会場に戻る前に休憩所を逃げ出したカリンとお化け屋敷に入るというイベントがあったものの、予定通りにロボトル大会の後半戦が始まった。
よく判らない国の小さな王子、ロシアから来た熱い熱いと騒ぐおじさん、アメリカ代表なのにスフィンクスを使用する魅惑のメダロッター、研究者としての側面も持つジョー・スイハンを次々と打ち倒し、イッキは決勝へとコマを進めていた。
決勝戦。ステージに立ったイッキの向かいには、拳を握ってやる気十分なコウジの姿がある。
ミスターうるちが観客へ向けての解説を挟みつつ。
「さあ、いよいよ決勝戦! くしくも少年同士の対決となりました! カラクチコウジ君、対、テンリョウイッキ君! ……準備は宜しいですか?」
イッキとコウジが同時に頷く。
コウジのリーダー機は以前と同じくスミロドナット。違うのは、その他2体として植木鉢からひまわりが生えたようなメダロット……さくらちゃんシリーズの僚機が居る事だ。
対するイッキはフレクサーソードを装備したメタビーの他に前半戦同様のトラップスパイダ(頭スミロドナット/クモメダル)、そしておどろ沼の幽霊事件の際に加わったクマメダルを装備したナイトアーマー(頭のみドラゴンビートルでプレス射撃)という布陣を目前に並べる。
「それでは、ロボトルゥゥ……ファイッ!!」
うるちが腕を下ろし、決勝戦のロボトルが火蓋を切って落とされた。
沸き立つ歓声の中、イッキとコウジは互いに指示を出してゆく。
「トラやろう、先制ミサイルを喰らいやがれっっ!!」
「スパイダは格闘トラップ! ベアーはスミロドナットにプレス射撃だ!!」
「くももー!」
「くままー!」
「ちっ、やっぱりかよ! ……見せてやれスミロドナット!! さくらちゃんはスミロドナットを全面支援!!」
「了解だコウジ!」
「「よーろれいひー♪」」
さくらちゃん2体がスミロドナットを応援し、充填・放熱速度を上昇させる。
イッキ側のスミロドナットへの対策は万全に近い。スパイダが格闘トラップを設置し、ベアーの頭部パーツによるプレス攻撃がメタビーのミサイルに加わる。
が、
「―― 全力で走れ、スミロドナット!!」
「はぁっ!!」
「トラップを!?」
イッキが驚愕の声をあげる。
スミロドナットは脚力を一点に集めた推進をもって、トラップを踏んでから発動するまでの間に駆け抜けるという芸当をして見せたのだ。
しかもミサイルとプレスは間に入っていたさくらちゃんが替わりに受ける。
一直線に、
「覚悟、メタビー! ……ぐおおっ!!」
「っぐわっっ!? っつう」
「メタビー!?」
フレクサーソードによってメタビーのフレクサーソードを破壊。そのまま防御しようとした頭部にもダメージを与え、ひとっとびにさくらちゃんの後ろへと後退した。
突然のリーダー機のダメージに、イッキが狼狽する。
「大丈夫かメタビー!?」
「やれる! 心配すんなイッキ!! 次だ!!」
メタビーが叫び、イッキも、次の手へと思考を移す。
……まずは、防御。
「スパイダはもう1度トラップ! ベアー、メタビーを守れ! メタビーはベアーの後ろから射撃だ!!」
今度は陣形を整え、再度スミロドナットを迎え撃つための準備を行う。
すると、それをみたコウジが笑う。
「……狙いどころだ。耐えろよ、スミロドナット!」
「ああ、判ってるさコウジ!」
今度は打って変わって、スミロドナットは慎重な位置取りを行い始める。
メタビーが撃つマシンガンやミサイル、ベアーの放つプレスを時折受けながら、機を見計らってはトラップを回避、ハンマーで反撃を試みるという探りあいのような攻防が続く。
これに一番最初に焦れたのはメタビーだ。
「イッキ! ミサイルの弾数が切れる前に決着をつけないとジリ貧だぜ!?」
「そうだね……でも」
メタビーの言う事は間違ってもいないが、どちらにせよこのまま射撃を続ければ壁になっているさくらちゃんの損傷があるためイッキたちの優勢勝ちだ。
問題は、何かを狙っているであろうコウジの作戦。もしそれが、一発逆転の可能性を秘めているとしたら……と考えると、どうしても慎重になってしまっているのだ。
残り時間は恐らく僅か。ここでイッキはコウジの表情を伺おうと正面を向いた。
「―― 行くぜ、イッキ」
獰猛な笑みを浮かべたコウジと視線が合う。
まずい、と背筋に悪寒を感じるも、後手に回って。
「仕掛けろスミロドナット!」
「ああ! ―― おおおおおッ!!」
さくらちゃんの間からするりと抜け出し、スミロドナットが迫る。
同じく、推進を利用してトラップはものともしない。
狙いは、試合開始の一撃と同じく、
「来るぞ、メタビー!」
