ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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6話 おどろ沼と幽霊③

 イッキとカリンが暫くその場で休憩(きゃっきゃうふふ)していると、コウジを連れたユウダチとアリカが戻ってきた。

 聞けばどうやらコウジはセレクト隊の隊員から情報収集をしていたらしい。言われてイッキが辺りを見回すと、確かに、おどろ沼周辺にはセレクト隊が余剰以上に配備されているように感じられた。

 

 

「多分、あの小屋の中にアワモリ隊長が居たですから、幽霊の噂を聞きつけた隊長に皆さん引き連れられて来たのだと思うです」

 

「うん、アタシのジャーナリストの勘もそう言ってる。それにしてもアワモリ隊長か……あんまりいい噂は聞かないわよね?」

 

「ああ。だと思ったから、オレは周囲にいたセレクト隊員にそれとなく聞き込みをしてたんだ。奴等はロボロボに負けず劣らずだからな。ぽろっと口にしてくれるんだよ、これが」

 

「それで、何か収穫はあったのコウジ?」

 

 

 イッキが当然の流れで尋ねると、コウジは露骨に顔をしかめた後で溜息を吐き出した。

 

 

「……イッキ。お前さ。オレと勝負してるっての忘れてないか?」

 

「……あっ!?」

 

「まあいいじゃない。ここからまた勝負を始めれば。コウジ君を探している間、こっちだって色々と収穫があったんだから。ねえユウダチ?」

 

「はいです。先ほど山伏の皆さんに状況を伺いました。いつも山に入り浸っている山伏さんたちであれば、状況の変化には敏感だと思ったですので」

 

 

 ユウダチの思考を聞いたコウジが成る程な、と頷く。

 イッキとしてはさっきのロボトルには情報収集の意味合いもあったのか、と驚くばかりだ。アリカは何やらメモを取っており、カリンはそんなユウダチがどこか誇らしげに微笑む。

 メモを取り終わったアリカが、ふんふんと頷きながらも先を促した。

 

 

「それじゃあ情報を出し合いましょうか。はい、コウジ君から」

 

「何でお前が仕切るんだ? ……まあいいか。オレがセレクト隊に聞いて回った所、どうやらおどろ沼周辺でもロボロボ団が確認されてるらしい。セレクト隊はロボロボ団の仕業じゃないか、って睨んでるみたいだな」

 

「ふむふむ。じゃあ、ユウダチの番ね」

 

「山伏の皆さんも、ロボロボ団は目撃しているようでした。目撃された場所は、下流から上流まで満遍なく散見してますです。特に、木の上で昼寝をしていただとかいうのが多いですね」

 

「「「木の上で昼寝ぇ!?」」」

 

 

 コウジとアリカ、それにイッキも思わず声を揃えてしまったが、ユウダチは特にリアクションも無く肯定。

 そんなユウダチを見て、……いや。確かによくよく考えれば、と、3者共に冷静になって納得。ロボロボ団とはそういう奴らなのである。

 すると、コウジは拳をぱしんとうって。

 

 

「となると上流か、下流か……こうしちゃいられない。イッキ! オレは先に探しに行くぜ!」

 

「あっ、コウジ」

 

「行っちゃいましたです。……探し出した私たちの苦労はなんだったんです」

 

「ふふ。でもコウジ君、楽しそうでした」

 

 

 それぞれがコウジの熱血ぶりにやれやれと思いましたものの、カリンにこう言われては仕方があるまい。

 姿が見えなくなったところで、イッキは腰を上げた。

 

 

「それじゃあぼくも行こうかな。あんまり張り合うつもりは無いけど、コウジに呆れられるのもそれはそれだしさ」

 

「ん? それじゃあアタシもイッキと行くわ。取材はある程度終わったからね」

 

「そうですか。私はもう少しカリンと休んでいきますので、イッキもアリカも気をつけて下さいです」

 

「ケガはしないでくださいね。それと、コウジ君をお願いします」

 

 

 カリンとユウダチはそう告げて、上流の方角へと歩いていった。あちらは確か、仮設の休憩所があったはずだ。多分そこに向かうつもりなのだろう。

 アリカと2人残ったイッキは、さてとやる気を出して伸びをして、歩き出した。

 

 

「それじゃあアリカ。まずはこの辺りでロボロボ団を探してみようか」

 

「そうね。行くわよイッキ!」

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 探し始めたは良いものの、少なくとも見える範囲にロボロボ団が居ないのは確実だろう、とアリカとイッキは判断していた。

