ジャンクヤードの友人へ   作:生姜

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4話 アガタヒカルの冒険/序章

 

 メダロットを戦わせるゲーム、通称「ロボトル」。

 そんなロボトルの世界大会が開催されるという知らせを受け、アガタ・ヒカルが住む(田舎の)町内でも予選大会が開かれる予定となったのは、夏休みも中盤に差し掛かった頃の出来事であった。

 

 昨日メダルを持ち帰った所、父親からメダロット・スタートセット……KBT型メダロットの『メタルビートル』を受け取ったヒカルは、それら大会に関する噂を小耳に挟みながら、なんだかんだで教師によって提示された「夏休み冒険マップ」に従う事もやぶさかではなく。町の南に位置する港を訪れサメ……のフリをしていたロボロボ団の幹部と対峙した。

 一度は敗北を喫したものの、幼馴染であるアキタ・キララの助太刀や、メタビーの底抜けに明るい気性の手助けもあり、対潜水装備を整えたメタビーがサメ型メダロット・ユイチイタンを撃破してくれた。

 

 

「うはははは! 反・応・弾ーッ!!」

 

「レ、レイカ様ーっ!?」

 

「あ、悪魔のようなメダロットだロボーッ!?」

 

「……おーい、やり過ぎるなよ、メタビー」

 

 

 等々。

 その後、港の奥にある洞窟を探検し、2つ目のティンペットと『ナイト』メダルを手に入れて仲間も増え。

 

 

「お守りします我が主」

 

「なぁヒカルぅー、こいつ、暑苦しいんだけど」

 

「我慢しろよなメタビー。直撃受けるよりマシだろ?」

 

「おいお前ら、ロボトルする気あんのかよ!? やっちまえシアンドッグ!」

 

「露骨に負けフラグですよね、ヤンマ」

 

 

 そんなこんな、何故か公共の道路を通行止めしていたヤンマを倒し、ヒカル達は隣町へと立ち入る事になったのである。

 

 

「……いつ来ても、隣町は別世界だよなぁ」

 

 

 朝早くから町を出立したヒカルは、一面に舗装された道路が続く区画を歩いていた。

 この道路はここからセレクト本社ビルの存在する居住区画にまで続いているらしく、所々、メダロットに乗って移動を行なう人々も見受けられる。

 ヒカルの住んでいる町とは違って都会な風景には、メタビーも感嘆の声をあげる。

 

 

「ほぉーっ、また広いとこだねぇ」

 

「とはいっても僕達が向かう予定なのは北の山だけどね」

 

「何しに行くんだ? うまいもんでもあるのか?」

 

「いや? 猿と喧嘩をしに」

 

「……おお~。ワイルドだな、ヒカル」

 

「今日中には戻るだろうけどね。山よりは、じいちゃんの田舎のほうがまだ生活感はあるだろなぁ」

 

 

 などと、ケイタイの中から話しかけるメタビー。

 猿と喧嘩を、というのは件の体育教師が出した宿題(の様なもの)の1つ。教師としてどうなのだろう……とは思うものの、「夏休みには冒険をしているくらいの方がいい」とはヒカルの父の言葉である。ヒカルとしても、山へ向かうのは来るロボトル大会へ向けた武者修行になるだろうと考えている。山には「野良メダロット」と呼ばれるマスターを持たないメダロットたちが少なからず暮らしているからで、彼らとのロボトルならば経験も積める。

 しかし、そもそも山に子供1人で行くのはどうなのかなぁと悩みつつ、町を北上。セレクト本社ビルやメダロット社ビルのある区画に背を向け、山の麓にある村へと向かう。

 するとその中途、見知った姿を見かけた。

 

 

「―― あ、ユウダチ?」

 

「あ、ヒカル兄さま。ごきげんようです」

 

 

 先日メダルを分け合った少女ユウダチが、アスファルトの歩道その道すがらに座り込んでいた。

 再開の挨拶をしつつ、何をしているのかとヒカルがその手元を覗き込む。すると、ユウダチは車型メダロットの左腕パーツをばらして拡げていた。

 

 

「メダロットを直してるのか?」

 

「ですー。わたしは、そこの研究所でお手伝いをさせてもらっていまして。どうやらこのランドモーターは排気部分が故障して、廃熱出来ずにセーフティを発動させて止まってしまったみたいです」

 

「ほうほう」

 

 

 ユウダチの言葉はイマイチ理解できなかったが、ヒカルはとりあえず理解している体で頷く。

 ランドモーターとは、外付けのパーツを利用することによって「ミニハンドル」という車両型に変形できるメダロットだ。この様に外付けのパーツはメダロットにおいても幾つか開発されているのだが、特にこの「ミニハンドル」は一般向けとして最も普及しているパーツであるかもしれない。

 そんなことを考えているうちにも手際よく勧められる分解修理に、ケイタイの中でメタビーが。

 

 

