ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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8話 メダロッ島

 

 メダロッ島とは、おみくじ町の西側から海を渡った先にある、島一面を改造したアミューズメントパークである。

 その名の通りメダロットをテーマにした島。到る所でメダロットをモチーフにしたアトラクションやイベントが開催されており……本日、イッキはアリカの家族に連れられてこの島を訪れようとしていた。

 しかし当のイッキは、島へと向かう船「ユイチイタン号」の甲板に立って表情を落としている。その理由は「島に行きたいとねだったものの家族に相手にされなかった」という、子供らしいものであった。

 手すりにもたれながら息を吐くイッキに、幼馴染のアリカが見かねて声をかける。

 

 

「元気出しなさいよ、イッキ」

 

「……アリカ」

 

「アンタの両親だって本当に忙しかったのよ。しかもいくら土曜日とはいえ、前日の晩に言ったんでしょ? 予定が入っていたら空けられないじゃない」

 

「……そうなんだけどね」

 

 

 イッキも自分の願いがかなり性急であったことは自覚している。

 他の皆が家族と来る事ができている、という状況がイッキの気分に影を落としているだけなのだ。

 

 

「おお、イッキとアリカです」

 

「……ん?」

 

「あっ、ユウダチ!」

 

 

 甲板の手すりに寄り掛かっていると、今年に入ってから親交が増えた花園学園の少女……ユウダチが甲板へと登って来た。

 ユウダチはそのまま真っ直ぐ、イッキとアリカの元へと近寄ってくる。手すりに掴まって、先に広がる水平線を見つめながら。

 

 

「イッキとアリカもこの船に乗っていたんですね。奇遇です!」

 

「そうね。もしかしてコウジやカリンちゃんも?」

 

「はいです! それじゃあ皆、メダロッ島に来れたんですね。良かったです」

 

 

 正面に向けず、どろりとした笑顔は水平線へ。釣られてイッキとアリカも視線を向ける。

 真っ直ぐな海原の中央。小さな点の様に見えているのがメダロッ島だ。

 

 

「うーん、まぁ、元々現地で集合する予定だったものね。ユウダチもコウジ君もカリンちゃんも」

 

「ですです。コウジは向こうのデッキでロボトル挑んでますし、カリンはお父様に見張られているので船内で暇そうにしてますよ。アリカもイッキも、時間があったら顔を出してあげてくださいね」

 

「うん。でも多分、その前に着くと思うけど」

 

「はふぅ! それもそうです!!」

 

 

 奇妙な声をあげて同意をした後、ユウダチはでれりと手すりにしなだれ、瞼を閉じてしまった。

 アリカは駄目だこりゃとお手上げのポーズ。

 まあ、暗くなっていても仕方が無い。イッキも頬を緩ませ、共に、目前のメダロッ島へと期待を馳せることにした。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 船を下りたイッキとアリカ、アリカの母親の前を沢山の人が行き交っていた。

 島丸ごとをアミューズメントとしたメダロッ島の話題性は凄まじく、初日から大入り満員の様だ。

 入口のアーチの横では風船を配るマスコットメダロット「ラピ」が複数浮いては子供達に微笑みかけており、子供だけでなく、はしゃいでいる大人達も大勢いた。

 かくいうイッキの目前にも、クモの様な義手を生やした鞄を背負う小柄な老人ががははと笑いながらはしゃいでいる。

 

 

「? どうしたのイッキ。お母さん、もういっちゃったわよ?」

 

「あ、ごめんアリカ。すぐ行くよ」

 

 

 声をかけられ、アリカの後に続いてイッキはアーチをくぐった。

 港から本地へと入ってすぐの場所に、案内看板が立てられている。イッキはアリカと並んでそれを覗き込んだ。

 

 

「あ! この中央通りでパレードをやるんだって!!」

 

「うん。後で見にこようか」

 

「それに、ほら! ロボトル大会もやるんだって!」

 

「へえ! しかも世界中から招待選手が来てるのか!!」

 

 

 イッキが喜びの声をあげる。看板には確かに、ロボトル大会の時間と概要が書かれていた。

 

 

「参加資格はなし、だって。早速登録に行こうかな? あ、でもまだ時間があるや」

 

