ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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3話 ムラサメの少女、成長中

 

 

「やったじゃないイッキ!」

 

「オレの力だよな!」

 

「ありがとうメタビー。……強かったぁ、コウジ」

 

「そう、それよ! 見た? あのスミロドナットの高速移動! 流石は花園学園で1番のメダロッターよね!!」

 

 

 当初の目的を忘れひとまずの勝利に、イッキもメタビーも喜んで飛び跳ねていた。その様子をアリカがひたすらカメラに収め、しかし、

 

 

「? オレが花園学園で1番……ってのは、何の話だ?」

 

 

 その台詞の中にあった単語に反応し、コウジが疑問符を浮かべた。

 当のアリカも疑問符でもって返す。

 

 

「だってカラクチコウジって言えば、最年少でメダリンクトップ10入りを果たした天才メダロッターでしょ? 花園学園なら1番強いじゃない?」

 

「いや、メダリンクを基準にされても駄目だろ。あれは回線繋がっているところしか参加できないし、そもそも接続回数が多いと有利だ。……花園学園で1番強いのは多分、こいつだぞ」

 

 

 そういって、コウジが隣に居た少女を指す。

 イッキとメタビー、アリカの視線が一手に集まる。

 しかしその少女はというと、

 

 

「ほら、動かないでくださいですスミロドナット! ティンペットの初期修理は自己修復を早めるのに大切なんです!」

 

「す、すいませんユウダチさん……」

 

 

 少女は何故か制服のまま砂場に座り込み、スミロドナットの左手に肌色をしたテープ……外皮テープを巻き始めていた。

 話題に出そうとしたコウジが若干頭を抱え、言いよどみながら。

 

 

「おい……ユウダチ……」

 

「はい終了です! コウジ、戻して良いです!」

 

「分かったよ……お疲れスミロドナット」

 

 

 聞いていない訳ではなかったのだろう。コウジがスミロドナットをメダロッチに戻すと、ユウダチはイッキとアリカの前に進み出た。

 イッキが顔を見つめると……ユウダチは真顔のまま。

 

 

微笑む(おどす)なよ?」

 

「わかっているですコウジ。……さて、こんにちはです」

 

「こ、こんにちは」

 

「ど、どうも」

 

 

 そして差し出された右手をイッキ、アリカが順番に握手。

 ……思ったよりもしっかりとした、いつも何かを弄っているような手だった。と、イッキがその手の感触を反芻していると、ユウダチが自己紹介を続ける。

 

 

「わたしはムラサメ・ユウダチと言います。コウジとは同級生です」

 

「……! ムラサメ・ユウダチ!!」

 

「どうしたのさアリカ。急に大声を上げて」

 

「この娘、メダロットの暴走事件を解決したっていう!!」

 

 

 息切れ切れになりながら説明を続けるアリカの指摘に、イッキも記憶を探る。

 ……名前自体には聞き覚えがないが、話には聞いたことがある。確か、使っているメダロットは……と考えてしまうあたり、あまり名前は覚えていなかったか。

 アリカがユウダチへと詰め寄って。

 

 

「あの、ムラサメさん!」

 

「ムラサメって呼ばれるのはあまり……。できればユウダチと呼んでくださいです、アリカさん」

 

「あ、そうなんだ。僕はイッキ。宜しくね、ユウダチ」

 

「はいですイッキ!」

 

 

 と、終始和やかになった空気。だがそれをアリカが破り捨てる。

 

 

「そ、それでユウダチさん!」

 

「はい、なんでしょうです」

 

「取材をさせて頂けませんかっっ!」

 

 

 がしりとその手をとるアリカ。

 目をぱちくりとさせたユウダチが、傾ぐ(でろり)

 

 

「そうですね……」

 

 

 焦らすつもりはないのだろうが、辺りを見回して。

 その視線が、コウジで止まって。

 

 

「まずは謝罪です。コウジの不躾な決め付け、すいませんです。はいコウジ」

 

「……すまない。頭に血が上ってた」

 

「「あっはい」」

 

「イッキ、赦してくださいますです?」

 

「う、うん。まぁ勝てたし」

 

「アリカさんはどうです?」

 

「スクープになったし、まぁ、被害はスクリューズだけだし」

 

 

 周囲の面々が好意的だと確認し、改めてユウダチが距離をとる。

 

 