 なにせ周囲にはセレクト団員が大勢おり、どこかでロボロボ団員が現れたならば、それなりの騒ぎになっていてもおかしくは無いだろうと考えたのだ。

 少なくともこうして全く動きがないというのはありえない。救援要請なり何なりで、人員の移動があるであろうことは予測できていた。

 となれば、ロボロボ団は見えない位置にいるということになる。

 

 

「一体どこに潜んでいるのかしら?」

 

「うーん、池の中とか」

 

「……あいつ等ならいそうね。でもそれじゃあ探せないわ」

 

「それじゃあ……」

 

 

 周囲を見回す。

 手ごろな位置に、大き目の樹が生えていた。蹴ればカブトムシかクワガタムシでも落ちてきそうだな……と一瞬思ったが、樹液がでない種類の木であったなら集まる事も無いんだよなぁ……とイッキはどうでも良い事を考えて。

 

 

「こうして……それっ!!」

 

 

 と、その木を蹴り飛ばしてみた。

 アリカが怪訝な目で見ていると、

 

 

「―― ロボォォォ……ルォボッ!?」

 

 

 上から落ちてきた。案の定、ロボロボ団である。

 しばし呆然と目を見開き、

 

 

「って本当に木の上に居た!?」

 

「ロボッ、お前らが木を揺らしてオレを落としたロボか!?」

 

「イッキ、確保よ! 確保!!」

 

 

 アリカがシャッターを切りながらイッキに指示を出す。

 ええ、僕かよ……とは思いつつも、イッキは落ちてきたロボロボ団への距離を詰めてゆく。

 

 

「じっとしていてくれよ……」

 

「状況は理解できないけど、兎に角ピンチだロボ ―― 逃げるロボッ!?」

 

「あっ、こら、待ちなさい! 追うのよイッキ!!」

 

「わ、わかったよ!」

 

 

 飛び起きて逃げ出したロボロボ団を、イッキは全速力で追いかける。

 

 

「まて、このっ!」

 

「待てといわれて待つ奴は居ないロボよ!」

 

「なら大人しくしていろ!」

 

「大人しくしたら捕まるロボよ!」

 

 

 ジグザグと逃走しながら。

 イッキはロボロボ団の背を捉えられる、と確信し。

 

 

「―― それっ!」

 

 

 と、その背に向けて飛びかかり。

 

 

「ロボッ!?」

 

 

 しかし目の前にあったその背中が、突如横へと緊急回避。

 替わりにイッキの前に、おどろ沼を貫く川が現れて。

 

 

「へっ!?」

 

「あっ、イッキ!?」

 

 

 どぶんという音がして、下流へと流されてゆく。

 必死にもがいてみる物の、流れが急で岸にたどり着く事ができない。

 

 

「がぼっ……がぼっ、……ぶくくく」

 

「イッキーッ!?」

 

 

 アリカの叫び声を最期に、イッキの意識はフェードアウトした。

 

 

 

 

 

 ―― で、次に目覚めた時は見知らぬ天井があって。

 

 

「ここはどこだ……?」

 

「いっひっひ。目が覚めたかい」

 

「うわぁっ!?」

 

 

 聞きなれない抑揚の声に、イッキが思わず身の危険を感じて飛び起きる。

 するとその傍に、1人の老婆……と、無数のメダロットたちが佇んでいた。

 

 

「なんだ!? そしてぼくはなんで着物を着てるんだ!?」

 

「いっひっひ。落ち着きな」

 

 

 老婆は不気味な声をあげながらイッキに落ち着くよう促した。

 慌てふためいては見たものの、暫くすれば落ち着いてくる。どうやら何をするわけでもないと感づいたイッキは、もしかしたら助けてくれたのでは? と思い当たりまずお礼を言う事にした。

 

 

「あの、ありがとうございました。おばあさんのお名前は」

 

「ひっひ。カンちゃんとお呼び。……それに、いいんだよ。アンタはこの子等が勝手に拾ってきただけなんだからねえ」

 

「オマエ、オイシソウ」

 

「……ぼく、もしかして食べられる?」

 

「残念ながら人間の子供は食べないねえ……いっひっひ」

 

「そ、そうですか……」

 

「オイシソウ」

 

 

 とは言われたものの、隣でトンボ型メダロットのドラゴンビートルが物騒な発言をしているために安心は出来ないなぁ……と、内心では呟いてみて。

 イッキは身体に痛む箇所がないことを確認し。

 

