翌日、アリカとイッキは「賢いロボロボ団」の調査のために花園学園へと向かった。
出現地点の分布と、目撃証言から件の賢いロボロボ団は背丈が小さいことから、同年代の学生であるとアリカは睨んでいるらしい。
心象としては否定しておきたいイッキであったが、メダロッ島にて子供(というか幼稚園児)幹部のサラミと遭遇したという前例があったために強くは言い出せず、結局引きずられて調査へと乗り出しているのであった。
「友人を疑うのも、なんだかなぁ……」
「何言ってるのよイッキ。報道者たるもの、何にでも疑ってかかる心意気をもたないと!
それなら僕、報道者じゃなくていいや。とは思うものの口には出さず。
現在のイッキたちはカリンやコウジの伝手を借りて、花園学園の内へと入っていた。教師達から怪訝な目を向けられるものの、話が伝わっているのか、名前を聞かれる程度で済んでいる。
学内はイッキ達の通う学校とは似ても似つかず、広々とした中庭や所々に絵画や生け花。挙句の果てには無駄に金ぴかな彫像などが置かれ、雰囲気からしてお金持ち! といった様相でどこか落ち着かない。
しかして、その中を自分たちと同じような子供たちが駆け回っているのだから違和感も尚更である。
「コウジ君たちの待っている空き教室、2階だったっけ?」
「うん、そう聞いてるけど」
アリカが生き生きとした表情で。その言葉にある通り、アリカが先行調査を依頼したコウジ、カリン、ユウダチの3人が待っている教室を目指す。
階段を登り、2階へ。
「お、おぼっちゃま……」
「ボクは帰るよ。フン、君たちのような子供には構っていられないのサ」
中途で小さな子供とすれ違ったものの、別段衝突もなく。ただ学内でも執事らしき人を連れているあたり、変わった子だなぁとは思ったが。
アリカもいったん目を向けたが、気を取り直して進み直した。
「―― お、やっと来たなイッキ」
「ふふ。どうぞお上がり下さい……で、良いのでしょうか?」
「良いんじゃないですかね? 制服でないあたりに部外者感は漂っていますが、一応、教師からの了解は得ているですし」
音楽室として使われているらしい空き教室に入ると、コウジとカリン、ユウダチが教卓の前に腰掛けて待っていた。
イッキとアリカも挨拶をしながら合流。
「3人とも、アリカの調査への協力ありがとう!」
「まぁな。花園学園に噂の『賢いロボロボ団』が居るかもと聞かされたときは何事かと思ったが、こうして調査資料を見せられちゃあ、オレも可能性は否定できないって思っちまったからな」
「ふふん、あたしはいつだって抜かりなく調査してるんだから!」
アリカが胸を張りながら、調査資料を机の上に広げる。
集まった全員がそれを覗き込んだ。
「さて、それじゃあ確認するわよ。賢いロボロボ団の出現ポイントをまとめた地図がこれ。縮尺を引いた地図がこれで、こんな風に、花園学園周辺2キロ位で事件は頻発しているの」
「ふむぅ。ちょっと離れている位置のは弾くということですね」
「その通りよ。それで、悪戯している姿を捉えた写真がこれ。近くの人と比べてみれば一目瞭然だけど、子供の背丈でしょ?」
「確かにそうだな」
「という訳で、出現ポイント内にある唯一の学校である花園学園の生徒で調査を行うわ。まずは聞き込みね。生徒の中で不審な行動をしている人が居ないか、聞いて回るのよ。あたしとカリンちゃんが担当するわ」
「宜しくお願いしますね、アリカさん」
「うん、宜しく。……それで、イッキとコウジ君は街中の人に聞き込みをしてちょうだい。多分、移動パターンとかにも法則があると思んだけど、そっちはやっぱり現地調査をしてみないと判らないのよ」
「どっちから来てどっちに逃げて行ったかをまとめればいいんだね」
「よし。判った、任せろ!」
「お願いね。それで、ユウダチは遊撃。最初はあたしとカリンちゃんの手伝いをしてくれる? 軌道に乗ったら街中に出て貰おうと思うの」
「はい、判ったです!」
各々の役目を確認した所で、自然と組が分かれる。
