ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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◇ メダロット2編
1話 雨上がりの今


 

 花園(はなぞの)学園。

 金持達が通うだけあってだだ広い敷地の中。そんな中を、日常にと無数の学生達が行き来している。

 放課後の教室では学生達が教室に残り駄弁っていて。

 

 

「新KWG型のパーツがメダロッターズで先行展示されるらしいぜ?」

 

「ああ、ゾーリンな。でも初代KBT型とKWG型は今でもプレミアもんなんだよなー

 

「メダロット社の企画したスタート・キットだけだっけか。しかもあれ、夏休みに入る前の応募者プレゼントだったから、暴走事件の影響を受けてほんの少ししか生産されなかったっていうし」

 

「そもそも現品自体がないからなぁ。……くっそ、物さえあれば父さん母さんに土下座してでも金を積んでもらうのに」

 

 

 かつてあったメダロットの暴走事件は、当時小学生高学年だった少年と、わずか5歳の少女によって解決をみた。

 かの事件を省み、現在、本体所持にほとんど制限の無かったメダロットには数々の登録と認証が必要になっている。

 本来は所持自体を禁止しろという意見もあったものの、既に世界に浸透している玩具……既に友人とまで呼べるロボットペットの影響力は絶大であり、それら意見については多くの会社の重役達が責任を取るという形で終幕を迎えた。

 

 さて。

 メダロットを使用した競技は多数あるものの、圧倒的な人気を誇る ―― ロボットバトル、通称「ロボトル」というものがある。

 その人気と認知度は凄まじく、世界大会が開かれるほどだ。テレビ中継もなされ、これこそが世界共通言語とすらいえる。

 

 

 ―― ズドォォォンッ!

 と鳴り響いた爆発音も、そのロボトルによるものだ。

 

 

「くらー! そこ! 廊下でロボトルを始めるな! 中庭か第二体育館、もしくは校庭でやりなさい!!」

 

 

 教師が大声を張り上げながら、廊下でロボトルを始めた子ども達を追いかけてゆく。

 やや金に頼るきらいはあるものの、お金持ちだとて、子供達は数年前と変わらず。

 ロボトルをしていた生徒たちを教師が叱り飛ばすと、子供達は慌ててメダロットを転送した後、校舎の外へと走って行った。

 

 ともあれ。

 事件による影響は多々あれど、こうしてメダロットは今日も人間らと日々を過ごしていたのである。

 

 ……が。

 

 

「―― ロボロボロボロボッ♪」

 

 

 金魚鉢を被ったような、あるいは宇宙服のようなスーツの不審人物が、そんな花園学園の校門を出た少年少女らに目を付けていた。

 こっそりと忍び寄る。不審人物は身を低くして、近寄り ――

 

 

「きゃああーッ!?」

 

「? どうしたのです、カリン……」

 

「ロボロボロボ♪」

 

「ロボロボって……です?」

 

 

 校門近くを歩いていた少女2名のスカートが、不審人物の手によって捲り上がる。

 片方、栗色の髪を頭の横で2つ結わえた、大人しそうな少女である……はその裾を押さえて羞恥に顔を染めて。

 片方、長い黒灰色の髪を墨汁のようにすらりと流した少女である……は何か気になる単語が耳に残ったらしく、微動だにせず捲くられて。

 その代わりにと大声を上げた少年が正義感を燃やして、不審者の後を追って走りだした。

 

 

「あいつ、カリンとユウダチのスカート捲りやがった!! こら、待てーッッ!!」

 

「あっ、コウジ……行っちゃいましたです」

 

「……は、ふぅぅ」

 

「カリン、大丈夫です? 身体が弱いのですから無理はしないで……はい、掴まってくださいです」

 

「は、はい。ありがとう、ユウダチちゃん……」

 

 

 ユウダチが他方の少女、カリンの身体を支えながら抱き上げる。少女の体調を気遣いつつ、暫くその場で待っていると、コウジと呼ばれた少年が戻ってきた。

 コウジはどうやら活動的な人物であるらしく、息一つ切らしていないが、戻ってきた所で2人に頭を下げた。

 

 

「……くそっ。逃げ切られた。すまないカリン、ユウダチ!」

 

「いえ。ありがとうございましたコウジ君」

 

「ありがとうとは思いますが、私は別にいいのです。中にツナギを着てますし」

 

