ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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11話 メダトルロボトルミルミルキー(はぁと)

 

 『魔女の城』と呼ばれるツアー・アトラクションの前には子供達が長蛇の列を作っていた。

 約束どおりその前でユウダチと合流したイッキも列に並びながら、しかし、当のユウダチはやや難しそうにでろでろと唸っていて。

 

 

「うーん。当初は3人でロボトルしてロボ……バイトのメダロッター達を倒し、ラピのぬいぐるみとやらを貰おうと思っていたのです」

 

「今は違うの?」

 

「はい。……さっき、カリンが入って行った気がするんですよ」

 

「カリンちゃんが?」

 

「はいです。しかも見た事のない子供に案内されてです」

 

「うん。―― それにどうやら、子供達が何人か行方が判らなくなっているみたいだね」

 

 

 と、一言を付け加えたのは隣にいる青年。

 やや頼りなさそうだが優しげな表情。首の辺りでパッツンと揃えられた黒髪。

 嬉々として説明をしてくれたユウダチによると、彼がいつも語られる「ヒカル(あに)さま」であるらしい。

 ムラサメ家の兄といえばムラサメ・シデンだとアリカから聞いた。彼は自分たちの数個上の学年でありながらムラサメ製作所という会社の実質のトップであるらしい。

 それとはまた別の兄さま。何れにせよ、自分が気軽に「ヒカルさん」などと呼んで良い物か……イッキは考えつつ。

 とまあ詰まる所、迷子たちを探すのとカリンを見つけるというのがユウダチの目的に加えられていたらしい。

 

 

「ヒカルさんは良いんですか? 僕たちに付き合っても」

 

「良いんだよ。特にすることないしね」

 

「ヒカル兄さまは本日、ここいらでバイトをしていたのです。シフトは終わっていますけど、付き合ってくれると言ってくれたですので! 宜しくお願いしますですっ!!」

 

「あはは……まぁ、昔からの妹分のお願いだからね。それにこういうのなら得意分野さ」

 

 

 ヒカルが頬を掻きながら笑う。

 言葉にも表れている通り、よほど嬉しいのだろう。今のユウダチの笑顔は、どろり濃厚ダーク味といった風味にパワーアップしているように思えた。

 

 

「それよりほら、僕たちの番みたいだよ」

 

「あっ! それでは行くです、ヒカル兄さま! イッキ!」

 

「うん。探すもそうだけど、実はちょっと楽しみだなぁ」

 

 

 などと言いながら、3人は「魔女の城」へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 「魔女の城」は、どうやら悪の魔王に進行されている魔法の国をイメージしているらしい。各階層を移動しながら悪の手下達を勇者役に選ばれたお客が倒してゆく、とういストーリーとなっている。

 勇者の役目は、よりにもよってイッキが選ばれ、金ぴかの鎧を着込んでいる。ちょっとカッコいいので、そういう意味では満更でもない。

 とはいえやはりレベル上げか……と呟きそうになったイッキだったが、悪の手下を倒すための勝負はメダロットを使ったロードレースやロボトルであったため、実力行使よりは断然スムーズに倒してゆく事ができていた。

 

 

「そこです! ぬいぐるみの中です!!」

 

「よし!」

 

「ばれたロボッ!?」

 

 

 ユウダチに引っ張られてはロボロボ団に扮したバイトメダロッターを撃破し。

 

 

「あっちにも居るみたいだね」

 

「はいっ!!」

 

「くっそー、逃げ切れないロボッッ!?」

 

 

 ヒカルの洞察力に舌を巻きながら撃破し。

 といった具合で次々と手下を捕まえていった。

 

 

「ぐぉぉぉぉ~……やられたー」

 

「やった! 魔王を倒したわー!!」

 

 

 最後には少女を人質に取った魔王とのロボトルに勝利を収め、見事に勇者の役目を遂げる事に成功。

 そのままツアーは終了となり、勇者役を務めたイッキはステージの上に案内される。

 

 

「はぁい! 良い子の皆~、魔王を倒してくれた勇者に拍手~!」

 

 

 司会役の魔女のような格好をしたお姉さんに促され、ぱちぱちぱち、と疎らな拍手が起こった。

 何かをごそごそと取り出し、

 

 

「それでは、全ての手下を撃破した勇者君には、このラピのぬいぐるみを進呈しまーす!」

 

 

 イッキの手にアリカにプレゼントしたものよりか2回りほど小さなラピのぬいぐるみが手渡される。

 同ツアーに参加した子供達からいいなーとの声があがりはするものの、勇者役を選んだのも子供達であるため、それ以上の声は上がる事無く解散となる。

 