「やるなー、ちびっこ」

 

「ヒカル兄さまのメダロットですか? 始めまして。ユウダチといいます、です!」

 

「おう、オレはメタビーだ。宜しくな。……なんだヒカル、こいつお前の妹なのか?」

 

「うーん、友達?」

 

「どうでしょう?」

 

 

 実際には(ほぼ)見知ったばかりなので適当な表現を探して口にしたヒカルの言葉を、ユウダチは話半分に流しつつ、組み立てを再開する。そのまま所用90秒程度で、左腕パーツの修復を終えてしまった。

 だらりと汗をぬぐい、ランドモーターとその主の主婦方へと、真黒な視線を向けてパーツを差し出す。

 

 

「はい、修理完了です。外付けパーツの排気口のつまりが原因でしたです。転送しても『つまり』は解消されないので、自分でやらないなら定期的に板金屋さんとかのお世話になってくださいです!」

 

「ありがとね、お嬢ちゃん。はい飴ちゃんあげる」

 

「誠にありがとうございました。ワタシが主人を送れなければ、特売に間に合わない所でした」

 

「飴ちゃんありがとです。はふぅ、それでは特売に急いでくださいですー」

 

 

 最後に指導を行ったユウダチへ礼を言った後、ランドモーターとその主は商店街のある方向へと走り出していった。

 貰った飴を解くと口の中へ放り、口の中でころころと動かすユウダチが、さてと伸びをして脱力から立ち上がる。

 

 

「さて、ヒカル兄さまも引き止めてしまいました。何処へ向かう予定だったのです?」

 

「うん、ちょっと山にね」

 

 

 ユウダチの目線を受けると、ヒカルはつい先ほど足を向けていた北側を指差した。

 それを聞いたユウダチが、怪訝な顔つきになる。

 

 

「え、何で山へ?」

 

「猿とケンカしに行くんだよ。なぁヒカル!」

 

「時と次第によっては喧嘩するだろうね」

 

「うっわーっ。わたしも大概だと思っていたですけど、ヒカル兄さまも大概の変人です!」

 

 

 メタビーの言葉に同意すると、ユウダチはその言葉とは裏腹に、どろりとした笑みを浮かべて嬉しそうだ。

 わくわくとした期待の念を身体から発し……しかしユウダチが現実的な部分を質問する。

 

 

「んー、でもヒカル兄さま1人で行くんですか? 山へ? これから?」

 

「だよね。だから下見だけして、今日は引き返そうかなと思ってたんだけど……」

 

 

 ユウダチの指摘にヒカルは腕を組んで考え込んだ。

 ヒカルの住んでいる町から移動をするとなると、どうしても日帰りで山へ向かうというのは難しかったのである。

 小学生のヒカルでも、夜の山に入るのが危険だという事は知っている。だがヒカルとしては、山で修業という言葉の響きには大変心躍るものがあったのである。

 難しそうな顔を続けるヒカルを見て同じく悩み始めたユウダチが、しばらくしてポンと手を打った。

 

 

「そうだ! ヒカル兄さま、博士の所で合宿をするというのはどうです?」

 

「合宿? 博士?」

 

 

 事態が飲み込めず疑問符を浮かべるヒカルへ、尚もはつらつとユウダチが続ける。

 

 

「はい。メダロット博士の所で2泊3日の合宿をしてくると、親御様に言うのです。ナエお姉さんに着いて来て貰って、明日、一緒に山へ行きましょう!!」

 

 

 ぐるぐると興奮を浮かべながら、名案とばかりに捲くし立て。

 

 

「それでは早速!!」

 

 

 と、すぐ側にあった……先ほど指さしていた「世話になっている」という研究所へ駆け込んでいってしまった。

 

 

「……え?」

 

「おー。良かったじゃんか、ヒカル。解決しそうじゃねえか?」

 

 

 後には困惑したままのヒカルと、ある意味では事態を完全に理解しているメタビーとが残されていた。

 





・ロボトル世界大会
 町内大会、地区大会、本戦大会と勝ち上がる仕組みの大会。
 ロボトルはメダロット同士を戦わせるものであり、世界的な競技人口と人気を誇るため、誰しもが注目しているイベントとなっている。
 主催と企画は共にメダロット社。

・ユイチイタン
 サメをモチーフとしたメダロット。全パーツが重力射撃「ブレイク」となっている。
 サメ型だけに脚部は潜水得意となっており、港町の水辺に適応していない主人公の二脚型をボコンボコンにしてくれる、トラウマ1号。
 両手の装甲がきわめて低いため、それらの破壊を優先しても良いが、いずれにせよ頭パーツがある。
 困ったら周辺のカッパからアンチシーライフルを奪い取るか運任せしましょう。とはいえ1のアンチシーアンチエアは、2以降ほどの威力はありませんが……。
 本作ではメタビーの理不尽さにやられました。

 20160508.追記修正
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