそれを察知したが前に出たリーダーのディアベルという男を止められなかったこと、ディアベルが死んだのは元βテスターが情報を共有しなかったからだと糾弾されたことを。

 

「あのまま行けば、新規プレイヤーと元βの軋轢は決定的なものになって攻略どころじゃなくなると思った」

 

「だから、β時代誰よりも攻略を進めたという実績をバラして元βテスター全員に向けられるヘイトを一身に受けたわけか」

 

「…ディアベルが死んだことは、少なからず俺にも責任があると思う。俺が勇気をだして最初からβテスターだって名乗ってれば、何かが変わってたかもしれないのに」

 

「…優しいな、けどそれと同時に大バカだよお前は」

 

「え?」

 

「まずβテスターだったからって、他人の命を背負わなきゃいけない責任なんかないだろ。そもそもただのゲームを命懸けの世界に変えたのは全部茅場晶彦のせいだ。だがそんな世界で戦うことを決めた以上、そこから先は生きるも死ぬも自己責任だと俺は思う」

 

「でも俺は、ディアベルがやられるのを黙って見てることしかできなかった。もっと早く気づいてればボスの攻撃をカバーすることだって…」

 

「たらればをいくら考えたところでどうにもならねぇよ。それに失ったものばかりでもないだろう」

 

「え?」

 

「最終的には託された通り、お前はボスを倒してみんなを守った。ディアベルさんのことは残念だったが、お前がそこに居なきゃあと何人死んでたか分からないだろうさ」

 

「……」

 

「どれだけ近くにいようが助けられないものはある。大事なのは、自分が守ったものも確かにあることを認めてやることだ。……まぁビーターなんて言われ続けるのもしんどいだろうが、そんときは誰かを頼ればいい。俺でよけりゃ愚痴ぐらいならいつでも聞いてやるからさ」

 

「…お前ぐらいだよ、そうやって言ってくれるのは」

 

「あーお前見るからに友だち少なそうだしな」

 

「大きなお世話だ!」

 

「冗談だよ、もう話はいいだろ。飯食おうぜ、冷めちまうよ」

 

これで少しでもキリトの心が軽くなればいいが…結局のところ最後に悩みを乗り越えるのは自分自身だ。まぁ飯も食えて雑談もできてるならもう大丈夫だと思うが。

 

あとはこの優しい少年が心に傷を負うことなくこの世界を生き抜けることを祈るばかりである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。