「ありがとうございますです。それで、取材ですよね。良いんですが……うーん。時間がないんですよね。時間が取れる機会があれば、お受けしますです。連絡先を交換しましょう」

 

「あ、ありがとう! 特集を組むから、是非宜しくね!!」

 

「んー……私に特集を組むほどの特ダネがありましたです……?」

 

 

 唸るユウダチを気にせず、アリカはぶんぶんとカメラを振り回して喜びを表している。

 そんな様子をイッキが見つめていると、コウジがとある方向を振り向いた。追って、視線を向ける。

 

 

「カリン!?」

 

「コウジ君……あ、イッキ君?」

 

 

 コウジが驚き、美少女がイッキへ視線を向ける。

 イッキにとっても見覚えはあった。

 

 

「えっと、カリンちゃん?」

 

「ちょっとイッキ、いつの間にこんな可愛い子と知り合いになったのよ!」

 

 

 校門から入ってきた少女に向けてアリカがとにかくフラッシュを焚く。

 もう何でもいいのか……むしろ肖像権はないのか……とイッキは悩むものの、それよりもカリンちゃんである(酷い)。

 カリンは、先日テンリョウ家の愛犬ソルティが迷っている所をみつけ、イッキが案内したという出会いで見知った少女だ。

 その彼女が、なぜここにいるのかは判らないのだが……

 

 

「ごめんなさいです、カリンー。コウジは結局暴走しましたです」

 

「ありがとうございます、ユウダチちゃん。コウジ君、謝りました?」

 

「うっ……い、一応は。ユウダチが冷静にさせてくれた」

 

 

 ユウダチが仔細を報告していたらしい。コウジはばつが悪そうに頬をかく。

 どうやら力関係は見えてきたな、と思うイッキのその前にカリンが出て丁寧に頭を下げた。

 

 

「そうですか。わたくしからも、すいませんでした」

 

「どうしたの、カリンちゃん?」

 

 

 イッキが理由を尋ねると、カリンが申し訳なさそうにうなだれる。

 

 

「コウジ君は、わたくしのスカートを捲った犯人を捜そうとしてくれていたんです。悪気はなかったみたいなので、許して頂ければうれしいのですが……」

 

「それは大丈夫。むしろロボトルに勝ってパーツを貰っちゃったし」

 

「まあ! イッキ君、コウジ君に勝ったんですか? お強いんですね!」

 

「そ、そんな事はないよ……」

 

「……むぅ。あたし無視されてる」

 

 

 照れて頭をかくイッキの横でむくれるアリカ。それを見て、頃合と見たユウダチが仕切り直し。

 

 

「さて、それではカリンも来てくれましたし退却です」

 

「おい、スカート捲りの犯人はどうするんだよ!」

 

「そんなのセレクト隊に任せるお仕事です。それより他校にあんまり長居して目立つのも良くはありませんですよ」

 

「……それもそうか」

 

 

 何とかコウジを説き伏せてくれたようだ。

 ……コウジを諌めるのに慣れているんだろう。ユウダチの口ぶりは実に滑らかなものだった。

 カリンとユウダチが連れ立って校門まで移動し、一礼して去ってゆく。

 少し遅れていたコウジが振り向き、

 

 

「テンリョウイッキだったな! 次は勝つ!」

 

 

 一方的な宣言をして、2人の後を追っていった。

 

 

「天才メダロッターのライバル宣言! 更に英雄的メダロッターとの邂逅! 今度の記事はこれで決まりね!!」

 

 

 すこし呆けたイッキの隣で、アリカだけがやけに嬉しそうにペンを動かしているのが印象的な、事件の顛末であった。

 

 後日イッキ(スカート装備)は、スカート捲りの実行犯として退治したロボロボ団員に、被害を被った分、ちょっとだけ恨みを込めてロボトルを挑んだとか。

 





・スクリューズ
 イワノイ、カガミヤマ、親分のキクヒメによる悪ガキ3人組の通称。
 だいたいかませになる。

・イッキ(スカート装備)
 イッキはスタッフに執拗に女装させられる。その一つ目。
 アリカのスカートを借りて、スカート捲りの犯人をおびき出す作戦に使われた。

・アマザケ アリカ
 イッキの幼なじみ。家が近い。活発。番記者。
 メダロット6どころか7にも(名前だけ)登場するので、他方のヒロインよりも若干優遇されている気もしないでもない。
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