「言っておくが、捲くって見せなくてもいいからな。……もっと慎みを持てよ」

 

「あ、それはナエお姉さまにも言われましたです。気をつけますです!」

 

 

 コウジに向けてユウダチがびしっと敬礼。その様子を見てコウジははぁ……と溜息をつき、カリンはようやっと立ち直りうふふと微笑む。

 これが現在のユウダチにとっての日常であった。

 花園学園での日々は、ユウダチという世間慣れしていない少女にとって、刺激的かつ未知に満ち満ちた世界でもある。

 新鮮な毎日を過ごす少女には、喜ばしくも、こうして一緒に下校をするような同年代の友人も出来た。

 

 

「けど、犯人め。この所今みたいな悪戯が頻発してるらしいからな。オレが必ずつかまえてやる!」

 

「おおー。燃えてるです、コウジ」

 

「あの、コウジ君。危ない事はしないでくださいね?」

 

「ええ? カリン、それは無理というモノですよ」

 

「判ってるよカリン。無茶はしない。……ユウダチはちょっと後でロボトルに付き合え」

 

「無理ですー。見ての通り着替えも済んで、これからコウジと一緒にカリンを送ったらそのままメダロット社に直行ですので」

 

「あ、ツナギ……ですね」

 

「だから捲くるなと言ったじゃないか!?」

 

 

 慌てて後ろを振り向くコウジ。

 カリンがついに笑いだし、これで先のスカート捲られの憂いはある程度消す事ができたかな……とユウダチも微笑んだ。

 もう大丈夫かと振り向いたコウジが、その笑顔を直視。

 

 

「……う」

 

「む。コウジ、少女の笑顔に吐き気を堪えるのはどうかと思うです」

 

「……いや、悪いな。なんかこう、本能的な恐怖があって……悪い」

 

 

 コウジは本気で謝罪する。

 しかし雰囲気を敏感に感じ取る彼にとって、ユウダチの時折みせる「どろり」とした笑顔はどうにも慣れないのだ。

 この笑顔さえなければ花園学園のミスコンテストで、お嬢様然として儚げな雰囲気から絶大な人気を誇るカリンにも追いすがる事が出来ただろうに……とはカリンちゃんファンクラブ代表の弁。

 とはいえユウダチにはユウダチでコアなファンがついているらしいのだが。

 

 

「まぁ、視線をそらせなかった私も悪いですからね。でも取り合えず、明日まではぷんすこしておくです」

 

「ふふ。取り合えずなんですね?」

 

「はいです」

 

「ありがとよ。……さて、カリン。送るぜ」

 

「ありがとうございます、コウジ君。ユウダチさん」

 

「それじゃあ行くです!」

 

 

 一先ずの事件はあったが、いつもの通りに下校する3人。

 今はまだ。小さな悪戯にも等しいこの事件が、新たな事件の幕開であるとは……この内の誰もが思ってもいなかった。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 その夜、隣町にて。

 

 夜空に2枚、マントが舞った。

 帰宅途中のサラリーマンが彼らに呼び止められており。

 

 

「だ、だれだお前達は!?」

 

「ふははは! わたしは通りすがりの『怪盗レトルト』! あなたにはこのメダロッチとメダルを受け取っていただく!」

 

「あの、怪しいものではないんです。……わたしはその、相方の『レトルトレディ』でして」

 

「いや、どこからどうみても怪しいぞ!?」

 

「ふはは! それはともかく、このメダロットスタートキット復刻版をお子さんにプレゼントしてあげなさい!」

 

「枕元においておくのがお勧めですね。……お子さん、ちょっとお母さんに怒られて落ち込んでいるようでしたので」

 

「な、なんで我が家の事情が筒抜けなんだ……?」

 

 

 と、絡まれていたりする。

 とある少年……テンリョウ・イッキがメタルビートルの一式のパーツを手に入れるのは、この夜の話である。

 

 

 





・ジュンマイ・カリン
 メダロット博士妻の孫。つまり親戚。
 ユウダチが不退転の勢いでもって友人にした少女。
 ゲームでは病弱設定がある。あと黒くない。

・カラクチ・コウジ
 正義感にあふれる少年。
 なし崩しにユウダチの友人となった。
 が、結果的にカリンの手助けを行う人が増えてくれたため、ユウダチのことはありがたく思っていたりする。

・怪盗レトルト
 世を騒がす怪盗。
 レディを名乗る相棒がいる。

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