「ふーん。あ、イッキ! それならアタシと一緒にゲームセンターに行くわよ!」

 

 

 時間があると知ると、アリカはイッキを引っ張ってゲームセンターへと向かい出した。

 大人しく引っ張られて、東側へと向かう。ジャーナリストを目指すだけあって、アリカは下調べをしてあるだろう。

 だのに、アミューズメントパークに来てまでわざわざゲームセンターを選ぶという事は……と、考えながら自動式の開閉扉を潜る。

 すると、アリカはまっすぐ筐体の1つに飛びついた。

 

 

「ここ! ここのユーフォーキャッチャーにラピのぬいぐるみがあるの!!」

 

「それが狙い?」

 

「そうなのよ。何せ限定品で、お城の側で手に入るのとはまた一風違うのよね~」

 

 

 アリカは心底嬉しそうに語る。

 イッキも透明な硝子の内を除いてみれば、そこには水色の身体をして両腕に風船を持ったマスコットメダロットの愛らしいぬいぐるみが置いてある。

 周囲を見渡す。本日は開園日。その第一波の中でも自分たちは真っ直ぐゲームセンターまで来たのである。

 祭りと同じだ。初期配置の中には「取って持ち歩かせるための」ものがあるはず。

 

 

「? イッキ?」

 

「多分、一番最初なら……」

 

 

 幾つかある筐体の中で最も手ごろな位置にありそうなものを物色する。

 ……あった。やや斜めになっている1/1ラピぬいぐるみ。

 イッキは迷わず硬化を投下する。1回目で転がし、2回目で入口の脇にずらす。やや高くなっている入口に引っかかったがこれで良い。

 勝負だ。3回目。

 

 

「これで ー- !」

 

「おおっ!?」

 

 

 本来ならば引っかからない位置にアームの片方を押し付け、ぬいぐるみ自体の質量と弾力性を利用して段差を超えさせる……!

 狙い通りにぬいぐるみは入口の中途に引っかかった。これはゲームセンターにおいては「入手」とみなされる。後は店員を呼ぶだけだ。

 手に入った「1/1スケール:ラピぬいぐるみ」を、イッキはそのままアリカに手渡した。

 

 

「あ、ありがと……! かっわぃぃぃぃ~!!」

 

「うん、そんなに喜んでくれるならとったかいがあったよ」

 

「……なぁ、一体イッキは何者なんだよ……」

 

 

 喜んでいるアリカを尻目に、一連の展開に着いていけなかったメタビーの声だけが突っ込みを入れてくれていた。

 (イッキは父親に教わりました)

 

 

 

 

 

 ゲームセンターを出ると、アリカはイッキに何度もお礼を言いながら、満面の笑みでコインロッカーへぬいぐるみを(半ば、押し込めに)行った。

 その間にと、イッキはロボトル大会に参加するために西へと向かう。アリカも大会には参加するため、会場で合流する予定とした。

 会場に到着して早速受付で登録を済ませると。

 

 

「……コウジ、ユウダチ、カリンちゃんも?」

 

「お、イッキか。お前も大会に参加か?」

 

「船上以来ですねイッキ。因みに私はカリンとコウジの応援です」

 

「ふふ。わたしもロボトルは好きなんですよ。本も沢山読んでいますし」

 

「へえ~、そうなんだ」

 

 

 見知った3人も会場へと訪れていた。

 どうやらコウジとカリンはロボトル大会に参加するらしい。

 

 

「う~ん……参加者を見るだけでも、一筋縄じゃいかないな」

 

「そりゃそうだろ。オレ達以外の海外からの招待選手っていうのも楽しみだぜ!」

 

「ええ、そうですわね」

 

「応援してるです!」

 

 

 イッキは大会への期待感を高めつつ、控え室へと入っていった。

 





・ユーフォーキャッチャー
 何故こんなに尺を割いて描写したし。
 いえ。消すのもシャク(・・・)なのでそのままにしておりますけれども。

・ラピのぬいぐるみ
 ゲームにおいてもヒロインの好感度を大幅上昇させるアイテム。
 本来はお城のロボロボ全退治という苦行をこなした上でやっと1つ手に入れられるもの。
 ……本来は、である。
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