ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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18話 コーダイン王国

 コーダイン王国は、どうやら時代やら何やらを超越した位置にあるらしい。

 そこへ勇者……という役職で召還されたらしいイッキは、すぐさま「姫様」の従者である爺やに自らが一般的な子供である事を告げた。

 しかし。

 

 

「―― 一緒に連れてきた魔物の手先の回収、それに魔物・ブルーハワイの討伐をお願いしますのじゃ。それさえ終われば、貴方を元の時代に返す事もできましょう」

 

 

 とのお達しであった。

 詰まる所、イッキが一般人だというのは織り込み済みの事実であり、何れにせよ「魔物の手先」と呼ばれているロボロボ団を連れ帰らなければならないらしい。

 爺やに効けば、当のマルガリータ姫は花畑に居るらしい。あの姫様とメダロットには困ったものですじゃ、という呟きは聞かなかった事にした。

 イッキは周囲の散策を行いつつ、まずはあのマルガリータという姫様の所を訪れようと……して、その前に。

 神殿を出る前に、一旦奥へ。書斎のような部屋が立ち並ぶ中、一際大きな一室。守衛が両の脇を固める部屋の前には水晶玉を被った人物が立っていて。

 

 

「ねえシュコウ。君は何を見ているの?」

 

「……これ」

 

「うわぁ、凄い綺麗ででっかい石だなぁ」

 

 

 イッキは同時に転移してきたロボロボ団幹部、シュコウの横へと駆け寄った。

 奥の部屋できらきらと光を放つ石をずぅっと観察していたシュコウ。少なくとも今、イッキに危害を加える意志はないらしい。

 他のロボロボ団幹部と違い、シュコウはこちらを目の敵にしてくる事がない。花園学園における事件の際もそうであったが、話してみれば意外な話しやすさもある。背格好が近いこともあったのだろう。

 それら理由も重なり、イッキとシュコウは、コーダイン王国に居る間は不可侵条約的なものを結んでいたりした。

 どこか積もった薄暗さを抱きつつ、シュコウが目の前にあったコーダイン王国が国宝である宝石……フユーンストーンを指差す。

 

 

「……綺麗なのも凄いけど、それより、浮いてる」

 

「!! 本当だ!!」

 

 

 触れることは許されないらしいが、じっと見ていたシュコウによる観察の結果なのだろう。壁に張り付いていると思っていたその石は、事実、ふよふよと宙に浮いていた。

 シュコウは目の前で浮かぶ石について、話を広げてゆく。

 

 

「……多分、これ、サイプラシウムと同じ性質」

 

「? さい、ぷら……しうむ?」

 

「貴方に判り易く言うなら、メダロットの装甲に使われている素材。電流を流すと軽くなる性質を持っている金属で、メダロットが身体の割りに軽いのはこのおかげ」

 

「へえぇ」

 

「きらきらと光っているのは、余剰分の電流が流れた時に発生する粒子。メダルのリミッターを外した最大出力のメダロットも、スラフシステムの全力稼動とは別にこの粒子を大量に発現してる」

 

「……あ! もしかして君のメダロットとロボトルした時の、あの不思議な羽って……」

 

「秘密。……でもこれを見る限り、サイプラシウムについてはちょっと解釈が違ったみたいで。軽くなるんじゃなくて、きっと浮力を生んでるです。これは凄い発見です」

 

「ひ、秘密かぁ。……それにしても、凄い発見って言われると感動するなぁ。……実際にはあんまり判ってないんだけどね」

 

 

 少し楽しそうなシュコウの様子に、イッキも楽しげな気分になる。

 すると、そんな様子を見ていたシュコウが傾ぐ。

 

 

「……そういえば、私を呼びに来たの?」

 

「あ、そうだ。姫様の所に行こうと思って。君もロボロボ団たちを回収しないと帰れないだろ?」

 

「……そうかも」

 

「それじゃあ行こうか」

 

「うん」

 

 

 存外素直に後ろを着いてくるシュコウを連れ立って、イッキは神殿を出た。

 コーダイン王国は海の際に建てられた神殿を中心とした漁村のような国だ。時折行き交う人々が、イッキやシュコウの自分たちとは大きく違う風貌の珍しさに視線を向ける中、砂浜を歩いて爺やから聞いた花畑へと向かう。

 暫く進むと人工のものと思われる森があった。

 花畑の入口には老人が立っており、守人かな? と思って近付いたものの、彼は眠っていた。起こすのもなぁと思いつつ、2人はそのまま花畑へと入ってゆく。

 目的の人物は花畑の中央に屈んでいた。

 

 

「あっ! ゆーしゃさま!!」

 

「? お姫さま、何だか印象が違うけど」

 

「マルガリータって呼んで! あと、ひめさまじゃない時はこんな感じ!! あの喋り方、疲れるんだもん!!」

 

「あはは……それじゃあ遠慮なくマルガリータって呼ぶね」

 

「うん!」

 

 

 神殿でであった際は無理をしていたんだな、とイッキは適当だが間違っては居ないであろう解釈をしておいて。

 イッキはそのまま暫く、マルガリータの遊びに付き合うことにした。

 ロボトルをしたり、花の冠を作ってみたり。マルガリータは如何にも少女といった明朗な性格で、イッキとしても遊びがいのある子供だった。

 2度目のロボトルを終えたところで、マルガリータはやっと満足げな顔。

 

 

「ありがとうゆうしゃ様! とっても楽しかった! また遊ぼうね!!」

 

「それはよかった。……ねえ、マルガリータ。ところで、教えて欲しい事があるんだけど」

 

「……もしかして、ブルーハワイ?」

 

「うん。西の海に出るって言う魔物の事。僕、そのブルーハワイと手下を捕まえなくちゃあいけなくて」

 