イッキとコウジが目線で頷きあって。
「頑張ろう、コウジ!」
「ああ。オレ達の街で悪さをしているんだからな。何が何でもとっ捕まえてやるさ!」
「おー、コウジがやる気です。空回りとか、いつかの様に暴走しなきゃいいんですけど」
「……気を付けてくださいね? コウジ君」
「分かってるよ。前科があるとはいえ、一直線にはならない様に気を付ける」
コウジが拳を握ると、ユウダチが手を差し出し、自分のメダロッチを突き出した。
「それでは、取材の一助として皆さんにはこれをあげますです」
「これは?」
「メダロットで街中を移動する為のパーツ一式と、その補助パーツ。合わせて『ミニハンドル』という名称で運用をしているです」
「どういう風に使うの?」
「たった今皆のメダロッチに転送した『ランドモーター』のパーツ一式に取り付ける事で、人を乗せる車両型に変形するんです。アリカ以外は多分、わたしが乗っているのを見た事があると思います」
「あっ、この間の?」
「はいです。これはメダロットを変形させるための試運転を兼ねているのですが、今回皆にはテスターとして使用してもらうです。私が実際に2ヶ月ほど使ってますので、安全性は大丈夫かと思うです。後は運用データが欲しいだけなので、がんがん使って下さいです!!」
「へぇー。免許とかはいらないのか」
「実はメダロットの方に資格を持たせているんです。パーツ記憶部分にドライブデータが入っているので、安全運転はお任せあれです!」
「移動時間が短くなるのはいいな。ありがたく使わせてもらうぜ」
コウジはメダロッチを操作し、早速と一式を組上げる。
イッキを伴って、教室の入口へと早足に。
「それじゃあ夕方に、また空き教室に集合だな!」
「行ってくるよ。また後でね」
男2人で、意気揚々と学園の外に飛び出していった。
その様子を、残った3人は眺めつつ。
「それじゃあ、あたし達も行こうか?」
「はいですわ」
「了解です!!」
学園の中での情報収集を始めるのだった。
女子3人による(特にカリンが居るので男子からの)情報収集力は凄まじく、アリカのチーム分けは見事に的を射る結果となる。
◇◇
「待ちやがれ!!」
「嫌だよーだ!」
「は、早いっ!!」
女子たちの情報収集が佳境を迎えるその頃、街中を探索していたイッキとコウジは、レストランの横で賢いロボロボ団を発見し、その後を追っていた。
異様に素早いロボロボ団ではあったのだが、2人で追い回す事によって徐々に逃げ場を塞いでゆく。
5分ほど追いかけっこを繰り返し、ついに端へと追い詰める事に成功した……の、だが。
「ワッハッハ! これもわしの手柄じゃい!!」
「大人しくお縄を頂戴するであります!」
「さあ、此方へ来るのであります!」
「うっ……うう……!」
当の賢いロボロボ団は、セレクト隊員とロボトルの最中となってしまった。
イッキとコウジが追い詰めた所を、セレクト隊によって横取りされかけているのだ。
「くっ……こいつら!!」
「落ち着こうよコウジ。表立って助けると、僕たちも仲間だと思われちゃうからなぁ……」
腰を屈め、植木の後ろに隠れて。
憤慨するコウジと、どうにかして方法を探るイッキ。折角の手がかりをセレクト隊に全て掻っ攫われるのは、流石に面白くないのである。
裏から何とか様子を伺っていると、ついに子供が多勢に無勢で押し切られてしまう。
「さあ、観念するであります!」
「……うう……」
セレクト隊員がロボロボ団員を拘束しようと一歩を踏み出す。
……が、救いの手は思わぬ所から現れた。
「ええっと……その、弱いものイジメは良くないと思いますわ!」
突如、(少々声量は足りないが)声が割り込んだ。
「……なんじゃ、割り込むにしても弱気な声じゃが……どこに居るんじゃい!?」
「……あっ! あれは!!」
「あれは……何だ?」
イッキは目を輝かせ、コウジは不審者に遭遇したかの様な顔。
セレクト隊もアワモリ隊長も、はては追い詰められていたロボロボ団員までもが見上げる目線 ―― その先に。