 結局、カリンの姿も見かける事は無かった。先行した1つ前のグループに参加はしていた様なのだが、その途中で姿を消していたらしい。

 となると、どうやら、本格的に迷子の子供たちを捜し始める必要があるようだ。

 うんと頷きあって、出口を潜る前にヒカルがくるりと反転。

 

 

「さて……係員さん!」

 

「何ですか?」

 

「妹がトイレに行きたいらしいんですが、館内のトイレを借りても宜しいですか?」

 

「もるです!」

 

「ああ、それならさっきの部屋にあるよ。扉の鍵は開けておくから、戻ったら声をかけてね」

 

「ありがとうございます。ほらユウダチ、行こう」

 

「もるです!」

 

 

 ……うわぁ、茶番だぁ……と思いつつ、イッキも鍵を開けてくれた係員に頭を下げて扉を潜る。

 戻った途端、背筋を伸ばしたユウダチとヒカルが周囲を確認し始めた。

 

 

「さて、潜入しようか。……どの辺りだと思う?」

 

「あの水場の向こうですかね。なんであの位置に階段を作る必要があるのか判らないですし。もらないです」

 

「……! ヒカルさん、ユウダチ、誰かが登ってくるよ!」

 

 

 向かっていた先から。階段を登ってくる音に、全員が身構えた。

 何故かきらりと光が舞い、

 

 

「……まったく、もうここを嗅ぎ付けたでしゅか。鼻の良いヤツらでしゅ!」

 

「もう! ミルキーのコレクションを邪魔しないでよー!」

 

 

 現れたのは2人。

 黒のスーツに角2本、サングラスというロボロボ幹部な出で立ちの……幼児。おしゃぶりつき。

 もう一方は、あれだ。さっきまでツアーの案内をしていたミルキーとか言うお姉さんだ。とんがり帽子に黒装束。魔女のコスプレをしている。

 その2人へ向けて、どうやらヒカルは怖気づいた様子はみじんほどもないらしい。

 

 

「お前たちが子供をさらっているのか?」

 

「ふん! 大人はバカでしゅからね! 子供の頃から教育して立派なロボロボ団員にしようという計画でしゅ!」

 

「わたしは趣味!」

 

「うわぁ……」

 

 

 子供を拉致監禁するのを、趣味と言い切った。ロボロボ団よりも魔女ミルキーの方がたちが悪く見えるのは気のせいだろうか。利害の一致があるのは理解できるが、その趣味は(少なくとも万人には)理解できない。

 と。

 

 

「はぁ。何はともあれ、ロボロボ団が相手だ。どうせロボトルだろ?」

 

「なんでしゅお前! ふらふらしてる浪人生みたいな冴えない顔をしてるくせに生意気でしゅ!」

 

「浪人はしてないんだけどな」

 

 

 ヒカルがやや挑発的にロボロボ団の幹部に呆れて見せると、子供幹部・サラミはそれに乗っかった。

 その隣を見ればどうやらミルキーも同様にロボトルの体勢を整えている。

 隣に並んで、ヒカルが小声で呟きだす。作戦会議だろう。

 

 

「僕はゴーストで格闘主体に行くよ」

 

「ですか。私は……ふむ。並びとして、相手のリーダー機はジェントルハーツかサンウィッチですね」

 

 

 サラミのジェントルハーツ。巨体が売りの戦車脚部、大きな両腕を生かしたハンマー攻撃と頭部の「単発無効」パーツが特徴だ。

 魔女ミルキーのサンウィッチ。行動をキャンセルする「転倒」を駆使する、癖のあるメダロット。

 それらの特徴をあげておいて、ユウダチは、ふむ。

 

 

「私はケイランを出します。イッキ、メタビーにリーダーをお願いするです」

 

「メタビーで良いの?」

 

「はは。でもフレクサーソードは最後までとっておいてくれよ?」

 

「それはもう。いいよなメタビー?」

 

「ま、仕方がねーな」

 

 

 メタビーの同意の声とともに全員が向き合う。

 視線が絡まりあった所で、

 

 

「いくでしゅ! ジェントルハーツ達!」

 

「「む~ん」」

 

「メダトルロボトルミルミルキー(はぁと)!」

 

 