 

「あの……ここは一体、何処なんですか?」

 

「ここはおどろ沼の下流さ。人はこれっぽっちも立ち寄らないから、野良メダロット達が一杯集まってきてねえ」

 

「カンちゃんはここに、1人で?」

 

「そうだねえ。娘が出て行ってからは、あたしとこの子達だけだねえ」

 

 

 どこか寂しげな雰囲気を発するカンちゃんに、イッキは閉口。

 ……このおどろ沼の外れにある小さな家に、1人。それはやはり寂しいのではないか……とは思う。が、それはイッキの口出しできる部分ではないだろう。

 思いつつも胸の内に秘めれば、この老婆にやや感じていた恐怖心は薄れていた。

 イッキは改めて尋ねる。

 

 

「あの、カンちゃん。ぼくは上流に戻らないといけないんだ。どうやって帰るか、判らないですか?」

 

「そうだねえ……」

 

 

 カンちゃんが周囲を見回す。ドラゴンビートルに一瞬視線が向いたものの、彼は黄色の首を横に振った。

 ドラゴンビートルはトンボ型なだけあって、比較的細身なメダロットだ。外付けのパーツなどが無い限り、人を抱えて移動するには体格が足りないのだろう。

 

 

「それなら家の外に行って、他のメダロットたちに聞いてみれば良いかも知れないねえ」

 

「他にも居るんですか?」

 

 

 イッキの問いにカンちゃんは頷く。

 

 

「そうだねえ。ヤナギが帰ってこない以外は、沢山の子達が辺りに居るよ」

 

「ヤナギ?」

 

「昔から悪戯が好きな幽霊型のメダロットでねえ。暫く姿は見ていないけど……どこで何をしているやら……」

 

「……」

 

 

 どうにも心配そうな表情だ。

 しかし、ともあれこの家の周囲にはまだ沢山のメダロット達がいるらしい。それなら、潜水型のメダロットに手を貸してもらえば支流を辿って遡る事も可能かもしれない。

 決まりだ。と、イッキは腰を上げる。

 

 

「行くのかい?」

 

「はい。……あ、ぼくの服、まだ乾いてないや……」

 

「いいよ。ビニール袋に入れてあげるからそのまま持って行きな」

 

「うん。ありがとう、カンちゃん」

 

 

 自分の祖母が居たならば、こんな感じなのかもしれない。

 カンちゃんの挙動に、イッキはどこか懐かしい気分を感じつつ服を受け取り……話しにあったヤナギというメダロットはもしや、という確信に近い情報も得つつ……しかし着物のままで扉の前に立つ。

 

 

「ねえカンちゃん」

 

「なんだい」

 

「ぼく、必ずお礼を言いに、またここへ来るよ。またね」

 

「……ひっひ。楽しみにしてるよ」

 

 

 その顔に笑顔が浮かんでいるのを見て、イッキは扉を横へ開いて外に出た。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

「……はふぅ、です」

 

「どうしましたか、ユウダチさん」

 

「いえ。ゴメンなさいです、カリン。ちょっと出かける用事が出来たです。幽霊メダロットの件で、イッキが流されてしまったとアリカから」

 

「!? ……そうですか。もう休憩所にはつきましたし、わたしのことは気にせずお出かけください、ユウダチさん」

 

「はいです。行ってきますです、カリン」

 

「はい。行ってらっしゃい」

 

 

 ―― ぱたん!

 

 

「……あ。……そういえば、今、なんでユウダチさんは幽霊の事を、メダロットと……?」

 




・きゃっきゃうふふ
 おそらく死語。
 イッキがカリンに、カリンがイッキに何度も話しかけたためこう表記している。
 システムコール(好感度↑)。
 アリカの好感度は居合わせていなかったために都合よくも低下していない。

・アワモリ隊長
 現セレクト隊の隊長。手柄が大好き。
 因みに副隊長はトックリ。

・着物
 イッキの女装シリーズその2。スタッフが執拗に(ry
 流されたイッキを拾った先の住人、カンちゃんが女物しか持っておらずこうなった。
 着流し、じんべえなどではなく着物である。
 彼はなんと(服が乾いていないとはいえ)この格好で暫く辺りを歩いたりする。
 これを着たまま女トイレに入ろうとしたら末期。
 ※メダロットでは女子トイレに入ると各ヒロインの好感度が低下する統一仕様があります。大事なのは好感度が下がるという点より、「入れない」のではなく「入ることができる」というぶっ壊れた点。
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