「……受けて立つぜ!」
一歩一歩が変則的、それでいて早い。
大爪、フレクサーソードを構え、
「くままー!」
割り込んだのは両腕にライトシールド、レフトシールドを装備したベアーだ。
がつっ、とメタビーの目前で火花を散らす。
防御。反撃。
「ミサイルッッ!!」
「これで ―― 終わりだああっ!!」
角から放たれたミサイルが、ベアーの目前で爪を立てているスミロドナットへ。
爆風と共にその両腕が破壊される。
よしっ、とイッキが安堵から拳を握り。
メタビーは次弾をと左腕のサブマシンガンを構え。
コウジが叫ぶ。
「スミロドナット、『メダフォース』!」
「……『全体復活』!!」
突如、スミロドナットの全身が唸りとともに発光。
イッキにも見覚えがあった。メタビーを手に入れた翌日、スクリューズに絡まれた際に発動した「謎の技」……メダルの潜在能力を解放する、メダフォースという技だ。
光が晴れたとき、スミロドナットの両腕はスラフシステムの強作動により完全に復活していた。
呆けている間に回り込む。距離が近い。メタビーとスミロドナットの距離は、既に目と鼻の先だった。
故に、振り下ろされた大爪に、メタビーは両断される。
「メタビーッッ!!」
「テンリョウイッキ、リーダー機戦闘不能! 勝者、カラクチコウジ!!」
ミスターうるちが勝敗を告げると、本日一番の歓声がスタジアムを包み込んだ。
◇◇
「ようやくリベンジ達成だな、イッキ!」
「流石だったよコウジ!」
優勝はカラクチコウジ、準優勝はテンリョウイッキという結果で終えたメダロッ島のロボトル大会。
終わった後のロビーでは、コウジとイッキが意気投合してがっしりと腕を組んでいた。
負けはしたものの、イッキとしては元からコウジは格上のメダロッター。悔しさはあるが、全力を出し切ったのだから終わってみれば晴れ晴れとしたもの。そしてそれはコウジも同様のようだった。
それを眺め、アリカは、これが男の子同士の友情でやつか……やっぱり喧嘩した後は友情が深まるのよね。などと納得しながら記事にするべくシャッターを切っていた。
「あっ、そういえば……」
「? どうしたの、イッキ」
「うん。ユウダチと、『魔女の城』に行く約束をしてたんだ」
「北側のおっきなお城で催されているツアーの事ね」
イッキが頷くと、アリカが説明を添える。
ロボトル大会が終わったらという約束だったはずだ。
「行って来なさいよ、イッキ」
「アリカとコウジも行かない?」
「ユウダチと行くんだろ? だったらオレはカリンの調子を見ておきたい。あいつ、すぐ迷うからな……」
「アタシも良いわよ。ツアーの商品になってるラピのぬいぐるみは欲しかったけど、ツアーで貰えるのよりももっとでっかいのをアンタから貰ってるし!」
アリカがにかっと笑う。ゲームセンターで取ったぬいぐるみをよほど気に入ってくれているらしい。
そんな、ご満悦のアリカを横目に見つつ、コウジが小声で。
(……そういやイッキ。さっきはカリンを連れていってくれたみたいで、ありがとな)
(うん。カリンちゃんの家も、中々大変みたいだからね)
(カリンの奴お前にそこまで話してるのか。……成る程な)
何やら勝手に納得したコウジにイッキが疑問を抱くも、肩をぽんと叩くだけでそれ以上は語らなかった。
「それじゃあここで一旦解散ね。アタシはお母さんと一緒にお化け屋敷とかに行って来ようかな」
「さて、オレはカリンの親父さんを何とか宥めすかさなきゃな……」
それぞれ口にしつつ、手を振って分かれてゆく。
イッキも、さてと息を吐き出した。
「―― それじゃあ、僕もユウダチの所に行こうかな?」
・メダフォース
作中の通り。メダル毎に持っているメダフォースは異なる。
色々とナンバリングによって仕様が変わるため、解釈は適当に。
因みにコウジのスミロドナットは2コア基準の「?」メダルですが、「?」は現在の技術で判別不能の意味に解釈しているので、獣の王のやつとは厳密には違います。
『全体復活』は「?」メダル2番目のメダフォースで、効果はかなり美化されています。
・トラップ解除
推進が高いと解除されやすくなる。ゲーム通り。
・イッキ敗北
……というかコウジの視点から見て、さくらちゃん2体とスミロドナットでイッキを倒すのはかなり無理ゲーだと思いました。流石は主人公。
強敵とロボトルからの敗北があったため、コウジ強化済でした。
確か、原作でも、ここだけは敗北してもストーリーが進んだような気がします。記憶が曖昧ですが。
・カリンちゃんとお化け屋敷
システムコール(好感度↑↑)。
原作の通りのため割愛。カリンちゃんファン血涙。後で挽回予定。