「とうっ! ……怪盗レトルトレディ、参上いたしました!」
「へっ、へんた……」
「かっこいい……」
「白チャイナの羽マント!! お前が噂に聞くレトルトの相方じゃの! わっはっは、こりゃあ良い! こいつも一緒につかまえてしまえば大手柄じゃわい。……お前ら、捉まえるんじゃ!!」
「「了解であります!!」」
突如現れたレトルトレディなる人物を正面に捉え、アワモリ隊長の一声。
今度はロボロボ団とセレクト隊との間に立ったレトルトレディに向かって、隊員たちがじりじりと距離を詰めてゆく。
「っ……イッキ!」
「うん! 僕達も……」
2対1だ。この状況だけを見れば、どちらが悪役だか判ったものではない。
その様子にイッキたちが飛び出そうとするも、
「! 大丈夫。ここはお姉さんに任せて置いてください。……お願いエンゼル! デビル!」
2人にだけ通じる言い様で、レディは腕をこちらに向けて、大丈夫と念を押した。
その前に、メダロットを転送する。
「ふわわー。いくよー」
「暴れていいんだな。……いいよな? 暴れるからなっ!?」
「な、なんだこいつ等は!?」
セレクト隊の前に立ち塞がったのは、2体。
白い天使のようなメダロットと、黒ヤギをモチーフにした悪魔のようなメダロットだ。
レトルトレディが腕を一振りすると、セレクト隊の出したメダロットを蹂躙しはじめる。
「ぶるぁぁぁぁー! 暴れる暴れるぅー!!」
「ひいいいいっ!?」
「ふわわー。直すよー」
「うわあああっ!?」
見るも無残で圧倒的。
黒いメダロットが腕を振るたび、セレクト隊のメダロットは半壊に追い込まれる。
ダメージを与えても、白いメダロットが粒子を放つたびに修復される。
ロボトルをさせられているセレクト隊員にしてもそのメダロットたちにしても、正に悪夢としか言いようの無い状況だった。
……1分ほどで、例の如く全滅。
「ぐっ……た、退散じゃあ!!」
「「た、隊長ッ!?」」
全滅を待たずして、我先にと逃走したアワモリ隊長。その後を追って、隊員達も逃げてゆく。
レトルトレディはその様子を最後まで見届けて、ふうと息を吐いた。
「戻ってください、エンゼル、デビル。……切り札の獣王も控えていたのですが、大丈夫でしたね。……怪我はなかったですか?」
「う、うん……」
あまりの迫力に座り込んでいた賢いロボロボ団の手を取って立たせ、笑いかけた。当のロボロボ団員にとっては、仮面の内にある笑顔が、一層光り輝いて見えているに違いない。底知れぬ母性である。
「でも、あまりやんちゃが過ぎるのもいけませんよ。わたしが付き添ってあげますから、レストランに謝りに行きましょう」
「……うん、わかった。……ごめんなさい」
何とも素直に、ロボロボ団はつき従っていた。
開いた口の塞がらないイッキとコウジへ向かって、レトルトレディはウィンク。
「それじゃあ謝ったら、君達からも聞きたい事があるよね?」
「はっ、はい」
「……そうだな」
「わたしは流石に、セレクト隊には着いてゆけません。貴方達が一緒に行ってあげてください」
「……セレクト隊?」
「なんでセレクト隊に行くんだ?」
成り行きが判らず、イッキとコウジが尋ねる。
レトルトレディは2人の様子にああ、と頷きつつ。
「ああ、そこから説明が必要ですものね。……それじゃあまず、この子からお話を聞きましょう。謝罪はその後に。場所を移しますから、着いてきてください」
言って歩き出したレトルトレディ。顔を見合わせて……一先ず。
イッキとコウジは、その後ろを着いて行く事にした。
・変形
3への布石。3以降はランドモーターに替わってヴェイパーレールがミニハンドルを引き継ぐ。
・賢いロボロボ団
つまり、一般的なロボロボ団は賢くないと認知されている。
そしてその認識は非常に正しいかと思われる。
・レトルトレディ
中身は例のお方。
使用メダロットが鬼畜なのが、レトルトレディのお約束。
原作でのお方はパーツテストの役目までユウダチに奪われたのでまたも出番なし。果たして登場するのか。