 

 言うと、マルガリータがイッキを見つめる。

 やや悩んだような間の後。

 

 

「……手下、って呼ばれてる人たちは知ってる。変な格好をしてロボロボ言ってる人」

 

「そうだね。それで、魔物って呼ばれてるブルーハワイは黒いタイツを着てロボロボ言っている人じゃないかな?」

 

 

 イッキとしては当然の問い掛けであった。

 何せ、現在コーダイン王国に来ているロボロボ団たちはシュコウとイッキのロボトルを監視していたロボロボ団たちなのである。とすれば、「手下」の上に居る「魔物」とはロボロボ団の幹部の事なのではないか。

 そう考えて問うて見たものの、しかし、マルガリータはむくれ顔で。

 

 

「プース・カフェはあんな変なのじゃあないもん!!」

 

「……プース・カフェ?」

 

「……勇者様、秘密にしてくれる?」

 

「うん。マルガリータがそう言うならね」

 

「そう。……プース・カフェはね。じいやに怒られて海に追放されたマルガリータのナイトメアメダロットなの」

 

「もしかして、悪戯好きっていう?」

 

「うん」

 

 

 確かに思い当たる部分はある。あの爺やは悪戯好きのメダロットには困ったものですじゃ、などと呟いていたからだ。

 ここで、これまで黙っていたシュコウが。

 

 

「……尻拭い?」

 

「そうみたいだね……はぁ」

 

 

 容赦の無い指摘に、イッキは思わず溜息を吐いた。

 どうやら自分は勇者の役目、という役柄を良い事に、ロボロボ団の回収と自分の国でやらかした不祥事の後片付けまでさせられているらしい。

 とはいえ、爺やは兎も角マルガリータのお願いだと切り替えてしまえば何とかなる。幾ら悪戯好きだからといって、大切にしているであろうメダロットを海に放られてはマルガリータがこうも反抗的になってしまうのも頷けた。

 イッキはマルガリータに向けて、どんと胸を叩いて。

 

 

「ぼく達がプース・カフェを連れ戻して見せるよ」

 

「でも、戻ってきても、爺やが……」

 

「……その辺りはわたしが交渉する。大丈夫」

 

 

 イッキが胸を張り、シュコウが念を押す。

 ……マルガリータが、遂にコクリと頷いた。

 

 

「それじゃあ行こうか。西の海」

 

「……マルガリータ、ここで待ってて」

 

 

 

 ◇◇

 

 

 

 そうして歩く事数十分。

 西の海へと辿り着いた2人が見たものは、海の上にずらりと並ぶ木箱であった。

 

 

「これ、何処まで続いているんだろ」

 

「……多分、ナイトメアメダロットの所? だってそうじゃないと意味が無い」

 

 

 シュコウの言い分は尤もだ。

 誰が浮べたのかはともかく、これがナイトメアメダロットに関連した事件でなくては、騒ぎにもなるまい。

 ともかくも、箱の上に足を伸ばす。どうやら体格の小さな2名が乗った所で沈みはしないらしい。

 安心した所で、

 

 

「所でロボロボ団は君の言う事を聞いてくれそう? そうだったら、出会ったらロボトルになる前に君が説得して欲しいんだけど」

 

「……大丈夫。それは任せて。でも、ナイトメアは別。多分、ロボトルになる」

 

「そうだね。マルガリータと機体が同じなら、アンチエアで何とかなるかな?」

 

「……どうだろ」

 

 

 マルガリータの使っていたメダロット、ナイトメアはメダルの情報処理能力を恣意的にずらし攻撃対象を「混乱」させるパーツを多用する強敵であった。

 しかし脚部パーツが飛行型であるため、対空射撃による迎撃で何とかなるかも。と、今の所イッキは踏んでいて。

 

 

「……でも、わたしを見張っていたスルメも居るはず。油断はしないで」

 

「あれ、君も戦ってくれるの?」

 

「うん」

 

 

 イッキが思わず驚いた声を出して問うと、シュコウは間を置かず頷いた。

 シュコウとスルメは同じロボロボ団の幹部の筈。だのに、イッキの側について幹部同士で戦ってくれるのだと言う。

 

 

「スルメ、言う事聞かないし。それに派閥も違う」

 

「派閥なんてあるんだ」

 

「一応ね」

 

 

 言われてみれば、シュコウはその他のロボロボ団の幹部と大きく格好が違っている。少なくとも黒のタイツは着ていない。

 その辺りが派閥の違い、という事なのだろうか。

 

 

「……行こ」

 

「あ、うん」

 

 

 しかしそれ以上を尋ねる前に、シュコウは木箱の上を早歩き。

 ……どちらにせよ今は、自分のいた時代に帰ることが先決だ。だとすればこのブルーハワイにおける事件を迅速に解決する必要がある。

 頭の中でまとめ直しつつ、イッキは先を行くシュコウの背を追って歩調を速めていった。

 




・ブルーハワイ
 舌が青くなります。
 へっくしょい……まもの。

・フユーンストーン
 4でも出て来る秘宝。とある要塞を浮かばすのに使用されたりする。
 2ではエンディングの後にコーダイン王国へ変換すると、レアなメダルが貰えます。
 サイプラシウムと同じ云々は隠し設定だったはず。
 スラフシステム(システム自体は別だが)との関連については独自設定。

・マルガリータ
 コーダイン王国のお姫様。無邪気可愛い。
 マルガリータエンドが無いのが悔やまれますね。
 3以降は忘れ去られる運命にありますが、今作ではそうも行きません。
 悔やんでいるからこそ二次なんて書いているのです(意味深


 駆け足でしたが、フユーンについては後々にやるのでこんな感じに。
 とりあえず更新はここまでになります。
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