 ロボトルが開始。

 ゴーレム型メダロット・ジェントルハーツの巨体が壁のように前進し、その後ろからサンウィッチがイッキたちのメダロットを「転倒」させようと狙っているのが見えた。

 相手の作戦は明快だ。相手のメンバーのうち、攻撃パーツはジェントルハーツの両腕にしかない。

 転倒も、成功すれば頭パーツにわずかなダメージを与えることは可能だが……。

 

 

「ゴースト、先制!」

 

「それそれ斬るよー」

 

 

 真っ先に攻撃を仕掛けたのはヒカルのメダロット、サムライだ。

 ゴーストと呼ばれた鎧武者が、両腕に構えたビームセイバー、ビームサーベルを手近にいたジェントルハーツへと振るう。

 威力の高い光学の斬撃である。脚部、左腕の順に融解……破壊され。

 

 

「ケイラン、出来れば奥のサンウィッチです!」

 

「おうだピヨッ!」

 

「メタビー、ミサイルで援護だ!」

 

「おうよ!」

 

 

 ユウダチのケイラン、サソリ型のポイズンスコピーが多脚型の脚部を生かして、小回りを利かせながら接近。

 遮ろうとしたジェントルハーツがメタビーのミサイルを防御した隙を縫って、リーダー機のサンウィッチをメルト攻撃で叩く。

 じゅうっ、と装甲が溶ける音。身体を斜めにして脚部で防御。

 

 

「うー、充填早いー!!」

 

「これじゃあ転ばせられないよミルキーちゃん!?」

 

 

 サンウィッチの持つ転倒攻撃は充填中のメダロットの脚部に異常を起こし転倒させ、充填行動を中断させるというものだ。リーダー機として活かすことが出来ればこれ以上厄介な能力も無い。

 が、イッキにしろヒカルにしろユウダチにしろ、攻撃型のメダロットは粒揃い。3体ともに攻撃型だとて十分に連携が行えるほどの能力を有している。

 しかも言い換えれば、「充填のタイミングを狙われなければ」サンウィッチは手も足も出すことができないのである。

 明らかな援護機体がなくとも、攻撃を仕掛けるには十分だ。

 

 

「メルトのダメージが浸透するまでもうちょっと待つです。先にそっちです!」

 

「溶けるピヨッ!」

 

「む~ん」

 

「頭突け、ゴースト!」

 

「それそれ頭突きー」

 

「む~ん!」

 

「止めにミサイル!」

 

「おうよ! っだあー!!」

 

「でしゅ!?」

 

「む~……ん!」

 

 

 ごらんの集中攻撃である。子供幹部、サラミの機体ジェントルハーツは得意の単発攻撃無効トラップを設置する暇も無く撃破されてしまう。

 残るサンウィッチも、メルトによる継続ダメージによって動きが緩慢となっており。

 

 

「メタビー!」

 

「止めだな!!」

 

「ケイランっ!」

 

「ピヨォーッ」

 

「ゴースト!」

 

「それそれ最後ぉー」

 

 

 寄ってたかっての攻撃で、サンウィッチが勝てるはずも無く、その機能を停止される事となった。

 

 

「あーん、せっかく集めたミルキーの夢の国がー!!」

 

「よし!! 勝てた!!」

 

「……うわぁ、流石は幹部です。逃げ足速すぎです」

 

「本当だ、もういないや。……それとミルキーは……ってミルキーも居ない!?」

 

 

 ヒカルの声につれられてイッキもユウダチもあたりを探すが、つい先まで泣き声をあげていたミルキーの姿すら見受けられない。

 3人は顔を見合わせ。

 

 

「……それじゃあ、あの階段を降りて子供たちを解放しようか。脱力感が凄いけど」

 

「普通に犯罪なのに、あの魔女とロボロボ団が関与するとギャグにしかならないです……凄く不合理です」

 

「あ、あはははは……」

 

 

 一先ずは行方不明の子供達と、カリンを探すために魔女の城の中を捜索し始めた。

 

 

 





・コンビニのお兄さん
 3および4をプレイの方はイッキがヒカルに懐いている(語弊)印象があるかも知れませんが、2ではこんなものです。コンビニに行くイベントすらなく、基本的にはレトルトの状態での遭遇となっています。
 切欠となる神帝までは、しばしのお待ちを。

・サムライ
 ついに校長から一式を奪い取っていた(ぉぃ
 メダ2コアでは所謂「バー」のバニーちゃんが使用する。
 一式持っているからといって、別にヒカルが通い詰めたわけではない。
 中身はゴーストだが熟練度の前には相性など些細なこと、と。

・ミルキーの夢の国
 小児愛者……(性を除いて。

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